「バス停から愛」とは?
2022年2月よりフクリパでスタートした連載企画「バス停から愛」。
バス大国福岡でバスに乗ることは、「移動の一手段」であることにとどまらず、住む人にとって究極のマイクロツーリズムであり、日常旅でありローカル旅。
知らない駅で降りるとワクワクするのと同じように、一見なんてことないバス停とそのまわりも、視点を変えれば観光資源。
そんな思いから、バス路線探検家 沖浜貴彦が1バス停単位で福岡を切り取っている企画です。
バス路線探検家・沖浜貴彦さんとは?
1972年生まれ・福岡在住。
路線図に描かれた終点を想い、途中の狭い区間を苦心して走るバスに愛を注ぐ変態。
ブログ「ほぼ西鉄バスの旅」を2008年に開設、日々愛を持ってバスを追いかけ続ける。
毎月第二金曜・第四土曜日はバス趣味の現況を共有するサロン「バス路線探検家の会」を運営しています。
2023年には約1,000カ所にも及ぶ西鉄バスの停留場を網羅した『福岡バス停図録』を出版。
「バス停から愛」も今月ついに連載100回目の記事が公開となりました!
連載第100回はこちら▶祝!連載100回目はやはりここ「百道」【福岡市中央区】
沖浜さんからコメントが届いておりますのでご紹介します。
連載の文章、最終的には毎回似たようなテンションに収まっていますが、ものすごく苦労するときと、最後まで一気に書けるときと両極端です。
そんな中、表示回数の多い記事ランキングは、すらすらと綴れた回が並んでいます。
やはり勢いだけで勝負できるバス停を選ぶことが大事ですね。
無理してもよいことはないようで。
ということで、こちらの記事では「バス停から愛」人気記事トップ10をご紹介します!
【第1位】スピッツの歌詞に出てくるバスを想う。「原北中学校前(はらきたちゅうがっこうまえ)」バス停
♪「新しい季節は なぜか切ない日々で 河原の道を 自転車で 走る君を追いかけた」
byスピッツ『ロビンソン』
スピッツのボーカルである草野マサムネさんは福岡市の出身で、この詞に出てくる「河原の道」とは、室見川の河川敷なのだそうです。
写真は国道202号線、小田部大橋から眺めた室見川です。
この河原の道から東へ少し歩いたところにあるのが草野さんの出身校である、原北中学校です。その中学校のそばにあるバス停が、「原北中学校前」バス停なんです。
中学を卒業後、草野さんは城南高校に通われていたので、雨の日などバス通学のときは、202番に乗っていたかもな…などと妄想します。
基本情報
原北中学校前(はらきたちゅうがっこうまえ)
・住所:〒814-0032 福岡県福岡市早良区小田部7丁目10[map]
・天神からの行き方一例:
「天神北(3:フタタ前) (那の津方面)」から、都市高503番 都市高速 愛宕RP室見団地 室住団地経由 野方ゆき に乗車。約20分、350円
【第2位】周囲の変遷に思いを馳せる。「昭代三丁目」バス停【福岡市早良区】
ここにはかつて、国鉄筑肥線の西新駅がありました。いまJR九州グループの施設があるのも、その流れによるものでしょう。バス停の名前も、西新駅前でした。昭和50年台の話です。
今の感覚では、ここが西新?とも思えます。地下鉄の駅や商店街のあるあたりが西新の中心地だとすると、かなり離れています。
筑肥線が廃止となった昭和58年、西暦1983年に、西新駅前バス停は昭代三丁目と改称されました。当初は駅跡を待機場として活用し、ここを起終点とする系統もありました。
現在は「7」「11」「69-1」と、発着する系統も当時と変わり、現在は「7」「11」「69-1」と、発着する系統も当時と変わり、藤崎や姪浜へ直通するようになって、昭代三丁目を終点とするものはありません。
そういう経緯を知らなければ、変哲のない住宅街のようにも見えますが、ここに駅があったのだと教えられると、昔はこの駅前通りを歩いて西新方面に向かった人がたくさんいたのかな、などと景色の見え方も違ってきます。
基本情報
バス停名:昭代三丁目(しょうだいさんちょうめ)
・住所:〒814-0012 福岡県福岡市早良区昭代3丁目7[map]
・天神からの行き方:
「天神警固神社・三越前(六本松方面)」から、普通7番 姪浜駅南口ゆきに乗車。約24分、290円
