一人一花サミット、本日11月11日よりスタートします!
高島市長が会見でお披露目されたのは、大きく2つのことでした。
まずは、11月11日、つまり今日から、今年の「一人一花サミット オンライン」が開催されるというもの。
そして二つ目は、今年度事業として、これから2年をかけて市内の公共の場にある「フラワーポット」が一新&統一されるというもの。
「一人一花サミット」は、昨年までは植物園をメイン会場にイベントが開催されていましたが、コロナの影響を受け、今年はオンラインで楽しめるコンテンツがたくさん登場します。
そのひとつとして、福岡市植物園内をバーチャルに散策できるようになることが発表されました。
■ 実際に試してみよう!
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そもそも、一人一花とは?
さて、ここで本題。「そもそも一人一花って何なの?」とお思いの読者の方に編集部なりの解説をさせていただきます。
会見当日は、コスモスが咲き誇っていました
「福岡市では、花による共創のまちづくりの実現のため、市民・企業の皆さまとともに一人一花運動を進めています」と言われても、結局「何で?」「何のために?」がなかなかピンとこない…しかしそこには、高島市長の深い想いがあったのです。
常々、市長には「街に花があふれると、まちは今よりもっと良くなる」という信念があったそう。しかしそれを財政で賄うと、かなりのコストがかかります。行政サービスとは市民一人ひとりに等しく有益なものを提供してしかるべき、そこに巨額の「お花資金」を投入することは、民意に反するので無理です、とずっと市の職員の方々に言われてきたそうです。
しかしある時、アメリカのポートランド市に視察に訪れた際、福岡よりもずっと規模が小さい市であるにも関わらず、お花であふれたまちづくりに成功している様子を目の当たりにしてしまい、市長は非常に刺激を受けたそうです。
「なぜ、福岡よりも行政予算が少ないにも関わらず、自分の想像していた光景が実現しているのか」
そこで得た回答は、「すべてを行政が実施するのではなく、官民一体となった仕組みとし、行政でないとできないインフラ整備や、取り組んでくれている市民・企業へのサポートにのみ予算を投入している」というもの。
つまり、【A】行政がすることと【B】市民・企業がすることを分担し、その全体のスキーム構築やPR・促進活動に市が力を入れている、という仕組みでした。
市長はすぐさまこのポートランド市に市の職員を派遣し、細かな取り組みを視察、検証、そうして生まれたのが「一人一花運動」だったのです。
【B】の民間の活動を称え、会見後に表彰式が執り行われました
会見後、一人一花運動に寄与された団体、企業100団体を代表して、市長とみどりのまちづくり協会理事長から、計7団体に表彰状が贈られました。
これはまさに、【B】の活動に対する市のサポートですね。
一方、この日の会見で発表された「フラワーポット」は、統一されたデザインで街をコーディネートするという、まさに【A】行政だからこそできる取り組みです。
ポットを彩る花装飾はこの日「一人一花アンバサダー」に就任した石原和幸氏のプロデュース
しかもこのポット、汚れが目立ちにくく落ちやすいうえ、中に給水タンクが仕込まれているので、水やりの労力を軽減することもできるスグレモノなのだそうです。
結局のところ、「お花が良い」って、何をもって「良い」とされているの?
ですが、そもそもなぜ「お花がたくさんあるまち」が「良いまち」になるのでしょうか?
