【ランキングで知る福岡の実力⑩】

人口比職員数で最少!福岡市の〝元気の素〟は、官民連携のまちづくりにあった!?

成長都市として国内外から注目される福岡市ですが、全国20政令指定都市の中では、人口比において最少の一般行政職員数で運営されています。職員数が少ないにも関わらず、なぜ福岡市は著しく発展しているのでしょうか? 今回は、この謎について考察してみます。

福岡市の一般行政職員数は、人口比で大阪市の2/3の人数

LINEを用いた画期的な行政サービスをはじめ、多彩なスタートアップ事業、他都市に先駆けた〝はんこレス〟、さらに都心部における大規模な再開発事業などで注目を集める福岡市だが、実は人口あたりの一般行政職員数において全国に20市ある政令指定都市中で最少なのだ。

福岡市の人口10万人あたりの一般行政職員数は、364人。最多数の大阪市は549人であり、約2/3の人数で運営していることになる。

ここで福岡市の取り組みについて、財政面をはじめとする行政運営や、まちづくりも含めた都市経営、さらに歴史的な背景も含めながら、アプローチしてみる。

巨額の借金財政だった福岡市は、民間委託推進などで5,760億円減

博多港国際ターミナル、ユニバーシアード福岡大会、マリンメッセ福岡、福岡市総合図書館、福岡都市高速の太宰府インターチェンジ接続、博多座、福岡市アジア美術館、福岡国際会議場、地下鉄七隈線、アイランドシティ――。


博多座は1999年6月、九州最大級の演劇専用劇場として開館した。

バブル崩壊後の景気対策として、国による自治体への積極的な公共事業の推奨に呼応して福岡市は、市債発行を通じて大規模な社会インフラの整備を進めた。この結果、都市機能は飛躍的に高まったが、その半面、〝借金〟である市債残高も大幅に膨れ上がった

2004年時点における福岡市の市債残高は、2兆5,882億円(満期一括積立金除く)で、同年度歳入総額(全会計)1兆8,987億円と比較すると、約1.4倍に相当する額だった。

また、2007年度における福岡市の実質公債費比率は、市債発行に国の許可を必要とする基準である18%をオーバーしていた。このため、福岡市は、「財政健全化プラン」と「財政リニューアルプラン」を策定して財政の健全化に取り組んだ。

さらに、2017年6月に持続可能な行政運営の実現に向けて策定した「行政運営プラン」では、限られた経営資源の有効活用をはじめ、効果的・効率的な事業展開施策・事業の選択と集中を進めて行政運営の仕組み・手法の見直しと共に官民連携や民間委託の推進にも力を入れた。

一連の取り組みの結果、2004年度末に2兆5,882億円だった福岡市の市債残高は、2019年度末には2兆122億円にまで減少した。実に、5,760 億円もの削減を実現したのである。

なぜ、福岡市は官民連携のPFIやPPPという手法に積極的なのか

公共施設や道路・橋などの社会インフラは、基本的に公共工事として整備される。今後、公共施設が大量に更新期を迎える中で、厳しさを増す財政状況下において注目されているのが、「官民協働事業」(PPP)や「民間資金等活用事業」(PFI)という民間の経営ノウハウや資金を活用していく手法だ。


出典『内閣府 民間資金等活用事業推進室』

例えば、PFIは1992年、イギリスで行財政改革の手法として誕生しているのだが、今日ではイギリスのほか、カナダやオーストラリア、アメリカなどの先進国に加えて、インドネシアやベトナムなどの新興国でも積極的に導入されている。

日本では1999年7月に「PFI法」を施行し、2001年7月には福岡市でも「PFIガイドライン」を策定。福岡市のPFI事業第一号として、「タラソ福岡」(臨海工場余熱利用施設整備事業)が誕生した。

さらに福岡市では、2012年3月の「官民協働事業(PPP)への取組方針」策定以降、15事業を実施している(2020年末時点)。

ザ・リッツ・カールトンホテル進出で話題を集めた旧大名小学校跡地活用事業、福岡市科学館特定事業や福岡市総合体育館整備運営事業、福岡市美術館リニューアル事業、中央児童会館等建替え整備事業、福岡市第2期展示場等整備事業、九州大学箱崎キャンパス跡地におけるFukuoka Smart East事業、福岡市拠点文化施設整備及び須崎公園再整事業……などである。


ザ・リッツ・カールトンホテルの進出で話題を集める旧大名小学校跡地活用事業

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公共施設の整備などでPFIやPPPを積極的に活用している福岡市について、財務省出身でPFIやPPPに詳しい筑紫女学園大学の谷口博文教授は、次のように語る。

