博多コネクティッドのその先へ、2040年の博多のまちづくりを読み解く
福岡市の都心部機能更新誘導方策である博多コネクティッドが進展していく中、博多のまちは、どのように変貌するのでしょうか。博多まちづくり推進協議会は、2040年の博多の将来像を描いた『博多まちづくりガイドライン2026』を発表しました。本記事では、その内容を読み解きます。
この記事の目次
【プロローグ】地元エリアマネジメント団体が描く2040年の博多のまち

JR博多駅周辺の地域活性化やエリアマネジメントを担う官民協働の組織である博多まちづくり推進協議会は2026年10月19日、NCBホールで『博多まちづくりシンポジウム2026』を開催した。
同協議会の会長を務める、九州旅客鉄道(JR九州)常務執行役員の澤亀愼司氏は、冒頭の開会あいさつで「博多の街を元気にしていく」という博多まちづくり推進協議会の意義を語った。
あいさつに続いて、2026年7月に発表した『博多まちづくりガイドライン2026』を紹介した。
同ガイドラインは、地域住民を含む同協議会の会員などから寄せられた意見やイメージ、アイデアなどを一つの形にまとめたものであり、博多のまちの将来像について説明したものだ。
その後、基調講演の講師を務めた九州大学人間環境学研究院の黒瀬武史教授をモデレーターとするパネルディスカッションが開かれた。
そして、登壇者から活発な意見や提言が出るなど、盛会のうちに幕を閉じた。
博多駅周辺の企業や団体、行政が参画する博多まちづくり推進協議会

今回、博多まちづくりガイドライン2026を打ち出した博多まちづくり推進協議会は、博多駅周辺とキャナルシティ博多を拠点に、地域活性化や魅力向上などに取り組むエリアマネジメント団体(地域運営組織)だ。
「住む人、働く人、訪れる人が主役となったまちづくりを進め、皆に愛され誇れるまち、新しい時代の魅力的で風格あるまちを創造する」という理念の下、つなげる姿勢やひらかれた姿勢など、5つの姿勢で理念実現を目指す。
2008年4月に設立された同協議会は2026年7月末現在、正会員76、一般会員125、特別会員9、賛助会員7の計217会員を擁している。
設立翌年の2009年4月、同協議会は博多のまちづくりについて、みんなで共有できる恒久的・普遍的な指針として『博多まちづくり宣言』を行った。
そして、同宣言の下、博多のまちが将来にわたって活力・風格・魅力を持ち続けるための具体的な取り組みを記した『博多まちづくりガイドライン』を同年12月に発表した。
『博多まちづくりガイドライン2026~未来ビジョン2040~』とは何か

博多まち歩きマップの作製や博多灯明ウォッチングの開催、はかた駅前「どんたく」ストリートの実施、冬のファンタジーはかたの開催……。
これらは、同協議会がこれまで取り組んできた活動であり、2014年1月に改訂された『博多まちづくりガイドライン2014』に基づくものだ。
博多まちづくりガイドラインの策定後、九州新幹線の全線開業や博多駅ビルの開業、東日本大震災の発生、福岡市の第9次総合計画の策定などを踏まえ、同ガイドラインは改訂され、博多まちづくりガイドライン2014となった。
博多まちづくりガイドライン2026への改訂では、博多まちづくりガイドライン2014に基づくこれまでの活動内容を振り返った。
2014年版の策定以降、地下鉄七隈線の延伸をはじめ、はかた駅前通りや筑紫口駅前広場の再整備などのインフラ整備が完了した。
また、博多コネクティッドの進展により、建て替えの目標時期とされる2028年末に向けたまちの姿も見えつつある。
一方、福岡市の第10次基本計画も始動した。
さらにウォーカブルやダイバーシティなど、まちづくりに関する新しい価値観も生まれている。
こうした周辺環境の変化も踏まえ、新たなガイドラインとして改訂されたのが博多まちづくりガイドライン2026だ。
2026年版について、博多まちづくり推進協議会の内野豊臣事務局長は、次のような見解を示す。
内野豊臣事務局長
今回改訂した博多まちづくりガイドライン2026は、官民連携による公共空間の利活用を通じた都市経営の推進を提唱するエリアマネジメント3.0を強く意識しました。
また、新たなエリアマネジメントの価値観として、ウォーカブルとイノベーションを取り入れています。
航空法により建物の高さが制限されている博多駅周辺エリアでは、横方向の人の移動が重要となるため、ウォーカブルなまちづくりが欠かせません。
また、今後の都市間競争では、地元会員企業に加え、進出企業やスタートアップの会員も含めた総力戦で臨む必要があります。
そして、会員同士の“ごちゃ混ぜ”的な交流から新たなオープンイノベーションが生まれると考えます。
博多駅移転に伴う区画整理事業で誕生した博多駅周辺エリアは、“整然さ”と、人間らしい雑多さのある“カオス”が共存する、メリハリの効いた魅力ある地域です。
2040年になっても「住んでよし、働いてよし、訪れてよし」で博多が選ばれるまちであり続けてほしいと思います。

