「薪の宿から」の場所は、松浦鉄道「蔵宿駅」の駅舎の中

今回ご紹介する「薪の宿から(まきのやどから)」があるのは、佐賀県西松浦郡有田町。車なら福岡市内より福岡都市高速〜西九州自動車道を経由して約1時間30分で到着できます。
こちらがその外観。正面左手が松浦鉄道「蔵宿駅」の入り口、右手が「薪の宿から」の入り口になっています。

店頭に目立った看板は立っておらず、こちらの小さな木のプレートが目印になります。

軒先には、昔ながらの農家を思わせる藁の束が吊るされていました。年季を重ねた駅舎と相まって、牧歌的な雰囲気を醸し出していますね。
日本の鉄道史を伝える松浦鉄道「蔵宿駅」について

お店を紹介する前に、まずは「蔵宿駅(ぞうしゅくえき)」について少し説明します。
蔵宿駅は1898年(明治31年)、私鉄の伊万里鉄道の駅として開業しました。その後、九州鉄道、国鉄松浦線を経て、1988年(昭和63年)の第三セクター化に伴い、松浦鉄道の駅となりました。
最大の特徴は、大正2年(1913年)に建てられた築100年以上の木造駅舎が、今なお現役で使われているという点。
全国に数ある駅の中でも、100年以上の時を超えて地域を行き交う人々を見守ってきた木造駅舎はごくわずか。蔵宿駅は、日本の鉄道史の面影を今に伝える極めて貴重なローカル線の遺産なのです。

長い鉄道の歴史を感じさせる、ノスタルジックな雰囲気の待合室。鉄道ファンやレトロ建築が好きな人に限らず、訪れる人を引きつける趣があります。

蔵宿駅は無人駅となっており、待合室を出るとすぐ駅のプラットホームが現れます。
手前のホームは有田方面行き、線路を渡った反対側は伊万里方面行きとなっています。

しばらく佇んでいると、反対側のホームに伊万里駅行きの列車が到着しました。
蔵宿駅から伊万里駅までは8駅で、所要時間は約17〜18分。また、伊万里駅で乗り換えると平戸や佐世保方面に行くことができます。
時間がある方は、のんびりとローカル線の旅を楽しんでみるのもおすすめです!

こちらはホーム側から見た駅舎です。
なお、ホームに備え付けられているテーブル席は、カフェ利用者がテラス席として利用することもできるんだそう。電車が走る姿を間近に眺めながらカフェタイムを過ごせるなんて素敵ですよね。
歴史のある木造駅舎を丁寧にリノベーションした店内空間

それでは「薪の宿から」の店内に入ってみましょう。歴史ある蔵宿駅の雰囲気を活かしつつ、居心地よくリノベーションされています。


黒いカウンターはオーダーメイドで設えたものですが、木の温もりが感じられるテーブルや椅子、壁面の和紙などは、店主自らがDIYで作り上げたんだそう。古い木造駅舎の風合いに見事になじんでいます。

こちらは駅の待合室側にせり出したスペース。カウンターからはガラス越しに待合室の様子を眺めることができます。


一角では、七穀米やもち麦など店主がセレクトしたこだわりのアイテムや、素朴なイラストがかわいらしい「薪の宿から」オリジナルタオルなども販売されています。

トイレは駅との共用で屋外に設置されています。壁面に描かれた色鮮やかなイラストは、東京在住のミューラリスト(壁面画家)・mamimunさんによる作品。店主とのご縁からペインティングされたもので、訪れる人のフォトスポットにもなっています。(※mamimunさんの作品は、松浦鉄道「中佐世保駅」の駅舎でも見ることができます。)
店主・髙岡盛志郎さんの歩みと「薪の宿から」ができるまで

