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新天町の大時計塔はなぜ生まれたのか?〜福岡のアート発見・再発見〜前編

人口増加や天神ビッグバンで期待される経済効果など、福岡の未来は明るい話題でいっぱいです。私たち「フクリパ」は、その輝きを、次世代にも知ってほしいと考えます。この企画では、現役大学生の目から見た福岡を、「パブリックアート」を切り口に取材してもらいました。気になる第一回目は、新天町のあの時計です。

天神のシンボルのひとつ、新天町の大時計塔はどうして生まれたのか

——三時を告げる、美しい鐘の音。
——その音で、人々が見上げるのは、大きな時計塔。

 

 

この時計塔は福岡の中心部、天神の商店街「新天町」に設置されている公共アートです。

 

小学生の頃に初めて見たときは、その雰囲気や大きさに圧倒されました。その記憶から「福岡のパブリックアート」と聞いて真っ先にこちらを思い出し、実際に足を運んでその魅力を体感してきました。

 

幼い頃から見慣れてきた大時計塔ですが、そもそもなぜここにあるのか、いざとなって周りに聞いてみるものの、知っている人がまったくいませんでした。

 

今回は、有識者の方のお話もまとめながら、ご紹介させていただきます!

 

全国の皆さんのためにご説明しますと、初めて見て圧倒された時の私も気づいていなかったのですが、実はこちらの時計塔、他の時計塔と違うところがあります。

 

なんとこの時計塔、商店街のアーケードの中にあるんです! 特定の時間になると音楽が流れ、人形たちが動き出します。

 

写真から見ても分かるように魅力的な時計塔ですが、正式な名称である『メルヘンチャイム』はあまり知られていません。そして名前だけでなく、知られていないことが他にもたくさんあるんです!

 

福岡を訪れる方にはこの時計塔の「発見」を、福岡に住んでいる方にも是非「再発見」をしていただきたく、株式会社しばた洋傘店の代表取締役、柴田嘉和さんにお話を伺いました。

 

 

 

株式会社しばた洋傘店は、明治39年に開業した伝統のある傘屋です。新天町の設立とともに天神に出店されたそう。そんな新天町を長年見続けてきたお店で、社長を務める柴田さん。新天町商店街公社の取締役も兼務されています。

 

そんな素敵な方への取材。どのようなお話が聞けるかワクワクしながら、早速、メルヘンチャイムの歴史について伺いました。

日本初のからくり時計だった『新天町の大時計』!

柴田社長「元々このメルヘンチャイムを作る前、いわゆる商店街に、こういう鐘とかは、日本中どこにもなかったんです。だからこれを作った後、あちこちの人が見に来てですね。そこから色々な商業施設が同じようなものをまねて作ったりしてたね(笑)」

 

メルヘンチャイムが、日本初のからくり時計というのは初耳でした。実はチャイムの下を見てみると

 

 

このような看板が!そんなメルヘンチャイムの設置のきっかけについて伺いました。

 

柴田社長「新天町のメンバーでドイツに旅行した時、一緒に行った商店街の理事長が、時計塔を見て『新天町にも時計塔を作りたい!』って言いだしてですね、それが大時計の始まりです」

 

このような時計塔、からくり時計はヨーロッパにたくさんあるそう。「からくり時計」という海外の文化を「発見」し、それを何故発信しようと考えられたのかと尋ねると、柴田さんはうーん、と首を傾げました。どうやらちょっと意図が違うようです。

 

柴田社長「発信したいというか、からくり時計の周りでたくさんの人が喜んでいるのを見てね。そういうのを商店街でしたい、新天町商店街を『みんなが喜ぶようなものにしたい』と思ってね」

 

そんな思いでスタートした現在の大きなメルヘンチャイムですが、設置は紆余曲折を経ていました。

 

柴田社長「企業さんから協賛金を出してもらったりしたんだけど、結局は商店街の人たちがお金を出し合って作ったんです。最初は『こんなのやって何になるんだ!』とかってよく言われたよね(笑)」

 

確かに、今よりも海外の情報がはるかに少ない時代。日本にないものを、しかも商店街の中に作るという計画は、少し慎重になる気持ちも分かる気がします。

 

それでも諦めずに説得を続けた結果、設置から38年経った今では、天神のシンボルとも呼べるほど街に馴染んでいます。

 

使われているチャイムは、なんとオランダから取り寄せられたそう!その事実からも、新天町の方々の『人を喜ばせたい』という思いが強く伝わってきます。

 

チャイムが鳴っている時間には、たくさんの人が集まって笑顔でカメラを向けたり、メルヘンチャイムを見上げています。新天町の方々の思いは、きちんと届いているようです。

 

 

ピエロは怖い!

