【特集】福岡の飲食業のこれから

「おせち」通販で12年連続受賞の博多久松。ニッチ市場でトップを取る!食品メーカーの挑戦

「おせち」をネット注文するのも恒例の迎春準備の一つとなりつつありますが、実は「冷凍おせち通信販売のパイオニア」といわれる企業が福岡にあります。「楽天グルメ大賞」12年連続受賞、16万食の売上げを誇る「博多久松」。従業員40人足らずの会社がトップランナーとして業界を牽引する原動力に迫りました。

ネット販売萌芽期から、「冷凍おせち」通販に挑戦する「博多久松」

 
仕出し料理の店としてスタートした有限会社久松が、「冷凍おせち」のネット販売に乗り出したのは2004年。現在の社長、松田健吾さんの発案だった。
 
松田さん

当時、オリジナルの冷凍食品や一次加工食品を製造して得意先に納品。料理人だった父が始めた商売は小さいながらも食品製造メーカーに成長していました。
ですが、そのまま続けていくだけで右肩上がりの成長が期待できるはずもなく、業績は頭打ちに。何か新しい挑戦ができないかと思いついたのが、ネット通販だったのです。


 
今や、衣食住、身の回りのものをネットで購入するのはもちろん、ビジネスを始めるときにまずはネット販売を考えるのが常道だ。しかし、「楽天市場」がオープンしたのは松田さんが家業を手伝い始める1年前の1997年のこと。続いて99年には「Yahoo!ショッピング」と「Yahoo!オークション」が誕生し、ネット通販は次第に普及してきた。
 
しかし、鮮度や安全性がより重視される食品は、今でもECサイトとの相性がよくない分野。「ネットで食品を買うのは、カニとチーズケーキくらい」(松田さん)という時代だ。
 
初年度は90個にとどめたが1週間で完売。翌年、約2,500個に増産したところ12月を待たずにほぼ完売、3年目には約9,500個を売り切って「楽天グルメ大賞」を受賞した。
 
既に、「おせち」は家庭で手作りするものから「お取り寄せ」するものへと移ってはいた。しかし、「常温」や「冷蔵」が主流。「冷凍」保存したものを直前に解凍して配送するケースはあったとしても、「冷凍」を表に打ち出して、ネットで販売する業者はほとんど見当たらなかった頃のことだ。
 
松田さん

ネットで、「おせち」を売ることが珍しがられたのではないでしょうか。あがいた結果が、たまたまうまくいった。運が良かったんですよ。


 
いや、「物珍しさ」と「運」だけで、ここまで業界をリードすることはできない。確かな戦略と確信に裏付けられた決断があったに違いない。

「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」4年連続受賞、「楽天市場グルメ大賞」12年連続受賞の栄誉に輝く「博多久松」ブランド「おせち」

特殊なニッチ市場だからこそ、地方の「中小企業」がトップを取れる

松田さん

新しいことを始めようとしても、当時の「久松」には特殊なスキルがあるわけでもなければ、時間もお金もかけられない。その時点の会社の体力、基盤のもとで、小さく始められることしかできなかった。


 
生かせるのは、結婚式や高級ホテルの料理を手掛ける中で大切に守ってきた味と品質、食材へのこだわりと、メーカーとして培ってきた冷凍技術だった。
 
「おせち」は、食の中でも特殊な市場だ。くわい、栗きんとん、田作り、伊達巻き……おせちの定番として欠かせないものの、正月以外に口にする人がどれだけいるだろうか?
 
