度々失礼いたします。新米経営者のす~しゃちょーです。
まさか謝罪から入る記事を書くことになるとは思いませんでした。
ということでごめんなさい、一回でまとめきれませんでした。
前回、僕のぶっこみ質問「アカデミズムと実務」というところについて、飛田先生のお話を存分に伺わせていただき、そこから創業体験プログラム(創P)、その意味するところであるアントレプレナーシップ教育というキーワードをいただきました。
前回記事:す~しゃちょーの「福岡〇〇バカ日誌」Vol.2-1 アントレプレナーシップ溢れる“管理会計バカ”・福岡大学飛田努准教授インタビュー 大学で学ぶことは、実務でも使える。「創業体験プログラム」飛田ゼミ10年の実り https://fukuoka-leapup.jp/biz/202108.309
そして重要なことは「ふりかえり」だというお話も。
その重厚さをがっつり受け止めてしまったがばかりに、まさかの豪華二本立てと相成りました。
今日はそんな前回の飛田先生のお話をまさに「ふりかえり」つつ、研究対象である「管理会計」について、徹底的に深堀りしていく所存です。
【1】アントレ教育の背景と実態:管理会計の研究者が、学生にアントレプレナーシップを伝える理由とは
飛
会計こそクリエイティブですよ。
注意報が出るほどの猛暑の中、お互い冷たい清涼飲料で火照った体を冷やしつつ、またしても火照りそうなパワーワード。
飛
ここからは、これまで聞いてきた飛田先生の背景をもとに、管理会計に対する解像度を上げていきたいと先生に伝えました。
飛
100円のものを買う。帳簿には決まった形式で記録される。
しかしその裏には必ず意図があり、その100円のものを買うに至った人の行動が紐付いている。
飛
す~
(それは理系にはないな、、、)
とか思いつつ、話は創業体験プログラムと管理会計との繋がりの話へ。
飛
当時女性登用がブームとなっていて、その流れで京都大学が女性起業家育成に力を入れ始め、そのセミナーの講師として参加していた飛田先生が村口さんと出会ったそうです。
飛
だから、最初はアントレプレナーシップというよりも、企業経営の経験をすれば会計の重要性がわかるのではないかというところから始まったんですね。そういう中でQRECの五十嵐先生を紹介され、アントレプレナーシップ教育を学ぶようになりました。
今では、「創業体験プログラム」で投資を募った上で学園祭での模擬店出店を集めた資本金を元に運営させたり、更に発展して「社会課題をビジネスで解決するプロジェクト」として地方の空き店舗のオーナーさんに場所を借りカフェの運営などをさせたりと、より実践に近いところをさせています。僕も商売をやってはいますが仕入や在庫のリスクなどを背負ったりするタイプの商売はしていないので、やれと言われてもドキドキしちゃいますね。
香椎駅前にて、ゼミ生がコーヒースタンドを取り仕切る様子。後述の「社会課題をビジネスで解決するプロジェクト」。様々な社会課題を背景とし、ニーズと可能性をマーケティングして行動に移している
ここでふと疑問が。
す~
体感的に、すごく多い気がするんですよね。税理士に任せてるからわからん、とか、数字は苦手だから、とか。
飛
どゆこと?