実はこのメルヘンチャイム、初めから今のデザインではなかったそう……!そんなメルヘンチャイムの、デザインの紆余曲折についても伺いました。

 

柴田社長「時計塔は色んなデザインを考えました。からくり時計の人形にしても、案としては日本の昔話、一寸法師とか桃太郎とか色々ありました。だけど全体をヨーロッパ調でやりたいな、ってなって。今の人形や、上の人形もピエロに決定してね。ピエロはね、最初はもっとリアルなピエロだったんですよ。あれは2代目のピエロなんです」

 

 

 

2代目のピエロ!衝撃的な言葉でした。

 

よく見てみると、時計塔の下の方の人間はリアルな造形をしていますが、ピエロは平面的でデフォルメされています。ヨーロピアンな窓から色鮮やかなピエロが出てくるのは、確かに不思議な気が。

 

柴田社長「最初のピエロはヨーロッパのピエロをモチーフに作っているので、子どもが泣く、怖いって色々言われて(笑)、それでデザインを変えました……」

 

子どもが喜べば大人も喜ぶから、とおっしゃった柴田さん。練りに練ったデザインを変えるのは、苦渋の決断だったでしょう。それでも子どもに配慮したデザインに。

 

新天町の皆さんの『みんなが喜ぶようなものにしたい』という強い思いがここからも伝わってきました。

 

初代ピエロの写真。確かにリアルですね…

 

 

柴田社長「それから、ピエロの下の人形たちも、最初は三人だけだったのね。あとは50周年の時に増やして、動くところもつけました。最初はあの三人の人形も、真ん中はもっとおじいさんだったけど、変える時に少し若くしようってことでね。みんなで力を合わせてやるっていう姿になればいいなって」

 

 

そして、みんなで手助けをしながら鐘つきをしている、現在の姿になったそう。何度も試行錯誤された、関わった人々の思いの詰まったデザインなんですね。

 

まだまだ先ですが100周年等、今後のアップデートにも期待です。

四季の「再発見」

そんな2代目のピエロの写真を撮影していると、どこからともなく雪が降ってきました!暖かくて屋根もあるのに、と困惑していると、これは現在行っているイベントだそう。四季を大切にする商店街、新天町のあり方を伺いました。

 

柴田社長「もともと新天町は昭和21年にできたんだけど、その時に戦争で福岡中が焼け野原になったんだよね。そんな中、復興の一つが新天町だったんです。四季の楽しみもなくなっていたから、『四季の楽しみがある商店街』っていうコンセプトを立てたんです。それを市民と約束して作りました。それが皆に浸透していって、今ではどんたくとか山笠とか、四季折々のイベントも当たり前だ、という考え方を持ってくれるような商店街になっています」

 

その言葉の通り、最近では豆まきや、雪を降らせるなどのイベントが行われています。メルヘンチャイムも雪のイルミネーションが施され、季節ごとに表情を変えているようでした。アーケードでも「季節を感じることができる」というのは、他の商店街との違いでもあり、大きな魅力なのではないでしょうか。

 

また、どんたくなど福岡ならではの四季を感じられるイベントもあり、地元の方だけでなく観光客の方もよくいらっしゃるそうです。

 

これらのお話だけでも、たくさんの「発見」や「再発見」が!これほど多くの人々の思いが詰まった公共アート、そして商店街はなかなか貴重です。

 

また、からくり時計の先駆けでもあり、美術館でもなかなか見られないような大きな時計塔『メルヘンチャイム』。

 

アートが好きな方もそうでない方も、是非ギミックが作動する時間に立ち寄ってみてはいかがでしょうか?

 


後編ではこのメルヘンチャイムで流れる音楽の秘密や、新天町や天神のこれからについてもお伝えしていきます!

 

後編はこちら:https://fukuoka-leapup.jp/entertainment/202003.29

 

 

 

◎こちらも合わせてお楽しみください
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大学生ライター
見潮 美宥
1996年、福岡市生まれ。九州大学芸術工学部画像設計学科4年(2020年3月現在)。妹尾研究室所属。「クリエイターによる心理学」として、卒業論文・卒業制作を行なった。個人にて『musica プロジェクト』を立ち上げ、3Dアニメーション制作、Webサイト運営、小説制作、グッズ制作などを行っている。

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