コテンリレー #01

理念経営が自律性の高い社員を呼ぶ。リモートが基本な株式会社コテンの働き方を、深井社長に聞いてみた!

コテンラジオで人気の「株式会社コテン」。コンテンツとしてのおもしろさだけでなく、会社の取り組みや理念の一つひとつにもNew Typeのビジネスのヒントが詰まっています。今月から、そんな「株式会社コテン」の魅力をリレー形式で大学生ライターの砂畑君が発掘していきます。フクリパでのライター経験を経て「Navi-raz|ナビラズ」という学生向けのメディアを創業した彼ならではの視点で迫ります。ぜひシリーズ展開をお楽しみに!

福岡のみならず日本各地で、サミットやウェビナーに登壇。
「歴史の学び」を用いた視点と「経営者」としての視点を生かし、一口には説明できないご活躍をされている深井龍之介さん。
 
深井さんが代表を務める株式会社コテンは「世界史のデータベースを作っている」企業。
取材前に「どんな会社だろう?」とリサーチをしていると、どうやらコテンさんは「フルリモート」で業務を遂行していることが発覚。
 会社に関わるメンバーが別々の場所で働いているということは、コロナウイルス感染拡大を皮切りに、時代が我々に求めたスキル「リモートワーク」が必須なはず。
 ということで、今回は「コテンのリモートワーク」について、深井さんにおうかがいしていきたいと思います。
 
株式会社コテンさんについて詳しく知りたい方はこちらの記事をまずはチェックしてみてください。


様々なコトを“アキラメタ”からこそわかる、新しい歴史のとらえ方!株式会社コテンが目指す、New Typeの「株式会社」とは?

株式会社コテンがリモートワークを始めたきっかけ。

深井さん 

まず前提として理解していただきたいのは、これから話すことは『リモートワーク』に関する内容だという事です。『在宅ワーク』とは違います


 
と深井さんは説明してくださいました。
 
『在宅ワーク』というのは、文字通り「自宅で業務を遂行すること」です。なので、これによって生じる課題というのは、例えば「同居人が画面に写ってしまう」とか「生活音が聞こえてしまう」というようなもの。
 
今回、深井さんに話していただく『リモート』というのはもちろん『remote』が語源。
物理的距離が離れていることを指します。つまり、メンバー同士が隔たれた環境で仕事をするということです。


株式会社コテン代表取締役社長 深井龍之介さん

―コテンさんがリモートワークを始めたきっかけはどこにあったのでしょうか?
 
深井さん 

まず、会社設立時からリモートワークだったわけではなく、歴史に関わるプロジェクトが始まってからですね。なので2018、2019年あたりからです。そもそも『世界史のデータベース』を作る時に、日本人だけで作業を進めるというのは歪なんです。複数の国の方から知識をいただいて、それを集結させて作るものなので、リモートで働くことは必須である仕事という認識でした


 
世界史のデータベース構築は、コロナウイルス感染拡大前からリモートワークというスキルを求められているご職業ということでした。
 もちろん現在では様々な分野で、リモートワークを導入している企業があります。
 そんな中で「新しい働き方」に対しては賛否両論というのが事実。
 
すでに2年以上のリモートワークのご経験がある深井さんは、「新しい働き方」についてどうお考えなんでしょうか?
 「それぞれの意見に対して意見を持っているので、個別に聞いていただけたらお答えします」ということでしたので、僕が気になることについてうかがってみました。
 
まずはコミュニケーションについて。
 実際、僕も東京の企業でインターンシップを始めて8ヶ月が経ちます。
 言うまでもなくリモートワークが前提ですが、その中でコミュニケーションがとりにくいという意見は持っていました。
 深井さんは、この意見に対してどうお考えなのでしょうか?
 
深井さん 

コミュニケーションがとりにくい、というのはその通りだと思いますね。特に、雑談に分類されるコミュニケーションをとることが難しいと思います。しかし、この事実に対しては企業がしっかりと対策をとることで解決できます。結局、リモート・コミュニケーションとリアル・コミュニケーションについてはそれぞれメリット、デメリットがあります。それらを考慮したうえで、自分たちの事業に最適な手段を選べば良いというのが僕の意見です。特にその点については感情を入れずに、極端に白か黒かを付けるのではなく、最適解を選ぶことがいいのではないかと思います


 

―それぞれのメリット、デメリットの中で、特に違いがある点はどこでしょうか?
 