「一人一花アンバサダー」に就任した石原氏
この日会見に出席し、一人一花アンバサダーに就任した庭園デザイナーの石原和幸さんによると、イギリスのチェルシーでは各家庭ごとにお庭を花で飾り、通りすがる人に楽しく見てもらいたい、という文化がとても盛んなのだそう。そしてそこから導き出される園芸業界の経済効果も日本の数十倍なのだそうです。そうしたこともあり、「市民の95%はお花が大好き」なんだとか。
福岡市民のお花好きの割合がどのくらいなのかはわかりませんが、チェルシーは花を通したまちづくりに実際に成功しており、結論として、治安の維持や観光都市としての認知度向上、ひいてはフラワーショーの開催へと発展しています。
ここで重要になってくるのが、市民の「自分ごと化」。行政が税金で街の街路樹や花壇をどんなに整備しても、それがただの風景にしか見えない以上、花壇に平気で足を踏み入れても、良心の呵責に苛まれない人はちっとも気にしないかもしれません。しかし、
「自分で土に触れ、花を植える活動をしてみると、別の機会に街中で花をみかけたとき、そこに誰かの営みがあり、想いがあって花が咲いていることに気づくことができます。これは例えば何かの趣味に手を付けた際、それまで気にも留めなかったものごとが目に飛び込んでくるのと同じ現象だと考えています」
と市長は語ります。
「花も同じで、市民一人ひとりが、一輪の花でもいいので自分の生活に取り入れることで、街中に花があることは、誰かが土を整備し、花を植え、水をあげているからだということを肌で実感する。そうした意識が一人ひとりの中にできると、自分以外の人を思いやることができます」
つまり、花以外でも、そこにそのもの(例えば公共の看板など)が設置されていることに対する認識が深まるということ。
「きれいな花には必ず人の手が入っている」と市長は言います。そう、花は勝手にきれいには咲いてくれないのです。
そのことに気づくと、花壇に乱暴に足を踏み入れるような行為をしている人がいた場合、周囲の人の反応が、後ろめたさを感じさせる空気になっていくのではないか。こうして自助、共助の視点が増えることで、自分のことだけでなく、誰かのことを想う気持ちが育ち、今よりももっと良い街になっていくというもの。つまり、花のある街、そしてそのきれいな状態が維持されている街というのは、それだけ市民の心も豊かになっていると考えられます。
これを読んでいる方の中には、「別に花なんか好きじゃないし」という方もいらっしゃるかと思いますが、そういう方も、「あぁそうか、誰かが街を良くしようと思う気持ちの根幹に、花を育てるという行為そのものが人間を豊かにしてくれる要素があるのだな」というところだけでもご理解いただけたらと思います。
例えるなら、製造業やサービス業などの職場でよく言われる「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」は、環境整備のためということもありますが、自分がきれいに整理整頓した環境は、それを維持したいという気持ちが芽生え、結果「汚さない使い方」をするようになる、または「汚したらすぐにきれいにする」という習慣化につながる、そのお花バージョンが「一人一花」だととらえてみてもらえたらと思います。
会見後のトークセッションも参考になります
こうして、行政にしかできないことは【A】で取り組み、それ以外は市民・企業に広く【B】を進めてもらう、まさに「共創」の仕組みが「一人一花運動」であり、この活動が広がることで、治安維持や犯罪抑止などの効果もありつつ、市民に主体性が生まれる。この仕組みこそが「一人一花運動」の主眼ではないかと、会見を通して考えました。
なお、会見後にはトークセッションが行われ、この運動を通して経済効果があったり、不登校生徒の学校への復帰が実現したりといった、様々な立場からの効果についても語り合われました。その様子は「一人一花サミット」のコンテンツとして視聴できますので、ぜひ見てみてください。
トークセッションには、左から株式会社グッデイ代表取締役社長・柳瀬隆志さん、石原和幸デザイン研究所所長・石原和幸さん、高島市長、緑のコーディネーター・石井康子さん、Green Snap株式会社代表取締役社長・西田貴一さんが参加されました
■ トークイベントの様子はこちらからどうぞ
http://hitorihitohana.online/channel/
福岡市が主体性を携えた市民レベルにバージョンアップできたとき、ただでさえ福岡市大好き人間の多いこの街は、とんでもないホスピタリティにあふれた街になるのではないかと思います。
そんな街には、きっと花があふれている。高島市長が花にこだわった理由は、そんなところにあるのではないかなと思います。