【第3位】8時間で何する?物流センター前バス停【福岡市東区】
物流センター前、香椎パークポート方面です。地名になじみがないと、地理的に分かりづらいかもしれません。路線としては郊外に向かっています。お隣のバス停が、香椎パークポート終点です。
こちらはバス停周辺の風景です。
コンテナが積まれている先には、アイランドシティの高層マンションが見えています。この景色で、バス停のだいたいの所在地がわかりますよね。
周辺は物流関係の会社や施設ばかりで、お住まいの方が少ないからでしょうか、通勤時間帯に僅かな本数のバスが来るばかりです。日祝日はお休み。
道路の反対側にあるバス停が、天神方面、すなわち都心方面です。
一般的には、郊外から都心方面に通勤して、夜になったら郊外方面に帰宅するのが多数派ですが、ここは逆で、天神方面が帰宅便です。
平日は夕方の17時16分と、18時23分にバスがあります。
朝の2便目が物流センター前に到着するのが8時57分、折り返しのバスで帰ろうとすると、17時過ぎまで8時間19分待たなければいけません。
近くに職場がある人のためのダイヤなのでこれでよいのでしょうが、ただバス路線を体験することだけと目的とした場合、往復利用は非常にハードルの高い設定です。
ぜひどなたかチャレンジしてみてください!
基本情報
バス停名:物流センター前(ぶつりゅうせんたーまえ)
・住所:〒813-0018 福岡県福岡市東区香椎浜ふ頭3丁目2 [map]
・天神からの行き方例:
「天神中央郵便局前(18東向き)」から、香椎パークポート系統 香椎パークポート方面ゆきに乗車。約28分、430円。
【第4位】閉校でバス停はどうなる?「三陽高校前」【福岡市西区】
バス停は三陽「高校」ですが、同じ敷地内に中村三陽中学校も併設されています。その中学校は、今年度からの生徒募集を停止する旨、6月に公式発表されました。高校も来年度から募集停止し、在校生が卒業するタイミングで、中学高校とも閉校になるそうです。
バス停はどうなるのでしょうか。
現状は主に、姪浜駅に向かう「1-7」と、天神方面に向かう「206」の路線があり、平日の帰宅時間帯には、野方を経由して天神方面への「204」系統も走ります。しかし、ここに通学する中高生がいなくなれば、バス停の利用者はきっと大幅に減ります。
とは言っても、三陽高校前と姪浜方面を往来する「1-7」系統は、沿線に生の松原団地などの住宅密集地があり、生の松原団地バス停は、住宅地の真ん中の道路上なので、バスの折り返しも困難ですし、三陽高校前まではバス停ふたつ分の距離しかないので、方向転換の場所として路線が維持され、本数もそう影響を受けない可能性もあります。
閉校によって、そのままなのか、半分になるのか、もっと改変が起こるのか、マニアは常にそういう要らぬことを懸念して生きています。
基本情報
バス停名:三陽高校前(さんようこうこうまえ)
・住所:〒819-0162 福岡県福岡市西区今宿青木 [map]
・天神からの行き方例:
「天神警固神社・三越前(六本松方面)」から、普通206番 西陵高・野方ゆきに乗車。約41分、550円。
https://fukuoka-leapup.jp/tour/202407.34408
【第5位】昭和バスと西鉄バスを同時に堪能できる「マリノアシティ」バス停
福岡市内の人にとって昭和バスは、糸島市や唐津・伊万里への遠距離速達路線の印象が強いですが、西区の一部で路線バスも運行しています。
そして西鉄バスと昭和バスとの並ぶ姿を見られるのが、マリノアシティ福岡。
ここの昭和バス路線は、姪浜駅との往復です。かつては天神や博多への直行も昭和バスが担っていましたが、今は西鉄バスが担当し、棲み分けを図っています。
バスマニアは、バスに乗ったりバスを撮ったり、あとバス停や時刻を確認したりするのが主目的ですので、こういう商業施設に来ても中に入らないことしばしば(笑)。
しかし、マリノアで昭和バスを堪能するためには、必ず行かなければならない場所があります。それがこちら。
じゃん!先ほどの写真から向かって左側にこんなものが置いてあるんです。
ここでクーポンをもらうと、姪浜駅までの昭和バス通常運賃160円なのが、なんと50円!他に類を見ない割引率69%!!
