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【 福岡の経済・ビジネス事情 】

商店街は〝20世紀の発明品〟だった!? 〝商都〟博多・福岡の商店街を見てみる

日ごろ身近に感じる存在ながらも、意外と成立経緯や時代背景を知らない商店街━━。地域の〝顔〟とも称されることの多い商店街は、どのようにして誕生したのでしょうか。今回、知っているようで実は知らないことも多い商店街という存在を切り口に日本、そして福岡・博多での経済のあり様をみてきます。

現存する〝日本最古の商店街〟が福岡市・上呉服町にあった!?

【画像01】魚之町@商店街特集

日本最古の商店街 魚之町へようこそ!━━。
博多駅から博多港方面へ伸びる大博通りと、交差する上呉服町の小路入口に『日本最古の商店街』の看板を掲げる。
そして、日本最古の商店街という小路へ約60メートル進むと、現存する〝日本最古の商店街〟を説明する看板が目に留まる。「監修/元寇研究会」とよる説明看板には、次のような解説文が記されていた。

 

 

「ここ旧魚之町は元寇後の鎌倉時代に『土居』(元寇第二防塁)の上に形成された現存する日本最古の商店街です。
町衆は、街を厄災から守るため、先ず町の鬼門(北東の方位)に地蔵堂を建てました。
また聖福寺の戦国時代の会計記録『安山借家牒』には、聖福寺界隈の博多の町並みが、年を追って拡大していったことが数字として残されており、この一帯が現存する日本最古の町並みであることを物語っています」

 

 

説明看板の文中に出てくる地蔵堂とは、上呉服町にある葛城地蔵堂のことである。
葛城地蔵堂の板碑には、『延文5年(1360年)銘』と記されていたそうで、境内の案内板には「正和年間(1312-1317)に御堂が建立されました」と記している。

また、日本初の禅寺として建立された聖福寺の山号は安国山であり、2013年に福岡市の有形文化財に指定された『安山借家牒』は天文12(1543)の年紀である。
安山借屋牒は、天文12年当時の聖福寺の寺内町における借家(借地)料の徴収台帳だ。
借家一軒ごとに間口や借家人、地料、大山口夫、小山口夫、小夫銭、銭の合計を記す。
同台帳には中小路、普賢堂、窪小路、外窪小路、鰭板、魚之町、魚之町店屋、中屋敷、毘沙門堂前、門前新屋敷などの町名をみることができるそうだ。

 

 

日本全国の商店街は1.3万カ所、構成店舗の3割弱は飲食店

都道府県把握の商店街数は1万3,408カ所、中小企業庁『商店街実態調査』の対象は12,210カ所━━━。
中小企業庁は3年に1度、全国の商店街を対象にした調査を実施している。

20224月に発表した『令和3年度商店街実態調査』では、全国12,210カ所の商店街宛てに調査票を発送した。
なお、各都道府県の把握する商店街数は1万3,408カ所だったものの、連絡先不明などで発送できなかった分を除き、調査票を送ったとのことだった。

 

 

同調査の結果によると、1商店街あたりの店舗数は51.2店であり、うちチェーン店舗の占める割合は10.6%だった。
商店街を構成する業種別店舗では、飲食店28.0%がトップであり、衣料品・身の回り品店等15.2%、サービス店13.7%が続いた。
なお、商店街の平均空き店舗率は、約7軒に1軒に相当する13.59%だった。

同調査において『商店街』とは、「(1)小売業、サービス業等を営む者の店舗等が主体となって街区を形成し、(2)これらが何らかの組織(例えば○○商店街振興組合、○○商店会等で法人格の有無およびその種類を問わない)を形成しているもの」だ。

【画像】商店街数@商店街特集

出典)中小企業庁『令和3年度商店街実態調査報告書』

 

 

日本の商店街は20世紀になってからの〝発明品〟だった!?

日本における商店街に関しては,平安京の町割をはじめ、江戸期の城下町、宿場町、門前町などを起源として、挙げられることもある。
しかし、今日、われわれがイメージする近代的な商店街の成立期については、1920~30年代とされている。
『商店街はなぜ滅びるのか』の著者であり、商店街研究を専門分野とする新雅史・流通科学大学商学部講師は、自著において次のように記す。

 

 

新雅史さん

商店街はまったく伝統的な存在ではない。

現存する多くの商店街は二○世紀になって人為的に創られたものである。
商店街はあくまで近代的なものである。

それも、流動化という、現代とつながる社会現象への方策のなかで形成された人工物だったのだ。

 

 

同書によると、第1次大戦後に深刻な不況に陥った日本では、農村からの離農者が都市へ流入した。
そして、彼らは零細小売業として商売を始め、過密化問題を引き起こしたという。
にわか仕込みの零細小売業に対抗して消費者は協同組合を結成し、行政は公設市場の設置を進める一方、百貨店が〝遊覧の空間〟として登場した。

 

 