年に1回しか使わないような珍しい食材の仕入れも、「おせち」に特化することで、大手に負けない購買力を発揮する。地方の中小企業がトップランナーとして走り続ける秘密を解く鍵の一つが、ここにありそうだ。
 
とはいえ食品製造メーカーとして「B to B」事業を続けてきた「久松」が、「おせち」メインに切り替えるのは大変だった。
 
松田さん

社内のシステムもお金も、法律上の問題も、メーカーと小売業とではまったく違う。すべて手探りで、一つ一つクリアしていかなければいけませんでした。


 

1年に1度しかない貴重な日だからこそ――。「久松」では年中、「おせち」のことを考え、試作、試食を繰り返し、フルオートメーションにはない手作りのおいしさを伝え続けている

コツコツとした地道な努力のもとで、思い切った決断が可能に

 
そもそも、「冷凍おせち」のネット販売自体、当時としては「危険な水域」への挑戦ならば、初年度の90個から3年目の約9,500個へと3年で在庫を100倍にするのも無謀なことだった。
 
松田さん

今、振り返るとギャンブルですよね(笑)。ですが、20代の自分には確かな自信があったんです。100倍と聞くと無謀だけれど、90個から約2,500個、約9,500個はつながっている。日々のコツコツとした地道な取り組みの延長線上にある。そこで100倍売ると決めてやり抜いたのです。


 
「冷凍おせち」は、「常温」や「冷蔵」に比べ、賞味期限が長めで、味付けも薄味。また、配送の場合、都合のよい日に受け取ることができるなど、そのメリットは大きい。

こうしたメリットを活かした「博多久松」ブランドの「冷凍おせち」は、「楽天市場」で常にトップクラスの売上げを維持。その他大手ECサイトのみならず自社サイト、DMなど販売チャネルを拡大してきた。

現在、「おせち」市場は、600億円とも800億円とも言われる。中でもEC市場の拡大は著しく、Nint Ecommerce(ニントイーコマース)の売上推計データによると、楽天市場の2020年の流通規模は、前年比12.4%増の30億7,000万円。ここ数年、2桁成長を続けているという。
 
当初は「珍しかった」ECサイトでのおせち販売が一大市場に成長した今、パイオニアはどうやって生き延びていくのか。競合他社に、どう目を光らせるのか。
 
松田さん

チャンスを逃さず、ポイントポイントで決断することが重要。まあ、それでも失敗する会社もありますから、やはり運が良かったというしかありません(笑)。

 「運が良かった」と何度も繰り返す松田さんだが、それはまさに地道な努力の蓄積をベースとして、時代の流れを的確に読み、タイミングを逃さなかったことを指しているのだろう。

「おせち」から通年の行事食、そしてECコンサルティングへ

 
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う在宅、巣ごもり需要もあり、「博多久松」の「おせち」は、今期も好調だ。また、「おせち」で培ったノウハウや技術を生かして「母の日」「父の日」「敬老の日」向け商品などを開発。「毎日がハレの日」を提供する食品総合企業を目指している。

さらに、福岡県物産振興会の「福岡よかもんショップ」運営を受託するなど、ECコンサルティング分野にも乗り出している。
 

福岡県よかもんショップ | 楽天市場 (rakuten.ne.jp)

松田さん

『食』をメインにした地元のECサイトとして高い評価をいただき、信頼されたものとありがたく受け止め、ECを通じて福岡の魅力を県外に発信していくよう力を注いでいます。


 
10年かけて開発してきた独自の受注管理システムが完成。業務効率化に成功し、収益性も大幅に向上した。「おせちの博多久松」が、今度はECコンサルティング企業として地元企業をサポート、「博多」「福岡」の名をより一層高めてくれることに期待したい。

<企業データ>
■有限会社 久松
https://hisamatsucorp.jp/
■創業/1982年
■住所/福岡県糟屋郡粕屋町大字仲原2839-7
■電話/092-622-6355


																							

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フリーランスライター
永島 順子
福岡市生まれ。地方紙の報道部記者として取材活動を続けた後、独立。全国紙、経済誌・専門誌などの取材・執筆に携わる。2012年から7年間、新聞社グループ企業のデジタル編集部でニュース配信・ニュースサイトのデスク業務を担当。著書に『佐賀の注目21社 志ある誠実な経営力で地元を守り立てる』(ダイヤモンド社・2017年)

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