前回の「コテンラジオ台本(歴史)チームの膨大な作業工程に見る、「学び」の深淵」では数十冊に渡るインプットをハイスピードに進める勉強術をご紹介しました。
今回は、フルリモート・少数精鋭・兼務当たり前という状況でリスナー16万人を抱えるコテンラジオを運営する裏方の、妥協なき仕事術をご紹介できればと思います!
まずは「コテン・深井さんの愛弟子:草野さん登場!世界史データベース事業は“人の心に豊かさをもたらす”、その真意とは!?」でフクリパ初登場となった草野陽夏さん。
草野陽夏さん
実は草野さんは深井さんの弟子を卒業後、世界史データベース事業のプロダクトマネージャーを任されながらも、コテンラジオのディレクションもされているそうなんです!
そう聞くと「なんか大変そう!」と思いますが、具体的にはどのようなことをされているのか、他では聞けないお話をガッツリ聞いてみました。
鬼の工数!コテンラジオのディレクションを通して見る、草野さん流の仕事術
草野
スタートアップやベンチャー企業にはよくあるお話ですが、これまでにないビジネスを創出するというその特性上、仕事内容は日進月歩。少しずつ深井さんの新弟子に引き継ぎながら、現状はコテンラジオのディレクションを草野さんが担当しているそうです。
ディレクションの具体的な仕事内容は?
では、具体的にはどんな仕事があるのでしょうか?
草野
コテンラジオを配信するまで工程は全部で18ほど。次回シーズン・次次回シーズン・Spotifyオリジナルなど、3つ以上のコンテンツが同時並行で進行しています。
具体的な工程としては、
●新シーズンのテーマ決め から始まり、
●書籍手配
●勉強・台本制作
●収録
●タイトル決め
●サムネイル作成
●編集
●音源チェック
●サポーター特典のアーリーアクセス音源作成
●YouTube配信準備 などですね。
制作過程での方針変更も日常茶飯事で、例えば直近の「則天武后」以降の配信スケジュールは何度も変更が入り、その度に検討と修正を重ねたので少し大変でした。
見える化して適任者に手放す
常時3つのコンテンツが走り、13人がフルリモートで関わるプロジェクトのディレクションは、なかなかに難易度が高そうです。どのように管理されているのでしょうか。
草野
全員が必ずBacklogを更新するようにして常にBacklogが正しい状態を作れているので、全員遠隔でも成立していますね。
ただ最初からこうだったわけではなく、少し前までは全て個々人の「力技」で回していました。なんとかなってはいましたが、自転車操業感は否めず、自分自身も頑張ってなんとかするということが頻発していましたね。
今は全工程を見える化して、各工程の責任を定義し適任者に任せるようにしています。各自が次工程を意識して動いてくれるおかげでマイクロマネジメントが不要になりました。
例えば、以前は自分が担当していた勉強に必要な書籍の手配も、ディオゲネスチーム(歴史チームの室越さん・橋本さんたち)に任せました。「本が一番必要なのはディオゲネスだよな」と思ったんです。そうやって、一つ一つの工程を最適化して、手放しました。
これは広くビジネスマンが学べる部分かもしれません。「あるといいな」と思いながら、なかなか効率化に時間をかけられないことって、皆さんありませんか?
