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名前に刻まれたコンセプトを貫いてきたイムズ 天神ビッグバンで閉館カウントダウン!

今年の夏で閉館するイムズ。イムズが誕生した経緯からこれまでイムズが担ってきた役割まで、縁の深い福岡テンジン大学・岩永学長が、古場治・イムズ館長に独占インタビューしました。

2021年の天神ビッグイベント!

天神の中で好きなビルランキングがあったとしたら、あなたはどのビルに投票するだろうか?

2019年1月9日、福岡の中心地である天神から大きな雷が放たれた。まさに青天の霹靂、いや閉店のニュース。閉店というより閉館、その閉館を発表したのは、1989年の天神ロフトの前々身であるユーテックプラザ天神と、ソラリアプラザと同級生として天神に誕生したイムズである。

2021年の天神におけるビッグイベントは、誕生から30年ほどのイムズ閉館を置いてほかになし。今回は、この閉館するイムズの古場館長に話を伺いながら、イムズというビルが帯びる個性と天神に与えた影響について、誕生の経緯から迫ってみた。

地元資本ではない2社が総力を上げて形にしたイムズ

変化が一気に訪れることになる、平成という時代の元年に天神で登場したそのときから、時代を先駆けようとしたイムズ。名は体を成す、イムズはその名前にコンセプトが刻まれている。

“Inter Media Station”

インターメディアとは、事象と事象が融合したり、メディアとメディアがクロスして生まれる「新たな情報発信を行うメディア」のこと。これまで存在しなかった“何か”を天神から発信する「情報発信基地」としてこの地に生まれたのである。

インターネットが普及する前の時代、1989年ごろの流通業界は年々市場が拡大し、多くの雇用を生んだ花形産業だった。当時の福岡市の人口は120万人を越え、まだまだ増加ペースが劣らない人口が出かける天神で、流通戦争が起きたのも必然だった。

そんな中でなぜ「情報発信基地」というコンセプト型のイムズが生まれたのか。

2021年1月現在、取り壊し中の天神コア・天神ビブレ。遡ること55年前にコアやビブレができる前の、西鉄商店街・因幡町通り商店街などの各店舗が、仮営業先としてすぐ隣の土地(現イムズ)を福岡市が提供、こうしてできた「てんじんファイブ」である。

コア・ビブレの開業とともに「てんじんファイブ」の役目は終わり、この土地の活用について福岡市が新たな商業施設を民間の力で建てることにし、民間事業者を公募した。

そのときに手を挙げたのが明治生命(現在は明治安田生命)と三菱地所の連合だった。

生命保険会社であった明治生命はもちろんのこと、実は三菱地所もオフィス・テナントビルの経験はあれど、本格的な商業施設を建てた経験値がなかった。地元資本でもない両社が、初めて取り組む商業施設だけに気合は相当なものだった。

そして、福岡市はこの2社連合を選択した。

商業施設なのにモノを売らない!?

イムズと言えば?

誰もが天神の渡辺通り沿いに建つ黄金色に輝くビルを思い浮かべるだろう。そのビルを黄金色に輝かせる正体は、何万枚もの張り巡らされた本物の有田焼のタイル。光が乱反射するように白金や緑がかった金色など何種類もの金色のタイルがミックスされて貼られているこだわりよう。

建物は八角形で構成され、入口は大理石でつくられている。地下2階には九州初で登場したスパイラルエスカレーター。その地下2階から8階までが、イムズをイムズたらしめる約40メートルの吹き抜け。さらに12・13・14階のレストランフロアの中央も吹き抜けにし、周囲にあるレストランも階段でぐるぐる登っていけるステップフロアとなっている。まさに空間を贅沢に使い、その全てに意図があって設計されたのがイムズである。

こだわりは建物だけではなかった。

イムズは30年以上前の開業当時から「コト起こしのビル」を貫いてきた。開業日のテープカットには、女優・山口智子さんが登場。当時、商業施設の開業時に女優が来るというのは異例のことだったそうだ。さらに、2014年に放送終了した生放送の長寿TV番組「笑っていいとも」が、開館したばかりの年にイムズホールから生放送されたこともあった。

近年、百貨店や商業施設などの流通業界では「モノ消費からコト消費」と言われるが、バブル真っただ中だった当時、商業施設と言えば物販がメイン。そんな中、イムズの中層階はモノを売らないテナントがずらり。

ビルの中なのに、トヨタ・日産・スバル・三菱などの車のショールームがあったり、オール電化モデルルームでもあった九州電力イリスマガジンハウス、そして福岡市情報プラザや日本への留学生たちをサポートする国際交流財団レインボープラザNHK文化センターラジオ局のエフエム福岡のサテライトスタジオなど、企業と生活者をつなぐライフスタイル提案型のテナントがずらりと並んでいた。

ライフスタイルを提案し、人生に寄り添ったビルの今

イムズのような商業施設が天神で果たした役割はことのほか大きいのではないか。流通業界が花形だった時代に誕生したのに、モノを売るよりコトを起こし、ライフスタイルを提案し情報文化を発信する。

