福岡から車で約1時間20分。「山閑人」の場所は武雄市の国道498号沿い
今回ご紹介する「山閑人(さんかんじん)」があるのは佐賀県武雄市。
福岡市内からだと、西九州自動車道に乗って佐賀県伊万里市まで行き、そこから国道498号を武雄市街方面に走っていると左手のカーブ沿いにあります。
時間にしておよそ1時間20分ほどのドライブです。
武雄市街方面からだと、こちらの丸くて赤い看板が目印になります。
駐車場は約6台分のスペースしかありません。なるべく乗り合わせて行きましょう。
車を停めたら左手に入り口があります。
まるでレンガの要塞!エントランスからワクワクが止まらない!
木々や草花が生い茂る石畳の小道を直進していきます。
するとレンガの階段が出現します。まるでレンガで作られた要塞のような雰囲気です。
ゆっくり階段を上っていきます。岩と苔生したレンガが織りなす佇まいにワクワクが止まりません。
階段を上りきった先には、山小屋風の建物が出現!ここが「山閑人」です!
ドアの前には、古びた椅子が、まるで出迎えてくれているかのように置かれています。
こちらはテラス席。店内は禁煙ですが、唯一このテラス席のみ喫煙OKです。
かつて小学校で使われていたという小さな椅子がかわいいですね。
重厚で趣のある木のドアを開けて、いざ入店です!
随所にアーティスティックを感じられる店内空間
昼間でもまるで夜かのように暗い店内。照明は「落ち着いて過ごせるように」と配慮されています。
こちらは年季が入った一枚板のカウンター。実に味があります。
様々な木彫りの鳥たちが、天井や柱の陰など至るところに見られます。
こちらは奥の4人掛けのテーブル席。
かなり写真の照度を上げていますが、本当はもっと暗くてムーディーな雰囲気です。
さらに一段下がった奥には特等席があるんです。
細い通路を抜けて光が差し込む方へ歩いていくと…
“離れ”のような位置に4人掛けのテーブル席が出現します。
年季の入った本棚には美術書がぎっしり。小窓の先には自生する木々が広がっています。
山閑人の歴史
「山閑人のママ」こと新里多加子さん(右)。油彩画家で息子のたけるさんと。
この山閑人を営むのは「山閑人のママ」こと新里多加子さん。開業したのが1982年(昭和57年)7月なので、2025年7月で43周年を迎えます。
この山閑人の歴史を紐解く上で欠かせないのが、多加子さんの夫であり、杵島山一刀彫を世に広め、芸術活動に生涯を捧げた故・新里眞紗生(まさお)氏の存在です。
1931年に台湾で生まれた真紗生氏は戦後、当時佐賀の炭鉱で働いていた実兄を頼って移住し、10代後半は炭鉱夫として働いていたそうです。
しかし炭鉱の落盤事故に遭遇。幸いにも九死に一生を得たことで「これからは好きなことをして生きていきたい」と一念発起し、東京の美術学校に通うことになりました。
卒業後は佐賀に帰郷。九州各地には古くから木彫りの郷土玩具(キジ車など)が点在していましたが、住んでいた佐賀の杵島地方に木彫りの郷土玩具は無かったため、新たに「杵島山一刀彫」を考案し、数々の作品を作り出すようになりました。
その代表作である「カチカチ車」は、たまたまスケッチに行き山で見たカチガラスをナイフで削って作ったのが原点なんだそうです。
転機となったのが、眞紗生氏の作品が「世界クラフト・デザイン・コンテスト」でグランプリを受賞したこと。それを機に海外から大量の発注が入るようになり、会社を立ち上げて従業員を雇うほど事業は拡大。かのピカソやミロも所有していたという逸話もあるんだそうです。
その後、紆余曲折があって会社を閉じ、現在お店がある場所に辿り着きます。
この場所は元々岩山の荒地で家を建てられるような場所ではありませんでしたが、自身の手で岩を切り開き、学校の廃材や閉業した焼き物窯のレンガを譲り受けて山小屋を建て、住居兼アトリエを一から作り上げられました。
そんな中、喫茶店を営んでいた友人から「せっかく立派な山小屋を作ったのなら喫茶店にしてはどうか?」との提案を受けて、友人から設備一式を譲り受けて自宅の一部を喫茶店にすることに。
それが現在の「山閑人」となったのです。
それから43年の時を経た今年2月、眞紗生氏は94歳で永眠されました。
眞紗生氏亡き後も、店内の家具や絵画や版画、陶器に至るまで店内の随所でその作品に触れることができます。
若かりし頃の新里眞紗生氏。2025年2月、94歳で永眠されました。ご冥福をお祈りいたします。
ランチからスイーツまで、バラエティあふれる手作りメニューの数々
それではメニューをチェックしてみましょう。
コーヒーは「山閑人ブレンド(税込550円)」を筆頭にモカやキリマンジャロAA、ノンカフェインにアレンジコーヒーまで豊富なラインナップ。紅茶も15種類以上揃っています。
スイーツメニューも季節の素材を使った「今月のケーキ」をはじめ、チーズケーキやガトーショコラ、フレンチトースト、ミニパフェやビスコッティなどバラエティにあふれるラインナップです。
また、平日はオープンから15時までランチも楽しめます。
ランチは第1・3・5週と第2・4週の週替わりで提供されているのが特徴。オムライスやナポリタン、ピラフといった懐かしい喫茶メニューがラインナップ。
また土日祝日は終日カレーやパスタがオーダーできる上、季節限定のフードメニューもありますよ。
こちらは15時以降からオーダーできる「アップルシナモントースト(税込850円)」。
トーストの上にシャキシャキのリンゴと蜂蜜を乗せてオーブンで焼き上げた、山閑人の人気No.1スイーツです。
ブラジルとコロンビア産の豆をブレンドした「山閑人ブレンド」はマイルドな味わい。
暗めの店内で、読書に没頭しながら飲みたくなるような一杯です。
土曜日の夜は夜喫茶営業も実施中!
土曜日のみ18:00〜22:00まで夜喫茶営業も行われています。
夜喫茶では、写真の「目玉焼き乗せビーフカレー」などのフードメニューの他、ドリンクやスイーツも楽しめますよ。
夜の山閑人は各テーブルにロウソクが灯されて、さらに幻想的な雰囲気になっています。
土曜日営業がある時にはInstagramで告知されますので、事前に必ずInstagramをチェックしてみてくださいね。
ということで、今回は佐賀県武雄市にある「山閑人」を紹介させていただきました。
筆者が山閑人を知ったのは、かれこれ20年以上前のこと。
それから本当にたくさんの喫茶店やカフェを巡ってきましたが、「これまで行った中で好きなカフェベスト10」を挙げるとすれば必ずランクインするほど気に入っているんです。
福岡から佐賀県武雄市まではちょっと距離がありますが、ぜひドライブがてら「わざわざ行ってもらいたい」そんな素敵なお店ですよ!
山閑人(さんかんじん)
住所:佐賀県武雄市朝日町中野7992
TEL:0954-26-2877
定休日:火・金曜
営業時間:12:00~17:00(土曜日は18:00〜22:00まで夜喫茶営業あり)
喫煙:店内禁煙(テラス席のみ可)
Instagram:@cafe_sankanjin
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