店主の髙岡盛志郎さん(左)とスタッフの毛利さん。お二人とも素敵な笑顔!
「薪の宿から」店主は、佐賀市出身の髙岡盛志郎(たかおか せいしろう)さん。幼い頃から根っからの料理好きで、小学6年生の時にはすでに「大人になったら同級生を自分の料理でもてなしたい」という夢を抱いていました。
高校卒業後、大阪の料理学校で基礎を学び、名古屋の料亭で和食修行を積んで腕を磨きます。転機は次に進んだカリフォルニア料理店での出会い。同僚を通じ、地産地消やオーガニックのパイオニア、アリス・ウォータースと彼女の名店「シェ・パニース」の思想に触れ、「素材本来の美味しさをシンプルに引き出す」という考え方が、後のオーガニック・ヴィーガン料理の原点となりました。
その後、妻とともに渡米し、寿司職人やケータリング事業を経験。7年の滞在を経て2010年に帰国し、佐賀市で「タイマーカリフォルニアキッチン」を開業します。オーガニックの思想を取り入れた料理は多くのファンを獲得し、20年越しに幼少期の夢も結実させました。
しかし探求心はとどまらず、2018年には公共インフラに頼らない「オフグリッド生活」へ。有田町の里山へ移住し、自ら手がけるハーフセルフビルドで建物を完成させ、電気に極力頼らない暮らしと料理を体験できる住居兼民泊「タイマーの宿」をオープンします。
その宿の最寄り駅がこの蔵宿駅。駅の空きスペースを見て「ここで何か面白いことができる」と直感した髙岡さんは、すぐに松浦鉄道へ交渉を持ちかけます。こうして2022年12月、食の哲学と自給自足のライフスタイルの結晶である、カフェ「薪の宿から」が誕生しました。
地元産の「美味しい野菜」にこだわったヴィーガンメニュー

「薪の宿から」は、野菜を中心としたベジタリアンカフェ。食事メニューには動物性食材を使わず、デザートの一部には卵や乳製品を使用しています。
メインとなるのは地元有田をはじめ、佐賀の食材をふんだんに活かしたお料理。
ランチは「玄米リゾットプレート」を中心とした4種類(税込2,000円〜)で構成されています。また、テイクアウト用として「玄米リゾット弁当」の販売もあります。

カフェメニューは「本日のヴィーガンケーキ」や「豆乳クラシックプリン」など(各税込700円)が揃い、ドリンクはフレンチプレスで淹れるコーヒーやハーブティーなど約7種類が用意されています。

今回はランチメニューの「Bセット(税込2,500円)」をオーダーしました。
メインの玄米リゾットに地元産の新鮮な季節の野菜がたっぷりと添えられ、実に華やかな彩り!満足感たっぷりのスープとドリンクが付いてきます。

玄米リゾットの中にもきのこなどの野菜がふんだんに使用されています。添えられた野菜もソテーやマリネなど、素材そのものの旨味を最大限に引き出す工夫が施されており、一品ごとに異なる食感と味わいが楽しめます。

アイスコーヒーに使用しているコーヒー豆は、店主の髙岡さん自らが薪火を使って自家焙煎したもの。ノスタルジックな空間の中で味わう食後の一杯は、実に格別なのです。
姉妹店の「CAFE USEUM ARITA」も要チェック!

お店から車で約8分ほどの場所にある「佐賀県立九州陶磁文化館」内には、姉妹店となる「CAFE USEUM ARITA(カフェ ユージアム アリタ)」があります。
こちらは、髙岡さん監修のヴィーガン料理を、九州陶磁文化館に所蔵されている有田焼の名品や人気窯元の美しい器でいただくことができる話題のヴィーガンカフェ。
髙岡さんは「薪の宿から」のお休みの日を中心に、こちらでも料理の腕を振るわれています。有田を訪れる際は、ぜひこちらもあわせて立ち寄ってみてくださいね。
■CAFE USEUM ARITAの情報は下記にてご覧ください。
公式サイト:https://cafe-useumarita.jp/
Instagram:@cafe_useum_arita
いかがでしたか?
100年以上の歴史を刻む木造駅舎で、地元の野菜を生かした料理を味わえる「薪の宿から」。福岡市内からは少し距離がありますが、わざわざ足を延ばす価値が十二分にある特別な空間です。
今週末はノスタルジックな風情に癒やされに、有田までドライブに出かけてみてはいかがでしょうか?
【薪の宿から】
■住所:佐賀県西松浦郡有田町仏ノ原2759-8(蔵宿駅舎内)
■アクセス:松浦鉄道「蔵宿駅」に直結。車なら福岡市内より福岡都市高速〜西九州自動車道を経由して約1時間30分
■営業時間:月・水・金・土11:00~15:00(14:30L.O.)
■定休日:火・木・日曜および不定休(Instagramにてご確認ください)
■TEL:0955-35-4714
■Instagram:@makino_yadokara












