人流・物流の両面で存在感を示す博多港

写真提供:福岡市
国際旅客航路(2023年外航船舶乗降人員)34万人、国内旅客航路・市営渡船(同内航船舶乗降人員)90万人━━。
2023年の外航船舶乗降人員で日本第2位となった博多港。その国際旅客定期航路である福岡~釜山航路は、JR九州高速船株式会社による高速船『クイーンビートル』の撤退後、フェリー『ニューかめりあ』を運航するカメリアライン株式会社のみとなった。
一方、内航船舶乗降人員90万人が利用する博多港の国内旅客定期航路として、博多ふ頭第2ターミナルから壱岐・対馬航路や五島航路が就航している。
また、博多ふ頭第1ターミナル(ベイサイドプレイス博多)から志賀島や玄界島への航路が就航する。
さらに、福岡市営渡船は、姪浜渡船場から能古島や小呂島への航路を結ぶ。

出所:国土交通省港湾局『船舶乗降人員ランキング(2023年上位50港)』※各上位25港を抜粋
旅客に代表される人流に加えて、物流においても博多港は重要な役割を果たしている。
国土交通省港湾局は2025年8月29日(2025年9月2日修正分)、『2024年の国内港湾のコンテナ取扱貨物量(速報値)』を発表した。
同発表によると、日本の港湾における2024年1月~12月のコンテナ取扱貨物量は、前年比0.9%増の2,198万TEU(20フィートコンテナ換算個数)となった。
2024年のコンテナ取扱貨物量で博多港は、東京港、横浜港、神戸港、名古屋港、大阪港に次ぐ第6位となっている。
東アジアや東南アジアとの航路が充実している博多港の国際コンテナ定期航路は、2026年7月現在、41航路・月間202便が就航している。
博多港の国際海上コンテナ取扱個数は、中長期的にみると増加傾向で推移している。

出所:国土交通省港湾局計画課『2024年の国内港湾のコンテナ取扱貨物量(速報値、修正済)』
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金印の印綬から約2000年、アジアとつながってきた博多港

出典:福岡県立図書館所蔵『博多絵図 博多往古図』(『福岡県立図書館デジタルライブラリ』から転載)
博多港が国際港としての役割を担ったのは、奴国王が後漢の光武帝から金印『漢委奴国王』を受けた1世紀半ばが起源といえる(PORT OF HAKATA『博多港の2000年にわたる国際交流』)━━。
約2000年前、現在の福博の街が奴国と呼ばれていた頃から港として存在する博多港は、世界有数の歴史を持つ現役港だ。
6世紀頃、奴国は那の津と呼び名を変えながら、大和朝廷の外港に位置付けられた。
博多という名称が初めて登場するのは、『続日本紀』である。
7世紀以降、博多は遣隋使・遣唐使などの対外交流の拠点となり、海外からも人々が訪れ、多くの文物がもたらされた。
9世紀~11世紀には、外国使節の応接と宿泊所を兼ねた客館『鴻臚館』が国際交流拠点となった。
11世紀後半頃には、博多に『大唐街』と呼ばれる中国人街が形成されたという。
平氏が博多に進出した12世紀頃、博多は日宋貿易の拠点となった。
13世紀半ば、承天寺を開山した聖一国師が宋から製粉技術を持ち帰った。
これにより博多は、うどん・そば、まんじゅうの発祥の地ともいわれるようになった。
また、臨済宗の開祖である栄西は、宋から茶の種や喫茶法を博多にもたらし、日本に茶文化を広めた。
その後、元寇(文永の役)で博多の町は焼かれ、日元貿易も一時途絶えたものの、講和後に復活した。
室町期に交通や経済が発展した博多は、戦国期になると明や朝鮮などとの貿易も盛んになり、豪商と呼ばれる大商人らが登場した。
当時、交易で大いに栄えた博多は、その一方で巨万の富が集まることで戦国武将らの争奪の対象となり、幾度となく戦火に巻き込まれた。
焦土と化した博多を復興させたのは豊臣秀吉だった。
『太閤町割り』と呼ばれる都市計画によって、博多は復活した。
海外貿易を制限された江戸期、日本国内では海上輸送が大きく発展した。
博多では、五ヶ浦廻船と呼ばれる船が米や木材などを運び、国内貿易が盛んになった。
1899年に開港指定を受けた博多港は、国際貿易港としてのスタートを切った。
明治中期には、全長360メートル×幅7.2メートルの木造桟橋が完成した。
さらに昭和初期には、中央ふ頭の岸壁や防波堤が整備された。
戦後、引き揚げ援護港に指定された博多港は、139万人の海外引き揚げ者を迎えた。
その後、1951年に重要港湾に指定され、1990年に特定重要港湾へ昇格した。
1993年に博多港国際ターミナルが開業し、1999年には開港100周年を迎えた。
そして、2015年には中央ふ頭クルーズセンターが供用を開始した。
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中央ふ頭・博多ふ頭の再整備へ。「ウォーターフロントネクスト」とは

