551万人が暮らす「北九州・福岡大都市圏」を知っていますか?10市7町が相互補完し、魅力を作る福岡都市圏の姿

〝住みやすさ〟や〝元気の良さ〟などで定評のある福岡市は長年、周辺自治体との広域的な行政に取り組んできました。福岡市をはじめ10市7町で構成する福岡都市圏では観光資源や工業立地などを相互に補完しながら、魅力を高めています。今回、福岡都市圏についてスポットライトを当ててみます。

11の大都市圏中4番目の北九州・福岡大都市圏、その人口は551万人


出所:『令和2年国勢調査』(総務省統計局)

関東大都市圏3,803万人、近畿大都市圏1,917万人、中京大都市圏919万人、北九州・福岡大都市圏551万人、静岡・浜松大都市圏280万人、札幌大都市圏264万人、仙台大都市圏223万人、広島大都市圏208万人……。

日本に住んでいるすべての人と世帯を対象に5年ごとに実施する統計調査が国勢調査だ。
総務省統計局では、国勢調査の統計上の地域区分として『大都市圏』と『都市圏』を定める。

大都市圏は東京都特別区部と政令指定都市を中心市にして、社会的・経済的につながる周辺市町村を1つのエリアとする。
一方、大都市圏に含まれない人口50万以上の都市を中心市にしたのが都市圏だ。
なお、中心市が近接している場合は統合して、一つの大都市圏とする。

日本で最も人口の多い大都市圏は、2020年国勢調査の結果によると、東京都特別区部、横浜市、川崎市、さいたま市、千葉市、相模原市を中心市とする関東大都市圏だ。
3,803万人が住む関東大都市圏は、総人口の30.2%を占める。
次いで多い近畿大都市圏は、大阪市、神戸市、京都市、堺市を中心市として同15.2%。
さらに中京大都市圏(中心市:名古屋市)の同7.3%が続く。

関東、近畿、中京の3大都市圏に次ぐ大都市圏が、北九州市と福岡市を中心市とする北九州・福岡大都市圏だ。
551万人が暮らす北九州・福岡大都市圏は、総人口比で4.4%を占める
その後に続く静岡・浜松、札幌、仙台,広島の各大都市圏がいずれも200万人台であり、北九州・福岡大都市圏の存在感は抜きん出ている

北九州・福岡大都市圏の売上高は38兆円、福岡市中央区・博多区は1平方㌔あたり3,000億円弱

ヒト、モノ、カネ、ビジネスの行き交う経済活動は、県境や市境に縛られない。

日本にある、すべての事業所と企業を対象に調査する『経済センサス』は、〝経済の国勢調査〟ともいわれる。
事実、経済センサスで作成された経済構造統計は、国勢調査(国勢統計)、国民経済計算と共に国の基幹統計だ。

経済センサスには、事業所や企業の基本的構造を明らかにする『経済センサス‐基礎調査』と、事業所や企業の経済活動を明らかにする『経済センサス‐活動調査』がある。

総務省統計局は2014年6月、『統計トピックス』No.83「経済センサスと統計地図(大都市圏の売上高)」で2012年経済センサス-活動調査の結果を基に民営事業所の売上(収入)金額を大都市圏別に統計地図で表した。

大都市圏の売上高において関東大都市圏(396兆円)、近畿大都市圏(156兆円)、中京大都市圏(99兆円)に次ぐのが、売上高38兆円の北九州・福岡都市圏だった
北九州・福岡大都市圏のうち、福岡市中央区と同博多区の売上高は1平方㌔あたり3000億円弱。
また、東区、城南区、南区でも同100~500億円を記録する。

一方、北九州市では、小倉北区、若松区、戸畑区、八幡東区、八幡西区が同100~500億円だった。
このほか同100~500億円だった都市としては、春日市、大野城市、粕屋町、志免町、新宮町、苅田町、佐賀県鳥栖市の3市4町を数えた。


出典:『統計トピックスNo.83  経済センサスと統計地図(大都市圏の売上高)』


出典:『統計トピックスNo.83  経済センサスと統計地図(大都市圏の売上高)』

北九州・福岡大都市圏の柱である、福岡都市圏、北九州都市圏域とは何か

直線距離で55kmの位置にある福岡市と北九州市は総務省の統計上、一つの大都市圏の中心市とされる。
しかし、実態として福岡都市圏と北九州都市圏域は、それぞれに独立した都市圏である。

10市7町で構成される福岡都市圏

福岡都市圏は、福岡市をはじめ筑紫野市、春日市、大野城市、太宰府市、那珂川市、古賀市、宗像市、福津市、糸島市、宇美町、篠栗町、志免町、須恵町、新宮町、久山町、粕屋町の10市7町で構成する

全国の都市圏で唯一、一級河川が無かったのが福岡都市圏だった。
このため、水資源の確保に向けて1973年、福岡都市圏の自治体で福岡地区水道企業団を発足。
そして、圏域外の一級河川である筑後川からの導水を始めた。
さらに海水淡水化施設の建設やダム建設事業へも参画してきた。

加えて、福岡市が管理する福岡競艇での共同開催による競艇収益を独自財源に福岡都市圏全域に効果をもたらす事業も手掛けてきた。
これらの事業実施については、10市7町で『福岡都市圏広域行政事業組合』を設けて取り組んでいる。