深井さん 

業務的なコミュニケーションに関しては、チャットツールで十分なんです。ただ、人間もあくまで動物なわけですから、リアルコミュニケーションをとることで心を通わせるものなんです。古今東西の文化を見ていても、リアルに会うことで高揚する事象というものは多いですから


 

―リアルでコミュニケーションをとることに価値を感じている深井さんですが、業務についてはリモート中心。その点に関して深井さんが対策していることはあるのでしょうか?
 
深井さん 

リモート・コミュニケーションとしてうちの会社があげられるのは、テキストコミュニケーションとzoomコミュニケーションの2つです。そして、それぞれを上手にこなすにはスキルが必要なんです。特にテキストでのコミュニケーションについては、スキルが文字に起こされて伝わってしまいます。

そのスキルに関しては人それぞれですから、それを補うために、毎日社員と1on1のzoomコミュニケーションをするようにしています。人間っていうのは不思議なもので、会話の頻度が減ると『よそよそしく』なるものです。伝えるべきことを伝えにくい関係性が自然と形成されてしまったり、ちょっとしたテキストのニュアンスが相手に対して大きな影響を与えてしまったりします。それを補填するための心理的安全性を高める取り組みとして、毎日欠かさず1on1ミーティングを行っています


 
確かに、そのような経験が僕にもあります。上司から絵文字のない淡々と書かれたテキストが送られてくると、「あれ?怒ってるのかな?」と感じることがあります。
 
これは絵文字がついているから安心、語尾が優しいから安心、というわけではなく、face to faceのコミュニケーションの頻度が少ないと起きてしまう現象ということだったんです。

人間の習性を理解して働くということ。

ここまでの深井さんのお話の中で、度々口にされる「人間は動物だから」というワード。
 詳しくうかがってみました。
 
深井さん 

人間は動物だから、と話すと『馬鹿にしている』と言われそうですが、そういうわけではないんです。実際、以前は僕も自分のことを、論理的思考を持つ人間だと認識していました。

しかし、20代後半の時に気がついたんです。自分含め、人間という動物は感情をベースに生きているということに。それからは人間の習性を理解して働くことを心がけました。猫が高い場所にいると安心するように、人間にも各所に習性というものがあるんです


 
自分はロジカルな人間であるという自覚を持っていた僕は、ヒヤッとしました。
 ただ、お話の続きを聞いて深く納得。
 
深井さん 

人間というのは、動物ではありますが、理論で感情を語ることができます。感情に後付けして、感情をベースにした理論を付属させることができるから、『ロジカルな人』という言葉は成り立つんです。だからこそ、人間の習性を理解したうえで、それに合わせた対策を講じることが重要です。

なので、先に話したようにリモートワークにおいて社員とウェットなコミュニケーションをとろうと思ったら、『face to faceコミュニケーションの頻度が落ちるとよそよそしくなる』という人間の習性に対して、毎日1on1ミーティングをするという対策を打てるというわけです


1on1ミーティングの様子。お二人の表情から、リモートワークでも心の距離がないことがうかがえます。

リモートワークは構成員依存である。

人間の習性を考慮し、リモートとリアルのギャップを埋めている深井さん。
続いては、具体的な組織のマネジメントについておうかがいしていきたいと思います。
 
深井さん 

そもそもうちの会社ではマネジメントというマネジメントは行っていないです。それに代わる要素として『社員の自律性』があります。うちには自律性の高い社員しかいませんので、極端に言えばマネジメントをする必要が無いんです。自らのタスクを洗い出して、自分で進めるべきことを決断できます。

なので、僕がしているのは、社員と合意のうえでミッションを与えることです。あとは、報告のルールを詳細に決めること。業務の始まりと終わりに僕は関わりますが、あとは社員の自律性に任せて業務を遂行してもらっています


 

―自律性の高い方を集めるということは、他の企業さんにとっても重要なことだと思います。そのようなメンバーを集めるためにコテンさんではどのような仕組みを設けているのでしょうか?
 
