今、なぜ古民家や文化財的宿に注目が集まるのか
福岡・九州は魅力的な温泉地、温泉宿がものすごく多く、最新の情報については、フクリパでも最近まとめました。
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でも、今なぜ古民家や文化財的な宿が注目されているのでしょうか。
1つは、全国津々浦々、地域の宝を見つめ直そうという動きがあり、地域にある文化財や古民家を活用する動きがあるからです。
Craft Inn 手[té] (C) Koichiro Fujimoto
国の観光立国の方針としても、コロナ禍前からのツーリズムの傾向としても、もとからの有名な観光地や温泉地でないエリアが自分たちの地域の魅力を開発&磨き上げをして、国内外に発信する事例が増えています。
「地域にあるコンテンツ、宝の原石を磨き上げる」という意味で、もとからあった祭りや伝統工芸、自然体験や文化体験などのコンテンツに、古い建物や文化財が挙げられます。
古民家というのは、おおよそ築50年がたつ家を指すとのことですが、各地に空き家にもなっている古い家屋はたくさんあります。取り壊されてしまうと、元に戻すことはできません。地域の文化や営みを未来にもつなげていく活用法です。
そして、もう1つの要因は分散型ホテルというコンセプト。平たくいうと、地域に点在している建物のひとつひとつに役割を持たせ、地域全体を1つの宿泊空間に見立てるのです。
ホテルカルティア 太宰府
「ここはフロント、この場所は客室、別な古民家をレストラン」という風に。訪れる旅行者がまちを回遊し、そこならではの文化と暮らしに触れ合うことができるのです。全国各地に「分散型ホテル」を志向する地域が増えてきました。
旅の仕事をして思うのですが、全国各地に宝箱のように、素晴らしい文化や食、自然が息づいています。それを意識して開発している地域が近年急激に増えているのです。
歴史ある街並みと一緒に楽しんでほしい「福岡県の古民家・文化財的宿3選」
福岡県にもしっとりした歴史文化を感じる地域がたくさんあります。ここでは、私のおすすめの3つの地域の見どころとそこにある宿を紹介します。
車だけでなく、公共交通機関でも行けます。部屋数が少ないので、「行きたい」と思ったらすぐに予約を!
1.【福岡県太宰府市】カルティアホテル 太宰府
・太宰府の見どころ
実は京都より古い都で、7世紀後半から、外交・軍事を担う国の役所が置かれ、中国など海外からの来賓をお迎えする迎賓館の役割を果たしていました。
太宰府天満宮は福岡旅行でもマストの場所
太宰府といえば太宰府天満宮への訪問は欠かせません。2026年ころまでは、大改修のため、仮殿での参拝となりますが、それもめったにない機会ですね。
四季折々の表情も美しい太宰府天満宮
あわせて九州国立博物館や竈門神社へもぜひ。さらに時間が許すなら太宰府政庁跡や、仏像を間近にみる観世音寺の宝蔵にも足をのばしてみてください。
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・ホテルカルティア 太宰府
太宰府天満宮の参道から徒歩1分。フロント、レストランも備えた古香庵
太宰府天満宮の参道から徒歩数分以内の門前町に点在する分散型ホテル。
明治時代に天満宮に仕えていた吉嗣拝山という水墨画の絵師が建てたアトリエ兼邸宅で、その後料亭となった古香庵や太宰府天満宮へ魚を毎日収めた魚屋、そして料亭だった好古亭、離れの梅花と3棟があります。
古香庵の庭。四季折々の美しさが心にしみる
1室2名定員の部屋には、時の流れがそのまま凝縮したようなこだわりを感じることができます。
古香庵にある、大正3年に建てられた宝蔵として使われていた部屋。1階はリビングで、写真は2階
宿泊客だけができる特別な体験が、太宰府天満宮の夜間正式参拝。夜の静寂の中で、神聖な時間を過ごすことができそう(1名5,000円)。その他、人力車での散策や、金継ぎ体験が楽しめます。
