【序章】一般的な観光と異なるMICE(国際会議など)とは何か

出典:日本政府観光局『2024年JNTO国際会議統計~年間開催件数は前年比1.2倍の1,702件、外国人参加者数の回復が先行~』
【2024年JNTO国際会議統計概要】
開催件数:前年比23.7%増の1,702件、参加者数:同22.1%増の124.1万人(うち外国人数:同22.8%増の15.9万人)━━。
日本政府観光局(正式名称:独立行政法人国際観光振興機構)は2025年12月10日、『2024年JNTO国際会議統計』を発表した。
同発表によると、2024年に日本で開催された国際会議は、開催件数・参加者総数ともに前年から堅調に伸長していたものの、コロナ禍以前に比べると、まだ道半ばだった。
近年、国際会議をはじめ、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称として、MICEと呼ばれることが多い。
MICEとは、企業などの会議(Meeting)、企業などの行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会などが行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字による造語だ。

MICEは、企業・産業活動や研究・学会活動などと関連することが多く、単なる観光振興としてのみ捉えるのではなく、産業や学術の振興にも寄与するという性格をもつ。
MICEについては、「人が集まる」という直接的な効果をはじめ、人の集積や交流などによって、さまざまな付加価値や意義があるとされている。
MICEの主な効能として、国土交通省観光庁では、下記の5項目を挙げている。
◎地域への経済効果
◎ビジネス・イノベーションの機会の創造
◎国・都市の競争力向上
◎交流人口の平準化
◎レガシー

2026年に福岡市で開催されるMICEとしては、日本初開催となる『世界観光ガイド連盟総会』(WFTGA2026)をはじめ、世界最高峰のチェルシーフラワーショーに準拠した『Fukuoka Flower Show 2026』、日本で30年振り2回目となる『国際プラネタリウム協会国際会議in福岡』、世界約50カ国から約4,000人(うち海外約2,500人)の参加者が見込まれる『アジア・オセアニア地球科学学会』2026年次総会などが控えている。
日本初の世界観光ガイド連盟(WFTGA)総会が福岡市で開催

画像提供:九州通訳・翻訳者・ガイド協会
2026年2月9日~13日、世界の観光ガイドのプロフェッショナルらが集まる『第21回世界観光ガイド連盟総会』(WFTGA2026)が、福岡国際会議場(福岡市博多区)で開催される。
1985年に設立された世界観光ガイド連盟(WFTGA)は、プロフェッショナルの観光ガイドのための国際的な団体であり、観光ガイドを対象としたトレーナー認定機関だ。
オーストリア・ウィーンに本部を置き、世界87カ国・20万人以上のプロの観光ガイドが参加する世界最大規模の団体でもある。
隔年で開催されているWFTGA総会の福岡市開催は、日本で初めてとなる。
2026年総会であるWFTGA2026のテーマは「未来志向の持続可能な観光(Sustainable Tourism for the Future)」。
総会の前後には、九州や日本の文化を学ぶツアーも実施される。
2026年1月31日現在、47カ国から620人の参加が予定されている。
うち520人が海外からの参加者であり、そのうち92%にあたる483人は欧米豪からの来訪者だ。
旅のプロである世界の観光ガイドらがインフルエンサーとして、福岡・九州・日本の観光情報を世界に発信することが期待されている。

『第21回世界観光ガイド連盟(WFTGA)総会』が開催される福岡国際会議場(画像提供:福岡市)
なぜ、福岡市への世界観光ガイド連盟総会の誘致ができたのか

画像提供:九州通訳・翻訳者・ガイド協会
2024年1月、イタリア南部の地中海に浮かぶシチリア島の都市・シラクーサで第20回世界観光ガイド連盟総会(WFTGA2024)が開催された。
同会議において、次回会議の開催都市を決める最終プレゼンテーションが行われた結果、WFTGA2026の開催都市として福岡市が選ばれた。
WFTGA2026のホスト団体となる九州通訳・翻訳者・ガイド協会(K-iTG)をはじめ、公益財団法人福岡観光コンベンションビューロー、一般財団法人福岡コンベンションセンターによる誘致チーム一同は、喜びと安堵の表情を浮かべたという。
前回のWFTGA2022では誘致に至らなかったものの、2回目の挑戦となった今回のプレゼンテーションで、福岡市への誘致が決まった。
前回の失敗要因を分析・解決して臨んだWFTGA2024でのプレゼンテーションでは、国土交通省観光庁、日本政府観光局とも連携してオールジャパン体制を打ち出した。
WFTGA2024のプレゼンテーションでは、日本全体、そして福岡・九州それぞれの観光資源や施設の魅力に加え、計画の実行性や関係者の熱意が評価された結果、競合したマレーシア、アイルランドなどの候補都市を破り、福岡市での開催が決まった。
こうした一連の誘致活動について、日本政府観光局(JNTO)が毎年表彰する『国際会議誘致・開催貢献賞』(2024年度・誘致の部)に選定された。