このような状況下、零細小売業らは異業種で連帯して、専門店が連なる〝横の百貨店〟として商店街が、誕生したのだ。
徒歩圏内で生活用品や生鮮品がそろう商業空間である商店街は、当時の消費者ニーズにも合致したそうだ。

 

 

戦後、商店街がさらなる拡大を遂げていく一方、スーパーの進出もあって衰退局面を迎えると、既得権益集団化していく。
経営環境の変化という外患に加え、後継問題という内憂も抱えて店舗のコンビニ転換も進んだ。
さらに郊外への大型店進出が進むと、商店街の立地する都心部の空洞化という問題も生じたのだ。

 

 

商店街の象徴・アーケードは小倉発祥、同直線最長は佐世保

20世紀の〝発明品〟である商店街について、その先駆けは1894年に片町組合として発足した『片町商店街』(石川県金沢市)であり、日本最古の商店街組織とされている。
一方、日本最長の商店街は、『天神橋筋商店街』(大阪市北区)2.6キロだ。
同商店街は、大阪天満宮の表参道として古い歴史を持ち、吉本興業の発祥地でもある。

 

 

今日、商店街の象徴ともいえるアーケードについて、日本の商店街で最初にアーケードを設置したのは1951年、『魚町銀天街』(北九州市小倉北区)だった。
なお、アーケードの設置自体は、正式な商店街でないものの、1921年に登場した大分県別府市の竹瓦小路アーケードが、日本初とされている。

 

 

アーケードの総延長に関して日本最長とされるのは、『高松中央商店街』(高松市)2.7キロだ。同商店街は、兵庫町商店街や丸亀町商店街など8つの商店街で構成されている。
なお、日本の商店街に設置されているアーケードのうち、直線距離での日本最長は、『さるくシティ4○3』(長崎県佐世保市)960メートルとなっている。

 

 

〝商都〟博多・福岡におけるユニークで個性的な商店街群像

古来、中国大陸との窓口であり、商都としての歴史と伝統を培ってきた博多・福岡の地には、ユニークで個性的な商店街が、数多く存在する。
福岡市経済観光文化局総務・中小企業部地域産業支援課がまとめた『市内の商店街について』によると、福岡市には2023年9月6日現在、129の商店街を数える。
これら商店街のうち、代表的な事例をみていこう。

福岡市商店街一覧

 

新天町商店街(新天町商店街商業協同組合:福岡市中央区)

【画像】新天町@商店街特集

1945年12月、戦後復興の第一弾として新天町商店街の起工式が開催された。

商店街名は、「新しい天神町を創る」という思いから新天町と命名した。

そして、新天ステージでは、ラジオ放送によるNHKのど自慢の中継も行われた。
現在、新天町商店街は、北通りと南通りの2通りと新天町地下『ファーボ』で構成されている。

新天町商店街商業協同組合では、新天町商店街公社、パルコ、西日本鉄道、三井住友銀行と共に『(仮)天神二丁目南ブロック駅前東西街区プロジェクト』による都心再開発事業に向けた検討を進めている。

 

 

天神地下街 (天神地下街商店会・福岡地下街開発株式会社:福岡市中央区)

【画像】天神地下街@商店街特集

 

九州一の繁華街である天神地区に位置する天神地下街は、1976年9月に開業した。

地下鉄天神駅と天神南駅を結んで全長590メートルであり、一日あたり歩行者通行量は2030万人以上といわれる。

開業当初から「石・鉄・レンガ」を象徴とする19世紀ヨーロッパの街並みをイメージした天神地下街の店舗数は、約150店舗だ。
その延床面積は約53,300(うち店舗面積約11,500)であり、住居表示は福岡市中央区天神二丁目地下1号~3号となっている。

 

 

柳橋連合市場(柳橋連合市場共同組合:福岡市中央区)

【画像】柳橋連合市場‘@商店街特集

〝博多の台所〟とも称される柳橋連合市場は、博多湾に注ぐ那珂川に架かる柳橋のたもと、西岸に位置して住吉通りに面する。

その前身は昭和初期、大浜の魚市場で仕入れた鮮魚を大八車に乗せて販売していた安部明氏の店『明(あきら)市場』だった。

その隣接地に商店が集まり、商店街を形成して柳橋市場と改称19928月、柳橋連合市場共同組合を設立した。
柳橋連合市場では、全長約100メートルのアーケード付き通路に鮮魚店をはじめ約40店舗が軒を連ねる。

 

 

唐人町商店街(唐人町商店街連合会:福岡市中央区)

【画像】唐人町商店街@商店街特集
福岡市の中心街である天神四つ角から西へ2.3キロのところに位置する唐人町商店街。

福岡ソフトバンクホークスの拠点『福岡PayPayドーム』に一番近い商店街であり、『ホークスとうじん通り』沿いにある。

博多駅から地下鉄で11分、天神駅から同6分ところにある地下鉄唐人町駅を最寄り駅とする。
商店街内に『劇団ショーマンシップ』の拠点『甘棠館Show劇場』があり、商店街初の〝回遊型演劇〟を開催した。商店街全体を舞台に役者が駆け回って演じて話題を呼んだ。

