僕の狂ったフェミ彼女
自身の渡米をきっかけに、最愛の彼女に突然別れを告げられた主人公。
これまで最も愛し、そして別れによって最も致命傷を与えられた彼女に、偶然にも4年後、ばったりと再会する。
ところが彼女は、それまで彼がネットでしかみたことがない、”男が嫌いすぎてこじらせた”女、「フェミニスト※」になっていた。
※本来の「フェミニスト」の意は異なる
韓国でドラマ化・映画化が決定、日本を含む7カ国で翻訳出版が決定した小説『僕の狂ったフェミ彼女』は、男性の主人公目線で物語が描かれます。
かつては愛し合った女性(フェミニスト)と”普通の”男性(いわゆるミソジニー)の間で交わされるやりとりや、周りをとりまく数々の出来事。
日本にも蔓延る男性優位社会が、一男性のどんな感情や認識から成り立っているのか?
そして、あるべき権利を主張する女性が、「モノ言う女」として彼らにどう映っているのか、そのリアルが痛いほどに描かれています。主人公の思想や行動は根っから家父長的でミソジニーな考え方ですが、彼女を前には愛が勝り、その姿は呆れるけれどどこかコミカルで、重い気持ちにならずに読み進められます。
愛も権利も譲れない あなたのための物語
どうしようもなく愛した人が絶対に賛同できない考えを持っていたとして、でも自分の権利は絶対に諦められない、でもでも愛すのもやめられないとなったら、、、どうしようか?
何が彼らをミソジニーに、フェミニストにするんだろうか?話し合うことで分かり合えるんだろうか?
恋愛関係にある人だけではなく、家族と話す中でも、似た思いを巡らせることが私はあります。
この人のことは大好きだけど、女性蔑視、性差別、結婚観の押し付け、歳を重ねるごとに女性の価値が下がるという考え、、、それらが根本にある言葉遣いや態度に悲しくなったり、憤りを覚えたり。
(中略) 自分の人生を安全に守り、自分らしく生きたいという欲求と、誰かとともに生きたいという欲求が正面衝突するしかない。女性の場合は特に。(本書あとがきより)
残念なことに九州は家父長制の強い地域だとも言われますが、思い当たる節がある方もいるでしょうか。
性別・年齢を問わずぜひたくさんの人に読んで欲しい、そして感想を聞きたくなる本です。
私たちが、分かり合えないこと、分かり合えないかもしれないことを恐れずに、対話を重ねられますように。
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僕の狂ったフェミ彼女
ミン・ジヒョン(著/文)加藤慧(翻訳)
発行:イースト・プレス
四六判 336ページ
定価 1,600円+税
書店発売日 2022年3月17日
https://honto.jp/netstore/pd-book_31435870.html