画像提供:九州通訳・翻訳者・ガイド協会
福岡観光コンベンションビューローのMICE誘致部署であるMeeting Place Fukuokaの中上朗子さんは、今回のWFTGA誘致について、次のように語っている。
中上朗子さん
「日本へ行きたい」という潜在的なニーズは、さらに高まっています。
WFTGA2024のプレゼンテーションでは、日本各地への交通アクセスにも優れた都市・福岡をアピールしました。
福岡市街地にある福岡空港は、アジアからの直行便が数多くあり、ヨーロッパやアメリカからも中継地を経由してつながっています。
また、福岡空港は、日本国内の都市への路線就航も多く、交通アクセスに優れています。
福岡市自体は、コンパクトで便利な街であり、海や山も近く、寺社仏閣や史跡が多い上、食事もおいしいと評判の都市です。
また、福岡市から温泉などでも人気の高い九州各地の観光地への交通も便利です。
海外から来られた方々にとっては、旅先での人の優しさや出会いなどが帰国後も印象に残ります。
「福岡は良い街だった」という印象をさらに持ってもらえる都市でありたいと思っております。

福岡観光コンベンションビューロー・Meeting Place Fukuokaの中上朗子さん
JNTO国際会議2024年統計で福岡県3位、福岡市3位
2026年に福岡市で開催されるMICEは、日本初開催となる『世界観光ガイド連盟総会』(WFTGA2026)、世界最高峰のチェルシーフラワーショーに準拠した『Fukuoka Flower Show2026』、日本で30年振り2回目となる『国際プラネタリウム協会国際会議in福岡』などが控えている。
【都道府県別開催件数】
第1位:東京都371回、第2位:京都府230回、第3位:福岡県181回……。
【市町村別開催件数】
第1位:東京23区351回、第2位:京都市215回、第3位:福岡市131回……。
日本政府観光局『2024年JNTO国際会議統計』によると、2024年の国際会議における都道府県別の開催件数で第3位は、181回開催の福岡県であり、市町村別の第3位は、131回開催の福岡市だった。
JNTO国際会議統計における国際会議の選定基準は、下記の通りだ。
◎主催者:国際機関・国際団体(各国支部を含む)、または国家機関・国内団体(「公共色を帯びていない民間企業」以外は全て対象)
◎参加者総数:50人以上
◎参加国数:日本を含む3居住国・地域以上
◎開催期間:1日以上

出所:日本政府観光局『2024年JNTO国際会議統計』

出所:日本政府観光局『2024年JNTO国際会議統計』
都市・地域にMICE(国際会議など)がもたらす経済効果とは

画像提供:福岡観光コンベンションビューロー
MICEとしての効能の一つとして、「地域への経済効果」が挙げられている。
MICEのうち、海外の企業や国際的な学会から多くの関係者が参加するものを国際MICEと呼ぶ。
他方、主に国内の企業や団体が参加するイベントは、国内MICEだ。
観光庁は2018年4月18日、2016年に日本国内で開催された国際MICE全体による経済波及効果を初めて算出し、発表した。
同発表によると、2016年の国際MICEによる経済波及効果は、約1兆590億円だった。
そして、新たに生じた雇用創出効果は約9万6,000人分、税収効果は約820億円となっている。
国際MICEで訪日した外国人参加者1人当たりの平均消費額は、約33.7万円(国際航空運賃除くと、約26.1万円:主催者費用を含む)だった。
この金額は、訪日外国人1人当たりの平均消費額である約15.6万円(観光庁『訪日外国人の消費動向調査』2016年)の約2倍前後となる数値だ。
『福岡市の観光・MICEの概況』2025年版では、福岡市内におけるMICE開催時の経済波及効果について、観光庁『MICE開催による経済波及効果測定のための簡易測定モデル』を活用して算出する。
参加者約6,200人(うち外国人約240人)、会期3日間の医学会の場合、その経済波及効果は約13億円と試算している。
地域への経済効果に加えて、「ビジネス・イノベーションの機会の創造」も国際MICEの効能として挙げられる。
国際会議や展示会で築かれたビジネスネットワークは、販路拡大につながる。
グローバル企業との共同研究や世界の先進的研究者との交流も期待できる。
また、インセンティブツアーにおける現場体験では、日本の技術力や商品・サービスに対する認知・理解を深め、日本製品の購入や地域の産業振興の推進も可能にしていく。
開催都市においては、ブランドや競争力の向上にも寄与し、MICEを通じたネットワーク構築は、「国・都市の競争力向上」も期待できる。
一方、MICEは「交流人口の平準化」にも寄与する。
一般的な観光は週末に集中する”休日型”なのに対して、平日に開催されることの多いMICEは”平日型”だ。
観光地・開催地にとって休日型と平日型のすみ分けは、交流人口の平準化をもたらす。
MICE(国際会議など)による都市・地域への観光効果を考える
観光庁は、MICEの効能の一つとして、「国・都市の競争力向上」を挙げている。
英国の市場調査会社ユーロモニターインターナショナルは2025年12月4日、『2025年世界の観光都市ランキング』(Top 100 City Destination Index 2025)を発表した。
同ランキングでは、パリが5年連続で第1位となり、東京は2年連続で第3位だった。
第11位に大阪(前年第16位)がランクインし、第19位に京都(同27位)が入った。
さらに日本からは、第50位:札幌(同65位)、第64位:福岡(同64位)がランクインしている。
『2025年世界の観光都市ランキング』にランクインした5都市は、『2024年JNTO国際会議統計』によると、東京23区・MICE351回開催(JNTO統計1位)、大阪市・同89回開催(同5位)、京都市・同215回開催(同2位)、札幌市・同47回開催(同10位)、福岡市・同131回開催(同3位)だった。
MICEの開催地となる都市は、観光地としての人気や知名度の高いところから選ばれる傾向がある。
開催地・受入地サイドから見れば、”平日型”のMICEは、”休日型”である観光とのすみ分けによる好循環が期待できる。

