「てんちか(天神地下街)」が見つめる天神の「過去」「今」、そして「未来」

2025年に完成する予定の天神ビッグバン。地上の個々の建て替え開発が注目されている中、「天神の街全体はどうなるのか」という都市計画視点での変化も気になるところ。そこで、変化が目まぐるしい天神の中心で、開業当初から変わらない街並みの「天神地下街」が感じてきたことや、全国的にも注目されてきた歴史などを踏まえ、「天神」への想いや愛を語ってもらいました。

2025年に完成する予定の天神ビッグバン。

 

天神ビッグバンエリアの主なプロジェクト

出典:福岡市

 

地上の個々の建て替え開発が注目されている中、「天神の街全体はどうなるのか」という都市計画視点での変化も気になるところ。

そこで、改めて天神という街を見つめなおしてみた際に、変化が目まぐるしい天神の中心で、開業当初から変わらない街並みの「天神地下街」の立ち位置がとても重要だと編集部は気付きました。

 

地下に降りる階段の途中で目にすることのできる、「天神地下街」のロゴマーク。アイアン使いがシックで色褪せません

 

天神地下街・通称「てんちか」は、3年後には50周年を迎え、半世紀もの間、天神の街を見てきた歴史のある商業施設になります。

 

 

また、2本の地下鉄が直結、天神の南北をつなぎ、中心部の各ビルとつながるというその存在感は、一商業施設以上の役割を担ってきたのではないかと考えます。

 

路線図

出典:福岡市地下鉄

 

その営みの中で天神地下街が感じてきたことや、全国的にも注目されてきた歴史などを踏まえ、「天神」への想いや愛を語ってもらいました。

 

 

お話を聞いた人

豊島慶菜さん(福岡地下街開発株式会社/総務企画部)

 

高木朱音さん(福岡地下街開発株式会社/営業部)

 

 

天神地下街ができた背景

まずは、意外と知らない「天神地下街」ができた歴史と背景について聞いてみました。

 

豊島さん

天神地下街は、福岡地下街開発株式会社が運営しています。開業は1976910日、今年47年目を迎えます。

開業パレードの様子

天神地下街は、地上の交通混雑緩和と、都市機能の充実のために造られました。その基本構想は1958年まで遡ります。天神ビルと旧岩田屋(現在の福岡パルコ)を結ぶ地下通路構想が浮上したことがその始まりです。当時の天神界隈は高度経済成長の影響もあり、地上の交通混雑(車+路面電車)や大気汚染等の問題が出始めていたと聞いています。そして、現在の北広場から7番街まで地下街を造る案が採用され、天神地下街の工事はスタートしました。車が多く、路面電車も人通りもある天神の大通りでの工事は相当大変だったようです。

1976年9月創業時イベントの様子。まさかの四重奏!なんとオシャレな催しでしょうか

2005年には地下鉄七隈線の開業に合わせて地下街は南に延伸し、現在の590mにわたる地下街となりました。

コンセプトは、「Life Quality ゆとりと華麗と友情と」。特に、ヨーロッパ調の街並みが一番の特徴です。当時、福岡の人へのマーケット調査「行ってみたい場所・時代」を行い、「ヨーロッパ」と「手作り時代末期」が1位となり、19世紀ヨーロッパをイメージした街になりました。全国的にも珍しい街並みなので、各地から視察に来られる方もいらっしゃいます。

また、ライティングは「劇場型空間」をコンセプトとしており、通路が「客席」、店舗が「舞台」となっています。商品とショップスタッフが「脇役の俳優」、そしてお客様が「主役」という演出です。ゆえに、少し暗めのライティングになっているのです。

弊社の社訓にも「都市文化の向上発展に貢献する」とあり、「天神という街を、都市文化の面から充実させたい」という当時の人々の熱意が伝わってきます。地上はたくさんの車でごった返しているけれど、そこからひとたび地下に降りると、ヨーロッパの街並みという別世界が広がっている。地下街の落ち着いた街並みは「都心のオアシス」の役割もあったのではと思います。

 

ステンドグラスや石畳、電話ボックスやサインなどのレトロな設えは、すべて当時の福岡の人たちの「憧れ」の象徴だったんですね。
(以前きむ兄が紹介してくれた、「てんちかのトイレがアツい!」の記事もぜひ読んでみてくださいね/リンクは文末にあります)

 

今も健在な赤い電話ボックス。可愛いですよね

 

S字が連なる手すりもオシャレです

 

天井にもヨーロッパの香りが

 

そして同時に、このコンセプトであれば、何年経っても古びた印象にもなりません。出張で県外に出向くたびに、天神地下街の街並みのオリジナリティを心の中で誇ってきましたが、これからは胸を張って自慢できそうです。

 

 

商業施設の一翼以上を担う存在として取り組んでいること

いつでも気軽に天神界隈を移動できて、しかも涼しかったり暖かかったり、雨を凌げたり。とても便利な天神地下街は、商業施設以上の存在です。

 

豊島さん

天神地下街は一つの商店街であるだけではなく、天神の大動脈として、地下鉄空港線天神駅・七隈線天神南駅や西鉄福岡駅といった交通と、周辺のビルとを地下でつなぐ公共地下歩道でもあります。

「天神の街を繋ぐ」という非常に大きな役割のなかで、「We Love天神協議会」「都心界」「明治通り街づくり協議会」「天神地区総合共同防火管理協議会」といった団体にも所属しています。こうした活動の中で、周辺の商業施設やビルと連携し、一緒に天神の街づくりに積極的に取り組んでいます。


We Love天神協議会」の取り組みの中から具体例を挙げると、市役所前広場でのクリスマスマーケットや天神夏祭り等、街の賑わいとなる施策に参加しております。

 

今回取材をさせていただくまで、編集部もあまりにもその存在が身近すぎて、意識しないままに通っていたなぁと痛感しました。これからは、もっと味わって通りたいと思います!