飛
まあ確かに、僕は金なし仕事なし人脈なしのトリプルボギーから始めましたから、むしろ数値計画建てないとやってらんなかった、というきっかけはありましたね。
飛
なるほど。といいながら僕はまだ学生でしたからあまりピンとはきませんが、建設関係の社長さんなんかからは地獄のようだった、という話だけは聞いていました。
ここから、飛田先生の会計に対する愛がにじみ出てきます。
飛
元々は経営財務、つまり資金調達と運用、企業がどこから資金調達して、どうそのお金を使うかを研究してきた先生が、お金の情報が載る会計を次のように説明してくれました。
飛
よかった。前回の冒頭の説明はだいたい合ってた。
飛
まさかの例えも同じダイエットでした(ちょっとうれしい)。
飛
模擬試験の結果に単純に一喜一憂する人と、結果がどうこうではなく、どこがよくて、何がダメだったのか、それを分析するために結果を「使う」人の差。そう聞くと、どっちが受験に合格しそうか、というのは想像しやすいですね。
飛
自分たちのやりたいことをやったらお金がもらえるわけではない。当たり前のことですが意外と難しいんですよね。
飛
それは僕もそう思う。
飛田先生もそうだと思うし僕もそうですが、バカにしているとかでは決してなく、構造上の問題で。
大手をはじめとする組織構造が確定している企業の場合は、ひねれば水が出てくる蛇口がすでにあるわけなんです。だから、それをいつ、誰が、どのくらい回すか、その効率の良い運用が主たる活動になるわけで。
対して我々零細企業は、バケツを持って歩いて回って「お水をください!その代わり『これ』ができます!」みたいな感じなので、当然まずはお水をくれるだけの「これ」が何なのか考えるのが主たる活動になる。もしくは足で稼ぐ。いずれにしろ、どうやったらお客様が水をくれるかをいつも考える。そうしないと死んじゃうからね。
そりゃそうなりますよ、それでもわかる大手企業の人はかなりのツワモノでしょう。
学生たちにしても、理屈を学んでも実行に移すのは難しい、と飛田先生は言います。
思い込みの話がまず出てしまうんですって。
飛
3~4年目くらいに自分自身もわかってきた、と飛田先生。うん、本当に大学の先生なのか怪しくなってきましたね。
ある年の模擬店で販売された「こぶたまん」。生地、タネ、顔つけを全部手づくりに。創業体験プログラム史上最も複雑で難しいオペレーションになりましたが、当日は爆発的ヒット商品になったそう
飛
飛
完全に目線が事業主ですね。
飛
あ、ヒートアップしてきちゃった。今日は猛暑日。
飛
経営とは人、数字の裏には人がある、と師匠に言われてきました。一方で、体験していないことはわからない、とも思います。ビジネスの話となると実務家の話しか聞きたがらない人いますよね。学生にも結構いたりします。話が面白いから。でもそれはそれでまた問題で…
経営者にもそういう人多いですよ。ええ。
飛
けど社会人の多くは「大学は象牙の塔だ」と思っている。実践は理論に勝ると考えている人もいるかもしれない。ビジネスの方法論に限って、好きなことを好きなように経験に基づいて語ってしまう人は多い。あるいはそういう方法論が唯一正しい答えであるかのように考えてしまっている人もいるかもしれない。
そういう価値観が今の日本の状況を作っているのかもしれないという危機感はあります。
象牙の塔、とは、閉鎖空間を揶揄した表現。
飛
実は飛田先生、2021年5月にこれまでの10年あまりの研究成果をまとめた書籍「経営管理システムをデザインするhttps://amzn.to/3fktu9o」を上梓されました。
もちろん事前に入手していましたが、僕は本稿をあらかた書き終えた直後にこの本を読みました。
これは僕なりのこだわりで、普通逆だとは思いますが、極力色眼鏡をかけず、生の飛田先生を感じたそのままを率直に表現することで、なるべく「人間・飛田努」をみなさまにお届けしたかったからです。従いまして読了後も文章は構成上必要な変更以外は加えていません。
本の内容については本稿の最後に触れたいと思います。
【2】会計は誰のものか:曖昧な概念を曖昧なままにしない、これこそが「会計」の本質
さてさて。
そんな研究者・飛田先生が一番大事にしているのが「ふりかえり」だと言います。
す~
飛
て、手厳しい、、
僕なんか、まあそういう考え方もあるかもね、何が正しいかなんてわからないし、みたいに思ってしまいますが。
飛
僕はどちらかというと理論派のつもりですが、数字に寄りすぎるのもどうかと思うし、特に経験の少ない自分にとって、ときには感覚で決めざるを得ない場面は往々にしてありますが、ことコミュニケーションという視点に立った時、自社でもお客様の現場でも、数字がコミュニケーションの思わぬ問題を解決してきた場面は少なからず見てきました。
それにしてもやっぱり「やってみないとわからない」。
飛
民主主義の持ち腐れ、という感じ?GHQに構造改革されるまではそういう社会ではなかったから仕方ない側面もあるとは思いますが。
飛
そういうこともあって、ゼミ生はゼミに入る2年生の夏休みに3-4冊、春休みに2-3冊、3年生になると毎月1-2冊という具合に課題図書が出されてレポートを書くというトレーニングをしています。
