【特集】創業特区「福岡」のいま

元数学教師は、日本初の地域型オンライン合説を社内起業で実現した!

福岡市は、日本の21大都市の開業率で第1位の都市です。起業家の多くが民間企業でのビジネス経験を持つ中、高校で数学を教えていたという異色の起業家は、2度目の挑戦で、日本初の"地域特化型"オンライン合同企業説明会を福岡で誕生させました。

なぜ、福岡で日本初の”地域地域特化型”オンライン合説が誕生したのか?

 
新型コロナウイルス感染症の出現によって昨年来、世の中は大きく変わった。
 
経済活動面では、リモートワークやオンライン化が一気に進み、働き方自体も一変させた。一方、就職・採用面でも、これまで対面で行われていた企業説明会や面接などは、オンラインへと切り替わった。
 
従来、対面で開催されていた合同企業説明会は、クラウド型のビデオチャットサービスを利用した「オンライン合同会社説明会」に取って替わられつつあるが、地元学生・地元企業を対象にした日本初の“地域特化型”オンライン合同企業説明会は、2020年3月25日、福岡で誕生している。当日開催の『福岡オンライン合同企業説明会』には、本社や事業拠点を福岡市内に構える企業36社が登場し、1,500人の学生が参加した。
 
なぜ、福岡で日本初となる地域特化型オンライン合同企業説明会が誕生したのか。この点について、同説明会を企画・運営した株式会社リクメディア代表取締役の藤村賢志さんは、事情をこう明かす。
 

藤村さんが設立した「リクメディア」のトップページ。右側のロゴマークは、藤村さんの頭部に由来するらしい

藤村さん

以前から地元のIT企業の人事担当者らによる勉強会『一般社団法人Fukuoka HR』を運営していたが、昨年2月頃から「通常の合同会社説明会が開催されないので、採用の母集団形成ができずに困っている」という声が相次ぎました。
当時、私が在籍していたシステム開発会社では、既にオンラインでの採用説明会や面接をやっており、テクノロジーで対応できないかと考えました。
ちょうど、3月初旬に東京本社の有名企業などが集まったオンライン合同企業説明会を見てみると、「オンラインサービスなので、アクセスしやすいものの、地元志向の強い福岡の学生にとって、東京の会社ばかりの合同会社説明会は魅力的なのだろうか」という疑問も感じました。
もともと私自身もエンジニアであり、オンラインサービスを活用して、福岡の企業に就職したい地元志向の学生向けに何かできないかと考えていたので、Fukuoka HRのメンバーに呼び掛けて実現したのが、日本初となる地域特化型オンライン合同企業説明会でした。
たしかに最初は、企業サイドの課題解決でスタートしたものの、学生の方々にも想像以上に喜んでもらったことは嬉しかったですね。


 

2019年開催の人事組織づくり勉強会「FukuokaHR」では、藤村さんが組織づくりの重要性について説明した

未曽有のコロナ禍の下、迅速に地域特化型オンライン合同企業説明会を立ち上げれた背景として、福岡のIT企業人事担当者らの勉強会に代表されるコミュニティの存在は大きい。福岡のまちは、互いに"顔のみえる"コンパクトシティとしての強みをコロナ禍でも発揮したといえる。


 熊本県内のTV民放局と共同開催した「オンライン合同企業説明会」を打ち合わせした際のヒトコマ

なぜ、高校の数学教師は学校を辞めて起業家を目指したのか?

 
株式会社リクメディアを2020年5月に設立した藤村さんは、元数学教師。九州工業大学でプログラミングやロボット工学を学んでいた藤村さんだが、アルバイト先の学習塾で教育の面白さに触れて卒業後は教職に就いた。
 
高校で数学教師を務めていた藤村さんが最初の起業に挑んだのは、2012年のこと。1回目の起業について、藤村さんは次のように振り返る。
 
藤村さん

数学教師を辞めて最初に起業した当時は、スマートフォンが普及した時期であり、「スマートフォンが世界を変える」と確信していました。
もともと教師になったのは、《教育をもっと良くしたい》という思いからなので、スマートフォンという新たなテクノロジーによって《もっと教育は良くなる》と確信して、教師を辞めて起業しました。
そして、大学受験用のソーシャルネットワークサービスのアプリケーションを開発して、「良いサービスをつくれば、必ず売れる」と思い込んでいました。
しかし、どんなに良いサービスをつくっても、お金を払ってくれない現実を直面にして、収益化の難しさを味わいました。
これまで教師だったので、売り上げの立て方を知らず、事業を成り立たせる方法も分からないままでした。結局、分からないことばかりで先へ進めず、本業にも集中して取り組めなかった結果、起業は失敗に終わりました


