【2026公示地価】福岡市は住宅地全国2位。14年連続上昇の理由と今後の展望

【 福岡の経済・ビジネス事情 】

【2026公示地価】福岡市は住宅地全国2位。14年連続上昇の理由と今後の展望

国土交通省は、土地の標準価格である2026年1月1日時点での公示地価を発表しました。同発表によると、福岡市の住宅地と商業地は、14年連続で上昇を記録しています。福岡県の住宅地も12年連続増、商業地は11年連続増でした。専門家の見解を交えながら、公示地価の動向について見ていきます。

【序章】公示地価とは何か「一物四価」の不動産価格まとめ

【公示地価2026】福岡市は変動率で     住宅地2位、商業地5位~~福岡県は住宅地4位、商業地7位~~

 

同一の土地であっても、目的や評価方法によって、不動産価値は異なってくる。
不動産価値のベースになっているのは、実社会においていくらで取引されているのかという「時価」であり、それが一つの判断基準となっている。
不動産価格は時価に基づいて、公示地価・基準地価・相続税評価額・固定資産税評価額が決められており、「一物四価」といわれることもある。
4つの不動産価格を整理すると、次のようになる。

 

 

【公示地価】
毎年11日時点での土地の標準価格を国土交通省が毎年3月下旬に公表する。
公示地価は、土地の基本的な価格であり、土地取引の目安とされる。

 

 

【基準地価】
毎年71日時点での地価を各都道府県が9月下旬に公表する。
基準地価の公表は、公示地価の半年後であり、地価変動を補完する役割も担う。
公示地価、基準地価に加えて、課税のための評価基準が、相続税路線価と固定資産税評価額だ。

 

 

【相続税路線価】
国税庁が実施、公示価格の8割。

 

 

【固定資産税評価額】
固定資産税を徴収する市町村(東京23区は東京都)が実施し、公示地価の7割をめどとする。

 

なお、相続税路線価、固定資産税評価額は、公示地価を基準にしており、地価の最上位基準は、公示地価である。

 

 

では、こうした指標の中で、福岡の地価はどのように推移しているのか。

 

 

福岡市の住宅地・商業地は14年連続増、福岡県の住宅地は12年増・商業地は11年増

地価変動率の経年推移

出所:国土交通省土地政策審議官部門『令和8年地価公示の概要』(2026年3月)

 

国土交通省は2026317日、同年11日時点での公示地価を発表した。
同発表によると、福岡市の住宅地における平均変動率は、14年連続で上昇したものの、前年比2.0ポイント減となる7.0%増だった。
前年と前々年、変動率で都道府県庁所在地別において全国トップだった福岡市の住宅地は、今回は東京23区に次ぐ第2位となっている。
福岡市における商業地の平均変動率は、14年連続で上昇したものの、前年比2.3ポイント減となる9.0%増だった。
2021年から4年連続で都道府県庁所在地の首位だった福岡市は、前年は第3位となり、今回は第5位だった。

 

 

一方、福岡県の住宅地における平均変動率は、12年連続で上昇したものの、前年比1.2ポイント減となる3.7%増だった。
都道府県別の変動率で前年3位だった福岡県の住宅地は今回、第4位に後退している。

福岡県における商業地の平均変動率は、11年連続で上昇したものの、前年比1.3ポイント減となる5.2%増だった。
2021年から4年連続で都道府県別の商業地変動率で全国トップだった福岡県は前年、一転して第6位となり、今回は第7位に順位を下げている。

 

 

2026年の公示地価における福岡市の調査地点である標準地は、住宅地195地点、商業地86地点、工業地10地点の合計291地点だった。
福岡県における標準地の設定区域は、都市計画区域を有する県内51市町の918地点となっている。
都市計画区域がない9市町村(うきは市、東峰村、大木町、香春町、糸田町、大任町、赤村、福智町、上毛町)は調査対象外だ。
福岡県における標準地の内訳は、住宅地(含見込地)628カ所、商業地252カ所、工業地38カ所となっている。

 

【公示地価2026】福岡市は変動率で     住宅地2位、商業地5位~~福岡県は住宅地4位、商業地7位~~

出典:国土交通省土地政策審議官部門『令和8年地価公示の概要』(2026年3月)

 

【公示地価2026】福岡市は変動率で     住宅地2位、商業地5位~~福岡県は住宅地4位、商業地7位~~

出典:国土交通省土地政策審議官部門『令和8年地価公示の概要』(2026年3月)

 

 

なぜ、福岡市・福岡県の地価は依然、続伸しているのか

福岡市・福岡県の地価は、住宅地・商業地ともに長期的な上昇傾向が続いている。福岡市では住宅地・商業地ともに14年連続で上昇し、福岡県全体でも住宅地は12年、商業地は11年連続で上昇している。

 

 

なぜ、福岡市、福岡県における住宅地・商業地の公示地価は依然として、伸び続けているのか?
2026年の福岡県内の公示地価調査をとりまとめた不動産鑑定士である、旭鑑定補償株式会社 納富久雄常務取締役は、次のように分析・解説する。

