【「国際金融機能」誘致に挑戦するFUKUOKA!】

福岡らしい国際金融機能の集積で、「国際都市」に生まれ変わる!

福岡への国際金融機能誘致を目指すオール福岡の推進組織「TEAM FUKUOKA」は、「国際金融機能の集積で、継続的にイノベーションを創出する国際都市」を目指しています。そのためには、行政サービス、オフィス環境、英語対応専門の弁護士・会計士等の確保、高度人材に対応した住宅・生活サポート—など課題も山積しています。

国際金融機能の集積で、文字通りアジアへのゲートウエー福岡/九州でありたい

2021年11月4日、福岡への国際金融機能誘致を目指す産学官によるオール福岡の推進組織「TEAM FUKUOKA(チーム福岡)」の総会が福岡市で開かれた。総会では、これまで会長を務めてきた前九州経済連合会会長の麻生泰氏(麻生セメント会長)に代わって現九経連会長の倉富純男氏(西日本鉄道会長)が就任、麻生氏は顧問に就いた。倉富会長は就任の挨拶で、次のように述べた。

倉富会長

福岡市には、グローバル創業・雇用創出特区として、企業をサポートするなど新しいものを取り込んでいく風土がある。このチャンスを生かし、金融に限らず海外の企業等を呼び込み取り込んでいくことで新しいマーケットを生み出し、文字通りアジアへのゲートウエー福岡/九州でありたいと考えています。 
これを機会として、世界のESG(Environment=環境、Social=社会、Governance=ガバナンス)【※1】、DX(デジタルトランスフォーメーション)などの動きを取り込み、九州の企業の持続可能なビジネスモデルの構築につなげていくチャンスでもある。


 
【※1】持続可能な世界の実現のために、企業の長期的成長に重要な環境(E)・社会(S)・カバナンス(G)の3つの観点
 
課題や誘致の取り組み状況の報告もあり、チーム発足後1年で、誘致第1号でアジア有数の資産運用会社であるMCPホールディングス・リミテッド(本社・香港)など海外から3社、国内企業など7社の合計10社の福岡が決まった。
 
「チーム福岡」は、福岡証券取引所をはじめ福岡商工会議所、福岡市や県、九州大学、福岡経済界の主要な企業で構成する「七社会」加盟社【※2】、九州・山口地域の総合経済団体「九州経済連合会」(会員数約1000社)など県内16企業・団体で構成するが、この会員企業を九州全体に広げていくことも全員一致で確認した。
 
【※2】九州電力、西部ガス(エネルギー)、JR九州、西日本鉄道(運輸)、ふくおかFG、西日本FH(金融)、九電工(電気工事)
 

「チーム福岡」、ワンストップサポート窓口、国際金融アンバサダーを設ける

2020年6月、香港国家安全維持法が施行され、自由な経済活動への影響を懸念する金融関係者が香港から流出する可能性が指摘されたことから、政府が外資系金融機関の誘致強化に乗り出し、(東京に加えて)大阪を中心とする関西圏と福岡県を候補地に挙げた。

福岡市の髙島宗一郎市長がこれに応じ、福岡への国際金融機能の誘致に向けて、産学官がそれぞれの特性を生かし、オール福岡で推進するため、9月に「チーム福岡」を立ち上げていた。
 
その動きを加速していくために、同年10月、国際金融に特化したワンストップサポート窓口「Global Finance Centre」(GFC:グローバル・ファイナンス・センター)を開設。窓口は、旧大名小学校跡地(同市中央区)の創業支援施設「Fukuoka Growth Next(福岡グロースネクスト)」1階のスタートアップカフェに置いた。
 
福岡市への進出を検討している外資系金融機関を対象に、金融業に精通した英語・中国語等の堪能なスタッフが無料でサポート。福岡市での拠点設立にあたってのビザ取得や補助金等に関する案内、そのほか住宅探しや外国語対応可能な病院の紹介などにも柔軟に対応している。
 
誘致活動をさらに促進するために、国際金融に精通し、外資系金融機関等との人的ネットワークを持つ人材を「福岡市国際金融アンバサダー」とする委嘱制度(無償)を設けた。同年11月、BNPパリバ証券の岡澤恭弥・グローバルマーケット日本・韓国統括責任者が第1号の同アンバサダーに就任。2021年1月には、シンガポール取引所東京事務所の與利博氏に委嘱し、香港・シンガポールというアジアの2大国際金融拠点にネットワークを持った。

岡澤氏はBNPパリバ証券取締役を退任し、ことし7月、MCPグループが福岡市に日本本社として設立したMCPジャパン・ホールディングス社長に就任。優れた環境技術を持つ企業や先進的な取り組みをしている農業法人などに出資する計画だと報じられている。
 

