【石原和幸の夢コラム】

花と緑の文化を、福岡の街に根づかせていきましょう!

福岡を“世界一のフラワーシティ”にするためには、どのような方法があるのか。庭園デザイナーの石原和幸さんに、現実と妄想の狭間でイメージを膨らませつつ、花と緑を通して福岡や九州の魅力を毎月発信していただきます。今回は、全国で様々な庭を造っている経験から、花や緑の文化を根づかせるためには、どうしたらいいかを考えていただきました。

参考となる都市は、シンガポール。その街づくりに学ぶ

 
なぜ花や緑がある都市にした方がいいのでしょうか。
 
花や緑を政策に掲げている都市として、シンガポールの街づくりは参考するべきだと思います。“庭の中にある都市” を目指した街は、クリーン&グリーンと呼ばれ、美しい街並みに魅かれて多くの観光客が訪れます。
 

シンガポールにある巨大な植物園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」

そもそもシンガポールはなぜ緑化を強化したのでしょうか?
 
理由は熱帯の高温・多湿な気候を少しでもやわらげて暮らしやすくするためと、観光産業の成長に役立ち、国際的な競争力を高めるためでした。
 
暮らしやすくするという機能的な理由はともかく、他国と差別化するための武器として緑化するという発想は、花や緑をコストと考える日本人では考えつかないところだと思います。
 
政策の象徴とも言えるのは「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」ですが、僕は世界一のホスピタリティ空港と言われるチャンギ国際空港が好きです。空港でありながら観光資源の一つだと感じており、その要因は圧倒的な花と緑のインパクトにあると考えています。
 


世界一のホスピタリティ空港と評判も高い「チャンギ国際空港」。圧倒的な花と緑のインパクトによって、空港でありながら、有力な観光資源となっている。

開発で自然や緑を削った結果、温暖化が叫ばれる昨今、人は花や緑、自然を返さないといけません。どうせ返すのであれば、交通機関のハブとなる空港や駅など、人が賑わう効果的な場所を緑化し、それを経済へ繋げるべきです。
 
ただそれには、花や緑に対する文化やコストではなく、武器として考える意識改革が必要になってくると思います。
 
 

花を植えるだけじゃダメ!人のレベルアップこそが大切だ

 
フラワーシティにするためには、花を植えて増やせばいいじゃないかと思うかもしれません。おそらく短期の見せかけだと「エイ!ヤー!」でできるでしょう。でも、それではフラワーシティの実現とは言えません。
 
植物が地中に根を張るように、花の文化が福岡に根付き維持されることで、初めてフラワーシティと名乗れるのだと思います。もちろん美しいということが大前提ですが。
 
では、どうすれば福岡に花の文化が根付き、フラワーシティとして発展していくことができるでしょうか?「花を植えて増やす」という単純なことではなく、もっと奥深いものだと思えます。
 
今、福岡市の政策で「一人一花運動」が行われ、路側帯などの花壇にもたくさんの花が植えられ華やかになっていますが、もしその周りや花壇の中にゴミがあったらどうでしょうか?
 

せっかくの素敵な試みが、台無しです。花壇だけではなく街並みからキレイにならないとダメなんです。そのために大切なことは、第一に人です! 個人であったり業界人であったり、花に関わる全ての人を巻き込んで、レベルアップすることが必要だと思います。
 
お金の力で花を増やしても長続きはしません。それよりも花が好きな人、花に携わる人が増えること。その人達が土台となることで、自然と花は増え、街もキレイになっていくと思います。
 
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第二は、仕組みです! 「風が吹くと桶屋が儲かる」ということわざがありますが、一見関係ないところに影響を与えるという意味です。もし、「花を植えると、経済(ビジネス)が良くなる」という絵を描くことができたらどうでしょう?
 
皆さんは、きっと花を植えますよね!? そう! やっぱり花は武器になるのです。
 
 

プライドと目標を持った、意識改革からの仕組づくり

 
では、どうしたら人がレベルアップし、良い仕組みができるでしょうか?
 
例えば花壇に花を植えるにも、ただ植えるのではなく、美しいということが重要だと思います。そのためには、花壇を作る人の意識です。
 
僕たちが庭を作る時もそうですが、業務としてただデザインどおりに造る場合と、プライドを持ち、クライアントや歩行者にも喜んでいただけるようにと、そのように気持ちを入れて造る場合とでは、出来映えが全然違います。
 
ですから、園芸知識や技術の向上も大切ですが、植える方のモチベーションを上げるためには、いかにプライドと目標を持たせ、意識をレベルアップさせるか、そのことが大事だと思います。
 
今、ソフトバンクホークスでは、「みんなのガーデン」と称して、参加型のコンテストガーデンを展開しています。
 
これは福岡とホークスの新たな魅力づくりとして、一般の方と一緒に、花と緑であふれる「PayPayドーム」にすることで、より一層楽しんでいただける場所にするということから始まりました。僕もお手伝いさせていただいています。
 

コンテストですので、優越を付け表彰をします。そうすると競争心が生まれ、良い作品ができるのです。そう! 前に挙げた「目標」ができるのです。
 
今は「PayPayドーム」の一部のエリアだけで行っていますが、このコンテスト形式を街中に広げ、キレイな花壇は、表彰してあげるようにしたらどうでしょう。
 
人は「受賞する」という目標に向けモチベーションが上がり、花壇も数段レベルアップしてキレイになると思います。そうなると当然ながら街並みも美しくなり、その花壇を見ようとして新たな人の流れも生まれ、これまでなかった賑わいが発生します。
 
このように何かしらメリットのある仕組み作りをすることが、長く継続され広がっていくことに繋がるのだと思います。
 
今回は、浅く広く語りましたが、次回からはもう少し深く入って、なぜ花は武器になりうるのかなど紐解きます。フラワーシティ福岡を目指し、一歩一歩前進していきましょう!

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庭園デザイナー
石原和幸
長崎市生まれ。22歳で生け花の本流『池坊』に入門。以来、花と緑に魅了され生花の路上販売から店舗販売、そして庭造りをスタート。その後、苔を使った庭で独自の世界観が「英国チェルシーフラワーショー」で高く評価されこれまで14回出展し計11個の金メダルを受賞。エリザベス女王より「緑の魔術師」と称される。全国で庭と壁面緑化など緑化事業を展開し環境保護に貢献すべく活躍中。

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