写真提供:福岡市
博多湾を臨む湾岸エリアの中でも、中央ふ頭と博多ふ頭は、福岡市において『ウォーターフロント地区』と位置付けられるエリアだ。
福岡市は、ウォーターフロント地区について、『第10次福岡市基本計画』において、「天神・渡辺通、博多駅周辺、ウォーターフロントの3地区において、(略)、陸・海・空の広域交通拠点との近接性を生かしながら、3地区の地区間相互の連携を高め、都心部の国際競争力を高めます」としている。
つまり、福岡市の都心部の国際競争力を高めるエリアの一つが、ウォーターフロント地区だ。
福岡市が2026年2月に改定した『福岡市都市計画マスタープラン』では、天神、博多駅周辺とともに中央ふ頭・博多ふ頭を都心核としている。
そして、中央ふ頭・博多ふ頭のめざす姿として、「MICE機能や国際・国内旅客ターミナル機能等が集積し、市民や国内外からの来街者が集い交流する海に開かれた地区」と打ち出している。
福岡市の都心部の国際競争力を高めるエリアであるウォーターフロント地区は、「都心部の貴重な海辺空間」でもある。
福岡市は現在、ウォーターフロント地区において、福岡市を次のステージへと飛躍させるさまざまなチャレンジである『FUKUOKA NEXT』のプロジェクトの一つ、『ウォーターフロントネクスト』に取り組んでいる。
ウォーターフロントネクストについて、福岡市住宅都市みどり局都心創生部の津留﨑彬ウォーターフロントまちづくり推進課長は、次のように語る。
津留﨑彬ウォーターフロントまちづくり推進課長
その地区の特性を生かし、人流機能やMICE機能の充実とあわせ、市民など多くの人々で賑わい、憩う海辺空間の創出に向けて、現在、ウォーターフロント地区のまちづくりの将来像を検討しています。

福岡市住宅都市みどり局都心創生部の橋爪宏明事業調整係長(左)と津留﨑彬ウォーターフロントまちづくり推進課長(右)
ウォーターフロント地区が担うターミナル機能とMICE機能
福岡市の国際競争力を高めるエリアであり、都心部の貴重な海辺空間でもあるウォーターフロント地区の主な機能として、ターミナル機能とMICE機能が挙げられる。
“アジアの玄関口”であるターミナル機能には、クルーズ機能、国際定期機能、国内定期機能という3つの機能がある。
◎クルーズ機能
中央ふ頭クルーズセンターが整備されており、日本トップクラスのクルーズ船寄港回数を誇る。
◎国際定期機能
博多港国際ターミナルがあり、博多港の国際旅客定期航路である福岡~釜山航路が就航している。
◎国内定期機能
博多ふ頭旅客ターミナルから壱岐・対馬・五島の離島などを結ぶ航路が就航しており、市民らの交通インフラを担っている。
一方、MICEの機能を担うのが、ウォーターフロント地区のコンベンションゾーンだ。MICEとは、企業などの会議、報奨・研修旅行、国際会議、展示会・イベントという4つのビジネスイベントの頭文字を取った造語である。
同ゾーンには、マリンメッセ福岡(A館・B館)、福岡国際会議場、福岡国際センター、福岡サンパレスなどの施設が集積し、MICE機能を担っている。
【ターミナル機能】クルーズ船寄港回数で2年連続全国トップに