実践をただやるのではなくて、インプットして知識を持って実践することもやってます。選書は定番もあれば、その時の興味関心で選んでいるものもありますね。
本、読まねば(汗)(注:す~しゃちょーは本を読むのが大の苦手です)。って原稿書いたら飛田先生がブックリストを送ってくださいましたので頑張って読みたいと思います!(ほんとどこまで面倒見がいい先生なんや…
飛
つくづく教育者の鏡ですね。
そんな先生についつい甘えてしまいしょうもない質問
す~
飛
温かい切り返しありがとうございます。たまに起こる元理系の発作です。
【3】会計はみんなのもの:会計は共通認識。その共通認識をどうデザインするかが経営者の仕事
す~
おーい、質問の質!(汗)
飛
飛田先生のフィールドワークは今の所製造業がメインなようなので、そっちは逆に安定志向、ものづくりに対する誇りをベースにした責任感がある人が多い、とのこと。
飛
商人としてはそのくらいが丁度いい?(笑)
特に東京の人が福岡に来ると、優しい人がすごく多い、と感動することがあります。道を訪ねてみるとよくわかります。
それも博多商人の軽やかさを気質として受け継いでいるからでしょうか。
たまに福岡の人と比べて自分の冷たさに自己嫌悪になることもあります(汗)
最後に、ということで、質問をしました。
す~
飛
お前はどこかで質問の勉強をしてこい。このアンポンタン。
いやここまで熱く語っていただいた飛田先生のテーマとする管理会計というものを、どうしても最後にみなさまに強く印象に持ってもらいたくて。
そんな僕の雑な振りに対しても、飛田先生は真摯に応えて下さいました。ああ、なんていい人。
飛
本のタイトルにも使われている「デザイン」という言葉を引用する飛田先生。
飛
福岡から仙台まで自転車で行った僕、高みの見物(おい)。
そういう話ではもちろんなく、簡便さだけが方法を決める唯一の根拠ではないということ。
飛
だから、会計が大事だし、その前にアントレプレナーシップが大事。アントレプレナーシップって闇雲に何かやるという話ではなくて、「コントロール可能な資源を超越して機会を追求する」ことなんです。自分の手持ちの資源を使って、数ある選択肢を選ぶ、周りの人の協力を得ながら前に進むってことです。そして、決算書に載っている数字の裏側には人の思いが紐付いています。その効果を貨幣的価値で測定しているのが会計ですよね。数字の裏側に見えるコンテクスト(文脈)が大事なんです。同じようにビジネスをしていても、数字に結びつくか、つかないかというのは、その時の人の考えだったり、状況だったり、行動の結果の違いなんだろうと思います。
多分、僕が言い出したはずなんですけど、と前置きしこう続けます。
飛
僕は正直このお言葉に救われましたね。自分のことだけならいざ知らず、仲間のことを強く想うほど、最終的には数字のことを深く考えるようになるのです。ですが、そんな思いとは裏腹に、そういう話をすればするほど遠ざかる人がいたのもまた事実で。
す~
僕は期待を込めてそう質問しました。
飛
一方、こんな印象的な話もいただきました。
飛
ベトナムの工場を訪問した際の記念写真。ゼミ生も同行させてもらったそう
飛田先生の追い求めている理想は、当社の経営理念ともとても近く、純粋に共感を覚えます。
そう、我々は、日本人。ご先祖様のおかげで培うことのできたこのアイデンティティは、尊ぶべきものだと思います。
飛
単純化された資本主義に対する問いかけ、なのかもしれません。
飛
本のアピールも最後まで忘れない飛田先生に脱帽です。
それは冗談として、これまでの中小企業研究に、それこそ「バカみたいに」真摯に取り組んだからこそ得られた、飛田先生の慧眼が発揮された結果なのだろうと、僕は思いました。
これが本当に大事なことなんですが、と飛田先生。
飛
だから、リスクを測定してからやるかやらないか決めるのが大事で、それが会計の一つの意義です。ビジネスを実際やってみてわかることがあります。でも、その成果を測ることも大事。やる前にどうなりそうか予測するのも大事。むしろ測れないことをなんでやるのか?測れないものは判断できない。それは感情で決めているに過ぎない。学んできたこと、やってきたことの積み重ねでしか判断できない。その意味を知るためにも測ることが大事なんです。
やってみての失敗はいいが、取り返しがつかない失敗にならないよう測ることを学ぶ。それが蛮勇と挑戦の違いなのではないかと、最後の飛田先生の示唆から僕は感じました。
【4】総括:アントレプレナーシップは、企業家やスタートアップ創業者だけのものではない
インタビューはここで終わり、その後一緒に食事をさせていただきました。
その席では主に今のゼミ生のこと。
冒頭でもご紹介したとおり、飛田ゼミの方々とは日頃から交流がありまして、一緒に学生さんの起業に関わっただけでなく、ある学生さんにはお仕事の依頼をしたり(フクリパでの大学生ライターさんもそうです)、一緒に学生さんと経営者の勉強会に参加したり、定番のお悩み相談なんかもお相手させていただいたりしていました。癒着ですね(笑)。
弊社にお悩み相談に来てくれた飛田ゼミの学生さんと語り合うす~しゃちょー
飛田先生の教育方針のおかげでもあると思いますが、何より対等な関係で学生さんたちと日々触れ合えるのは僕たちにとってもとても心地よいです。
飛田ゼミ生の大学生ライターの記事はこちら!