深井さん 

うちの会社は理念を先行して作っていますから、『うちの会社は儲かりますよ』というような話はしていないんです。この時点でうちの採用に応募して来る方は、主体性が高い人の割合が多いと言えます。もっと言うならば、主体性の高い、自律性の高い人しか来ない仕組みになっているということです


 

―自律性が高い方を集めることはリモートワークにおいて、とても重要であるという認識で良いでしょうか?
 
深井さん 

そうですね。そういう力が低い人がリモートで働くとパフォーマンスは落ちてしまうと思います。リアルで自律性の高い人はリモートでも活躍すると思いますが、その逆はなかなか無いと思います。その点、うちの会社は『世界史のデータベース』を作ろうとして採用を進めてきたわけですから、リモートワークが前提です。

なので、自律性の高い人を集める仕組みというものを一から作ることができたんです。既存の企業さんがリモートワークを導入する際に、多種多様なツールを使って仕組みを整えることはもちろん大切ですが、もっと根本的な仕組みに変革を起こすという行為は必須なのかなと思います


 

―コテンさんがリモートワークをする中で、「自律性」とは別に重要視している要素はありますか?
 
深井さん 

私が意識しているのは『権限委譲』です。社員に対してどこまで権限を渡すのかを判断することが大切です。社員のミッションに対してどこまで口を出すのか、出さないのかを決めることが重要だと考えています。これを社員目線で話すと、権限委譲された場合に業務を定められた地点まで遂行することができる能力があるかどうかが重要であるということです


 
深井さんのお話をうかがって、リモートワークというのは、どんなツールを使って、どうやって業務効率向上を図るのか、というだけのものではないと感じました。
 
ここまでのお話も踏まえて、深井さんは「リモートワーク」についてどうお考えかをおうかがいしました。
 
深井さん 

先ほどマネジメントについて質問をされましたが、リモートワークというのはマネジメントではなく、『構成員依存』であると考えています。社員の自律性に任せ、権利を委譲する。これによって会社として、いかに良いパフォーマンスを残せるかという話なんです。

だからこそコテンでは理念を先行した経営を行い、それを理解した社員が集まり、世界史のデータベースを作るうえで、もはや必然的であるリモートワークを実施することができています

取材の中で、実際に福岡と東京に二つの拠点を持ちご活躍されている深井さんは、「雰囲気的な面で、働く場所が仕事に与える影響は大きい」と話してくださいました。
 
福岡と東京は同じ日本なのでその違いを感じにくいですが、海外と日本で比べたらその雰囲気の違いというものは顕著であって、リモートワークの普及によって「住む場所の自由」を手に入れられるケースもあります。
 
「フルリモートワーク」で「世界史のデータベース」を作るコテンさん。
 その「働き方」は以前フクリパでも取り上げたように「New Type」の企業として、我々に少し先の世界を見せてくれています

大学生視点、起業家視点で感じたこと

最後に、大学生であり、起業を経験したばかりの人間として、僕なりに感じたことをまとめたいと思います。

現実はどんどんと少し先の世界に近づいています。休日の過ごし方も、価値の感じ方も、変化しました。もちろん働き方も変わりました。
 大学生ですが、起業し、社会の一員として活動している僕は、深井さんのお話を聞いてあることを強く感じました。
 
それは、少し先の世界に社会が同期するには、「理念」が大切であるということです。
 そんなことは当たり前じゃないかという意見が当然あると思いますが、それが当たり前ではない世界があるからこそ、こういう内容のお話が出てきます。
 
まず、経営理念というのはファッションではありません。
販促的自社ブランディングのための要素でもありませんし、まるで先進的なフリをするものでもありません。
 僕が思うに、理念というのは「組織を導くモノ」です。
これはSimon Sinek氏がTEDトークで話して有名になった「ゴールデンサークル理論」にも繋がります。「Why=なぜ」が組織や人を動かす源なんです。
 
大学で僕が所属する、商学部飛田ゼミナールでは実践的な経営の学習をします。同級生で株式会社を設立し、大人から出資をしてもらい、商品開発をして、実際に販売し、決算から利益配当までを行います。
 この教育プログラムは大学2年次と大学3年次に2回行われます。
2年次で重視されているのが経営理念でした。このプログラムで設立される株式会社は階層型組織、つまりピラミッド型の組織です。この形の会社組織において経営理念がどのくらい意義あるものなのか、理念経営が組織に与える利益がどんなものなのか、といったことを学びます。
 

