『サザエさん通り』を巡る 3つの謎解き

【謎解き!フクリパ】

サザエさんの誕生地は福岡!?『サザエさん通り』を巡る3つの謎解き

国民的人気漫画『サザエさん』は2025年、生誕80年を迎えます。ギネスブックにも最長放映のTVアニメ番組として登録されているサザエさんに因んだ『サザエさん通り』は、漫画やアニメの舞台である東京・桜新町と共に福岡市に2つあり、計3つとなっています。今回、サザエさん通りを巡る謎解きに迫ります。

国民的人気漫画『サザエさん』は、一体何がすごいのか!?

現在もフジテレビ系列において日曜日の夕方に放映されているテレビアニメ番組『サザエさん』20139月、「最も長く放送されているテレビアニメ番組」としてギネスワールドレコードに正式に認定されている。

202410月に放送開始55周年を迎えて、『アニメ「サザエさん」放送55周年記念「みんなのサザエさん展」』が巡回し、202513日~120日の会期で大丸福岡天神店の本館8階催場でも開催された。

 

 

漫画『サザエさん』自体は、もともと西日本新聞社から独立した夕刊フクニチの4コマ漫画としてスタートした。

その後、作者の長谷川町子さん一家が東京へ引越ししたため、連載は一旦終了する。

しかし、サザエさん人気は高く、夕刊フクニチから連載再開の依頼が届き、翌1947年に再開した。

福岡時代のサザエさんは独身だったのに対し、東京・桜新町に舞台を移した際、夫のマスオさんと結婚し、息子のタラちゃんも登場して磯野家7人家族での連載となった。

 

 

その後、東京スポーツの源流となる夕刊紙『新夕刊』の連載に移り、朝日新聞系列の『夕刊朝日新聞』を経て、1951416日から朝日新聞本紙の朝刊に連載された。

朝日新聞での連載は、1974年に終了したものの、サザエさんの連載は6500回以上にも及んだ。

また、漫画本の累計発行部数は8600万部以上あり、日本の新聞史上における最大のベストセラー連載漫画でもある。

 

【画像】フクリパ

サザエさん通りにおける長谷川町子像(左)とサザエさん像(右)

 

 

【謎】サザエさんの誕生地は、福岡市というのは一体ナゼ?

【画像】フクリパ

『磯野広場』の記念碑

 

漫画サザエさんの作者である長谷川町子氏1920(大正9)130日、佐賀県多久村(現多久市)で生まれた。

幼少期に福岡市へ移り住み、春吉小学校から福岡高等女学校(現福岡中央高校)へ進んだ。

その後、1934年に東京へ転居する。

そして、漫画『のらくろ』で一世を風靡した田川水泡氏に師事し、15歳で漫画家デビューを果たす。

さらにデビュー後、16歳で初の新聞連載を持つほどの人気作家だった。

 

 

太平洋戦争が激化した19443月、長谷川氏一家は再び福岡市へ移り住んだ。

そして、長谷川町子氏は、西日本新聞編集局絵画課に勤務した後、終戦の翌日に退社する。

1946年、西日本新聞社から独立したフクニチ新聞社の整理部長だった牟田口宗一郎氏から『夕刊フクニチ』での連載を依頼された。

『福岡サザエさんの会』の吉武勝美会長は、このような経緯を踏まえた上で次のようにコメントする。

 

吉武勝美会長

現在の福岡市・西新1丁目に疎開していた長谷川町子さんは、近所の百道海岸を妹の洋子さんとよく一緒に散歩されていました。

夕刊フクニチから4コマ漫画の連載を依頼された時、散歩途中の百道海岸において、サザエさんをはじめ、カツオくんやワカメちゃんなどの海にちなんだキャラクターがひらめき、漫画『サザエさん』が誕生しました。

 

【画像】フクリパ

『福岡サザエさんの会』の吉武勝美会長(自身の経営されている『コーヒーハウスランダム』にて)

 

 

【謎】全国に3つある『サザエさん通り』、うち2つが福岡市にあるのはナゼ?

