「エンクレストガーデン福岡」の植栽を監修する庭園デザイナー・石原和幸さん。
これまでに英国チェルシーフラワーショーにて、13個の金メダルを受賞。エリザベス女王から「緑の魔術師」と称される。現在は全国で庭づくりや壁面緑化などの緑化事業を手がけ、環境保護にも積極的に取り組んでいる。
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イマドキのマンション事情を深掘り!エンクレストガーデン福岡 モデルルームに行ってみた!
小笹団地で50年育った樹木をこれからの未来へと紡ぐ
── エンクレストガーデン福岡の植栽を監修するうえで、意識したポイントを教えてください。
私はこれまで、住まいに花や緑を取り入れることで暮らしを豊かにする空間づくりに携わってきました。今回のマンションでも、ただ美しいだけでなく、住む人が自然を感じ、日常の中で心地よさを実感できるガーデンをつくりたいと考え、設計段階から携わりました。
監修にあたり、特にこだわったポイントは大きく3つあります。まず一つ目は、「歴史ある小笹団地で育った樹木を未来へ継承すること」です。50年もの間、人々の暮らしを支えてきた小笹団地の跡地ということで、この地で積み重ねられた時間を途切れさせないよう、以前植わっていた樹木は一旦移植して養生し、再び敷地内に戻しました。マンション正面の樫の木は、その象徴のひとつです。
サークル状のガーデンにそびえる樫の木。その下は駐車場になっており、限られた条件の中で土量や構造を工夫して設計されています。このシンボルツリーとなる樫の木の周りには、今後たくさんの花が季節ごとに植え替わる予定です。
小笹団地の歴史を見守ってきた樫の木を一時的に保護して再配置。景色は変わっても、樹木や植物の命はしっかりと受け継がれています。
── マンション内の通り抜けの道にも、自然を感じられるようにしたとか?
はい。以前の団地同様、裏手の小笹中央公園につながる通り抜けの道を新しいマンションでも残すということで、住人だけでなく、周辺に住む誰もが自然を楽しめるように花や緑を植えました。これから植える予定の小路の横に広がる芝生は、今話題の少ない手入れでも美しい緑を保つ、トヨタ自動車が開発した『TM9』を使用します。
マンション裏手の小路を抜けると小笹中央公園へ。そのまま大通りにも繋がっていて、周辺住民には貴重な生活動線。斜面にはたくさんのアジサイが植えられ、梅雨の時期には鮮やかな色合いが楽しめます。
レンガ造りのベンチも設置予定。緑に包まれた小道を心地よく散歩できます。
8つのガーデンスペースで楽しむ、365日花と緑に包まれる暮らし
── 敷地内のガーデンスペースや植栽の特徴を教えてください。
敷地内には、全部で8つのガーデンスペースを設け、それぞれのスペースでは、ウメ、ユキヤナギ、オデマリ、アジサイ、サルスベリ、サザンカ、ツバキ…など、季節ごとに見どころをつくっています。「365日、花と緑に囲まれたマンション」。これが二つ目のこだわりです。ここは福岡市動物園や植物園にほど近く、南側には小笹中央公園、東側には小笹北公園が広がる自然豊かなロケーション。周囲の景観と調和させるため、低木・中木・高木の高さや配置のバランスも考え抜きました。時間の経過とともに、公園の緑と一体化し、美しい景観をつくり出します。
季節によって色とりどりの花が咲き誇るように計算されています。
高低差のある植木をバランスよく配置し、成長を見据えて設計。公園の緑と自然に一体化させます。
白い花を咲かせ、甘い香りを漂わせる泰山木(タイサンボク)。マンションに存在感を添えます。
── 美しい景観を保つための工夫は何かしていますか?
多彩なガーデンデザインをしているため、ひとつの花が役目を終えても、すぐそばで次の花が咲き継ぎ、途切れることはありません。また自動タイマーによる水やりや月ごとの植え替えなど、細やかな管理も欠かさず、私自身も毎月訪れてチェックします。冬を控えた今の時期は、葉を落として根に養分を蓄え、春には一斉に新芽が芽吹くよう手入れをしています。
── 日当たりが少ない場所でも、花や緑を楽しめますか?
駐車場横の花壇など、日陰になりやすい場所には日陰に強い植物や樹木を選定しています。また住戸のテラスは広く設けられているため、ガーデニングも楽しめます。“家”と“庭”で『家庭』。窓の向こうに花や木の実をめがけて飛び交う蝶や小鳥の姿を眺めながら、家族の会話が弾む、そんな暮らしをイメージしています。
広いテラスでガーデニングを楽しみながら、季節の移ろいを身近に感じられます。
敷地の隅々まで贅沢に。花と緑でゆとりのある暮らしを演出
── 駐車場やエントランス周辺など、さまざまな場所に花や緑がありますね。
そうなんです。敷地のあちこちに花や緑を贅沢に配しました。これが3つ目のこだわりです。通常、駐車スペースにしてしまうような空間にも、あえて花や緑を配置しています。そうすることで、景観に豊かさが生まれ、暮らしにゆとりが生まれます。また、エントランス手前には、多彩な植栽とアートを融合させた広いスペースを設けました。日常の中に少し特別な空間があると、住む方の暮らしに彩りや潤いを添えられるはず。完成後にどんな表情を見せてくれるのか、私自身も楽しみです。
駐車場も緑で彩り、マンションの景観に豊かさと特別感を演出します。
無機質なコンクリートの中に、緑が彩りを添えます。
エントランス前の広場には、植栽とアートを融合させた芝生の広場が登場予定。石原氏も初めての試みに期待が高まります!
── エントランスを入ってすぐのスペースはひと際目を引きますね。
マンション入り口のエントランスは、日本庭園のような趣を持たせました。もみじや景石、そして八女から移築した、50年以上経つ八女石の灯籠も置いています。時間が経つにつれて苔が生え、より味わい深くなり、マンションに落ち着きと品格を添えてくれるはず。本来なら地面は敷石で仕上げたいところですが、子どもたちが遊んでも安全に過ごせるよう、ここはあえて土にする予定です。
入口正面に日本庭園の趣を再現。落ち着きある空間が出迎えます。
50年以上の年月を経た八女石の灯籠は、苔とともに味わい深さを増しています。
住環境の魅力を高める!花と緑のある暮らしの価値とは?
「花や緑の魅力は無限にある」と語る石原さん。
── 最後に、花や緑に囲まれた暮らしの魅力を教えてください。
花や緑に囲まれた暮らしは、毎日の中で小さな発見や癒しを与えてくれます。心を癒すだけでなく、実はポイ捨てなどのマナー向上や防犯面にも効果があると言われているんです。花や緑が豊かにあると、住環境全体の質が高まり、資産価値も高くなります。
これまで数々のマンションの植栽を監修してきましたが、福岡でこの規模の分譲マンションを監修するのは初めてになります。どんな反応をいただけるか今から楽しみですね。今後は、2026年3月に福岡市植物園で開催される「Fukuoka Flower Show 2026」に合わせ、敷地内でもガーデンツアーを実施する予定です。季節の花々や庭の表情をぜひ身近に楽しんでください!
石原さんがガーデンを監修する「エンクレストガーデン福岡」は、2025年12月完成予定。今はまだ樹木と土台の状態ですが、これから完成に向けて様々な花が植えられ季節を彩っていきます。どんなガーデンが完成して華やかな春を迎えるのか、そして時間と共にどんな景色に成長していくのか、とても楽しみですね。2026年3月開催の「Fukuoka Flower Show 2026」の一環で行われる、石原さんとのガーデンツアーも見逃せません!