コテンリレー #07 コテンラジオの裏側潜入レポート第一弾!

コテンラジオ台本(歴史)チームの膨大な作業工程に見る、「学び」の深淵

「歴史を面白く学ぶコテンラジオ(以下:コテンラジオ)」を運営する「株式会社COTEN(以下:コテン)」の様々な情報をお届けしている「コテンリレー」。今回から3回に渡り、「コテンラジオ」の制作に携わる“裏方”な方々に直撃インタビュー!初回は歴史チーム・室越龍之介さんと橋本雅也さんにご登場いただきます。

福岡発、全国にファン急増中!「コテンラジオ」とは?

2020年4月にJapan Podcast Awardsで大賞とSpotify賞をダブル受賞した「コテンラジオ」。このPodcastを運営している「株式会社コテン」は、福岡発のスタートアップ企業です。
 
「コテンラジオ」は株式会社コテン(以下、コテン)の広報活動として2018年11月に始まった歴史系Podcast。株式会社コテン代表の深井龍之介さん、メンバーの楊睿之(通称:ヤンヤン)さんと株式会社BOOK代表の樋口聖典さんの3名が日本と世界の歴史を面白く、かつディープに、そしてフラットな視点で伝えてくれるインターネットラジオです。
 
そのおもしろさにハマるサラリーマンが続出中!なかでもみんな大好き空海と最澄のお話は神的なおもしろさ!ぜひ歴史好きな方も、そうでない方も、まずは実際に聞いてみてください!
 
最澄と空海 ― 悟りを開いた男達の生涯【COTEN RADIO #132】

意外にも狭い環境で、深井、ヤンヤン、室越、橋本の4名は出逢っていた

 
まずは、コテン内でギリシアの哲学者に因み「ディオゲネスチーム」と呼ばれている歴史調査部・室越龍之介さんと歴史DB事業担当・橋本雅也さんのご紹介から。
 

写真左から橋本さん、その奥隣が室越さん

橋本

僕は深井さんの大学のバンドサークルの後輩なのですが、当時は『変わった先輩だな』というくらいの印象でした。社会人になって、ある日サークルの先輩からとあるバンドのヘルプで呼ばれ、そのバンドに昔所属していた深井さんとも逢うようになりました。

ある日何気ない会話の中で中国史の話になり、僕が歴史に詳しいということを知られたところから、コテンに誘われました。

 

室越

僕は深井くんとは同じ大学、同じ学部、同じ学年だったんですね。楊くん(※ヤンヤンさん)は研究室の後輩でした。深井くんとは1年生の時の新入生親睦キャンプで話をしたことから不思議なもので友人関係が続いています。そもそも、僕らが通っていた九州大学文学部って、イケてる男子とイモQ(イケてない男子)に分かれるんです。1年生の僕は自分がイモQであるにも関わらず、無自覚にイケてる人たちが行くそのキャンプに参加しまして(笑)。

キャンプ中に会話が成立した人が、深井くんだけだったんです。あのときキャンプに行かなかったら今もないような気がします。


 
橋本

室越さんはそのときからフィールドワークに出てたのかもしれないですね。


 

室越

そうかもね(笑)。深井くんや楊くんは卒業後社会人になりましたが、僕は大学院に残ってキューバと日本を行ったり来たりしてたんですね。まさにフィールドワークをしてました。ただ、研究を重ねていく中で『これは論文を書き終わらないな』と思い、博士課程を単位取得退学して社会に出ました。

 

橋本

確か僕が先に手伝うようになって、天神の喫茶店でよく打ち合わせをしていたんですけど、ある時室越さんを紹介されたんでしたっけ。


 

室越

そうだね、僕はキューバから帰ってきたタイミングで呼ばれたって感じだったかな。卒業後は行政の嘱託職員としてラグビーワールドカップ関係の仕事したり、コロンビアに赴任したりしていたんですけど、気づいたらコテンに入ってました。


 

日本中に話題を振りまくコテンの礎が、なんと九州大学の箱崎キャンパス、しかも文系のあのエリアからスタートしていたなんて、福岡人がますますコテンを応援したくなってしまうエピソードが飛び出しました!