写真提供:福岡市
国際旅客定期航路に加えて、不定期で寄港するクルーズ船について博多港は、日本を代表する拠点港の一つだ。
国土交通省は2026年2月20日、『訪日クルーズ旅客数及びクルーズ船の寄港回数』(2025年速報値)を発表した。
同発表によると、博多港へのクルーズ船寄港回数は209回となり、横浜港と並んで第1位だった。
2015年~2018年の4年連続で第1位を記録した博多港のクルーズ船寄港回数は、コロナ禍による落ち込みを経て回復して2024年、2025年と2年連続で全国第1位となっている。

出典:国土交通省港湾局『訪日クルーズ旅客数及びクルーズ船の寄港回数』(2025年速報値)
博多港は2015年にクルーズセンターの供用を開始し、2017年に交通広場を整備、2018年には岸壁を延伸するなど、クルーズ船の受け入れ環境整備を進めてきた。
今後のターミナル機能の強化については、2025年12月議会報告『人流機能に係る検討について』によると、国際定期機能に関して「クルーズ客等の安全確保の観点から、早期移転に向けた取組みを進めていく」とし、中央ふ頭東側へ移転していく方針だ。
また、中央ふ頭先端部においては、大規模地震発生時の支援物資輸送の拠点など、耐震強化岸壁や背後を活用した防災機能についても検討する。
一方、博多ふ頭にある国内定期機能については、現地での建て替えや他地区への移転を検討していくという。

出典:福岡市『ウォーターフロント地区(中央ふ頭・博多ふ頭)再整備の検討状況について(令和7年12月議会報告)』
クルーズ船寄港回数で2年連続日本一となったことについて、クルーズ船の港湾施設利用や旅客船の受け入れ、振興などを担当する福岡市港湾空港局港湾振興部の水野壮人旅客振興課長は、次のような見解を示す。
水野壮人旅客振興課長
また、博多発着のクルーズも増加傾向にあるなど、博多港へのクルーズ船の寄港は好調です。
今後も寄港回数だけにとらわれず、多種多様で、より付加価値の高いクルーズ船の寄港促進に向けて力を入れていきたいと考えています。
一方、福岡市港湾空港局事業調整部の眞谷信行事業調整課長は、クルーズ機能強化について、次のように語る。
眞谷信行事業調整課長
クルーズ船の動向を注視しながら、クルーズ受入機能の強化を検討しています。
一方、博多ふ頭にある国内旅客定期航路のターミナルについては、老朽化への対応が必要であり、現地建て替えや他地区への移転の検討を進めています。

福岡市港湾空港局事業調整部の眞谷信行事業調整課長(左)と同局港湾振興部の水野壮人旅客振興課長(右)
【MICE機能】福岡市の国際会議開催件数は国内5位
日本政府観光局(正式名称:独立行政法人国際観光振興機構、JNTO)は2026年5月20日、ICCA(国際会議協会)の2025年国際会議統計を基に、『国・地域及び都市別の国際会議開催件数(2025年)』を発表した。
同発表によると、2025年に23件の国際会議を開催した福岡市は、アジア太平洋地域で第25位、国内で第5位だった。

出所:ICCA(国際会議協会)統計『国・地域及び都市別の国際会議開催件数(2025年)』(日本政府観光局)
福岡市議会の2025年12月議会報告『MICE関連施設の状況について』では、「今後は、シンボリックな国際会議や国内の大型コンベンション、新規の大規模展示会など、質の高いMICE誘致に取り組むほか、需要が高まる大型コンサートや新たに開拓するイベントなどに対応するため、受け入れ環境のさらなる充実を図りながら、各施設において高い稼働率を目指していく」としている。