もともとマリノアシティ福岡と姪浜駅間の運賃は100円で、その半額クーポンとして運用されていました。
最近、通常運賃は値上げになったのですが、クーポン利用時の割引運賃は据え置きとなったため、お得感が増しています。
このクーポン、姪浜駅からマリノアへの方向も使えますが、姪浜駅には配布していないので、次回に備えて確保しておくことがオススメです。
※現在はマリノアシティ閉館にともない、バスのダイヤが変更になっておりますのでご注意ください。
基本情報
・バス停名:マリノアシティ福岡(まりのあしてぃふくおか)
・住所:〒819-0001 福岡県福岡市西区小戸2丁目10[map]
・天神からの行き方例:「天神北:3(フタタ前)那津方面」から333番に乗車、約29分、380円
・姪浜からの行き方例:地下鉄姪浜駅北口から徒歩2分 姪浜(2)バス停からマリノアシティ福岡行きへ乗車、約8分、160円(←クーポンを使えば50円に!)
【第6位】大楠・野間・高宮、仙道。共通点はスラムダンクと「福岡のバス停」
福岡市内には、スラムダンクに登場する大楠・野間・高宮、三人衆の名前に関するバス停があります。
「大楠」だけはズバリ名前そのもののバス停ですが、「野間」と「高宮」はありません。けれども「野間四角」や「西鉄高宮駅」などといったように、駅前とか四つ角とか○丁目とかいろいろあります。
そして仙道!
こちらは福岡市早良区の郊外にあり、前掲の大楠・野間・高宮とは大きく離れています。けれども仙道という地名や苗字は珍しく、主役である湘北高校のライバルとして登場する仙道彰の名前と、ここが関係あるのでは、と妄想は膨らみます。
スラムダンクの聖地のひとつになることを期待していますが、そもそも今を生きている皆さんにどれくらいの比率で「スラムダンク」が刺さるのか、昭和47年生まれのアラフィフ当方には全く不明です。
基本情報
・バス停名:仙道(せんどう)
・住所:〒811-1123 福岡県福岡市早良区内野4丁目14 [map]
・天神からの行き方一例:
「天神新天町入口(11) (11 西新方面)」から 特快3番 脇山小学校前 西新・早良高校行きに乗車、約50分、580円
【第7位】通るたびつい反応してしまう名前。「御手洗」バス停【福岡県糟屋郡】
筆者はもう50才を過ぎておりますので、小学生のように「おてあらいだー!」と騒ぐことは恥ずかしく、また「みたらいと読むのだ」ということも存じておりますが、それでも通るたびに反応します、御手洗に。
きっとこれは本能的なものではなく、当方が大人になれていないのが原因かと。
そもそも御手洗の文字は「御手を洗う」のであって、どこにも「用を足す」「トイレ」を意味する文字は含まれていません。神社の境内などで手を洗う場所を御手洗と呼ぶらしいです。
御手洗は、現役で使用されている地名です。
地名が特定の何かと同じ場合、今のご時世では検索が面倒だろうなと思います。
例えば姪浜で近くのコンビニを探す場合、「コンビニ 姪浜」と入力するわけですが、「コンビニ 御手洗」では違うものが混ざりそうです。
実際にやってみたら、意外と「みたらし団子」の関連項目が出てきました。
基本情報
バス停名:御手洗(みたらい)
・住所:〒811-2206 福岡県糟屋郡志免町御手洗2丁目10[map]
・天神からの行き方例:
「天神日銀前(19)(19Bのりば)」から、普通34番 原田橋ゆきに乗車。約23分、290円。
【第8位】同じ名前の6つのバス停が集合。「清水町」バス停【福岡市南区】
福岡市南区には6つの「清水町(しみずまち)」バス停があります。図のようにそれぞれ行き先が異なります。
清水町からどこかに行きたい場合、もしくは清水町に行きたい場合…
バスナビアプリで検索して、特定のバス停を選択しようとしても、清水町がたくさん出てきて絶望します(笑)。
しかも方面表記がバス停に書かれているものと微妙に違うのがまた難易度を上げます。分からない時はいちばん上の赤い旗のマーク清水町地区を選ぶのが無難です。