では、そこからコテンラジオまでの経緯についても聞いてみましょう。
 
 
 

「え?なんでいまラジオなん?」と思ったコテンラジオの立ち上がり

 
コテンができてから2年ほどが経過した頃、突如深井さんが「ラジオをやる」と言い出した、と橋本さん。
 
橋本

いやー当時って、YouTubeはもう拡がっていたけど、まだ読み物や動画がネットの主流コンテンツの頃で、正直『なんでラジオなん?』って思ってました。


 

室越

僕はたまに関わるぐらいだったので、どれくらい本気でやるつもりなのかわからなかったですね。


 
当時は「オウンドメディア」が雨後の筍のように出現していたコンテンツマーケティング隆盛期。ラジオ、ましてやPodcastが今のような拡がりになるとはまったく思っていなかったそうです。
そんなお二人ですが、歴史データベース事業のメンバーとしてアサインされたものの、気づけばコテンラジオの台本作りにも関わっていきます。
 
橋本

僕達ははじめはあくまでもデータベース事業にアサインされてましたからね。


 

室越

そうそう。実は呉服町のバーで深井くんと二人で飲んでたときに、『インターネットが出てきて何が変わったと思う?』と聞かれたことがあるんですが、そのときに喋った僕なりの見解が『情報の歴史』の回で採用されていたことを後から知りました(笑)。
 
そんな感じでちゃんと関わっていたわけではないのですが、確か『最澄と空海』とか、『宗教改革』のあたりでちょっとずつ色々調べたりっていうのを手伝い始めて、気づいたら台本作りに関わってます。


 

深井さんの独特の視点や発想で、ふわりと二人は巻き込まれ、気づけば台本作りの大事な基盤を担っています。実際、どのくらいの時間とリソースをかけているのか、聞いて驚愕の内容でした!
 
 
 

軸の本とディテールの本で約70冊!台本は1テーマで100P超え!

 
橋本

いまは僕達と深井さん、ヤンさん(※ヤンヤンさん)と他メンバーも加えたりしながら毎週MTGをして、翌週までにひたすら本を読んで、を繰り返しています。第一次世界大戦からちゃんと関わり始めたんですが、あのときで台本が120Pくらいになったと思います。


 
台本120P!恐ろしい!しかもこの台本、世界中で働くコテンなのでもちろんオンラインなのですが、それぞれが書いた台本が積層され、1つのテーマでこのボリュームになるんだそうです。
 

実際の台本の様子。これが100Pに渡るなんて!

1回の収録で1つのテーマを録りきってしまうので、約10話分ほどを1日で収録している「コテンラジオ」。収録チームの裏話はまた別の機会にご紹介したいと思いますが、この台本の凄まじい情報量を、どう収集し、集約し、アウトプットにまでつなげているのか、とても気になります。
 

室越

理想的な形としては、だいたい収録の2か月前くらいに僕ら二人が勉強を始めて、読むべき本のピックアップをして深井くんと楊くんに渡す、1か月くらい前に深井くんと楊くんが入ってMTG、10日前に台本がFixして、読み合わせに3~4時間×2日かけて、という流れかなと今は考えています。ただ、この理想が中々実現できなくて、結局深井くん、楊くん自らすごい量の書き込みをしています。

今のところ、テーマを決めた後、全員でバタバタと本を選んで、各自台本に書き込んでいくスタイルです。

MTGで進捗をチェックして、分担を割り振ったり。常にやり方を模索しながらなので、あくまでも現時点で、なんですけど。台本が早くできすぎちゃうのも良くなくて。あんまり早いと、深井くんが忘れてしまうんですよね(笑)。


 
橋本

そう、その流れだと、一番あたたまったタイミングで深井さんが喋ってくれるんですよね。
 
ちなみに本は、バリューブックスさんから最初に40冊を提供いただいて、それプラス自分たちでも文献を探します。論文や最初に当たりをつけた本の参考文献をさらに読むことが多いですね。

忙しい中、ヤンさん深井さんも各自で独自に文献を探しています。ですので、だいたい1テーマで60~70冊くらいは読んでいると思います。


 