★大塚千尋さん https://fukuoka-leapup.jp/writer/41
★樋口純玲さん https://fukuoka-leapup.jp/writer/58
★竹嶋海音さん https://fukuoka-leapup.jp/writer/60
本当にいつも学生さんたちのことを思っているんだなーという感じでお話をしていると、
飛
す~
飛
す~
飛
す~
飛
す~
飛田先生は言います。
アントレプレナーシップ、企業家精神とは、企業家のためだけにある言葉ではない、と。
日本語訳がそうだから勘違いしやすいんだけどね、とも言いながら。
飛田先生は、アントレプレナーシップとはつまり、リスクを受け入れ、今を超えるために一歩踏み出す、そのために必要な心のあり方、と言います。
それを持った上で、どんな生き方をするか、それこそ自由だ、ということです。
ここで著書「経営管理システムをデザインする」のまえがきの中から先生の言葉を引用すると、自身のこと、自身の研究のことを次のように表現しています。
なんともアントレプレナーシップに満ちた表現だと思いませんか?
足りないものがあることを自覚し、それでもやるべきことに向け、今やれること、今やることの意義を明確に見定め、ともすれば糾弾されるかもしれないリスクを承知でチャレンジする。
自身は研究者である、と、本稿でもはっきりと示された上で、アントレプレナーシップを自ら実践し、体現する。
きっとそんな「バカみたいな」先生だからこそ、創業体験プログラムは10年も続くことができ、その思いを学生さんたちは感じているのでしょう。
僕のような実務家からみてもそれは同じです。この先生なら、きっと自分たちと同じ目線で自分たちを見てくれる。だからこそ、そんな先生が人生をかけて研究されている管理会計に対して、僕らはその重要性に気付くことができるのでしょう。だから逆に、僕らもアカデミズムに対する観念を見つめ直し、真の産学連携というものを目指していくべきなのかもしれません。そしてちゃんとあとがきにもこのように書いてありました。
そんな愛すべき飛田先生に最大限の敬意を込めて、この称号を贈りたいと思います。
「アントレプレナーシップ溢れる管理会計研究バカ」
ご覧頂きましたみなさま、誠にありがとうございました!
飛田先生のご著書
『経営管理システムをデザインする (牧誠財団研究叢書 14)』
詳細はこちらさらに!フクリパ読者のために推薦図書リストもいただきました!
『全米ナンバーワンビジネススクールで教える起業家の思考と実践術: あなたも世界を変える起業家になる』山川 恭弘,大前 智里(著)
詳細はこちら『未来を実装する――テクノロジーで社会を変革する4つの原則』馬田隆明 (著)
詳細はこちら『デジタルエコノミーの罠』マシュー・ハインドマン (著),山形浩生(翻訳)
詳細はこちら『コンヴィヴィアル・テクノロジー 人間とテクノロジーが共に生きる社会へ』緒方壽人 (著)
詳細はこちら『人間主義的経営』ブルネロ・クチネリ (著), 岩崎 春夫 (翻訳)
詳細はこちら