多彩な鶏料理のある福岡市の世帯は鶏肉に年間2万円強を支出
出所:家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※)ランキング(2020年(令和2年)~2022年(令和4年)平均)
鶏肉への家庭における支出額について、日本の主要52都市での第1位は、福岡市の2万1,612円だった――。
統計法に基づく基幹統計である家計調査では毎月、全国約9,000世帯を対象に家計の収入・支出、貯蓄・負債などについて調べている。
そして、家計調査の結果は、景気動向の把握をはじめ、生活保護基準の検討、消費者物価指数の品目選定およびウエイト作成などの基礎資料として利用される。
47都道府県庁所在地に5つの政令指定都市(川崎市、相模原市、浜松市、堺市、北九州市)を加えた、日本の主要52都市で暮らす二人以上の世帯を対象に2020年~2022年の家計支出を調べた。
その結果、鶏肉の支出額において、福岡市が全国トップだった。
鶏肉の福岡市の二人以上の世帯における支出額2万1,612円は、牛肉の同2万6,714円(52都市中16位)、豚肉の3万912円(同33位)に次ぐ金額であり、ハム・ソーセージ・ベーコンなどの加工肉の1万7,116円(同43位)を大きく上回っている。
福岡市では1世帯あたり年間23キロ強・18羽強の鶏肉を購入
画像提供:福岡市
一世帯あたりの鶏肉の購入量では、福岡市の23キロ614グラムを筆頭に第2位熊本市23キロ485グラム、第3位宮崎市22キロ761グラムと、トップ3を九州内の都市が独占した。
さらに第5位大分市、第6位佐賀市。第7位鹿児島市、第8位北九州市がランクインしており、トップ10のうち実に7都市が九州内に位置する。
福岡市で世帯での鶏肉購入量23キロ614グラムは、牛肉の同8キロ295グラム(同15位)、豚肉の同21キロ498グラム(同28位)よりも多い。
全国46道府県で食肉を扱う約4,000軒の小売店が加盟する全国食肉事業協同組合連合会によると、鶏の生体重量のうち約7割が骨付き肉となり、
そして正肉や毛羽先、ささみなどの鶏肉となる割合は5割強だ。例えば、1羽2キロ500グラムの成鶏から採れる鶏肉は1キロ300グラム強であり、福岡市では1世帯あたり年間18羽強を消費している計算になるのだ。
なぜ、福岡市民は、こんなに鶏料理が好きなのか?
福岡の鶏食文化に詳しい日本経済大学の竹川克幸教授によると、江戸期に享保の飢饉などで深刻な財政難に陥った福岡藩は、財政立て直しの一環として鶏卵を藩の専売品〝筑前卵〟として鶏卵会所を通じて大阪方面に出荷するなど、採卵用の養鶏を奨励していた。
そして、鶏肉や鶏卵、南蛮料理の調理法を記した料理本が江戸時代に出版された影響もあり、卵を産まなくなった廃鶏を中心に、人々の間で滋養食としての鶏食が浸透していったそうだ。
事実、福岡藩の農学者だった宮崎安貞は著書『農業全書』で養鶏を奨励した。
同じく福岡藩の儒学者であり、『養生訓』の著者だった貝原益軒も滋養食として鶏食を薦めている。
このような味わい深い歴史的な背景も踏まえながら、福岡のおいしい鶏料理を召し上がられてみてはいかがろうか。
参照サイト
家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※)ランキング(2020年(令和2年)~2022年(令和4年)平均)
https://www.stat.go.jp/data/kakei/5.html
あわせて読みたい
福岡市民の〝鶏(鳥)料理好き〟は、江戸時代にまでさかのぼる⁉