また、『ふくおか都市圏まちづくりプラン』(第6次広域行政計画)の策定・推進、国や福岡県への提言、福岡都市圏の図書館や体育館などの広域相互利用などの企画部門は、『福岡都市圏広域行政推進協議会』が担う。

6市12町で構成される「北九州都市圏域」

一方、国が『まち・ひと・しごと創生総合戦略』で打ち出した『連携中枢都市圏構想』の下、2016年4月に連携中枢都市圏『北九州都市圏域』が誕生した。
現在、北九州市をはじめ、直方市、行橋市、豊前市、中間市、宮若市、芦屋町、水巻町、岡垣町、遠賀町、小竹町、鞍手町、香春町、苅田町、みやこ町、上毛町、築上町、吉富町の6市12町で構成する


出典:福岡都市圏ホームページ『福岡都市圏とは 構成市町』

「暮らしやすく、安全安心で、魅力と活力のある福岡都市圏」であり続ける


福岡市総務企画局企画調整部の若松信隆企画課長

〝博多の奥座敷〟とも呼ばれる二日市温泉のある筑紫野市。
太宰府天満宮や政庁跡、水城などの史跡に恵まれた太宰府市。
大規模な工業団地をもつ筑紫野市、古賀市、糸島市、宇美町、篠栗町、須恵町、新宮町、久山町、粕屋町。
これらの市町は福岡市と経済・生活面で一体的につながり、ベットタウンとしての役割も担う。

福岡都市圏における取り組みについて、福岡市企画調整部の若松信隆企画課長は、次のように語る。

福岡都市圏では、水問題や交通問題など、都市圏共通の課題解決や住民サービスの向上に資する取り組みを共同で進めてきました。
社会経済情勢の大きな変化に的確に対応しながら、九州をけん引する都市圏として、『ふくおか都市圏まちづくりプラン』に基づき、17市町の緊密な連携と協調のもと、将来にわたって「暮らしやすく、安全安心で、魅力と活力のある福岡都市圏」であり続けるために、今後も取り組みを進めていきます。

福岡都市圏の人口動向、別れてくる地域ごとの明暗

福岡都市圏は、福岡市の発展と共に人口を伸ばしてきた経緯がある。
2017年12月末に252万人弱だった福岡都市圏の人口は、5年後の2022年12月末には2.75%増の259万人弱まで増やしている。
三大都市圏に次ぐ存在である福岡都市圏には、福岡県内をはじめ広く九州一円からヒトが集まって来ている。

しかし、福岡市だけを見ると、福岡都市圏の周辺市町との間で転出超過状態が続く。
つまり、福岡市へヒトが集まって来る一方、一定期間を福岡市で暮らした後に、福岡市の周辺市町へ移り住み、通勤・通学で福岡市に向かうケースも多いということだ。

福岡市をはじめ12市町は〝令和の世〟になっても人口を伸ばしているが、令和の発祥地・太宰府市など5市町は、人口を減らしている周辺市町もでてきている。
福岡都市圏の人口は増え続けるものの、自治体の取り組み如何で、周辺市町の中で人口の増減に明暗が分かれる可能性もある。
 

出典:『まち・ひと・しごと創生 福岡市 人口ビジョン(改訂版)にかかるデータの推移』(2022年3月)

今後さらに求められる都市圏での一体的な取り組み

近年の都市政策においては、都市の集積のメリットを維持・発揮させるために、都市圏レベルで都市機能の高度化を図る取組が大きな柱の一つとなっている━━━。 
国土交通省の『デジタル化の急速な進展やニューノーマルに対応した都市政策のあり方検討会』は2021年4月、中間とりまとめ報告書で都市圏の意義を言及した。

今後、都市間競争が国境を超えて激しさを増していく中、都市は都市圏と一体的に取り組んでいくことが、さらに求められる。
長年、広域連携に取り組んできた福岡市は、都市圏との補完関係を生かしながら、〝住みやすさ〟〝活力〟〝魅力〟をより極めていくことが求められると考える。

【参照サイト】
『令和2年国勢調査』人口等基本集計(主な内容:男女・年齢・配偶関係,世帯の構成,住居の状態,母子・父子世帯,国籍など)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200521&tstat=000001136464

都市圏定義(総務省)
https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/kekka/pdf/ug_03.pdf

北九州・福岡大都市圏
https://www.stat.go.jp/data/chiri/map/c_koku/daitoshi/pdf/2020_kitakyushufukuoka.pdf

統計トピックスNo.83  経済センサスと統計地図(大都市圏の売上高) 
https://www.stat.go.jp/data/e-census/topics/topi83/pdf/topics83.pdf

福岡都市圏における連携の取り組みと福岡市の役割
https://www.soumu.go.jp/main_content/000249150.pdf

福岡都市圏ホームページ『福岡都市圏とは 構成市町』
https://www.fukuoka-tosiken.jp/

連携中枢都市圏「北九州都市圏域」について
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/shisei/menu05_00320.html

国土交通省『デジタル化の急速な進展やニューノーマルに対応した都市政策のあり方検討会』中間とりまとめ報告書(2021年4月)
https://www.mlit.go.jp/toshi/machi/content/001398793.pdf

『まち・ひと・しごと創生 福岡市 人口ビジョン(改訂版)にかかるデータの推移』2022年3月福岡市
https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/74837/1/jinkouvison.pdf?20221111145707

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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