【画像】フクリパ

サザエさん通りの道路標示とバナー

『サザエさん通り』は全国に3つあり、1つは東京。残りの2つが福岡市にある。

 

東京・桜新町のサザエさん通り

1985113日、東京・桜新町に長谷川町子美術館が開館した。
そして、桜新町商店街振興組合が音頭をとって1987年、東急田園都市線の桜新町駅前から国道246号へとつながる中通りを『サザエさん通り』と改称した。
東京・桜新町のサザエさん通りの歩道には、サザエさんのキャラクターが描かれた看板があり、2012325日に磯野家メンバーの銅像が設置された。

 

 

福岡市早良区のサザエさん通り

サザエさん発案地である福岡市でも〝『サザエさん』ふるさとづくり〟の活動が、市民の間で沸き起こった。

そして、発案当時に海岸線だった、よかトピア通りと西新通りの交差点にある磯野広場に2007年、『サザエさん発案の地』記念碑を設置した。

記念碑では、サザエさん一家のキャラクターを使ってサザエさん誕生の経緯を紹介している。

2012年2月、地元から『通り名称に関する要望書』が早良区長に提出される。

3月の早良区通り名称検討委員会は、『サザエさん通り』の愛称と区間案をまとめた。

サザエさんの著作権を持つ長谷川町子美術館の承認を得ると、共に既にサザエさん通りがある桜新町商店街振興組合の理解を得て、全国2例目となるサザエさん通りが、2012 年5月27日に誕生した。

福岡市早良区に誕生したサザエさん通りは、明治通りの脇山口交差点から西新通り交差点、よかトピア通りの博物館前交差点を経て、シーサイドももち海浜公園に至る1.6キロ の通りだ。

 

 

商店街の通りにできた「サザエさん商店街通り」

2017年1月、樋井川(旧今川橋)から藤崎駅南東まで続く5つの商店街の通りに『サザエさん商店街通り』の愛称が付き、3つ目のサザエさん通りの誕生だ。
サザエさん商店街通り連合会の川崎慎吾会長は、一連の取り組みについて、次のように語る。

 

川崎慎吾会長

西新オレンジ通り商店街~西新中央商店街~西新中西商店街~高取商店街~藤崎通り商店街の1本道でつながっている通りが、『サザエさん商店街通り』であり、長谷川町子美術館公認のサザエさん通りです。

5つの各商店街が、サザエさんをテーマに連携して、サザエさん商店街通りとして一体的に活動していくために2024年2月、サザエさん商店街通り連合会が発足しました。

昔ながらの商店街らしさを残しつつ、時代の流れもフォローしていき、次世代の人たちも巻き込んでいきながら、商店街として未来に向かって持続的に発展していきたいと考えています

 

【画像】フクリパ

サザエさん商店街通り連合会の川崎慎吾会長

 

 

【謎】サザエさんが80年も日本人に愛され続けているのはナゼ?

【画像】フクリパ

画像提供:サザエさん商店街通り連合会

 

2013年2月、サザエさんと福岡市在住の波平さんの兄・海平さんの着ぐるみが完成し、地元のイベントで活用されている。
その後、さらに波平さんの着ぐるみも加わった。

 

 

『「サザエさん通り」構想検討会』は201312月、地元をはじめ企業や商店街、大学、行政が一体となって、サザエさん通りを生かしたまちづくりを推進していくために『「サザエさん通り」構想』を策定した。

構想の策定に向けたワークショップでは、サザエさんに関して、「明るい」「元気」「人情味が厚い」という意見やイメージが多く出された。

また、サザエさんら磯野家に対しても「三世代が生き生きと暮らし、近所づきあいも活発な元気で明るいまちに住んでいる」などの声が寄せられている。

 

 

2014年520日~713日、福岡市博物館において、展覧会『サザエさん展 長谷川町子とその時代』が開催された。

2015130日、福岡市地下鉄西新駅に第1巻の表紙と第1話をモチーフにした高取焼の陶板が設置されている。

 

 