特にベンチャーやスタートアップは任せることができない人が多い傾向にあります。ジェネラリストが多いので、全体把握は早いのですが、「最適解はこっちですね」と広報の下西さんも言います。
下西
草野
リスナー目線が命
ちなみにコテンラジオのスケジューリングが仕組化される前からうまくまわっていた理由として、草野さんはこんなことも語ってくれました。
草野
下西
コテンにとって、コテンラジオのリスナーの存在は本当に大きいのだと思います。サポーター制度はあるものの、まだ黒字化には至っていない中で、どうしてここまでの工数をかけてコンテンツ制作ができるのだろうか?とも思えてきます。
草野
リスナー=お客様ではないけれども、コテンにとっては、間違いなくリスナーさんが生命線です。ウケは狙わないけれども大事にするというバランスを保とうとしています。
下西
コテンを応援してくださる個人の方々はもちろん、投資家さんや協業してくださる企業さんもコテンラジオがきっかけという方がほとんどですから。
こうして聞いていくと、想像以上の工数をかけて世界史をコンテンツ化し、その本気度がリスナーに届いているという現象は、世界史のデータベース化が実現した際に起きる現象の先取りなのだな、とよくわかります。
そしてここまでの活動が、決して綿密に計画されたものではなく、一筋の理念のもとに、多くのリソースを集め、日々変更改善を繰り返し、拡がりながら成長している。その成果物として、我々はコテンラジオというおもしろいコンテンツを享受することができているんですね。
草野
深井から権限移譲され、自分が最終意思決定権を持っている業務も多くなりました。
「わかんないけど、自分がやらなきゃ進まない」という日々です。
ただ、コテンラジオのスケジューリングの判断にかける工数が減ったので、他の判断にまわせるようになったというのはあるかなと思います。
理念経営と権限移譲にしっかりと食らいつきながら、草野さんはコテンの中心メンバーとしてどんどん成長されているのだと、このコテンリレー取材の数か月の間ですらも感動するほどのお話でした。
では続いて、これまたなかなか伺うことのできない、コテンラジオの広報まわりについて、下西さんに聞いてみましょう。
コテンとリスナー、企業の間で揺れ動く「広報」という仕事
時差15時間という環境で、どのように「広報」という仕事をされているのでしょうか。
優先順位と判断領域の拡大で、リモート広報業務を遂行
下西
毎日深井と1on1がありますが、他の会議や時差の関係で、直接話して相談できる時間は週に15分くらいです。
陽夏と同様に権限委譲されているため、ほぼ私が自分で決断します。ただ取材も企業からのお問合せも様々で、悩むことも多いですね…。直接話す以外にもSlackで常時コミュニケーションはとっていますが、文字だと伝わりづらいことも多いため、限られた時間でいかに優先順位をつけて確認するか、自分で判断できる領域を増やすかはいつも意識しています。
取材やコラボのポイントは“ステークホルダーにとって良いものが創れるか”
直接相談できるのは15分!その中で次々に来る問い合わせに対応するのは大変そうです。取材やコラボレーションの可否はどのような基準で判断されているのでしょうか?
下西
全てお受けしたい気持ちでいっぱいなのですが、そうすると本業である世界史データベースの開発に割く時間がなくなってしまうため、一定の基準は設けています。
まずお互いにとって良いものが創れるか、が大前提としてあります。お互いというのは先方とコテンだけではなく、コンテンツの読者や両社のステークホルダーも含みます。
たとえば、既に他で話していることを繰り返すだけでは読者は面白くないと思うので、新たな情報や観点でお話しできるものにしたいと思っています。またコテンラジオやコテンの知見が十分に活かせないことは難しいかなと思っています。
よく「●●の歴史」について講演してほしい、といったご依頼をいただくのですが、コテンラジオで過去に取り扱ったテーマ以外だと講演に値するほどの知見があるとは言い難く、十分なクオリティでお届けできないと思っています。実際に過去のテーマで講演した際は、こちらも自信を持ってお届けでき、参加者の方々にも満足していただけてとてもよかったです。
あとはこちらも最善を尽くすので、一緒に同じ目標に向かって信頼関係を築ける方とお仕事したいですね。その前提として、依頼いただく方の取り組み自体にコテンとして賛同できるかも大切にしています。
広報というお立場ですと、経営面を考えて「この広告は受けておいたほうが美味しい」みたいなこともありそうに思うのですが、揺らがないのでしょうか?
