エアポートシティ

【 福岡の経済・ビジネス事情 】

福岡空港が生まれ変わり、エアポートシティとして飛躍する ~第2滑走路誕生まで、あと1年~

福岡空港では現在、2025年3月に供用を開始する第2滑走路の増設工事が進んでいます。第2滑走路の運用に合わせて国際線旅客ターミナルビルの増改築工事も急ピッチで進行中です。今後、国内線ターミナル地区では複合施設も建設されます。脱コロナ禍に向けて飛翔していく福岡空港の姿をレポートします。

福岡空港に魅力的な都市スポットが生まれる

2025年3月、既設の第1滑走路西側で増設工事中だった第2滑走路が、いよいよ供用を開始する。
従来、2,800メートル滑走路1本での運用だった福岡空港は長年、遅延や混雑などの課題を抱えていた。
今回、2本目として増設される2,500メートルの第2滑走路が供用されると、航空機の発着可能な滑走路処理能力も増えていく。

 

 

第2滑走路の供用開始を踏まえて福岡空港では現在、国際ターミナル地区において空港施設の新築・増改築工事を進めている。
あわせて、国内線ターミナル地区においても2025年度の完成に向けた施設を整備していく。

 

 

そして、福岡空港開設80周年となる2025年には、第2滑走路が誕生し、空港自体が魅力的な都市スポットに生まれ変わって新たな賑わいや活気を創出していく。
福岡市にとって、新たな魅力や可能性を秘める福岡空港の整備状況を見てみよう。

 

【国際線ターミナル地区】国際線旅客1,600万人に対応した一大施設群を整備

【画像】フクリパ特集

出所:梓設計・隈研吾建築都市設計事務所・西日本技術開発共同企業体

 

福岡空港において、現在の国際線ターミナルの供用を開始したのは、いまから四半世紀前となる1999年だった。
供用を開始した当初、約250万人だった国際線旅客は、2012年度に300万人を突破した。その後、コロナ禍前の2018年度には690万人に達し、施設の狭隘(きょうあい)化が問題視されていた。

 

 

福岡空港を運営する福岡国際空港株式会社では、『福岡空港特定運営事業等マスタープラン』に基づき、国際線ターミナル増改築工事を進めている。
20232月、既存駐車場(897台収容)の立駐化などで約1.4倍の約1,300台に拡大させた新立体駐車場の供用を始めた。

 

 

その後202312月、国際線旅客ターミナルの北側へコンコースを延伸させて、旅客機への搭乗橋を6基から12基に倍増させている。
国際線ターミナル地区では今後、到着ロビーを4,000平方メートル増床して新設する『アクセスホール』が、2024年11月末に完成する予定だ。
アクセスホールの供用開始でバスやタクシーなどの二次交通へのアクセスの円滑化も図っていく。

 

 

そして、増設した第2滑走路の供用を始める2025年3月には、ターミナルビルの床面積で現行の約2倍となる13万6,000平方メートルに拡張する国際線ターミナルビルの増改築工事も完了する。
あわせて免税店エリアも現行の約4倍となる6,000平方メートルに拡充してオープンする予定だ。

 

これら施設面での整備に加えて、旅行客らを対象にした利便性の向上として、自動手荷物預け機を12台新設する。
また、到着エリア内の手荷物受取所のベルトコンベアも現行の4基から8基へ倍増させる予定だ。

 

 

一連のハード面での施設整備に加えて、ソフト面でのサービス充実を図っていくことで福岡空港の国際線旅客ターミナルビルは、国際線旅客1,600万人に対応した一大施設へ生まれ変わっていく。

 

 

国内線ターミナル地区】複合施設誕生で年間800万人の一般客を呼び込む

【画像】フクリパ特集

出所:梓設計・HOK・西日本技術開発共同企業体

 

国内線ターミナル地区では、現行の立体駐車場東側に新たな立体駐車場を建設している。
2024年春に完成する新立体駐車場の収容台数は約1,600台であり、現行の立体駐車場(837台収容)の機能を移転させることで収容台数を倍増させる計画だ。

 

 

そして、現行の立体駐車場跡地に商業・オフィス・ホテル・バスターミナル機能を備えた複合施設を建設する。
2024年度に着工する複合施設は、2025年度に完成する予定だ。
そして、九州をはじめ広く西日本一帯から年間800万人以上の一般客を呼び込むことが期待されている。

 

 

一方、国内線旅客ターミナルビル内においても旅行客向けの利便性向上の一環として、2024年から保安検査場にスマートレーンを順次導入し、出発手続時間の短縮を図っていく。

 

 

福岡空港は2048年、東アジアのトップクラスの国際空港へ

東・東南アジアへの就航国数で日本一となる14ヵ国・地域に51路線を就航。
国際線1,600万人・国内線1,900万人の総旅客数3,500万人 、国際線67路線・国内線33路線の合計100路線
World Airport Star Rating(SKYTRAX社運営)世界最高水準の5スターエアポートに定着━━。

