中村修治の“ネタ”あかし #006

経営を、アートやデザインに逃げるべからず。

福岡でいちばん企画書を書いてきたプランナー・中村修治さんが気になるクリエイティブや企画、商品などについてのマーケッター的な分析を"ネタ"あかししてくれます。ものの見方や考え方のヒントになること間違いなし!

今日も“イワオ”と語り続けている!!

ワタシのカミさんは、美術館が好きである。アッシーくんでお供をする。そんでもって、プランナーとしての刺激を受けて帰ることを定期的にやっている。ネタあかしと言えば、これもネタあかし。カミさんの趣味に乗っかってみるのも良いものだ

今月は、大分県別府市の「ガレリア御堂原https://beppu-galleria-midobaru.jp/」に“おこもりステイ”して来た。別府を題材にした作品を12組のアーティストが作った=アートキュレーションしたホテルだ。施設の随所にアート作品が並ぶ。お泊まりの人には、館内アートツアーが行われる。そのツアーの最後は、レストラン「THE PEAK」に鎮座する“イワオ”とのご対面。想像力が掻き立てられる。そこで、勝手に禅問答をして来た。笑

ワタシ

どうしてここに座っているのですか!?

イワオ

ガラスを見るとき、ひとはその硬さと脆さとを見ている。

ワタシ

えっ!?

イワオ

ホントに人間は良くできている。透明のガラスを見たときに、人は、その硬さと脆さをも見ているのだよ。そうして、どの位の強さでそのガラスに触れたらいいのかをカラダで表現できるのが人間なのだよ。

ワタシ

それがここに鎮座している意味ですか!?

イワオ

・・・・・・・・(沈黙)

ワタシ

(沈黙)・・・・・・

※イワオは、島袋道浩さんの作品。
※会話の内容は創作です。作品とは関係ありません。笑

磯崎新さんにもご対面。

イワオと禅問答を続けたままに大分市のアートプラザにも寄って来た。ここでは、世界的建築家・磯崎新氏の建築プレゼンの足跡を見ることができる。偉大な建築家とは、思想家であり、宗教家でもある。恐れ入った。

難しいことをできる限り簡単に伝えることは大切である。頭が良い人とは、そういう芸当ができる人である。

しかし、何事もひとことで表せと強いるエライ人達が大勢を占めていることには、辟易する。そんなことを強いることのない繊細さは、構造的なものである。不可視なものである。簡単にコトバにはできないような複雑さや日々の思考を抱え込んでいるからこその《品》である。世界的に著名な建築物には、その《品》がある

建築物への最大の賞賛は、沈黙だと思う。いちいちここは!なんて説明するなど野暮である。それは、建築物とは、構造的で不可視なものが滲み出るものだからである。輪郭をなぞってもなおこぼれてくるような複雑さこそが、人を黙らせる意匠だということである。

広告戦略の競合プレゼンをいくつもこなして来た。その度に、言葉を尽くすことに躍起になって来た。コピーの意味を説明する。デザインに意味をつける。ワタシの実績など、磯崎新さんのカウンタープロポーザルの前では、まったくもってクソである。いやはや泣けてくる。ワタシの36年間は、何だったのだ!?泣

デザインを言葉にし始めると 言葉にできないことをデザインしなくなる。

もう還暦である。そろそろ黙らせるような企画をやってみたいな!?戦略プランナーのライバルは、建築家であり。その目標は、磯崎新さんだ。そんな“恥ずかしい還暦の自分”にも出会えた。

コミュニケーションデザイン。企業デザイン。デザイン流行りである。経営は、アートだなんていうことをほざいているコンサルタントもいる。ワタシは、そんなことを偉そうに言葉にする、そやつらこそが信用できない。

イワオ

ガラスを見るとき、ひとはその硬さと脆さとを見ている。

ワタシ

そんな“ひとの力”を、信じることにします。

アドテクより
“アートや哲学に触れ続ける旅”が
生き残る秘訣だよ。

【ガレリア御堂原】
■住所:〒874-0831 大分県別府市堀田6組 [MAP]
■HP:https://beppu-galleria-midobaru.jp/
■TEL:0977-76-5303

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プランナー
中村修治
1986年に立命館大学を卒業。1989年にバブルの泡に乗って来福。1994年に㈲ペーパーカンパニーを設立し独立。福岡に企画会社など存在もしなかったころから30年も最前線で生きているプランナー。企画書を書いた量とプレゼン回数は、九州No.1だと言われている。JR博多シティのネーミングやテレQのCIなどが代表的なお仕事。コラムニストとしても多誌で執筆。

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