この天神の中でも見た目以上にひと際輝き続けたイムズは、そこを運営する人たちの組織もまた個性的だ。

日本の商業施設の多くは、オーナー企業があってグループ会社が運営する1つの店舗であることが多い。そのため運営会社の中で店舗間を移る異動は当然のこと、ビルのオーナー会社と運営会社が違ったりするケースもある。

しかし、イムズは誕生したそのときから運営する組織に所属し、建設当時からのコンセプトや思想をぶらさずに体現してきた人たちが存在する

イムズが毎年発信する「年間メッセージ」やキャンペーンポスター。インパクトのあるキャッチコピーやビジュアルに、人生のスイッチが入った人も多いのではないだろうか。

ときに奇抜でときにクリエイティブ、これらの制作は開業当時から2009年度まで、広告代理店を入れずにコピーライターやクリエイティブディレクターと直接言葉を交わして形にしていたという。

天神のまち全体を盛り上げることにも一役買った。2019年の30周年のときに、同級生であるソラリアプラザとお互いにビルの垂れ幕でコラボレーションしたことが全国的にも話題になったことは記憶に新しい。

そんな数々のコト起こしをするイムズのコンセプトを、体現し続けてきた人たちの想いを受け止め、地元福岡の企業を中心に相思相愛でテナントとして開業当時より入店し、30年以上経つ今でも営業をしている店もある。

1Fの玄関口には、商業施設の入口に“花屋”の先進事例となった日比谷花壇(参照:福岡の魅力は“花”にアリ!?天神から広がった“花”のヒミツとは?)。地下2Fの入口には、イムズ開業時より英国製オーブンを輸入し、今でも毎日マフィンを焼き続けるミセスエリザベスマフィンPLAZAOcta HotelTOKIODANRO(フカヤ)TOMORROWLAND(アンネ松本)ピエトロ、そしてキリンソウソウ

キリンソウソウは「日本で一番質の高い”食”&”ホスピタリティ”」を標榜する福岡を代表する企業、ロイヤルホールディングスが運営している。2020年、新型コロナウイルスが世界を襲い、緊急事態事態宣言により初めての長期休業を余儀なくされた。その後、このコロナ禍の状況にも関わらず、ほぼ毎日通うコアなファンもいるという。

「イムズが閉館しても、この天神でキリンソウソウを続けて欲しい。そのような声を何件もいただいて、悲しくも嬉しい気持ちでいっぱいです。」

そう話してくれたのは、イムズ愛・キリンソウソウ愛ともに強い納富店長。音楽活動をしながらイムズ内の飲食テナントでアルバイトを始め、ビル横のイムズの敷地である公開空地で音楽ライブをやり、それら人の縁があってイムズ内のテナントを複数渡り歩いて働き、今ではキリンソウソウで店長になったというミスターイムズでもある。

2021年夏の閉館に向けて

「イムズ入社以来、一番印象に残っているのは2007~9年にかけて、イムズのコンセプトの中核でもあったショールーム関連のテナントが相次いで閉鎖していったとき。」

生え抜き社員として当時リーシングを担当していた古場館長はこう語ってくれた。

「それでも、コト起こしのビルとしてのコンセプトは変えずに物販ではないライフスタイル提案型の情報発信基地であることをぶらさなかったことですかね。」

今では、仕事帰りにゴルフ練習ができるミズノゴルフスタジオ、サイクルフィットネスができるGROUP CYCLING milano、キッズスペース付きオフィスのママスクエアなどが入り、やはり“モノ消費ではないコト消費”を貫いている

2021年の夏、私たちはこの天神の地でイムズという唯一無二の存在だった商業施設を、次の時代へと生まれ変わるお見送りをしなければならない。そんなイムズに、このタイミングで出店するテナントもあるという。期間限定にも関わらず、イムズの何がそうさせるのだろうか。

天神で、福岡で、九州で、イムズが解き放った光眩い数々の情報・イベント・出来事を、そしてその存在を、想い出を、私たちはきっと語り継ぐことになるだろう。

天神の中で好きなビルランキングがあったとしたら、私は迷わずイムズに票を投ずる。名は体を表す。コンセプトメイキングにより思想を練り上げ、見た目も中身もやることも、一貫してイムズはイムズらしさを放ち続けた。

何よりも、イムズがそこにあった。人生に刺激と豊かさを与えてくれたイムズよ、本当にありがとう。

▼これから開催のイムズイベントはこちら
写真家 梅佳代と川島小鳥が「いまの福岡」を撮り下ろす!
IMS 32nd Anniversary Exhibition(仮)
期間:2021年03月20日(土) ~ 2021年05月16日(日)
時間:10:00〜20:00 ※4月20日(火)は休館日
会場:B2F イムズプラザ/8F 三菱地所アルティアム


 

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福岡テンジン大学 学長
岩永 真一
福岡市で生まれ育った生粋の福岡人。就職氷河期世代で内定ゼロで社会に出るも、天神でゴミ拾いをするNPOグリーンバードに出会い参加し、街をつくる人たちと出会い人生が変わる。2010年に福岡市と共働で「学びで人と街をつなぐ大学」の福岡テンジン大学を立ち上げ学長を務める。

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