納富久雄常務取締役

福岡県全体の地価の平均変動率は、住宅地、商業地、工業地のいずれの種別も昨年のランクからやや後退しているものの、依然として上位に位置しており、福岡県内の不動産市況は未だ好調であることがうかがえます。

地価の上昇傾向としては、令和7年地価調査に続き、令和8年地価公示についても上昇幅は縮小しており、価格上昇はやや一服した感がみられます。

福岡市の住宅地の平均変動率は、全国の県庁所在地別変動率で東京23区に次いで2位の上昇率であり、依然として高い地価上昇率を継続しています。
たしかに福岡市全区の地価上昇幅は縮小しているものの、富裕層向けのマンション需要は好調です。
高額物件については、投資目的で購入している印象があり、高価格なマンションほど非居住率も高いのが実態となっています。

 

【公示地価2026】福岡市は変動率で     住宅地2位、商業地5位~~福岡県は住宅地4位、商業地7位~~

株式会社旭鑑定補償の納富久雄常務取締役

 

 

【福岡市:住宅地】2024年のバブル期超え後も続伸する

【公示地価2026】福岡市は変動率で     住宅地2位、商業地5位~~福岡県は住宅地4位、商業地7位~~

出典:福岡市財政局『令和8年地価公示(福岡市分)』住宅地・商業地の平均価格推移(グラフ)

 

福岡市財政局がまとめた『令和8年地価公示(福岡市分)』では、『福岡市の地価公示における住宅地平均価格推移』(1977年~2026年)で50年におよぶ福岡市の公示地価における住宅地平均価格の推移をグラフでまとめている。
同グラフを見てみると、50年前の1977年時点での公示地価の住宅地平均価格は、1平方メートル当たり33,300円だった。
2026年の時点における福岡市の住宅地平均価格は、同25万8,100円であり、この半世紀で7.8倍となっている。

 

 

もっとも、半世紀に及ぶ歩みは、平坦な道のりではなかった。
1次オイルショックからの傷跡が癒えた1977年、日本経済が『安定成長』へ舵を切った。
福岡市における公示地価の住宅地平均価格も順調に続伸したものの、19859月のプラザ合意で踊り場を迎えた。
その後、バブル経済の到来を迎えて、地価は一気に駆け上がっていく。
1992年には、福岡市の住宅地平均価格は21600円を記録して、ひとつのピークを迎えた。
1977年からの15年間で6.3倍となっている。

 

 

バブル崩壊とともに下落を続けた福岡市の住宅地平均価格は、2006年に同116,100円へと、バブル期のピーク時から半減近く下落した。
その後、住宅地平均価格は「底ばい」が続き、2012年と2013年には、同112,600円を記録する。
2013年から上昇へ転じ、14年連続で住宅地平均価格を伸ばしている。
この間、同21万7,200円となった2024年には、バブル経済の絶頂期を上回った

 

 

【福岡市:商業地】続伸続くもバブル頂上期の約3分の2

【公示地価2026】福岡市は変動率で     住宅地2位、商業地5位~~福岡県は住宅地4位、商業地7位~~

出典:福岡市財政局『令和8年地価公示(福岡市分)』住宅地・商業地の平均価格推移(グラフ)

 

福岡市財政局『令和8年地価公示(福岡市分)』では、住宅地と同様に商業地についても『福岡市の地価公示における商業地平均価格推移』(1977年~2026年)として、グラフにまとめている。
1977年に249,700円だった福岡市の商業地平均価格は、順調な伸びを示していく。
『財テク』という言葉の流行した昭和末期には、福岡市の商業地平均価格は、前年比72.6%増という高い伸びを見せた。
そして、1992年には、バブル経済期のピークとなる同248万3,200円まで一気に駆け上がった。

 

 

到来したバブル崩壊に伴い、13年連続で「右肩下がり」となり、2005年には同473,400円を記録している。
2006年から一時的な回復を見せたものの、リーマンショックが発生した2008年以降、5年連続で下落を続けた。
そして、2013年に底打ちした後、14年連続で続伸し、2026年は同1634,800円だった。
2026年時点における福岡市の商業地平均価格は、バブル経済期のピーク時比で65.8%となっている。

 

 

【福岡県:住宅地】変動率トップ10すべてが福岡市内

【公示地価2026】福岡市は変動率で     住宅地2位、商業地5位~~福岡県は住宅地4位、商業地7位~~

出典:福岡県総合政策課『令和8年地価公示の概要(国土交通省土地鑑定委員会実施・福岡県分)』

 

2026年公示地価における福岡県の住宅地平均変動率は3.7%増であり、12年連続の上昇となっている。
その変動率トップ10は、すべて福岡市内だった。

 