たくさんの清水町バス停、何かのついでにでもご確認ください。
【第9位】取材のために2日間通ったバス停について。「自由ヶ丘南二丁目」【福岡県宗像市】
取材のために2日間通ったバス停…それは、宗像市にある住宅街のバス停、自由ヶ丘南二丁目です。
平日の赤間駅南口ゆきは、こんな本数です。1時間に3本走る時間帯もあります。
土日祝日は、平日より本数が減りますが、まあ1時間に1本あれば、予定を調整しながら使える範囲内だと思われます。
いろいろ気になる点があるバス停ですが…1本だけ別枠に書かれる赤間駅南口の話をします。
赤間駅南口からの循環線は、「西鉄バス宗像」という西鉄グループの子会社が運行を担当しています。ところが権利関係の管理都合で、朝の6時45分発だけは、西鉄バス本体の運行という体裁になっています。
普段のバスは、スマートループと呼ばれる定番色と赤がありますが、どちらにせよ路線型の車両が来るのに対して、朝の1本だけは、天神方面への急行バスに使われている仕様のバスが来ます。
道の反対側は、天神方面。
以前は多くの本数が天神まで直行する旺盛な路線だったのですが、たびたび本数が減らされ、さらには今年の春には経路変更も起こり、現状は、日祝日の朝に走る1本だけになりました。
しかし稀少な系統に惹かれるマニアとしては、こちらも撮りたくなります。平日1本の「8赤間営業所」と、日祝日1本の「急行天神」が一緒に走る日はありませんので、この記事は少なくとも2度の訪問を経ずには書けません。
仕事なのか趣味なのか境界線が曖昧な中での連載だからこそ、過剰とも思える熱意と手間を込めて臨んでおります(笑)。
基本情報
バス停名:自由ヶ丘南二丁目(じゆうがおかみなみにちょうめ)
・住所:〒811-4156 福岡県宗像市自由ヶ丘南2丁目 [map]
・天神からの行き方例:
【STEP1】「天神日銀前(19)(19Aのりば)」から急行 日赤看護大学ゆきに乗車し、「森林都市(バイパス)(赤間方面)で下車。約59分、1,000円。
【STEP2】「自由ケ丘一丁目(自由ケ丘南三丁目方面)」まで徒歩で移動。約2分。
【STEP3】「自由ケ丘一丁目(自由ケ丘南三丁目方面)」から、普通8-1 自由ケ丘南西通りゆきに乗車。約7分、210円。
【第10位】バスは道をどっちに曲がる?「小田部一丁目」バス停【福岡市早良区】
福岡市早良区、国道202号線上の、小田部一丁目。
方面表示は、室住団地、三陽高校・野方方面としか書かれていませんが、202、203、204、205、206、214、2-3と多彩な系統が発着します。
その中でも、昭和50年代初頭の路線開設時から、先の小田部交差点で、「202室見団地」は右折、「203室住団地/野方」は左折、「204野方/三陽高校」は直進、と3方向分岐で連番が美しく割り振られています。
東西と南北の道路が交差する十字路において、車両の走り方は、
直進が、北→南/南→北と東→西/西→東の4種類
右左折が、東→北/北→東、南→東/東→南、西→南/南→西、北→西/西→北の8種類です。
文字にすると却ってややこしくなりますが、東西南北4方向からやってきて、それぞれに直進と右折と左折という3つの選択肢があるので、4×3で12種類の走行パターンがあることになります。
小田部一丁目最寄りの小田部交差点では、前述の通り東からやってきて、北・南・西の3方向に分岐しますので、戻り便も含めて、6方向の走り方があり、
加えて、小田部一丁目バス停は経由しないのですが、西~南をつなぐ「8」という系統もあるため、これを足すと8方向になります。
無いのは、北~南と北~西の4方向だけですね。郊外の交差点で、バス停もひと組2本しかない中、小田部一丁目は健闘しています。
基本情報
バス停名:小田部一丁目(こたべいっちょうめ)
・住所:〒814-0032 福岡県福岡市早良区小田部2丁目6[map]
・天神からの行き方:
「天神警固神社・三越前(六本松方面)」から、普通204番 野方ゆきに乗車。約26分、400円
次は200回記念を目指して…!