福岡はなぜバス大国に?西鉄バスの凄いところから2023年注目の話題まで

「福岡といえば」と言われたら、皆さん何を思い浮かべますか?やっぱりラーメン?明太子?いやいや、もっと身近なバスにも目を向けるべし!

たとえマニアではなくとも、「福岡といえばバス」と言われれば、ピンとこない方はいないように思います。まちを歩けばバスを見かけない日はなく、県外から来た人はその多さや路線の網羅性に驚くことしばしば。
 
フクリパでは、バスマニア沖浜さんによる連載『バス停から愛』を始めて1年が経ちました。そんな節目を記念して、今回なんと、福岡最大のバス会社 西日本鉄道さんからゲストをお招きし、それぞれの視点で福岡のバスの魅力を語っていただきました。オープントップバスの意外と知らない事実や、福岡のこれからの交通ネットワーク、バスを愛しすぎて〇〇を作ってしまった話まで、たっぷりとお届けします!

 

西日本鉄道株式会社 自動車事業本部 営業企画部 宮﨑泰さん(以下、宮﨑)
昨年開通した、福岡と山口・長門湯本温泉を繋ぐ高速バス路線「おとずれ号」や、市内を走る屋根のない2階建てバス「福岡オープントップバス」開業等に携わる。「にしてつバス(公式)」Twitterアカウントを立ち上げ、10年に渡って運営したという元・”中の人”の顔も。

バス路線探検家 沖浜貴彦さん (以下、沖浜)
フクリパの連載「バス停から愛」担当ライター。路線図に描かれた終点を想い、途中の狭い区間を苦心して走るバスに愛を注ぐ変態。ブログ「ほぼ西鉄バスの旅」を2008年に開設、日々愛を持ってバスを追いかけ続ける。本業はたまご屋さん。

聞き手 天野加奈
数年前に沖浜さんに導かれて以来、まちを歩けばバスが視界に入り目で追うようになってしまった。本連載を企画し嬉々として持ちかけた張本人。編集担当として、最初にバス愛原稿が読める悦びを毎度噛み締めている。

 

 

まずは知って欲しい。福岡のバス、西鉄バスの凄さ


お二人とも今日はよろしくお願いします。「福岡といえばバス」と言っても過言ではないですよね。そして、市内を走るバスの多くは西鉄バスだと思います。そもそも、福岡がここまでバス大国になった理由って何なんでしょうか?

 
※西鉄バスは1日に37.1万km、地球約10周分の距離を走行(2020年時)。保有車両台数はグループを合わせて約2,700台、年間利用客数は約2億7,000万人である

・参照:西鉄バスRECRUITING SITE【マンガでわかる!西鉄バス運転士】⑰
https://www.nishitetsubus-saiyo.jp/%E3%80%90%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%81%A7%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8B%EF%BC%81%E8%A5%BF%E9%89%84%E3%83%90%E3%82%B9%E9%81%8B%E8%BB%A2%E5%A3%AB%E3%80%91%E2%91%B0/
・参照:RECRUITING SITE2022 https://www.nishitetsu-recruit.jp/enterprise/jidosya
 

福岡は、都市規模の割に鉄道の充実度が低いと思うんですよね。”にわとり・たまご”でどちらが先かはわかりませんが、鉄道のすき間を埋めるようにバスが発達したんじゃないかと思っています。


 

そうですね。もともとは福岡にもたくさんのバス会社があったんですが、戦前、国策により経営統合していって、今の形になっていったようです。沖浜さんのおっしゃるように、鉄道がそこまで発達しなかったので、バスが路線を増やしていったという歴史があります。今はバスがまち全体を網の目のように走らせていただいている、そのネットワーク性は自分のいる会社ながら、すごいと思いますね。


  

福岡にいると感じることは少ないですが、東京とかに行くと「ああ、バスは鉄道の補完作業だな」って感じます。 市内を走るバスのほとんどが西鉄バスというのも大きな特徴ですね。例えば九州だと熊本には4つ、鹿児島には3つのバス会社があって。福岡には3社ありますが、西鉄さんがカバーしている割合がものすごく高いです。