 

 

福岡空港を運営する福岡国際空港株式会社は、『福岡空港特定運営事業等マスタープラン』における30年後の将来イメージとして、「比類なき東・東南アジアの航空ネットワークを有する、東アジアのトップクラスの国際空港」を打ち出す。

将来イメージの実現に向けて、マスタープランで掲げる5つの基本コンセプトの一つが『エアポートシティ』だ。
エアポートシティとは、福岡市都心部の博多駅から地下鉄で5分という都市型空港である福岡空港において、都市の役割・機能の一部を補完して〝交通拠点の殻を破る〟という画期的な取り組みでもある。

 

【画像】フクリパ特集

出所)『福岡空港特定運営事業等マスタープラン』

 

 

 

基本コンセプト『エアポートシティ』とは何なのか

エアポートシティの実現に向けた取り組みの一つが、国内線ターミナル地区での複合施設の建設であり、国際線ターミナル地区でも増改築工事による施設整備を進めている。
これらハード面での整備にとどまらず、顧客向けサービスも含めたソフト面でもエアポートシティとして、「世界最高水準の空港サービスの提供」を目指す。

 

 

そして、空港サービスの質的向上にむけて、Free(楽に)Fast & Seamless(早く)Fun(楽しく)の〝3F〟を推進しながら、将来的な変化にもFlexible(しなやか) に対応していくという方針を採る。
また、福岡空港では、おもてなしや賑わいの演出を通じて〝日本の玄関〟としての役割も担う。
さらに国際線ターミナル地区と国内線ターミナル地区を結ぶ内際連絡バスについても専用道化によって、移動時間を5分以内に短縮させていく。

 

 

そして、世界的な空港格付けランキングである『World Airport Star Rating』(実施:スカイトラックス社)で世界最高水準の〝5スターエアポート〟としての定着を図りたいとする。
また、旅客機を利用する旅行客、搭乗しない一般客への空港満足度アンケート調査(10段階評価)で共に〝総合満足度8.5以上〟の達成を目指していく。

 

 

エアポートシティとは、都市型空港である福岡空港において、高水準の空港サービスを提供する一方、〝交通拠点としての殻〟を破って都市機能の一部補完をし、気軽に飛行機を楽しみながら、食事や買い物などで人々がやって来る、新たなまちづくりへの挑戦といえる。

 

 

開設80周年の2025年、増設した第2滑走路がデビュー

【画像】フクリパ特集

画像提供:福岡市(一部加工処理済)

 

福岡空港内では現在、開設80周年となる2025年の第2滑走路の供用開始に向けて増設工事が急ピッチで進んでいる。
福岡空港では過去、20年にわたって「新空港建設か」「現空港の滑走路増設か」について議論を重ねてきたという経緯もある。

 

 

20163月に航空法上の混雑空港に指定された福岡空港の滑走路処理能力は、年間164,000回とされていた。
滑走路処理能力の向上に向けて、20201月に完了した国内線ターミナル側の平行誘導路二重化工事で年間17万6,000回に増えた。
そして今回、現滑走路西側に増設する全長2,500メートル・幅60メートルの第2滑走路の供用開始で18万8,000回~21万1,000回に拡大する見込みだ。

 

 

福岡空港での第2滑走路の供用開始に先立って2024年10月末、国際線ターミナルビル側で建設中だった新管制塔が完成する。
高さ94.2メートルの新管制塔は、羽田空港の管制塔(高さ115.7メートル)に次いで、日本国内で2番目に高い管制塔だ。

 

 

【画像】フクリパ特集

完成イメージ(提供:大阪航空局/(株)梓設計)

参考記事:福岡空港に高さ94.2mの日本で2番目に高い新管制塔が10月末に完成予定【福岡市博多区】

 

【画像】フクリパ特集

出所)令和元年度 第3回 九州地方整備局 事業評価監視委員会 福岡空港 滑走路増設事業

 

映画『ゴジラー1.0』で話題の試作機『震電』も飛んだ福岡空港

【画像】フクリパ特集

大刀洗平和記念館(福岡県筑前町)に展示されている『震電』の実物大レプリカ(右奥は零式艦戦32型)

 

いまから約80年前の19442月、北部九州の防衛基地として2215,000平方メートルの飛行場用地に600メートルの滑走路の建設工事が始まり、翌19455月に完成した。
終戦直前の同年8月、映画『ゴジラ-1.0(マイナスワン)』でも話題を集めた試作戦闘機『震電』が3回、試験飛行で飛んでいる。

 

 

終戦後、飛行場用地は旧所有者に返還されたものの、占領軍の進駐と同時に接収された。
そして、土地の賃貸契約が結ばれて板付飛行場としてのスタートを切った。
朝鮮戦争勃発後の1951年、日本とアメリカとの相互協定および安全保障条約の締結で板付飛行場の基地提供が正式に決定した。
そして、米軍了解の下、同年10月に国内線(福岡~大阪~東京)を開設し、民間飛行場として使用し始めた