2040年の博多のまちの“ありたい姿”を描くガイドライン2026

2040年ごろ、福岡市の将来人口は約170万人でピークを迎えると推計されている。
博多まちづくりガイドライン2026の改訂では、2025年度にワーキングメンバーによるワークショップを9回開催して未来ビジョンを策定した。
そして、2040年の博多においても世界中の人々に選ばれるまちであり続けるため、交流人口を増やす必要があるとしている。
その上で同ガイドラインでは、2040年に向けて人を惹きつけるまちの魅力を厚くしていくことを念頭に、博多のまちの“ありたい姿”を将来像として描いた。
博多のまちにおける主要な構成要素

博多のまちについて、博多まちづくりガイドライン2026では、博多駅周辺とキャナルシティ博多周辺の2つの「拠点」を設定している。
拠点を中心に人や車が行き交う幹線通路を「主軸」、主軸の間に位置する裏通りなどを「副軸」としている。
また、交通結節点である博多駅からは5つの主軸が広がり、それらの主軸をつなぐ「環(わ)」状の道路交通網が形成されているとしている。
一方、緩やかなゾーニングとして、博多駅を中心に都市機能が集積する「コアゾーン」、その外周に位置し、居住機能も備えた博多らしさのある「フリンジゾーン」、博多旧市街や住吉神社を中心とした「博多歴史ゾーン」の3つに大別している。
ガイドライン2026のテーマ・方針は「にぎわい」「ウォーカブル」など6つ
近年、まちづくりにおけるエリアマネジメントは、都市計画や建築、空間整備にとどまらず、地域経済の活性化、コミュニティー形成、社会的包摂、環境・気候変動への対応など、多様な分野へと広がっている。
博多まちづくりガイドライン2026では、魅力ある博多のまちの将来像を実現するため、以下の6つのテーマを設定している。
◎【にぎわい】にぎわいをまちに拡げる
◎【ウォーカブル】人を中心としたまちづくり
◎【アイデンティティ】歴史・文化の価値の最大化とまちなかアート
◎【イノベーション】ミクストユースで進化するまち
◎【みどり・環境・健康】みどり豊かで美しい環境都市
◎【安全・安心】防犯・防災が機能する優しいまち
まちの骨格を形成する幹線道路が担う主軸
博多まちづくりガイドライン2026では、人や車が行き交う幹線通路を主軸とする。
具体的には、『はかた駅前通り』『大博通り』『祇園博多間地下通路』『住吉通り』『筑紫口中央通り』『筑紫口通り』『筑紫通り』を主軸としている。
はかた駅前通りの将来像

はかた駅前通りは、博多駅地区と天神地区を結ぶ、にぎわい・回遊の主軸であり、博多のまちの新たなシンボルとなる景観を形成していく。
建物の建設や改修によって確保した空間では、イベントやオープンカフェなどを展開し、人々が集う魅力的な空間を創出する。
大博通りの将来像

大博通りは、博多駅地区とウォーターフロント地区を結ぶ、アジアに開かれた風格ある景観を形成する主軸だ。
博多歴史ゾーンへの歩行者動線であり、市民や来街者が博多の歴史や文化に触れる機会を創出していく。
祇園博多間地下通路の将来像

博多駅から地下鉄祇園駅までの大博通りの地下に設けられた公共通路が祇園博多間地下通路だ。
博多旧市街へのアクセスルートであり、博多の歴史や文化を感じさせる装飾に加えて、利用者の需要に応じたサービス提供の社会実験を検討する。
筑紫口中央通りの将来像

筑紫口中央通りは、博多駅と直結した安心・ゆとりの空間を形成する主軸である。
歩行者空間を見直し、沿道の建物と一体となった居心地の良い通りを目指す。
沿道建物の低層階には、店舗やサービス施設などの商業空間を配置し、にぎわいを高めていく。
まちの回遊性を高める「副軸」
同ガイドラインでは、主軸以外の通りのうち、「街路樹と歩道が整備されている通り」「重点的にまちづくりに取り組む通り」を副軸としている。
副軸は、通りの個性に基づいて、下記の3つに整理している。
◎にぎわい・滞在創出路線
◎景観優先路線
◎公園アクセス路線
【にぎわい・滞在創出路線】博多駅前59号線

住吉通りと明治公園をつなぐ、片側1車線の双方向通行路線が博多駅前59号線だ。
明治公園から連続する緑あるにぎわい・憩いの空間を創出するとともに、歩行者天国の実施を検討しながら、博多駅からの回遊性の向上を図る。
【にぎわい・滞在創出路線】博多駅中央街5号線