バリューブックスさんの書棚

恐ろしいインプット量!そしてその業務をこなす二人の役割分担にも、コテンらしい設定がされています。
 

室越

歴史の本には、理論の本とデータの本があって、一冊の本の中にもデータの積み重ねと、こういう学説がありますというパートがあるから、分解して必要な部分だけにアクセスしていきます
ちなみに僕はディテールがめちゃめちゃ甘い人間で、構造をバッと把握したらそれで満足してしまうところがあるので、軸となる本の選定に注力して、大枠をとらえる担当です。
 
例えば歴史上の人物を一人調べる場合に、まず代表的なその人のことを書いた本を読んで、それに対抗する本を読みます。織田信長であれば、彼の史実的人生を初めから最後まで一貫して書いてある本を読み、さらに同じ内容を別の著者が書いている本を読む、という感じです。

この二冊を読むと、台本に何が必要なのかがわかってくるんですね。

これで、大まかに史実だと共通認識されている事柄や諸説ある事柄にあたりをつけます。

そこから、その人を説明するために必要なパーツの本を探しに行きます。最初の二冊とその数冊で、骨となる筋が出来上がるんです。そこから、ディテールを詰めに行く、という流れです。
 
僕とは逆に、細かなところは橋本くんがやってくれています。歴史は事実の積み重ねなので、聞く人が『ズバッ!』っと理解できるところまで詰めてくれるのは橋本くんですね。


 
橋本

その最初の二冊で、事実は同じなのに、解釈が違う部分が出てくるんですね。それをどっちが正しいのか、どっちも間違っているのか、ひたすら調べていきます。その作業は厄介でもあり、楽しくもあるんですけど。
 
あとは、収録後の編集音源を聴いて、台本や参考文献を照合しながら、間違いがないかを延々とファクトチェックしています。本当に好きじゃないとやれないなと自分でも思います。

深井さんも、忙しくても膨大なインプットをし続けているのは、勉強が本当に好きだからだと思います。それと同時に、ただ台本に書いてあることを喋るっていうことはしたくない、ちゃんと理解したいという思いが強いんですよね。


 

室越

新しいシリーズのテーマが決まると、毎週のディオゲネスチームのMTGで「どこに軸を置くか」をひたすら議論してしています。 それが見つかると、本探しもスムースになります。すぐ見つかったのが第一次世界大戦。

逆になかなか見つからなかったのが織田信長の回です。そもそも台本がこんな膨大な量になるのには理由があって、深井くんの問いが難しいんです。信長の時は「何でこいつら戦っているの?」という問いへの答えを探すのに時間がかかり(一同笑)、じゃあなんでこの人たちが戦ってるのかということを考えて勉強していくと、大化の改新まで遡ってしまいました。しかも織田信長は、人生を通史で書いているいい本がなかったので、軸を作りに行くのが難しかったんですよね。
 
という感じで、この深井くんの問いの立て方こそが、コテンラジオの出発点だと思います。「なんで戦ってるのか」なんて、普通疑問に思わないですよね。教科書にそう書いてあるんだから。

 

二人とも、膨大な作業量でありながら、想定外の方角から質問を繰り出す深井さんの着眼点に一目置いているのだなと感じます。
 
橋本

まぁそういうわけで、結局全員で調べてもわからなかった箇所はホワイトアウト(文字通り、オンラインの台本上で真白にされるそうです!)されちゃうんですけどね。


 

室越

そうそう、あと、深井くんの問いの答えにたどりつかなかったときもそれまでどんなに調べててもホワイトアウト(笑)。


 
(せ、切ない…)
 

室越

深井くんが台本を作っているときによく言うのが、『このことについて書いている本、あれよ(なんで誰もこの点について書いてないんだよ)!』なんです。本当だよね、って。この深井くんの問いの立て方と、深井くんが世の中にレベルを合わせる力こそが、コテンラジオの軸だと思います。
 
僕と橋本くんは、割とアカデミックに細かく行っちゃうんですけど、そのままだと難しくなっちゃうところを、誰が聴いてもわかりやすくできるセンス、まさにここだなと思います。