 

 

福岡空港の開設から半世紀近く経った1993年3月、福岡市地下鉄が乗り入れたことで交通アクセスが飛躍的に向上した。
森記念財団都市戦略研究所『世界の都市総合力ランキング』によると、福岡空港へのアクセス時間5分は、世界の主要48都市の中でも第1位との評価を得ている。

 

 

2012年、ターミナルビルのセットバックと平行誘導路二重化整備を核にした国内線ターミナル地区再整備事業が始まり、20201月に完了した。
20161月から始まった滑走路増設事業は20253月、第2滑走路が供用を開始する予定だ。

 

 

福岡空港は民間運営委託5周年、脱コロナ禍での新たな飛翔を期す

福岡空港は2019年4月、コンセッション方式による空港運営の民間委託が始まった。
コンセッション方式とは、国に滑走路等の所有権を残したまま、滑走路やターミナルビル、貨物ビル、駐車場などの運営権を売却して、民間に空港運営を委託する手法だ。

 

 

福岡空港に関するコンセッションでは、公募・審査を行った結果、旧福岡空港ビルディングの株主で組織された福岡エアポートホールディングスを代表企業とする地場企業グループが選ばれた。
同グループでは、西日本鉄道株式会社、三菱商事株式会社、九州電力株式会社が構成メンバーとして名を連ねる。

 

 

そして、福岡空港を運営する特定目的会社として2018年7月、福岡国際空港株式会社を設立した。
福岡国際空港株式会社の小林智子広報課長は、これまで5年間の民間委託を振り返りながら、今後の展望や豊富について、次のように語る。

 

 小林智子広報課長

2019年4月から空港運営がスタートしました。
それまでターミナルビルや駐車場の運営経験はあったものの、滑走路については初めてであり、試行錯誤しながら取り組み始めました。

そうした中、新型コロナウイルス感染症が発生して運営開始1年も経たない時期から国際線の旅客機が全く運航されない日もありました。
このようなコロナ禍に際し、「みんなで一緒に福岡空港を良くしていこう」という思いで航空会社やテナント、官公庁なども含む福岡空港に関わる事業者で『TEAM FUK(チーム福岡空港)』を組織しました。
TEAM FUKでは、福岡空港全体のCS(顧客満足度)向上に取り組み、さらに人材採用に向けた合同の会社説明会も開催しています。

2025年3月には、2本目となる増設滑走路の供用も始まって便数も増えていくので、国際線旅客ターミナルビルを大幅に拡張します。
多くのお客さまを心地よい空間でお迎えできればと考えています。
また、国内線側は、航空機をご利用になる方だけなく、一般のお客さまにも気軽に空港へ遊びに来て、展望デッキなどで離着する飛行機の姿を眺めながら、食事や買い物などを楽しむことができるスポットになっています

安全・安心を第一に取り組みながら、すべてのお客さまへ笑顔と感動をお届けできるように、親しまれて愛される空港づくりに努めてまいります。

 

 

【画像】フクリパ特集

福岡国際空港株式会社の小林智子広報課長

 

 

いま、福岡空港とまちづくりの関係性について考える

福岡市街地に福岡空港が立地することで福岡市をはじめ福岡都市圏、福岡県および近隣自治体は、首都圏をはじめアジアなどの海外諸国・地域ともつながっている

 

 

福岡・博多は古来、博多湾の港を介して国内外とつながり、人々が往来して文物の取引も行ってきた歴史がある。
20世紀後半以降、空の〝港〟である福岡空港の重要性が高まり、歩調を合わせるように福岡市の存在感も高まっていった

 

 

エアポートシティというコンセプトの下、〝交通拠点の殻を破る〟まちづくりは新たな挑戦であり、今後も注目し続けていきたいと考える。

 

【画像】フクリパ特集

出所:梓設計・HOK・西日本技術開発共同企業体

 

 

参照サイト

令和元年度 第3回 九州地方整備局 事業評価監視委員会 福岡空港 滑走路増設事業
https://www.qsr.mlit.go.jp/site_files/file/s_top/jigyo-hyoka/191126/shiryo3%20fukuokakuukou.pdf

 

Nxエヌカケル『福岡空港が一つの”街になっていく――。30年先の未来図まで徹底取材!』
https://nnr-nx.jp/article/detail/11

 

国土交通省九州地方整備局 博多港湾・空港整備事務所 管内の港湾・空港:福岡空港
https://www.pa.qsr.mlit.go.jp/hakata/port/airport/

 

福岡国際空港株式会社『福岡空港国際線ターミナル増改築計画』(2022520日)
https://www.fukuoka-airport.jp/uploads/2022/05/fuk-int-20220520.pdf

 

福岡国際空港株式会社『福岡空港特定運営事業等マスタープラン』
https://www.fukuoka-airport.co.jp/uploads/2019/04/20190423_mp.pdf

 

 

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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