夜間には宿泊者のみが参拝できるという特別な体験が楽しめる
このホテルの魅力のひとつはレストラン。博多和牛や糸島豚など九州各地からの食材を使ったランチやディナー、アフタヌーンティーを楽しめます(要予約)。
私はこちらのランチやアフタヌーンティーも楽しみましたが、庭を眺めながら、ゆっくり味わう時間はとっても贅沢。レストランの利用もおすすめですが、せっかくなら宿泊して、絶品の和朝食を味わいましょう。
【ホテルカルティア 太宰府】
■住所: 福岡県太宰府市宰府3-3-33 [MAP]
■TEL: 0120-210-289
■アクセス: 西鉄太宰府駅より徒歩約5分
■詳細はこちら
2.【福岡県八女市】Craft Inn 手[té] (クラフトイン テ)
・八女の見どころ
九州以外の方であれば「八女茶」をイメージされる方も多いのではないでしょうか。
福岡県八女市には、一面緑の茶畑が広がる八女中央大茶園や四季の花々が美しい奥八女など、自然の美しい風景がいっぱい。
今回フォーカスするのは、八女市中心部の八女福島。八女福島の町家は土蔵造りが多く、白壁の街並みは国選定重要伝統的建造物群保存地区(以下、伝建地区)に指定されています。
そこには、仏壇、提灯、久留米絣、和紙や竹細工などの匠の手仕事が光るクラフト文化が息づいています。
・Craft Inn 手[té]
(C) Koichiro Fujimoto
八女福島の伝統的建築物、旧塚本邸と旧丸林本家蔵を改修して宿泊施設に。
家具や調度品など、八女を中心としたつくり手により彩られ、この土地に息づく手仕事の文化を体感できる空間になっています。
藍の部屋 (C) Koichiro Fujimoto
「藍の部屋」は、かつては乾物屋、瀬戸物屋、質屋だった建物をリノベーション。
藍染絣工房が手掛ける美しい藍の家具。テーブルも見事 (C) Koichiro Fujimoto
1階に藍染のテーブルのある畳のお部屋と木桶のお風呂、2階に天然藍染手織りの久留米絣のタペストリーのある板敷の部屋でくつろげます。
特に障子にも注目してほしい竹の部屋 (C) Koichiro Fujimoto
竹の部屋は、地元八女市の職人たちが手掛けた竹で編んだテーブルやチェア、ランプやシェードなどまさに竹づくし。
2階の障子紙は、改修前の部屋に残された襖を和紙にすき込んだもの。襖に描かれていた菊をモチーフにした久留米絣のクッションと共に、この土地の記憶を感じることができます。
目にも鮮やか!元気になりそうな朝食 (C) Koichiro Fujimoto
朝食は、八女茶はもちろん、野菜やフルーツなど地元の食材をふんだんに使い、木と竹だけで作る木桶で提供されます。
この宿は、八女を中心に地域文化商社として“ひと”と“もの”をつないでいく「うなぎの寝床」のグループ会社「UNAラボラトリー」が運営。
八女福島に点在するショップを訪ねるもよし、手仕事をより深く体験するクラフトツアーもいっぱい。時間に余裕をもって八女滞在を楽しんでみて。
▼久留米絣のもんぺでおなじみ「うなぎの寝床」とは
https://fukuoka-leapup.jp/tour/202207.694
【Craft Inn 手 [té] 旧塚本邸 (藍の部屋 竹の部屋)】
■住所: 福岡県八女市本町120-1 [MAP]
■TEL: 0943-25-7577 (9:00~18:00)
■アクセス: JR博多駅より電車にてJR「羽犬塚駅」で下車、タクシーで約20分
もしくはJR「久留米駅」で下車、西鉄バス「西唐人町」で下車→徒歩約10分
■詳細はこちら
★八女、筑後地域を堪能するツアーはこちら
3.【福岡県うきは市】みなも
・うきはの見どころ
福岡県の南東部にあるうきは市は、「筑後川」と全長20数kmに及ぶ「耳納連山」に囲まれた自然の恵みにあふれた土地。
美しい水路があるうきは市・筑後吉井