長谷川町子氏の生誕100周年となった2020年、『サザエさん通りを生かしたまちづくり推進協議会』が磯野広場にサザエさん一家の3体の銅像を建てた。
また、学校法人西南学院は、長谷川町子氏とサザエさんの銅像を建てている。

 

「サザエさん通り」構想検討会の委員でもあった吉武会長は、「サザエさんが80年も日本人に愛され続けているのはナゼ?」という謎について、次のように考える。

吉武勝美会長

磯野家は古き良き昭和の家庭であり、三世代家族として親父の存在があり、さらに兄弟げんかをしながらもしっかりとした家族愛にあふれています。

これらの点が、核家族化が進んだ現代の人々から広く支持を集めているのではないでしょうか

 

【画像】フクリパ

(左から)カツオくん像、サザエさん像、ワカメちゃん像

 

 

西部ガスグループが『サザエさん』をイメージキャラクターとして起用

【画像】フクリパ

画像提供:西部ガスグループ

 

西部ガスグループ20251月、アニメ『サザエさん』のキャラクターを企業グループのイメージキャラクターとしての起用を決めた。

福岡県内でのコラボTVコマーシャルの放映をはじめ、ホームページ上での『サザエさん』特設サイトを新設し、さらにオリジナルグッズも制作している

TVコマーシャルとしては、『サザエさん「最新ガスコンロ機能」篇』(15)と『サザエさん「ガスのある暮らし」篇」()2本を放映中だ。

 

 

西部ガスグループでは、サザエさんをイメージキャラクターとして起用した理由を次のように説明している。

西部ガスグループ

アニメキャラクター『サザエさん』は、世代を超えて親しまれる国民的キャラクターであり、個性豊かなキャラクターが描く家族の温かさや絆は、お客さまとのつながりや信頼を積み重ねながら、より良い未来の実現を目指す当社のビジョンと一致します。

これまで当社グループが築いてきた信頼や安心感に加え、商品やサービスを生活者目線で分かりやすく伝えることができると考え、本キャラクターを起用いたしました

 

 

 

サザエさんのコンテンツを活かした新たなまちづくりへの挑戦

【画像】フクリパ

画像提供:福岡市

 

日本の漫画・アニメは、海外でも広く愛好されており、その聖地や関連地などを訪れる外国人観光客も増えている

経路探索やナビゲーションサービスを提供する株式会社ナビタイムジャパンが、訪日外国人旅行者の都道府県別での増加率を調べたところ、第1位は熊本県の2.14倍であり、続く第2位は福岡県の2.06倍だった。

首位の熊本県について、株式会社ナビタイムジャパンでは、「20164月に発生した熊本地震の復興プロジェクトとして、漫画・アニメ『ONE PIECE』像を設置した市町村が上位となり、滞在者数増加の一因であることがデータから示唆された」と分析している。漫画・アニメは、いまや海外からの誘客コンテンツにもなり得る。

今後、サザエさんという国民的な人気を誇る漫画・アニメのコンテンツを生かしたまちづくりや観光戦略は、さらなる磨きを掛けていく必要があると考える。

 

 

参照サイト

サザエさん商店街通り
https://sazaesan-shoutengai.com/

 

 

MBSコラム 『「サザエさん」発祥の地は東京じゃなく福岡説を検証』
https://www.mbs.jp/mbs-column/maetoato/archive/2018/09/12/013882.shtml

 

 

福岡市早良区『~「サザエさん通り」構想を策定しました!~』
https://www.city.fukuoka.lg.jp/sawaraku/sawaraku-tamatebako/kankou/sazaesan/sazaesan-kousou201312.html

 

 

西部ガス株式会社『アニメ「サザエさん」のキャラクター起用について コラボプロモーションを実施
https://hd.saibugas.co.jp/news_release/detail/2024/nr044.html?_ga=2.192767146.1888785525.1737313412-1711833846.1737313412

 

 

「サザエさん通り」のまちづくりデザイン : 福岡市早良区での産学官民協働による取組を事例として
https://api.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/1650616/p013.pdf

 

 

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https://fukuoka-leapup.jp/biz/202309.15625

 

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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