【福岡女子商業高校生向けアントレプレナーシップ教育】高校生に対し、経営の基礎を教えることで大学生の学びを深めます。写真は理念と商品に基づいたCVP分析から、予算P/Lを作り、M.ポーターが提言した3つの販売戦略に繋げる授業をする様子です。

飛田ゼミでの学びから、会社には理念があることが当たり前で、理念経営という言葉をわざわざ当てはめずとも、そうやって経営することが前提だと考えていました
しかし、僕が起業して驚きを感じたのは、「理念が無い経営」が普通に存在していることです。
本質として組織を支える、組織を導く理念のない会社が、少し先の世界に対応している未来は想像しにくいものです。


【事業計画発表会】株式会社設立から解散までの一連のプロセスを実践的に学ぶ、創業体験プログラムにおける事業計画発表会の様子。理念から商品説明、販売戦略、予想EPSなどの判断材料を社会人にプレゼンし、出資を募ります。

ここまでの理念の話は、決して「会社側」だけが気をつければいいことではありません。
社会を形成する一員として活動しようとしている就活生も考えなければいけないことです。
言われた通りに働いていれば、社会というハコが自分たちを守ってくれると考えることはできない時代がやってきました。というよりも、元よりそういう時代でしたが、コロナウイルス感染拡大によってより顕在化されてしまいました。
世界を変えるようなインパクトを生み出せなかったとしても、自分が働く意味を考え、少なからず社会に対して価値を与えていかなければ、安心だと思っていたハコは崩壊します
深井さんのお話の初めに、「在宅ワーク」と「リモートワーク」の違いというものがありましたが、そこに全てが凝縮されているように思いました。

在宅ワークというのはあくまで具体であり、リモートワークの一部です。
では、自宅から簡単に業務をこなすことができるようになったからといって、リモートワークは完成するのでしょうか?
具体である在宅ワークの課題を改善することは大切ですが、もっと根本的な、もしくは全体的な抽象=経営理念を捉え、その理念のもとに正しいアクションを起こし、そのうえで必要で実現可能なリモートワークの構築に取り組まなければいけません。
その流れでなければ、ただ単に通常の業務を在宅ワークに切り替えたところで、根本的に社会に対して価値を与え続けることにはならないからです。
 

このお話を踏まえて、「社会」は抽象、「働く意味」が具体であるとして考えてみました。
そうすると、現代において多くの就活生は「働く意味」に対し、具体的で狭い見方しかしていませんでした。そして、先に述べたように社会というハコが自分たちを守ってくれると考えてきたのではないでしょうか。
しかし、この「社会と働く意味の関係性」は少し先の世界では通用しません。
先に述べたように、少し先の世界に同期するには、社会に対して価値を与えることが必要です。「働く意味」をもっと広い視野で捉え、どうやって社会に価値を与えていくかを考えるべきなのです。
 
そこで必要になってくるのが、理念だということです。
理念経営はブームでもマストでもありません。もっと前提的な存在であるべきです。
会社組織も、そこで働く方々も、新しく社会に出る就活生も、自分たちを導き、支える「理念」というものを意識しなければなりません。
 
コロナウイルス感染拡大によって時代の流れが早くなったというよりも、先の世界に同期しなければならなくなった現代において、「理念」の存在は改めて重要であると感じた深井さんのお話でした。
 

* * *

フクリパでは連載企画として株式会社コテンに関わる方々にインタビューをしていきます。
 今後ともコテンの「事業内容」からも「働き方」からも目が離せません!
 次回の記事もお楽しみに!

株式会社コテン https://coten.co.jp/
コテンラジオ https://cotenradio.fm/

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大学生ライター
砂畑龍太郎
福岡大学商学部経営学科飛田ゼミ4年。フクリパでのライター経験と、ゼミでの実践的ビジネス学習を掛け合わせ、学生3名で起業。現在、福岡にある企業の、知られざる魅力を学生に届けるメディア「Navi-raz|ナビラズ」を運営中。ナビラズの詳細は公式ページから▹

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