 
 基本的にはWeb 開発での事業展開でやっていたので、固定費などは殆どかからなかったという。だが、Webサービスやアプリが軌道に乗らなかったことで、プログラムを書く時間だけは浪費されたその延べ時間は、5,000時間以上。1週間の所定労働時間は40時間なので、実に125週以上、つまり通常の2年半分を費やしたことになる。
 
「自分で開発を行っていたので、大きな負債が残ることはありませんでした」と話すが、結局、苦汁をなめた藤村さんは、もう一度別の学校に数学教師として復帰し、2年間勤務することになる。
 
その後、システム開発会社へ転職し、エンジニアとして実務経験を積んでプログラミング技術を磨きながら、「ビジネスとは何か」「いかに経営していくべきか」について、真剣に考え続けたという。
 

なぜ、リベンジとなる2回目の起業で社内起業を選んだのか?
~~社内起業という、もう一つの選択肢~~

 
藤村さんの運命の歯車が大きく動き出したのは、一人の起業家との出会いだった。2015年8月のことである。
 
インターネット通販(EC)サイト向けのシステム開発などを手掛けるカラビナテクノロジー株式会社を創業したばかりの福田裕二社長と出会い、「もう一度自分も起業したい」と相談した。
 
すると、大手通販会社に勤務した後にシステム開発会社などで豊富なビジネスキャリアを積んできた福田社長からの回答は、「会社で働きながら、起業をすればいい」という内容だった。そして、“副業としての起業もOK!”の公認を得た藤村さんは同年10月、カラビナテクノロジーに社員第1号として入社した。
 
藤村さん

入社当初は、エンジニアとしてアパレル系ECサイトのシステム開発や保守を手掛けた後、2019年4月に人事部門担当へ異動しました。
社員1人から70人規模の企業に成長する過程に身を置いて、組織はどのように大きくなっていくのかプロジェクトはどのように回していくのか、そして、いかに企業を経営していくのかを間近で学ぶことができました。
起業とは結局、企業経営に尽きる。どうやって経営をするのかを知らなれば、起業はできません。


藤村さんが社員第1号として入社したカラビナテクノロジーは、5年足らずで社員70人規模の会社になった
 
藤村さんにとってリベンジとなる2回目の起業チャンスは、意外なカタチで突然やってきた。それは、「福岡オンライン合同企業説明会」の開催を3日後に控えた2020年3月22日、福田社長との社内打ち合わせの場だった。
  
藤村さん

打ち合わせをした時、福田社長からの「福岡オンライン合同企業説明会は、開催前からすごく盛り上がっている。いますぐに起業すべきだ」との言葉に背中を押されました。私自身も同感だったので、カラビナテクノロジーからの出資と福田社長の取締役就任で関連会社として2回目の起業へ踏み出しました。
初回開催の成功を契機に続けざまにオンライン合同企業説明会を30回開催して分かったことは、1年前の成功体験が現時点でも成功と言えないほど、変化のスピードが速いことです。
このため、参加学生や登壇企業からの声に耳を傾けながら、常に最適のやり方を提供していくように努めています。そして、将来的に学生と企業をつなぐオンラインコミュニティづくりができたら、いいですね。


 
2度目の起業において、社内起業を選んだ藤村代表は、そのメリットとして、下記の5点を挙げる。
 
①  企業経営の仕方や意思決定のやり方を、経営者自身から学ぶことができる。
②  初期費用が大きい事務所開設も、会社の空きスペース活用で確保できる。
③  インターネットなどの社内インフラも、既存の会社設備を活用できる。
④  税理士や社労士などの専門家を紹介してもらって、円滑に起業できる。
⑤  経営陣に上司だった社長を招くことで、経営上の調整も付きやすい。
 
会社を辞めてからの“独立”起業、在学中の“学生”起業などに限らず、企業に在籍しながら、“社内”での起業というスタイルは、今後の“副業”時代において、有力な選択肢になり得ると、筆者は考える。

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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