福岡市の残された2つの一等地~「 都心部ウォーターフロント」と「九大箱崎キャンパス跡地」~

福岡都心地域とは、「天神ビッグバン」や「博多コネクティド」に代表される天神地区やJR博多駅地区が注目されがちですが、臨海コンベンションゾーンのある「ウォーターフロント地区」を合わせた3地区です。このWF地区に加え、福岡都心に近い好立地に約50haという広大な敷地のある九州大学箱崎キャンパス跡地(福岡市東区)が今後の開発で最も期待されているエリアです。福岡市の残された一等地といえる「ウォーターフロント地区」と「九大箱崎キャンパス跡地」についてご紹介します。

◎「都心部ウォーターフロント」
 「MICE」「クルーズ」「賑わい」が融合した一体的なまちづくり

福岡市は小売りや宿泊、飲食、サービスなど第3次産業が生産額の約9割を占めている。ビジネス・ショッピングゾーンを形成する「天神渡辺通地区」、博多駅の再整備で拠点性を高めている「博多駅周辺地区」、それに「ウォーターフロント(WF)地区」を結ぶ都心部は、従業員や小売額の割合で福岡都市圏全体の約3割を占める。住む人、働く人、訪れる人にとって重要な場所であるとともに、福岡市の活力や創造の源と考えられる。

コロナ禍以前は、福岡市は博多港の外国航路旅客数は1993年以来、日本一を続け、クルーズ船の寄港回数も常にトップクラスという海に開かれた国際都市である。WF地区は海の玄関口であり、イベント・国際会議などが開催されるMICEゾーンでもある。都心部の貴重な海辺空間を有し、文化・エンターテインメントを楽しめるホールがあるなど、再整備に向けては天神地区、博多駅地区に並び、『福岡の顔』となる新拠点にする狙いがあった。

福岡市は「ウォーターフロント地区再整備構想」を策定、クルーズ施設をはじめMICE施設とホテル・利便施設が機能的・一体的に配置される「オール・イン・ワン」のMICE拠点形成、市民や来街者が文化・エンターテインメントを楽しめる場や海辺を活かしたにぎわいの創出を目指していた。

 新型コロナの影響で、再整備を取り巻く環境が大きく変化

しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、再整備を取り巻く環境が大きく変化した。

①   MICE施設は、1回目の緊急事態宣言の発出時(2020年4~5月)の休館など大きな影響を受けたものの、その後は感染防止策を行ったうえで、国によるイベント開催制限等を踏まえて徐々に再開。


  (出典:MICE関連施設の状況について(福岡市ホームページより))
福岡市 ウォーターフロントネクスト(中央ふ頭・博多ふ頭の再整備) (fukuoka.lg.jp)


②   国内外のクルーズ船社は感染症対策に取り組み、運行を再開するところもあるが限定的で、現時点で博多港におけるクルーズ船受け入れ再開の見通しは立っていない。

③   日韓定期航路は、国からの「旅客運送停止」要請を受け、2020年3月から旅客運送を停止している。

④   都心循環BRTは緊急事態宣言の発出時、一部運休により対応。都心部の自動車交通量は、感染症による影響を受ける前の水準に戻っている。
 
これを受け、①クルーズ機能強化については、今後の市場動向や寄港状況などを注視しながら、中長期的に検討することにし、当面現行のクルーズセンターや箱崎ふ頭で対応、②国際定期機能については、船舶の減少に伴う運航体制の見直しにより、乗降客数がこれまでの見込みを大幅に下回るため、新たなターミナル整備は一旦見合わせ、現行の博多国際ターミナルやコンテナヤードを引き続き活用することとしている。

これまで、2020年5月に立体駐車場、2021年4月にマリンメッセ福岡B館およびマリンメッセテラス(大屋根広場)の供用を開始した。

 ふ頭基部のまちづくりなどに引き続き取り組んでいく

新型コロナの影響により、これまで通り「MICE」「クルーズ」「賑わい」が融合した一体的なまちづくりを進めることは難しい状況にあるが、地区の特性を生かしたまちづくりを進めることは、福岡市が持続的に発展していくうえで重要なため、ふ頭基部のまちづくりなどに引き続き取り組んでいく、としている。


  (出典:ウオーターフロント地区再整備の事業内容の見直しについて(福岡市ホームページより))
福岡市 ウォーターフロントネクスト(中央ふ頭・博多ふ頭の再整備) (fukuoka.lg.jp)

ふ頭基部のまちづくりについて

①   サンパレス用地において、地区のエントランスゾーンにふさわしい交流空間や交通広場の確保
②   国際会議や大規模MICEの開催に資するホテルの誘導(「オール・イン・ワン」MICE拠点の形成)
③   MICE施設の集積や都心部の貴重な海辺空間を生かした連続的な賑わいや憩い空間の創出
④   ウィズコロナ・ポストコロナにも対応した感染症対応シティにふさわしいまちづくり
 