住宅地の変動率トップは、福岡市中央区大濠1-13-26の13.7%増であり、同地は住宅地価格でも最高額だった。
住宅地のうち、戸建て住宅地は、福岡市地下鉄七隈線沿線上における需要が堅調に推移しており、高い地価上昇率が継続している。
分譲マンション用地は、富裕層向けの高額マンションの販売が好調を維持し、販売価格も上昇傾向が継続しており、優良なマンション用地の需要は依然として旺盛だ。
一方、一般世帯向けのマンション需要は、建築費の高騰や地価上昇の影響で販売価格が高額となり、売れ行きが鈍化傾向にある。
このため、マンション用地については、二極化の傾向がみられる

 

【公示地価2026】福岡市は変動率で     住宅地2位、商業地5位~~福岡県は住宅地4位、商業地7位~~

出典:福岡県総合政策課『令和8年地価公示の概要(国土交通省土地鑑定委員会実施・福岡県分)』

 

 

【福岡県:商業地】変動率トップ10のうち7カ所が福岡市、4位春日、5位糸島、10位久留米

出典:福岡県総合政策課『令和8年地価公示の概要(国土交通省土地鑑定委員会実施・福岡県分)』

 

2026年の公示地価における福岡県の商業地の平均変動率は、前年比5.2%増で11年連続の上昇だった。
商業地の上昇率トップは福岡市東区箱崎3-13-15であり、再開発が予定されている九州大学箱崎キャンパス跡地近くだ。
前年に続いて、福岡県における商業地の上昇率トップとなった同地は、徒歩圏内に福岡市地下鉄箱崎線の箱崎九大前駅とJR鹿児島本線の箱崎駅があり、マンション開発の需要が旺盛なエリアとなっている。
福岡県における商業地変動率のトップ10のうち、7カ所は福岡市内の標準地がランクインしている。
福岡市外では、第4位に春日市、第5位に糸島市、第10位に久留米市が入った。

 

【公示地価2026】福岡市は変動率で     住宅地2位、商業地5位~~福岡県は住宅地4位、商業地7位~~

出典:福岡県総合政策課『令和8年地価公示の概要(国土交通省土地鑑定委員会実施・福岡県分)』

 

一方、商業地価格の最高額は、『ワン・フクオカ・ビルディング(ワンビル)』のある福岡市中央区天神1丁目であり、28年連続のトップだった。
空室消化が進むオフィス需要は堅調であり、賃料は小幅な上昇基調にある。
国内外のファンドや事業会社などの投資意欲は高く、オフィス需要は比較的堅調に推移している。
もっとも、建築費の高騰の影響で大半の地点で地価の上昇幅は縮小した。

 

都心型商業地は、インバウンド客の増加や国内富裕層の高額品消費が追い風となり、百貨店売上が好調を維持している。
その一方、近年の為替動向による買い控えや購買単価の減少などもみられる。
ホテル用地は、インバウンド客の増加による高稼働率を背景にホテル開発の動きが活発化している。
宿泊費も高騰していることから、周辺相場を大きく上回る取引もみられ、需要は依然として旺盛である。
歓楽街では、中洲が依然として国内外客で賑わっており、出店需要は高い。
飲食店ビル用地の需要も強く、高値での取引がみられ、高い地価上昇率が継続している。

 

 

福岡市・福岡県における今後の地価動向を考える

【公示地価2026】福岡市は変動率で     住宅地2位、商業地5位~~福岡県は住宅地4位、商業地7位~~

 

今後、福岡市・福岡県における住宅地・商業地は、どのように推移していくのだろうか?
この点に関して、納富常務取締役は、次のようにコメントする。

 

納富久雄常務取締役

福岡市は、政令指定都市の中でも人口増加率が最も高く、高齢化率は低く、生産年齢人口も増加しています。
人口が増加する福岡市は、住宅地の需要が強く、マンション需要がけん引する形で地価の上昇傾向が続いています。

福岡県の地価は、基本的に福岡市における地価上昇の影響が福岡都市圏に波及し、さらに広域的に広まっている状況だと思います。

今後の見通しについて、銀行の住宅ローンの融資姿勢は依然積極的であり、返済期間の長期化などで当面、地価の上昇傾向は継続する可能性が高いのではないでしょうか。
もっとも、金利の影響や建築費の動向を踏まえると、地価の上昇余地が少なくなってきた地域が多く、全体的にみると地価の上昇幅の縮小傾向が継続することが想定されます

 

 

地価の動向に関しては、経済合理性や市場原理などに加えて、国内外の経済情勢や社会状況なども大きく関わってくる。
これらの点も踏まえた上で今後の地価推移については、注意深く見守っていく必要があると考える。

 

 

参照サイト

国土交通省土地政策審議官部門『令和8年地価公示の概要』(令和83月)
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001985434.pdf

 

 

福岡市財政局財産有効活用部財産管理課『令和8年地価公示(福岡市分)』
https://www.city.fukuoka.lg.jp/zaisei/zaisan/machi/chikakouji_r8.html

 

 

福岡県『令和8年地価公示の概要(実施:国土交通省土地鑑定委員会)』
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/279456.pdf

 

 

『価格形成要因等の概要』
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001986124.pdf

 

 

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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