 

 

リーシングを通して見る、「天神」という街へのまなざし

さて、そんな天神地下街を運営している「福岡地下街開発株式会社」にとって、天神地下街の維持管理・運営はもちろんですが、リーシングも重要なお仕事です。

 

高木さん

天神地下街では、ご利用されるお客様のニーズ変化や天神ビッグバンなどをはじめとする天神エリアの環境変化を考慮し、リーシングを行っております。

具体例としては、今春の七隈線延伸に合わせて、南エリアを「食」のエリアとしてリニューアルをしております。これは七隈線延伸に伴う周辺居住者の増により、食のニーズの高まりが想定されるためです。

https://fukuoka-leapup.jp/gourmet/202302.1119

また、今後天神ビッグバンにより新しいビルやショップが増えるとともに、オフィスワーカーや近隣居住者の増加が予想されており、そのニーズを満たすような店舗を誘致し、利便性向上に貢献していきたいと考えています。

 

一説によると、天神ビッグバン後、オフィスワーカーの人数は現在の2.4倍になるというデータが出ているとか。

これまで以上ににぎわう天神にとって、天神地下街の役割はますます重要になりそうです。

 

 

施設内テナントの維持管理として行っていること

お話のなかで、さらに驚いたのが、商業施設としての従業員さんたちに対する取り組み。

 

高木さん

天神地下街では、店舗スタッフへの福利厚生充実の観点から、スキルアップサポート、店舗間コミュニケーションの強化、働きやすい環境づくり等を行っております。

スキルアップサポートでは、基本的なマナーを学ぶ「接客研修」、接客に役立つ知識を得る「ビューティー研修」、精神的な健康管理を目的とした「メンタルヘルス研修」に加え、モチベーションアップを目的とした「開運占いイベント」等、多種多様なイベントを行っています。

また、店舗間のコミュニケーション強化の観点から、従業員パーティーや従業員お楽しみ抽選会等、店舗間スタッフ同士のみならず、店舗スタッフと天神地下街との絆を深める施策を実施しています。

そのほか、働きやすい環境づくりの一環として休憩室をリニューアルしたり、LINE公式アカウント(現在1,000名以上の登録があります)に入ってもらって情報発信していたり。何よりも「てんちかで働いている!」ということをモチベーションにしてもらえるようにと考えています。

 

天神地下街で働く人たちは、自分の店舗で業務が完結しているものと思っていました。まさか、同じ施設で働いているという一体感を感じられる施策がたくさんあるとは…こう聞くと、改めて天神地下街が商業施設なのだということに立ち戻れます。

 

 

他にもあります、独自性の高い取り組み

ここまででもたくさんの取り組みを紹介していただきましたが、せっかくなので、「これはてんちか独自だよ!」というものも聞いてみました。

 

高木さん

今年の4月からLINEを用いた新しい取り組み「365日てんちか」を実施しています。

やべさわこさんのイラスト。かわいいと大評判です

概要は、「各テナントのお得な特典を毎週月曜日の朝にLINE配信」するというもの。狙いとして、天神地下街は通勤・通学などのお客様も多くご利用いただいておりますが、よりテナントのことを知っていただき、親しみを持っていただくためにスタートいたしました。

イラストは昭和レトロのイラストで人気のやべさわこさんにお願いしました。天神地下街のイメージに合わせ描き下ろしてもらいました。「てんちかポイント5倍フェア」のポスターにも同氏のイラストを起用しておりますが、新鮮なポスターに足を止める方もいらっしゃいます。

◆「365日てんちか」公式ページ

 

 

天神地下街と天神の未来展望

今回お話を伺った豊島さんと高木さんは、ともに入社4年目の同期。天神で働く喜びを体感しながら、日々街の進化に関わっている楽しさが、お話を通して伝わってきました。

そんなお二人から見た、天神地下街と天神は、今後どうなっていくのでしょうか?

 

高木さん

天神ビッグバンにより、これまでにない新たな魅力、賑わいをもった天神エリアが形成されることが期待されます。我々天神地下街としましても、新たに生まれるニーズを満たす店舗を誘致していき、天神周辺居住者およびオフィスワーカーの利便性向上に貢献していきたいと考えています。

また天神エリアのハブとして、「天神を繋ぐ」という大きな役割は今後とも果たしていくことになります。これからも地域の皆様に愛される天神地下街を目指して行きたいと考えています。

 

豊島さん、高木さん、貴重なお話をありがとうございました!今後、ますます「てんちか」に注目していきたいと思います!

 

◆天神地下街公式サイト

https://www.tenchika.com/

 

 

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フクリパ編集部
フクリパ・デスク(中の人)です。飛躍する街・福岡の 過去を知り、現在を理解し、未来を想像する、様々な情報をいち早くお届けします。「こんな記事が読みたい!」というリクエストは、各種SNSのメッセージにて承ります!

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