出典:福岡市『MICE関連施設の状況について(令和7年12月議会報告)』
MICE推進を担当する福岡市経済観光文化局観光コンベンション部の野口陽子MICE推進課長は、次のようにコメントする。
野口陽子MICE推進課長
空港に近く、アクセスが良い福岡市では、コンベンションゾーンでのMICE機能集積も強みの一つです。
また、福岡観光コンベンションビューロー内のMeeting Place Fukuokaが誘致から開催までワンストップで支援しています。
知名度の高い国際会議や福岡市の施策に合致したシンボリックな会議、ビジネス機会の創出につながる展示会など”質の高いMICE”の誘致を進めていきたいと思います。
MICE施設整備を担当する福岡市経済観光文化局観光コンベンション部の山口学課長(MICE施設整備担当)は、次のように現状を説明する。
山口学課長(MICE施設整備担当)
近年は大規模な展示会やコンサートの開催需要が増加しており、マリンメッセ福岡A館とB館の両館を活用した大規模展示会の受入れにも対応しています。
一方で、一部施設では老朽化の進行が見られます。
こうした需要の変化や施設の状況を踏まえ、関連施設が一体的かつ機能的に配置された拠点の形成を目指し、さらなるMICE機能の強化に向けて検討を進めています。

福岡市経済観光文化局観光コンベンション部の野口陽子MICE推進課長(左)と山口学MICE施設整備担当課長(右)
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博多港は”オンリーワンのみなと”づくりへ船出する

写真提供:福岡市港湾空港局
基本理念「アジアの中で輝きを放つオンリーワンのみなとづくり」━━。
博多港長期構想検討委員会は2012年8月、『博多港長期構想』を市に提言した。
同構想では、「アジアからの人・もの・情報を取り込みながら、アジアと我が国の『連携』を先導する、キラリと光る『個性』(アイデンティティ)を持つ賢い(スマート)みなとづくりを進めるべき」としている。
約2,000年にわたり港湾として機能してきた博多港を有する福博の街は、世界有数の歴史を持つ港湾都市だ。
福博の街には、博多港とともに歩んできた長い歴史がある。
福岡市のウォーターフロント地区は、博多港長期構想のアジアの中で輝きを放つオンリーワンのみなとづくりの理念と共に、いま新たな船出を迎えようとしている。
参照サイト
国土交通省港湾局『船舶乗降人員ランキング(2023年上位50港)』
https://www.mlit.go.jp/statistics/details/content/001517683.pdf
福岡市『博多港』人流
https://www.city.fukuoka.lg.jp/kowan/hakata-port/passengerflow.html
国土交通省港湾局計画課『2024年の国内港湾のコンテナ取扱貨物量(速報値、修正済)
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001908006.pdf
福岡市『博多港』物流
https://www.city.fukuoka.lg.jp/kowan/hakata-port/04/logistics.html
福岡市『博多港の歴史』
https://www.city.fukuoka.lg.jp/kowan/somu/hakata-port/port-history.html
福岡市住宅都市みどり局都心創生部ウォーターフロントまちづくり推進課『ウォーターフロントネクスト』
https://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/waterfront/shisei/wf_turnaround.html
福岡市『第10次福岡市基本計画』
https://www.city.fukuoka.lg.jp/soki/kikaku/shisei/fukuokashikihonkosokihonkeikaku/documents/dai10jikihonkeikaku.pdf
福岡市『福岡市都市計画マスタープラン』
https://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/toshikeikaku/machi/documents/00_fukuoka_city_toshikeikaku_mp.pdf
福岡市『ウォーターフロント地区(中央ふ頭・博多ふ頭)再整備の検討状況について(令和7年12月議会報告)』
https://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/waterfront/shisei/documents/251217_jyutaku_houkoku.pdf
福岡市『人流機能に係る検討について(令和7年12月議会報告)』
https://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/waterfront/shisei/documents/251217_kouwan_houkoku.pdf
福岡市『MICE関連施設の状況について(令和7年12月議会報告)』
https://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/waterfront/shisei/documents/251217_keizai_houkoku.pdf
国土交通省『訪日クルーズ旅客数及びクルーズ船の寄港回数(2025年速報値)』
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001982600.pdf
日本政府観光局(JNTO)『国・地域及び都市別の国際会議開催件数(2025年)』
https://mice.jnto.go.jp/assets/docs/news/icca2025_jp.pdf?shem=rimspwouoe,
博多港長期構想検討委員『博多港長期構想』
https://www.city.fukuoka.lg.jp/kowan/keikaku/hakata-port/documents/kousou01.pdf