下西
実にシンプルな答えですね。自社コンテンツを利用者目線で愛し続けられるというのは、広報としてとても大事なことだなと感じます。
リスナーメリットとメンバーへの負荷のバランス
しかし、そうやって決まったコラボでも、下西さんにとって悩ましいことはあるようです。
下西
みんな「受けるからには良いものにしたい」という思いを共通で持っているのですごく助かっていますが、そこに甘えず、いかに関係者の工数を最小限にできるかは工夫しています。
リスナーへのメリットも考えつつ、メンバーにも気を遣いながらの広報活動。コテンならではのエピソードもありますが、広く世の中で広報をされている方々は、「うんうん」と頷ける部分も多いのではないでしょうか。
ここまで草野さん、下西さんが担当されている「運営チーム」としてのコテンラジオの裏側を伺ってきました。
それぞれの個別具体的な仕事内容にも多くのヒントがありましたが、せっかくなので、コテンで働くお二人が、この膨大な業務量をどうやってまわしているのかについても聞いてみたいと思います。
そんな二人に聞いてみた!仕事を効率化するために、あえてここには時間をかけている!
まず、仕事を効率化することの重要性はスタートアップであれば特に感じられていると思いますが、そんな中でも、「あえてここには時間をかけている!」というこだわりがあるのか聞いてみました。
草野
できちゃうからやるんじゃなく、できるからこそ仕組化しないと属人化してしまうんだなと、引継ぎながら感じています。
み…耳が痛い!!!
下西
最初にしっかり関係を築くことで、お互いにとって良い結果につながると感じています。
そう言われてみてハッとしました。
フクリパ編集部も、下西さんのコミュニケーションにしっかり巻き込まれ(笑)、コテンの魅力をどんな企画や切り口で届ければ拡がるのかを一緒に考えるようになっています。
おそるべし下西マジック!これからも、フクリパはコテンを全力で応援させて頂きます!
コテンはもちろんコテンラジオを陰で支える二人に聞く、「一見小さな仕事の大切さ」
コテンは各人の才能を見極め、才能の発動条件を整えながら常に業務内容の振りなおしや最適化、権限移譲を繰り返していますが、とはいえ多くの企業と同じく、その中には誰にでもできるような、作業的な一見すると小さな仕事もあると思います。
最後に、仕事を効率化するうえで、あえて大事にしている「小さな仕事」への想いを聞いてみたいと思います。
草野
深井がよく「仕事をこなすな。思考がまわらなくなって雑になる」と言うんですね。小さな仕事にも意味を見出しながらやることは大切です。
具体例でいくと、確定した工程をカレンダーに落とし込むにしても、「こなす」だと、ただ単に入力するだけじゃないですか。でも、入力するときに「ほんとにこれでいけるのか?」と前提を疑うんです。すると、ミスに気づくことがあります。
下西
私にとって大事な小さな仕事は、原稿やプレスリリースの作成・編集ですかね。
タイミングによっては5つほど抱えているときがあります。工数をかけすぎるのも会社としてはよくないのですが、この構成で良いのか?この表現でよいのか?はよく考えています。原稿もプレスリリースも会社としての財産になっていくと思っているので、今後のコテンのストーリーを紡いでいくイメージで取り組んでいます。
それはメンバーにも同じくで、「この案件はこう繋がっていくから」、という背景と未来を丁寧に伝えることで、彼らの動きも変わってきます。
とても小さなことなんですけど、ルーティンとして「こなす」のと、そこに意思を持つことの違いは大きいなと日々感じています。
***
今回のインタビューをうけて、二人の才能の発動条件が素晴らしいなと、改めて佐野さんの回を読みなおしました。
佐野さん曰く、「才能は自覚するのが大事」なのだそうです(草野さん談)。
下西さんも
「実際、私たちはたかちん(佐野さん)にモニタリングされていると思います。生きた研究材料として、ありがたくその結果を享受しています。毎日「自分最高じゃん!」と思いながら仕事ができています。」
と答えてくれました。
それぞれの才能を尊重し、お互いに責任の所在を明確化し、自分のすべきことにしっかりと取り組むことができる。そうやって草野さんと下西さんが手掛けているコテンラジオの運営には、「仕事」のエッセンスが詰まっていることがよくわかりました。
歴史的な知識はもちろんのこと、組織運営としても学びになるコテンが届ける「コテンラジオ」を今日も楽しみつつ、世界史データベースの完成を祈りたいと思います。
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