交通対策として

①   公共交通は、定時制・速達性向上の観点として、「交通広場」や「公共交通専用動線」
②   「那の津通り」は、ウォーターフロント地区に至る東西方向の幹線道路であるため、ボトルネックとなっている那の津大橋の架け替えにより「6車線化」を推進するとともに、ふ頭基部の交通負荷の軽減に必要な方策
ーー などについて、検討していく。また、事業スケジュールも民間ヒアリングを行いながら検討することにしている。
  

◎「九大箱崎キャンパス跡地」
 九州大学の箱崎キャンパス跡地に、JR鹿児島本線新駅も設置へ

福岡市博多区にある福岡県庁から国道3号線を北九州方面に向かうと、右側に広大な九州大学箱崎キャンパス跡地(福岡市東区)が見えてくる。2018年9月、伊都キャンパス(福岡市西区)への統合移転完了をもって、箱崎キャンパスは1911(明治44)年から続いた107年の歴史に幕を下ろした。

その歴史を継承する意味も込めて、旧工学部本館や正門などの一部の建物は近代建築物群として保存・活用される。現時点で、ほとんどの建物の解体が進み、更地化された敷地が広がっている。

周辺エリアも含めた跡地は、福岡市による「土地区画整理事業」の「北エリア」(約20ha)とUR都市機構が「開発行為」を行う「南エリア」(約30ha)。北エリアは、貝塚公園の再整備や箱崎中学校の移転跡地の活用などにも取り組む。

跡地のまちづくりについては、2013年2月、検討委員会がまちづくりの方針や将来構想等の大きな方向性を「跡地利用将来ビジョン」として提言、2015年3月、地域の代表や学識経験者などからなる跡地利用協議会の意見を聞きながら「跡地利用計画」を、2018年7月には「グランドデザイン」を策定、2020年6月、用途地域の変更、土地区画整理事業の決定、公園の決定・変更など都市計画の決定・変更を行った。

2020年10月、JR九州が鹿児島本線千早~箱崎駅間に新駅を設置すると発表した。跡地の貝塚駅周辺土地区画整理事業と連携して準備を進め、貝塚駅に近い場所となる見通し。

現在、コロナ禍で事業者公募の2度の延期を余儀なくされ、公募に向けた都市機能・都市空間・Fukuoka Smart Eastなどの条件を整理している。


(出典:九大跡地 都市計画の決定・変更(福岡市ホームページより))
https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/73561/1/R021002-02-zyuto-hokoku2.pdf?20210104103812

 未来に誇れるモデル都市「Fukuoka Smart East」を創造

グランドデザインに基づくまちづくりの基本的な考え方

①   九州大学が百年存在した地としてのブランドと、広大な敷地や交通といった強みを生かし、働く人や学ぶ人、住む人、訪れる人などこれまで以上に幅広い人々が集まり、イノベーションを生み出す新たな拠点を創出する。
②   千年以上にわたる箱崎の歴史や文化も踏まえながら。新たな拠点の創出に向け、イノベーションを生み出すチャレンジできるまちと、幅広い人々を惹きつける高質で快適なライフスタイルや都市空間づくりに取り組み、未来に誇れるまちを創造していく。
 
少子高齢化などまちづくりの様々な課題を解決しながら、持続的に発展していくため、最先端の技術革新の導入などによる、快適で質の高いライフスタイル都市空間を創出し、未来に誇れるモデル都市「Fukuoka Smart East」を創造していくとしている。


(出典:「Fukuoka Smart East」イメージ図(福岡市ホームページより))
https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/73561/1/R021002-03-zyuto-hokoku3.pdf?20210104103812

「Fukuoka Smart East」はグランドデザインにおける分野別サービス例を3つのカテゴリーに分類し、社会課題の解決につながる最先端の技術や民間事業者の創意工夫を生かした多様なサービスの導入の検討を進めていくとともに、まちが持続的に発展していく仕組みなどについても検討を進めていく。

グランドデザインの実現に向け、福岡市は九州大学等とともに都市空間・都市機能等のまちづくりに求める条件について、民間事業者へのサウンディングを行いながら、事業者公募に向けた準備を進めている。

福岡市の高島宗一郎市長は西日本新聞のインタビュー(2022年12月6日付け)で、「コロナ下で企業にとっては短期的に利益が回収できるものに投資する傾向が続くと思うが、単にマンションだけの住宅地にはしたくない、ダイバーシティ、インクルーシブ(共生)などのコンセプトをしっかりと体現できるようにしたい」と語っている。

2022年、福岡市の残された一等地である「都心部ウォーターフロント」と「九大箱崎キャンパス跡地」の開発がどう進展するのか、注目していきたい。

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経済ジャーナリスト
神崎 公一郎
1952年、長崎県生まれ。早大卒。地方紙記者、月刊経済情報誌「エコノス」の編集長を経て、㈱プロジェクト福岡を設立、代表を務める。 現在、日本マーケティング協会九州支部の機関紙、西日本シティ銀行の広報誌の執筆・編集や地元企業の社史執筆に従事する。まちづくり、コンベンションに関心が深い。

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