谷口教授

お金でなく知恵を求めるPFIは、役所にとって手間のかかるやり方です。従来の公共工事は官主導で設計して安く造らせていたのに対し、PFIは市民へのサービス提供用に使いやすく設計し、民間運営で事業を持続させていきます。
野心的にPFIを手掛けて、先進的な事例を生み出している福岡市の場合、PFIを理解する優秀な職員らの存在が大きいと考えます。現行のPFI事業では実績を持った一部大手企業に限られていましたが、今後はスタートアップ企業やアントレプレナーが新たな担い手になる可能性を秘めています。

まちづくりでの〝官民連携〟や〝民活導入〟は、福岡市のDNA!?

780年もの歴史を持つ博多祇園山笠は古来、庶民ら民間主導で運営されてきた神事だ。今日でも山笠の曳き山が市内を駆け抜ける福岡市は、かつての自治都市・博多のDNAを受け継ぐ都市といえる。

事実、明治期の九州帝国大学誘致では、渡辺通で知られる渡辺與八郎をはじめとする博多商人らが大きな役割を果たした。

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都市の大動脈を担う交通インフラだった路面電車の整備では、1910年開催の「第13回九州・沖縄八県連合共進会」に合わせて、電力の鬼との異名を持つ松永安左エ門や福沢諭吉の養子・桃介らが開設した「福博電車」に続き、渡辺ら地場資本も「博多電気軌道」を開業させた。

その後、2002年から福岡市は、全国の自治体に先駆けた業務改善運動である「DNA運動」を実施した。《できる(D)から始めよう×納得(N)できる仕事をしよう×遊び心(A)を忘れずに》を基本精神とする同運動は、自治体経営に民間手法を導入した点でも全国的に注目された。

今日、「天神ビッグバン」に代表される都心部のまちづくりにおいては、従来型の行政による投資という発想から転換して、各種の規制緩和を図ることで民間からの投資意欲を引き出していくスキームで取り組んでいる。

2019年11月開催の「福岡市制施行130周年記念式典」で、福岡市のまちづくりをテーマとした作品を披露した劇団「ギンギラ太陽‘s」主宰の大塚ムネトさんは、こう話す。

大塚さん

福岡市が大きく飛躍したきっかけの一つは、第13回九州・沖縄八県連合共進会です。行政が旧肥前堀を埋め立てて会場用地を整備したことで現在の天神エリアを誕生させ、民間による鉄道網整備で天神のまちづくりが実現しました。
翻って、今日の天神ビッグバンでは、行政が国との間で粘り強く交渉した末に高さ制限の緩和を勝ち取りました。その結果、民間が面白い建物を建てられるようになった事実に感動しました。


福岡市制施行130周年記念式典の様子(提供:福岡市)

官民での福岡市の魅力発信に向けたWebメディアの可能性

ウィズコロナ・ポストコロナ時代を迎えて、経済構造や社会システムが激変していく状況下、今後の都市経営やまちづくりに民間の知恵や力を活用していくことが一層求められる。

官民が一体となったまちづくりを強みとする福岡市は今後、ニューノーマルと呼ばれる時代において、さらに魅力を高めていくものと考えられる。

まちづくりというリアルにおいて官民連携で発展してきた福岡市は、本格的なスマート情報化社会の到来によるデジタル空間においてもWebメディアの活用は必要不可欠となる。

現状、福岡の魅力を情報発信している民間のWebメディアが複数存在する。「福岡の今と未来をつむぐ」をコンセプトとする当Webマガジン『フクリパ』もその一つである。今後、国内外に向けて魅力を発信していく広報戦略上において、民間のWebメディアを有効活用できれば、福岡市へのヒト・カネ・ビジネス・情報をさらに呼び込むことができると、筆者は確信する。

<参照サイト>
『大都市比較統計年表』平成30年
『PPP/PFIの概要』内閣府 民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)
『PPP/PFIの推進に向けた福岡市の取組について』(福岡市財政局アセットマネジメント推進部)
福岡市2011グランドデザイン〔財政編〕『財政リニューアルプラン』
『福岡市行政運営プラン』
公式 福岡市政だより WEB版NEWS『市制施行130年 福岡市 これまでとこれから』
西日本鉄道創立110周年記念誌『まちとともに、新たな時代へ』
『フォーラム福岡Vol.20』私たちの『地方財政』入門(2008年5月31日発行)
『フォーラム福岡Vol.48』(2013年3月31日発行)

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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