 
 
 

オープントップバスは市民をターゲットにしてつくられた


お二人が特に好きな路線や、思い入れのあるバスを教えて欲しいです。


 

都市高速の、荒津大橋あたりは好きですね。福岡に来た人がバスに乗ってびっくりするあるあるとも言えますが、都市高を当たり前のようにバスが走り、乗客は立ったまま乗れるんですよね。荒津大橋は真下に造船所があることからかなりの高さがある訳ですが、それゆえに眺めがとてもいいです。西鉄さんの車庫が見えるのもポイントが高い。


 

僕は福岡市内だと、オープントップバスですかね。世界に2台しかない、特別仕様の屋根のない2階建てバスです。「バス」なんですけど、実は、ベースの車両はトラック。あまり知られていないんですが、ちゃんと車椅子の方でも乗れるんですよ。


 

ええ!?そうなんですか!?


 
市内を走る「福岡オープントップバス」
 

オープントップバスは「インバウンド向け」というイメージを持たれがちなんですが、実は福岡市民をターゲットにして立ち上げたんですよ。福岡市内って、「観光する場所がない」「県外から来た人を連れていく場所がない」ってよく言われるでしょう。なので、まずは市民の皆さんに「福岡のまちも意外と面白いじゃん!」と思ってもらいたくて、福岡市さんにもご協力いただきながらつくったんです。大人は1,570円で乗れちゃうんですよ。わりとおトクだと思いません?


 

しかも、乗った当日は福岡都市圏の西鉄路線バスが乗り放題、、、


 


そうそう。今、運行開始から10年のアニバーサリーイヤーなんですが、これを機に今こそ、ぜひ市民の皆さんに乗って欲しいです。
市外にまで目を向けると、高速バスの佐世保線には思い入れがありますね。ふつう、高速バスは「他地域から福岡へ来るための足」としての需要が強いんです。以前佐世保線を担当していた時に、「福岡の人が他地域へ遊びに行くきっかけ」にもなればと考えて、佐世保のまちの方々と一緒にいろんな仕掛けを考えたんですよ。「佐世保に行こうキャンペーン」という企画を実施したんですが、佐世保バーガーが福岡に広まったのは、おそらくこのキャンペーンが最初のきっかけです。

 

へえー! 昨年できた長門湯本温泉の路線開業の際にも、「長門のまちの方々と一緒につくった」と宮さんがおっしゃっていたのが印象的でした。「こことここを繋いだのでどうぞ」と単に移動手段をつくるのではなく、移動してからの楽しみまでを、時間をかけて地域と共につくってくださっているから、私たちはより楽しめるんですねえ。

 
おとずれ号特設サイトより。往復乗車券と、温泉街で使えるクーポン3枚がついたお得な「そぞろ歩きっぷ」は8,000円。車なしで、天神・博多から直行で行ける温泉地って貴重な気がします
 

 

今年注目すべくは”地下鉄七隈線延伸”?


ところで、連載ではバス停間の距離の短さや時刻表などあらゆるポイントに着目していますが、「今年は特にここに注目!」という話題はありますか?


 

 

地下鉄七隈線の延伸でしょうね。


(バスマニアなのに、、、?)