「資産運用」、「Fintech」、「BCP対応」分野を重点的に誘致

「チーム福岡」では、金融機関のシンクタンクなどから講師を招いて、国際金融都市をめぐる環境の変化などについての勉強会を重ね、国の動きを見ながら何ができるか、福岡が目指す方向性を探ってきた。

それがミッションの「福岡らしい国際金融機能の集積により 継続的にイノベーションを創出する国際都市を目指す!」につながった。


福岡が目指す方向性
 
福岡は、東アジアでも地理的優位性があり、3時間以内(空港までのアクセス時間を含む)で到達できるアジアの都市の総人口は1億人が視野に入る。国内外の交通の結節点であるとともに、耐震性に関する国内評価も最も高い、日本海側で最大の都市圏である。
 
「日帰り国際会議」が開催できる福岡からの距離
 
福岡市は国内唯一のスタートアップ都市で、官民共同の創業支援施設「福岡グロースネクスト」 を置き、スタートアップを生み出す取り組みを加速させている。再開発プロジェクト「天神ビッグバン」や「博多コネクティッド」によって、都心部にハイクオリティなオフィス環境も整備している。
 
福岡市には、14の大学と9の短期大学が立地し、学生数は約7万7,000人に上り、学生が多いまちであることから「大学のまち福岡」を掲げている。福岡県は理工系人材が豊富であり、福岡市にはエンジニアが集積している。
 
以上のような福岡の特性をアピールして、未来志向の国際金融機能の集積を進めており、特に「資産運用」、「Fintech」【※3】、「BCP(事業継続計画)対応」分野を重点的に誘致したい考えだ。福岡県は、一般社団法人Fintech(フィンテック)協会と連携協定を結び、フィンテック産業の振興や集積を図り、仮想通貨やクラウドファンディングなどフィンテックを活用した新たな金融サービスの実現を目指している。
 
【※3】金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、金融サービスと情報技術を結びつけたさまざまな革新的な動きを指す。インターネットやスマートフォン、AI(人工知能)、ビッグデータなどを活用したサービスを提供する新しい金融ベンチャーが次々と登場している。
 

金融機能は福岡を中心としてしっかり土台をつくり、九州のお役に

11月4日の「チーム福岡」総会後に記者会見した倉富会長は、次のように語った。

倉富会長

九州全体を視野に入れ、九州全体を一緒になって元気にしていく中での福岡の元気という考え方が良いのでは、ということです。それで、会員企業も希望があれば九州全体で考えていこうということになった。もちろん、金融機能は福岡を中心としてしっかり土台をつくっていくことが九州のお役にも立っていくと考えている。
金融機能と言いながら、インフラとして足りないものは相当ある。身近な例として、英語で会話できる環境、英語の能力はつけていかなくてはいけない。教育の問題もありますが、弱い気がします。


「チーム福岡」総会後の記者会見で(左から、麻生前会長、倉富会長、髙島市長、池辺和弘九州電力社長)
 
高島宗一郎市長もまた、こう付け加えた。

高島市長

インバウンドを増やしていきたいのであれば、アウトバウンドを増やしていかないといけないのと同じように、この1年で、企業の誘致は東京、大阪と違って多くの成果を上げています。次は、九州のマネーをどれだけ外にも出していけるか。これは我々がどれだけリスクをとれるか、ということで大きな課題になってくる。
今回、エリアを九州に広げたことで、九州の中でもチャレンジする企業の皆さんと一緒にいろんな取り組みを進めていきたい

福岡/九州の企業がアジアで事業を展開する場合、運転資本や工場などを現地通貨建てで持つことになり、為替変動のリスクをヘッジするためには、現地通貨建ての銀行借り入れや社債発行など、現地通貨による資金調達が必要となる。

この現地通貨建ての融資や社債を通貨スワップで日本円の投資対象とし、アジア投資ファンドとして福岡証券取引所に上場することも考えられる。運用難に悩む国内の金融機関や個人資産の運用手段の一つになれば、九州企業の海外進出を後押しすることにもなりそうだ。

福岡にはこれまで、国際ビジネス拠点誘致の経験とノウハウがほとんどなかった。国際金融機能誘致のプロセスでノウハウをしっかりと蓄積し、「国際都市」としてステップアップしていってほしいものだ。

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経済ジャーナリスト
神崎 公一郎
1952年、長崎県生まれ。早大卒。地方紙記者、月刊経済情報誌「エコノス」の編集長を経て、㈱プロジェクト福岡を設立、代表を務める。 現在、日本マーケティング協会九州支部の機関紙、西日本シティ銀行の広報誌の執筆・編集や地元企業の社史執筆に従事する。まちづくり、コンベンションに関心が深い。

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