福さ屋のCMで「まるさがついとう」の意味とは?
▲CMでも「まるさ」が強調される
大塚
ちなみに「まるさがついとう」って言うじゃないですか。あれ、よく意味がわからないんですけど、どういう意味なんですか?
佐々木副社長
もともとは「ピシャッとさがついとう」って言ってたんですよ。でも、それは「差がついている」と言うのはよくないよね、ということで改善しました。会長は明太子業界全体のルールを適正化するための活動もしていたので、そういった部分にも敏感で。
大塚
改善した結果、「まるさがついとう」というフレーズになったんですね。
佐々木副社長
「まるさ」の「さ」は、佐々木の「さ」なんです。「まるさ」は元々、当社が大切にしているロゴなんです。
大塚
なるほど。つまり「まるさがついとう」というのは、「福さ屋のめんたいはまるさマークが目印だよ」という意味なんですね。
佐々木副社長
創業者である会長はもともと、北海道の礼文島の網元の息子なんです。その漁師の網に、佐々木家の網だとわかるように焼印をつけていたんです。そのマークが「まるさ」だったことが由来でして。
▲実際の焼印を見せてくれた
大塚
すごい! これが現物ですか。めちゃめちゃ貴重な品だ。
佐々木副社長
福岡の「福」に、佐々木の「さ」。それで「福さ屋」なんです。
福さ屋は明太子業界の中では後発メーカー
福さ屋公式サイトより
大塚
福さ屋って、老舗ってイメージですよね。
佐々木副社長
老舗と思われがちなんですけど、明太子業界の中では後発です。昭和53年創業なんですよ。
大塚
創業の経緯を教えていただいてもいいですか?
佐々木副社長
もともと漁師の家の息子だった会長は、福岡県が地盤の国会議員だった私の祖父の秘書として、九州に参りました。そこから、山陽新幹線が岡山〜博多間の開業をきっかけに、ビジネスの世界に飛び込んだんです。
大塚
その時から、明太子メーカーとしての開業だったんですか?
佐々木副社長
いえ、当初は「博多ステーションフード」というスーパーマーケットでした。「博多駅を地元住民にも親しみやすい場所にする」という想いのもと、オープンしたんです。当時は夜9時まで営業する店はなかったので、仕事帰りの方々に喜ばれました。>>博多ステーションフード
大塚
博多ステーションフードは、今でもありますよね。そこから、どうやって明太子事業に発展するんですか?
佐々木副社長
当時、新幹線のおかげでめんたいが評判になり始めていました。秘書時代に仕事で上京するたびに、土産でめんたいを持って行っていたのだそうです。魚屋も営んでいるし、タラコなら礼文島で見慣れているし「自分でも加工できるのでは」と思ったそうです。
大塚
面白いきっかけですね。とは言え、味づくりには苦労されたんじゃないですか?
佐々木副社長
会長は母と協力して、二人三脚で励んだみたいなんですが、なかなか上手くいかなかったようです。その後、ベテランの明太子職人にめぐり会って、ようやく福さ屋の味が完成しました。
大塚
めんたいが売れるようになるまでには、どのようなことをされたのでしょうか。
佐々木副社長
福岡では既に大手メーカーが多数存在していたし、会長は福岡の人間ではないので、かなり苦労したようです。そこで、販路を開拓するために東京を目指しました。それが大きかったと思います。
大塚
福岡だと埋もれるから、逆に東京へ出たわけですね。めんたいならではの、面白い発想!
佐々木副社長
昭和54年、有楽町のフードセンターにある4坪程度の空き店舗を見つけて、めんたいを売り始めました。さらに、銀座で屋台を引いて販売もしていたそうです。
大塚
銀座でめんたいを売り歩く屋台ですか! すごい……。
佐々木副社長
当初は銀座のクラブにチラシを配ってまわり、ホステスさんが気に入ってくだされば、一番の宣伝マン、販売になっていただけるということで、おまけもしていたそうです。
大塚
めちゃめちゃ泥臭いですね。
佐々木副社長
その泥臭い動きが身を結び、福さ屋のめんたいは銀座で話題になります。その結果、当時の三越の岡田社長が屋台にいらっしゃり、銀座三越で「福さ屋」の大きな懸垂幕がかかるまでになったんです。
▲銀座三越
大塚
すごい話ですね。福さ屋は東京で活路を見出した後、福岡に凱旋してきているんですね。
福さ屋の認知度はなぜ購買に結びつかないのか
佐々木副社長
大塚さん、ちょっと逆に質問してもいいですか?
大塚
えっ、はい……。
佐々木副社長
なんで福さ屋のめんたいは認知度があるのに、購買に結びつかないんだと思いますか? 大塚さん、個人の意見でいいので、率直に教えてほしいです。
大塚
えっ……。そ、そうですね……。
佐々木副社長
弊社はやっぱりお土産がメインじゃないですか。そうなると、食べているのは福岡県外の人が多いということですよね。
大塚
(ガチなやつだ……。)
佐々木副社長
「認知」って、あまり売上には関係ないということですかね?
大塚
いや、なくはないんでしょうけど、それが全てではないというか……。率直に思うのは、「宣伝上手」「よく売れている」と地元民に勘違いされている気がします。土産物あるあるだと思いますが、地元のファンがそんなに多くないのかも……。
佐々木副社長
なるほど……。
大塚
あまり味のイメージが湧くCMでもないですし……。
佐々木副社長
ちょっと大塚さん。
大塚
あっ、はい。
佐々木副社長
ぜひ、工場にも取材に行ってくださいよ。福さ屋の製造現場をみてほしいです。
大塚
えっ、いいんですか?
佐々木副社長
ぜひぜひ。工場に行って、福さ屋の味づくりのこだわりを伝えてほしいです。
大塚
ぜひ!!工場に行きます!!
……ということで、福さ屋の工場でめんたいづくりを見せてもらうことになりました。