出所:ユーロモニターインターナショナル『2025年世界の観光都市ランキング』
MICE(国際会議など)の核となるMICE人材をいかに育成するのか

福岡グローバルMICEスクールでの模様(画像提供:福岡観光コンベンションビューロー)
今後のMICEは、誘致活動に加えて、円滑かつ満足度の高い開催を実現し、開催都市・地域における経済効果を生み出しながら、将来的な経済・観光の”新たな資産”となる「レガシー」をいかに育んでいくかがカギとなる。
そして、いま、国を挙げてMICE人材の育成に向けて、動き出している。
観光庁は2025年6月12日、『将来の国際会議主催者育成のための地域・大学連携等促進事業』の採択結果を発表した。
同事業で採択された16件のうち九州からは、大分県別府市にある立命館アジア太平洋大学の「若手社会起業家の活動促進を図るための国際会議新設とその実施に伴う人材育成事業」が選ばれた。
一方、福岡観光コンベンションビューローでは、MICE企画運営会社やホテル、旅行会社、施設運営業者などに向けたMICE人材の育成事業として、大学生・短大生・専門学校生を対象に『福岡グローバルMICEスクール』を開講している。
2019年からスタートした同スクールでは、約100人の学生らが講義と体験による10ヵ月間のプログラムを学ぶ。
コロナ禍後、一般的な観光の中心となるインバウンド客(訪日外国人客)は、順調な回復をみせている。
一方、多大な準備期間を要するMICEについては、回復途上にあるといえそうだ。
今後、本格的なMICE回復期に向けて福岡市は、MICE市場において、どのような存在感を打ち出していくのか。
MICE人材の育成も含めた戦略的で総合的な取り組みが重要になるものと考える。
参照サイト
日本政府観光局『2024年JNTO国際会議統計~年間開催件数は前年比1.2倍の1,702件、外国人参加者数の回復が先行~』
https://www.jnto.go.jp/news/_files/20251210_1400.pdf
国土交通省観光庁『MICEとは』
https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/kihonkeikaku/inbound_kaifuku/mice/micetoha.html
国土交通省観光庁 国際観光部 MICE室『MICEの意義』
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/810000969.pdf
九州通訳·翻訳者・ガイド協会『世界観光ガイド連盟(WFTGA)<第21回WFTGA総会–2026年2月 日本・福岡にて開催>』
https://k-itg.or.jp/2025/02/26/%e4%b8%96%e7%95%8c%e8%a6%b3%e5%85%89%e3%82%ac%e3%82%a4%e3%83%89%e9%80%a3%e7%9b%9f%ef%bc%88wftga%ef%bc%89/
日本政府観光局『2024年JNTO国際会議統計資料編1:国内都市別国際会議開催件数一覧表』
https://mice.jnto.go.jp/assets/doc/survey-statistical-data/cv_tokei_2024_shiryohen1.pdf
福岡市『福岡市の観光・MICEの概況』2025年版
https://www.city.fukuoka.lg.jp/keizai/marketing/shisei/documents/kankotoukei2025.pdf
国土交通省観光庁『令和7年度「MICE開催地としての魅力向上事業」2次採択結果のお知らせ』
https://www.mlit.go.jp/kankocho/kobo09_00039.html
ユーロモニターインターナショナル『2025年世界の観光都市ランキング、東京は3位、大阪・京都もトップ20入り』
https://www.euromonitor.com/newsroom/press-releases/december-2025/top-100-city-destinations-in-japanese
国土交通省『観光の現状について』
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kankorikkoku/dai26/siryou.pdf
国土交通省観光庁『将来の国際会議主催者育成のための地域・大学連携等促進事業の採択結果のお知らせ』
https://www.mlit.go.jp/kankocho/kobo09_00031.html
福岡市・福岡観光コンベンションビューロー『これからのMICE業界で活躍する人材を育成!「福岡グローバルMICEスクール」受講生を募集します!!』
https://www.city.fukuoka.lg.jp/shisei/kouhou-hodo/hodo-happyo/2025/documents/MICEschool2025bosyuu.pdf