 
もちろん、ベースとして深井さんの「問い」があることには間違いないのですが、まずその問いに関連していそうな論文や本を室越さんと橋本さんが見つけて、その本の「参考文献」に挙げられている本をみんなであたっていき、それぞれの解釈を台本に書き込む、という流れなのだそうです。
 
さらに、ラジオだけでなく、台本作りにおいてもヤンヤンさんの存在がとても重要だそう。

室越

僕らはひたすら深井くんの目線で深堀する部隊なんです。で、そこに楊くんが全く別の視点を持って台本を書くから、視点が独りよがりにならず深みが出ます。

これはラジオと変わらない、ヤンヤンさんの独特の存在感なのだなと聞いていてそのブレのなさにまたファンになってしまいそうです!
 
  
 

真似したい、“読む”スキルの身に付け方

 
1回のテーマで数十冊もの本を読むって、なかなかできることではないのですが、どうやって読んでいるのかについても聞いてみました。

橋本

実は、全て精読しているわけではないんです。読む目的(軸や問い)があるので、その箇所だけ読むようにしています。昔は一旦読んで熟成させてから台本に書き込んでいたんですけど、深井さんから「それでは遅い。読みながら書き込む術を身につけて」と言われて、今は読みながら書き込んでいます。

室越

そうそう。課題本は時間がなくて何度も読めないので、読みながら判断して台本に書かないと間に合わないんですよね。

これは、なかなかに目から鱗でした。本を丸々一冊読めばそれでいいのかというとそういうことではないんですよね。何の目的でこの本を読むのか、またその本を通して何を学びたいのか、どんな知識を取得したいのか、という「目的意識を持って読む」、「問いを持って読む」という読み方は、効率的ですし「それでいいんだ」と思わせてくれます

ちなみにかくいうお二人は、プライベートではじっくり本を読むタイプだそうです

橋本

元々、知らないことを知っていけることに楽しさを感じます。たぶん知識欲が旺盛なんだと思います。だから読書は好きです。

読書が好き、知識欲が旺盛なお二人であっても、仕事の上での読書はまったく異なる向き合い方をされていることがわかりました。

台本のための読書は仕事としての“読むスキル”を発揮しており、このスキルは資格や仕事のために勉強する人にも有用なのではないかと思います。

  
 

コテンラジオが教えてくれる「学びのプロセス」は、歴史以外にも普遍的に通じるものである

 
今回のインタビューで、データベースチームの物凄く細かでアカデミックな作業を経て、深井さんが根源となる問いを立てる、その問いに対してまた細かな史実の確認と検証が行われる、というインプットとアウトプットの繰り返しから「コテンラジオ」が生まれているのだとわかりました。そしてこの問いから軸を見つけて確認と検証を繰り返すプロセスすべてが「学び」であり、「コテンラジオ」はまさにコテンメンバーが学びに学んだうえで醸成された極上のコンテンツなのです。
 
そして対象テーマの大枠を捉えて軸を定め、そこから細かな情報を探し出し、体系化してアウトプットする「学びのプロセス」は、歴史の勉強に限らず、普遍的なものです。
 
例えば会計の勉強をする際にも、「そもそもなぜ会計はこのようなシステムになっているのか」という問いを立てることで、ただ単に仕組みを覚えるのではなく、その成り立ちから理解することができる、そうすると仕組みも「覚える」のではなく「理解」することができる、という流れです。そうして「理解」したことを「アウトプット」したり「実践に活かし」たりする、そのすべての過程を「学び」と考えています。
 
この学びのプロセスは、広く何かを学ぶ上で汎用性の高い方法であり、コテンが歴史データベース事業に真剣に取り組んでいる理由は、そうした思考を踏まえた学びの先に味わえる楽しさを、一人でも多くの人に知ってもらいたい、ということなのだと感じました。
 
「コテンラジオ」は、歴史に詳しい人がさらっと話しているわけではなく、この学びのプロセスのもとに磨き上げられたコンテンツであるという真実。そしてその学びの深淵を体感できる歴史のおもしろさを伝えるために、膨大なリソースとコストをかけている変態(盛大に褒めています!)とも言える彼らの取り組みを、改めて応援したいなと心の底から思いました。
 
 
 
 
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フクリパ編集部
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