博多駅筑紫口と音羽公園をつなぐ一方通行の路線が博多駅中央街5号線だ。
筑紫口の新幹線高架下には、飲食店街や大型商業施設などが立地している。こうした繁華街では、道路と民間施設の一体的な整備を進めていく。
【景観優先路線】承天寺通り(博多駅前10号線)

博多駅から博多千年門を経由して、博多歴史ゾーンに向かう路線が承天寺通りだ。
歴史・文化を感じるまち歩きルートとして、沿道と一体となった歴史的な景観づくりを進めながら、歩行者利便増進道路としての役割を果たしていく。
【公園アクセス路線】出来町通り(博多駅前31号線、同32号線)

出来町通りは、主軸である大博通りから公園へのアクセスを促す役割を担う路線だ。
出来町通りでは、民間敷地も活用して快適な歩行者空間を確保し、公園への回遊を促していく。
2040年の博多のまちづくりへ向けた行政の役割
博多まちづくりガイドライン2026では、改訂に向けた産学官による議論の中で、まちに対する新たな期待や会員の思いを踏まえた上で、2040年における博多のまちづくりの将来像を打ち出している。
同ガイドラインについて、福岡市の中村卓也博多区長は、次のようにコメントする。
中村卓也博多区長
博多まちづくりガイドライン2026は、幹線道路である「主軸」だけでなく、裏通りにあたる「副軸」形成の方針と方策まで落とし込み、それぞれの通りの性格をパース図に反映しています。
細部まで作り込まれた、質の高いまちづくりガイドラインだと高く評価しています。
また、ガイドラインに加え、3カ年単位のアクションプランも策定されています。
明確な方針や指針のもと、取り組み主体が果たすべき役割を示した実践的な行動計画です。
博多のまちづくりで行政が果たすべき役割は、公共空間を実証実験の場として提供し、その取り組みの定着を支援することで制度化につなげることだと考えます。
今後の博多のまちづくりでは、従来の玄関口という役割から、滞在そのものが目的となる目的地へと進化していくことが大切ではないでしょうか。
そのためには、800年受け継がれてきた歴史や文化と、現代アートや食文化をはじめとする現代的な文化が同じ通りで混ざり合う、歩いて楽しいまちづくりが重要だと考えます。

2040年の博多のまちづくりへの戦略と戦術
福岡市の将来推計人口は、博多コネクティッド終了後の2040年に約170万人に達し、ピークを迎える。2040年における博多のまちの将来像の実現に向けては、何が必要なのだろうか。
都市デザインや都市計画などを専門とする九州大学大学院の黒瀬武史教授は、次のような見方を示す。
黒瀬武史教授
博多のまちは、七隈線延伸開業をはじめとするインフラ整備に加え、インバウンドを含む来街者の増加に伴って宿泊施設が集積し、さらに集合住宅も増加するなど、まちのポテンシャルが高まっています。
このようなタイミングでまちづくりガイドラインを改訂し、博多のまちの将来像をみんなで考え、共有することには大きな意義があります。
今回の将来像では、人々の多様な活動を駅街区から博多のまち全体へと広げていくため、大通り「主軸」に加えて公園や表通りから一本入った「副軸」も含め、まちなかに居心地の良い界隈をつくることの重要性を打ち出しています。
そして、将来像に掲げる「住む人・働く人・訪れる人から愛され、誇れるまち」の実現に向けた考え方としてシンポジウムで3つの戦略を提案しました。
◎第1の戦略「駅から街へ歩いて広がる博多」
◎第2の戦略「ごちゃ混ぜのまち博多」
◎第3の戦略「博多の仲間をかてる(加わえる)仕組みづくり」
博多は、通りを軸に発展してきたまちであり、今後はクルマ中心から人中心の通りへと転換していくことが必要です。
副軸を中心に界隈性の高いまちとして、多様な人や文化が混ざり合いながらも、誰もが心地よく過ごせる博多になることで、世界の人々からも受け入れられ、評価されていくでしょう。
加えて、多様な人々がつながり、新たなイノベーションが生まれる、いわば“博多エコシステム”を誕生させるには開かれた場とコミュニティを生み出すマネージャーが大切です。
ガイドラインが着実に実践されていくことを期待しています。

◇ ◇ ◇ ◇
博多のまちの今後については、これらの戦略のもと、博多まちづくりガイドライン2026に基づいて着実に進捗していくものと考える。
その際、博多まちづくり推進協議会の会員に加えて、地域住民や来街者、会員以外の企業や団体なども“ごちゃ混ぜ”に巻き込みながら、語り合う「場」も戦術として必要となるだろう。
今後、博多コネクティッドの進展で都心機能が更新されていく中、将来を見据えた産官学民の取り組みが大いに注目される。
【参照サイト】
博多まちづくり推進協議会『博多まちづくりガイドライン2026』
https://hakata-machi.jp/pdf/guideline2026.pdf