一年を通してももやぶどう、柿など果物が収穫でき、フルーツ狩りも楽しめます。また、ここの魅力は「水」。市内ほぼ全域で地下水を利用して生活するほどの良質で豊富な水に恵まれています。
建物のさまざまな意匠も美しい
市内には2軒の重要伝統的建造物があるほか、当地固有の歴史・文化資源が多数残っています。中心部の筑後吉井エリアは、江戸〜大正期の150軒以上の白壁土蔵造や木造の町屋・屋敷が建ち並び、江戸期に開削された美しい水路と調和しています。
歴史的なまちなみに個性的なショップも点在し、散策も楽しいですよ。
・みなも
大地主の家らしく、一級の木材が使用されている碓井邸
筑後吉井に2022年7月に開業した分散型古民家宿「みなも」。水に支えられたうきはの営み、歴史、暮らしなどの物語を感じることができる3棟6室からなる宿です。
菜種油と櫨蝋を生業としていた大地主の築100年を超える元邸宅「碓井邸」に、4つの異なる意匠の客室があります。
プライベートサウナのととのいスペースは半露天。ロウリュには、うきは市で希少な在来種の茶葉を栽培している「楠森堂」の特上ほうじ茶を使用
プライベートサウナを備えた客室が特に人気で、うきはの天然水かけ流しの水風呂、露天風呂、インフィニティチェアを備えた贅沢なととのい空間が広がります。
水のせせらぎがきこえる堀江邸
かつて診療所を営んでいた家族の築100年を超える邸宅を活かした1棟貸しの客室「堀江邸」は、みなもの中で唯一キッチン付き。近くの直売所や道の駅で購入した食材を調理して楽しむのもいいですね。
鏡田蔵の2階 歴史の流れを感じながらステイを
2023年4月には、全国でも珍しい、うきは市指定文化財を活用した「鏡田蔵」をオープン。
江戸時代から明治にかけて建てられた役人の官舎の蔵を改修。「うきはの恵みに酔う」をコンセプトに、1階には宿泊客が利用できるセルフバーを、2階は居室及び寝室を据えた、1棟貸しの客室です。
セルフバーでは、ウイスキーやジンの他、うきはのフルーツカクテル(ノンアルコールカクテル)を作るセットが用意されています
客室のバーは、福岡・中洲の名店「Bar Higuchi」が監修。時季によって変わる素材と、素材に合わせたお酒が用意され、宿泊者自身がバーテンダーとなってカクテルを作る体験ができます。
朝は、うきはエリアで服や雑貨、食品やスイーツショップを営む「ぶどうのたね」監修の朝食を、うきは市指定文化財「鏡田屋敷」で。
うきはは野菜や果物をはじめ米や麦・大豆や卵・牛乳やお茶・酢や味噌など、食卓に並ぶ食材のほとんどを地産地消できるほど食資源の豊かなまちです。
生産者の想いと土地の力が込められた食材を、うきはならではの味わい方に仕立てた、とっておきの朝食をお愉しみいただけます(現在、金土日のチェックインのみ予約受付。メニューは時期によって異なります)。
▼市指定文化財を活用した宿泊施設「みなも 鏡田蔵」
https://fukuoka-leapup.jp/tour/202304.1887
【みなも】
■住所: 福岡県うきは市吉井町1302 (フロント棟所在地) [MAP]
■TEL: 0943-76-9882 (9:00〜18:30)
■アクセス: JR久大本線「筑後吉井駅」より徒歩約10分
■詳細はこちら
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私は仕事で多くの古いまちなみの観光まちづくりに関わっています。今回は紹介できませんでしたが、木工のまちで有名な福岡県大川市にある小保榎津のまちなみもその一つ。
古い家屋をできるだけそのままの素材、雰囲気を保ちながら、飲食店やカフェ、宿にするプロジェクトがすすんでいます。
ここで紹介した3エリアはその先進地。歴史も文化も感じながら、まち全体を楽しんでくださいね。
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