哲学者で著書「嫌われる勇気」で知られる、岸見一郎さんが2022年に刊行した「ゆっくり学ぶ」では、岸見さん自身の経験を踏まえながら、ゆっくり学ぶことの大切さについて説いています。
岸見さんは、大学生の時に、勉強を頑張りすぎて、体調を崩してしまった経験があります。その時に、ゆっくり学ぶことの大切さを痛感したそうです。学ぶことで、より多くのことを理解できるようになり、また、勉強を楽しむことができるようになると書かれています。
六章に分けて、ゆっくり学ぶことの理由や具体的な方法、読書を通しての学び、そして生きることは学びつづけることであることを教えてくれる内容となっています。勉強に悩んでいる人や、ゆっくり学ぶことの大切さを知りたい人におすすめです。まさに人生が変わる知の作り方を教えてくれる一冊です。
この本には、「学ぶことに目的はいらない」と書かれています。学ぶことに目的を持たないというのはネガティブな意味ではなく、ただ競争(受験勉強のような)のための学習を押し付けるのでなく、将来の充実した人生のためにより広い視野を持つための学習が大事なのではと考えるのです。
目的などなくても時間をかけ、じっくりと知識を蓄えていくこと自体が喜びにつながる。試験のために覚えたものはどうしても「その場かぎり」のものになってしまいやすく、忘れていくことも多いのではないでしょうか。どうですか、あの頃の勉強はどれだけ今の自分につながって残っていますか?
目的や結果を出すことばかりにとらわれずに学ぶ過程を楽しめればその先に必ず喜びや幸福がある。人生に目的があろうとなかろうとそれは大した問題ではないのです。むしろ目的を失った時に絶望してしまうような生き方をしないでほしい。目標の積み重ねがいつか大きな充実感を生み、その時に目的が見つかればそれでいいのかもしれません。
最後に、私は本屋を経営していますので、第三章の「読書は学びの源泉」をご紹介したいと思います。この章の中に、「読書は現実を超える」という記述があります。時に現実の苦しさから読んでいる間は解放され、また著者や他の人々の考えや体験から新しい考えや価値観を学ぶことが出来るのです。たとえ病床であっても本の世界は自己を拡張し、どんな世界にも時代にも瞬時に移動出来る道具であると思います。
また、「読書がすべてではないが、学べることは多い」とも書かれています。本から全てを学ぶことは出来ないかもしれませんが、読書はサポートしてくれるものでもあります。ルールも知らずにスポーツは出来ないし、本来の楽しさも味わえないかもしれない。何かを始めるにはやはり本が助けてくれることは多いはずです。
そして「ただ面白いから読む」とも書かれています。私も確かにそう思います。正直興味もなく強制的に読まされても意味がありません。自分のために読む。そう思えなければ読書は別の方法に置き換えてもらった方がいいかもしれません。
でも私は本屋です。本の世界は素晴らしい。そう思います。大人になって読書をやめてしまうのはもったいない。むしろ危険な気もします。この世界情勢や厳しい社会の中で生きていく以上、知ることに怠惰ではいけない。そのために、読書を楽しむことはもちろん、充実した人生を送るために本を読み続けていただきたいと思います。
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ゆっくり学ぶ 人生が変わる知の作り方
岸見一郎 (著/文)
発行:集英社クリエイティブ
四六判 272ページ
定価 1,500円+税
書店発売日:2022年6月3日
https://honto.jp/netstore/pd-book_31627196.html?partnerid=02vc01
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