 

それによって、ダイヤの変更や消える路線番号が結構あるのではないかと見込んでいます。



なるほど!以前の記事でもすこし触れた、西新パレスが閉館したことで「西新パレス前」というバス停の名前が変わる可能性が出てくる、というような、”まちの変化に伴うバスの変化”が、今回大きく表出するかもしれないということですか。

 

どうなるかは、今はまだ何も言えませんけどね。笑 でも確かに、七隈線延伸はトピックですね。すべてのバスが天神・博多を目指して、遠いところからもやってきていたようなスタイルは、既に少しずつ変わってきているんですよ。


 

 

 

今後さらに、福岡の交通ネットワークが変化していく

 

 

冒頭で交通の「ネットワーク性」について少し触れましたが、最近はそのことについての議論が深まっています。役割分担をしながらみんなでネットワークをつないでいこうという話を、様々なステークホルダーの方々としているんですよ。
西鉄のお客さまの数はコロナ前の状態まで完全に戻っていないですし、以前から乗務員さんの不足も問題になっていて。「西鉄ができるだけネットワークを維持しよう」ということではなく、自分たちが本当にやらないといけないことが何なのかを考えて、他社とも役割分担しながらやっていく必要があると考えています。ですので、このタイミングでの七隈線延伸は、いろんなことを変えていく契機になると思いますね。

 
 
 
 

福岡市のバス停全部撮る


さんが以前、福岡市内の西鉄バス停はざっくり960箇所くらいある、とおっしゃっていたんですが。実はそれをきっかけに福岡市内のバス停とバス停のある風景を全部撮ってまとめた、『福岡バス停図録』という冊子を作っているところです。今、こんな感じで。

 


 

お〜〜!!すげ〜〜!!!


 


自分は「ほぼ西鉄バスの旅」というブログを2008年に始めて7,000本くらい記事を書いているのに、市内のバス停は960の半分も載せられてないのか、何やってんだと思ったんですよ笑。それで、ちょうど50歳になるタイミングでもあったので、やってみようと。


 

ついに形になろうとしているんですね。これはすごいなあ。うわあー!このバス停、赤茶けてんなあ〜!恥ずかしいなぁこれ載せちゃっていいのかなぁ〜!笑


 

笑 この感じも味があっていいですよ!!


 
 
総勢20名以上の方が編纂委員として撮影等に携わり、完成間近の『福岡市バス停図録』。上り・下りのバス停もそれぞれカウントすると、福岡市内の西鉄バス停の数は1,000を優に超えたそう。218ページ フルカラーという、圧巻の一冊が出来上がろうとしています。

 

 

実は私もすこしだけ撮影をお手伝いしたのですが、「バス停名の”入口”の英語表記が”ENTRANCE”のところと、”IRIGUCHI”のところがあるぞ!?」など、身近なバス停の面白がり方を見つけられてとても新鮮でした。(完成次第、フクリパでもまたご紹介予定です!)
 
少しでもバスに興味が出てきたという方、ぜひ連載の過去記事も読んでみてください。いつもの福岡の景色が、ちょっと変わって見えてくるかもしれません。

 

* * *

 

 

今回のインタビューと撮影は、連載第1回の記事で触れた愛宕浜営業所にて行わせていただきました。所長さまをはじめとする皆さま、ご協力いただきありがとうございました。

バスの正面には、ニモカカードやSUNQパスなどの様々なシールが。貼られている場所の違い探しでも遊べます。バスを愛せば、福岡の何気ない景色の情報量と楽しさがグンと上がるのだ!
 

連載第1回で触れた○愛マーク。営業所の所属を表していますが、こうやって見るととってもラブリー
 
 
だんだんと寒さも和らいで、外出がしやすくなってきました。足元の市内はもちろん、長門や佐世保など遠方へのお出かけを楽しむのも、西鉄さんがきっとお手伝いしてくれますよ。
 
 

・福岡オープントップバス10周年特設サイト
https://fukuokaopentopbus.jp/10th-anniversary/
 
・長門湯本温泉への直行高速バス「おとずれ号」特設サイト
https://nishitetsu.yumotoonsen.com/
 
・高速バス情報
https://www.nishitetsu.jp/bus/highwaybus/
 

(撮影:ヤマモトハンナ)

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プランナー
天野加奈
1993年大分県出身、福岡市在住。「消費されない観光をつくる」を志に、記事執筆から都市開発までさまざまな企画・編集に携わる。現在は多機能本屋 文喫福岡天神のディレクター。

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