11月になりました。少しずつ寒くなってきましたが、みなさんはどんな服を着ますか?
私たちはどうして服を選んで、着て、おしゃれをするんでしょうか。自分の気分をあげるため?他人からよく見られたいため?ファッションってなんなのでしょう。
制服を着崩すところからファッションは始まる
“ファッションというのは、既定の何かを外すことであり、ずらすことであり、くずすことであり、つまりは、共同生活の軸とでも呼べるいろいろな標準や規範から一貫して外れているその感覚のこと”(鷲田清一『ちぐはぐな身体 ─ファッションって何?』より)
哲学を専門とする鷲田清一さんは、「学生服を変形させて着ることが、私たちにとっておそらく最初のファッションだ」と言います。
自分が他人の目にどう映るかを意識しはじめたころ、「自分がどういう存在で、どうなりたいのか」はよくわからないままに、でも確かにあるやりきれない気分が、与えられた制服をくずすという形でからだの表面に出てきます。
中高生のとき、ダメと言われているのにスカート丈を短くしたり眉を整えたりして、よく先生に怒られていました。なりたいものやありたい姿は具体的にはわからないけれど、言われた通りにはやりたくないし、ださいと思うことやよくわからないものからは距離をとって、できるだけ好きとか可愛いと思える自分でありたい。
今思えば困った学生なんですが、自分の気分や態度が服にあらわれていたと思うと、ものすごく納得がいきます。
就活のリクルートスーツも大嫌いで、あの画一化の気持ち悪さや「とりあえず皆と同じにしておけばいいか」という楽な選択へのささやかな抵抗として、グレーのパンツスーツとぺたんこの革靴に、普段使いもできるバッグを戦闘服にして面接に行ったのを覚えています。
主張がスタイルをつくる
“ファッションというと、まず着飾るというイメージがあるが、ファッションとはほんとうは社会を組み立てている規範や価値観との距離感覚であり、ひいては自分との距離感覚であるとおもう。”
10代のころ大好きで行っていた古着チェーンのSPINNS(スピンズ)は、“ATTITUDE MAKES STYLE!(主張がスタイルをつくる!)”をコンセプトにしていて、まさに!と思い、大人になってから改めてすきになりました。
服に限らず仕事でも政治でもなんでも、「なんか嫌だな」や「なんかいいな」という気分や感覚から、「なぜ」自分がそう感じるのかを問うていくことで、自分や対象の相手・社会を知り、自分の態度を持つ、意見をもつことができると思います。
ものごとを感情で片付けずに、しっかりと言葉で腑に落としていくことができるのは哲学の楽しいところ。そして自分の意見を持てることは強さにつながり、人生のいろいろな場面で、自分の哲学が自分自身を助けてくれると思います。
哲学というとよくわからない、堅苦しくて苦手だという方も多いと思うのですが、鷲田さんの著書『ちぐはぐな身体』は、若い人に向けて話しかけるように身体論やファッション論が書かれており、とても読みやすい名著です。
コム デ ギャルソンやヨウジヤマモトなどのファッションブランドも取り上げながら、「そもそもなぜ人は服を着るのか」「私たちがきたない・こわいと反応するものの正体は何か」などについても掘り下げていて、身近な題材をもとに哲学の楽しさを感じることができます。
読み終えるときっと、「好きに服着て自分でありてえな~!」とも思えるはず。
ファッションが楽しい季節のお供に、本もぜひご一緒に。
* * *
ちぐはぐな身体 ─ファッションって何?
鷲田 清一 著
シリーズ:ちくま文庫
660円(税込)
刊行日: 2005/01/06
判型:文庫判
ページ数:192
本の購入はこちら:https://honto.jp/netstore/pd-book_02508030.html
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