 

川端通商店街(上川端通商店街振興組合・川端中央商店街振興組合:福岡市博多区)

【画像】川端通商店街@商店街特集

 

旧博多部に位置する川端通商店街は、長年の歴史を有する。

キャナルシティ博多と博多リバレインを結ぶ商店街は、全長400メートルにも及び、川端中央商店街と上川端商店街の2つの商店街からなる。
なお、博多祇園山笠では、それぞれ別個に飾り山を立てている。

このうち、上川端商店街の飾り山が、〝走る飾り山〟でもある。
アーケード付き商店街には、130軒余りの店舗が軒を連ね、一日あたり1万人以上の通行量があるそうだ。

 

 

香椎名店街(株式会社香椎名店街:福岡市東区)

【画像】香椎名店街@商店街特集

 

福岡市東部の副都心である香椎━━。
神功皇后ゆかりの香椎宮もあり、香椎という地名は『古事記』や『日本書紀』にも掲載されている。

『香椎駅周辺土地区画整理事業』によって西鉄香椎駅の東側にあった香椎名店街は、一棟の建物に生まれ変わった。

そして、菓子店や飲食店などの店舗が入居している。
うえやまとち作の漫画『クッキングパパ』では、主人公の荒岩一家の行きつけとして、香椎名店街をモデルにした『花椎名店街』が登場する。

 

 

西新商店街(サザエさん商店街通り  西新商店街連合会:福岡市早良区)

【画像】西新商店街@商店街特集

福岡市西部の副都心を形成するのが西新だ。

江戸期、現在の中央区今川付近を「西町」と呼び、樋井川以西を「新西町」と呼んでいたという。そして、いつしか逆転して「西新」になったそうだ。

国民的人気漫画『サザエさん』の作者である長谷川町子さんが子どものころ福岡に住んでおり、サザエさんの登場人物を発案した場所が百道の海岸といわれている。

その海岸跡に近い5つの商店街の通りを(藤崎通り商店街、高取商店街、西新中西商店街、西新中央商店街、オレンジ通り商店街)『サザエさん商店街通り』の愛称で呼び、地域の憩いの場、買い物の場として毎日賑わっている。

 

 

今後に向けた商店街の持続可能性について考えてみる

「多種多様な店舗がある」「街のにぎわいや活気を感じる」「商品・サービスの値段が安い」「質の良い商品・サービスを購入することができる」「お店の人との会話,コミュニケーションが楽しい」━━━。

福岡市が毎年、市政に関する意識調査を実施している中、2019年度は、『福岡市の商店街』についても調べた。
『令和元年度 市政に関する意識調査』によると、商店街利用の満足度は74.9%に上り、商店街の魅力上位5位は先述の項目だった。

 

福岡市内で商店街振興なども手掛けている民間事業者の担当者からは、次のような声も聞かれた。

福岡市内の民間事業者の声

福岡市内には、アーケードや商店の集積というものがなくても、商店街組合のような集まりをつくって、事業者同士が集まってその地域の商業を盛り上げようとする動きをされています。

商店街以外にも、各地域で頑張ってエリアを盛り上げようとしている事業者らがいて、発掘すればおもしろい福岡が見えてくるかもしれません。

 

 

地域の〝顔〟と称されることも多い商店街は、少子高齢化の進展や郊外型大型店との競合、さらに電子商取引の拡大などにも直面している。
そして、地方においては、商店街の〝シャッター通り〟化も問題視されている。

その一方、商店街自体を単なる商業集積地でなく、新たなまちづくりの拠点や社会問題解決に向けた舞台、そしてスタートアップへの発射台とする試みなどもみられる。

さらに商店街を地域グルメや地域観光などにおけるコンテンツや地域資源とみなして、新たな注目も集まり始めている。

実は人工的な発明品だったともいえる商店街に足を運んでみて、人と人の触れ合いをはじめ、地域に向けた熱意や思いなどに触れることを通じて、新たな可能性や持続可能性を見出すための第一歩にされてみてはいかがだろうか。

参照サイト

福岡市の文化財
http://www.asahi-net.or.jp/~ri5t-mk/15nendo/anzanshakuyatho.html

 

中小企業庁『令和3年度商店街実態調査報告書』
https://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/2022/220408shoutengai.htm

 

福岡市『市内の商店街について』
https://www.city.fukuoka.lg.jp/keizai/c-syogyo/business/shotengai20140317.html

 

経済産業省中小企業庁編『地域の持続可能な発展に向けた商店街づくりのノウハウ集』
https://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/2022/220426shoutengai01.pdf

 

令和元年度 市政に関する意識調査『ふくおかボイス』「福岡市の住みやすさ」「福岡市の商店街」「一人一花運動」について調査しました。
https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/2967/1/R1fukuokavoice.pdf?20230829171209

 

 

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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