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「個人の意向重視」は友人関係と社会に何を生んだか?|石田光規『友人の社会史』

自分をリープアップしてくれる本を、ライター目線で1冊ずつ紹介する「フクリパbooks」。前回は推しについてのZINEを紹介してくれたダイスプロジェクトのプランナー・天野加奈さんの、新たな気になる一冊です。

友人関係は30年でどう変わったか

「友人には本音を言えない」と思う人が増えているそうです。
あなたにとっての友人とは、親友とは、どんな存在でしょうか?

『友人の社会史』は、1980年代から2010年代の新聞記事を読み解きながら、私たちにとっての”親友”という存在がどう変わってきたかを見つめた本です。

80年代以降、個人は自らの好み・意思に応じて自由に人間関係を築いていくようになり、また情報通信端末が普及した2000年代からは、友人のあり方は複雑さを増してきたと言います。
関係性が充実を見せる一方でそれを持て余しつつもあり、私たちは友人に対して「接触」と「撤退」という相反する欲求を抱えるようになってきました。関係が複雑性を増した結果、友人に相談をする人は減り、母親に相談する人が増えているというデータもあるのだそうです。

友人についての悩み相談の傾向や高校野球に求められる球児たちの友情ストーリーなど、約30年分の情報が丁寧に読み解かれた分析はぜひ本を読んでいただくとして、終章で語られていることを少し抜粋します。


個人の意向を重視した社会は、一方で、他者を顧みない”きままな個人”を生み、他方で自己責任の原理のもと、迷惑を及ぼした人に激しい弾圧をはかる”厳しすぎる群衆”を生み出していった。
(中略)
人びとにはプラスの面、マイナスの面いずれもあり、プラスの面だけで覆い尽くされた存在はあり得ない。私たちの社会には、嫌なところがみえたら即座に解消されるのではなく、嫌なところ、至らないところがみえてもなお、ともに居られる人間関係が必要である。

友人という関係性だけでなく、人間関係や社会全般に対する個人の態度についても言及されています。

激しい弾圧ではなく対話を

厳しすぎる群衆が生まれると、何がよくないのでしょうか。

例えばいわゆる「炎上」が起こったとき、SNSで挙がっている声の中には、表出している問題の指摘・課題提起や議論だけではなく、個人への攻撃や悪意ある批判も多く見られます。
違和感に対して声をあげることはとても重要である一方、一個人・一団体に対して感情のままに鋭利な言葉を投げていいかどうかは全く別の問題であることを、私たちは忘れがちではないでしょうか。

誰の中にも少なからず ある種の暴力性や差別性、実はたいして思ってもいなかったのに口を滑らせてしまう可能性もあり、いつだって、無意識に加害者になり得ると思うのです。
多様性とは「1人の人間の中に色々な人格・側面がある」のを知っているということで、決して「色々な人がいる」ということを過剰に認め合うことではない。

色々な”そのひと”性 を含めて知り愛し、指摘・対話できるのが友人であり、
そして友人かどうかを別にしても、「炎上」に対しては当事者たちの「多様性」を想像した上で、なぜそれが問題なのかを紐解き、どうあるべきだったのか・どんな社会にしていきたいかを考える。お互いを尊重した上で対話できることが理想だと思います。
問題の指摘や課題の提起を、無責任に煽る「炎上」と混同せずに、「どうなっていったらいいのか」を話せる場があることで、知らない人同士にもよりよい関係性が生まれるまちになればいいな、と思う、福岡の今日この頃でした。

* * *

「多様性」については伊藤亜紗さん(東京工業大学科学技術創成研究院 教授)がおっしゃっていたことなのですが、東京工業大学さんのインタビュー記事と、伊藤さんは出られていませんが私の大好きなPodcastのこの回がとても素敵なので、合わせておすすめします。
インタビュー記事:https://www.titech.ac.jp/public-relations/research/stories/next02-ito

* * *

『友人の社会史』ー1980-2010年代 私たちにとって「親友」とはどのような存在だったのかー
石田 光規(著/文)
発行:晃洋書房
四六判 224ページ
定価 2,400円+税
初版年月日 2021年2月10日

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プランナー
天野加奈
1993年大分県出身、福岡市在住。「消費されない観光をつくる」を志に、記事執筆から都市開発までさまざまな企画・編集に携わる。現在は多機能本屋 文喫福岡天神のディレクター。

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