政令指定都市とは?
政令指定都市とは、地方自治法第252条の19に基づいて、政令で指定する人口50万以上の市のことである。
政令指定都市になると県から財源の一部が移譲され、市が使途を決定できる税収が増えるほか、保健や福祉、都市計画などの権限も移譲され、市が独自に実施できる行政サービスの幅が広がる。
福岡市は政令が公布された翌年の昭和47年に、政令指定都市に制定されている。
政令指定都市の中でも、なぜ福岡は人気なのか??
都市機能の集積と住みやすさ。このまちに暮らす市民の満足度は高い
人口増加数で政令指定都市中1位の7万4938人、人口増加率も同じく1位の5.12%――。
福岡市のさまざまな統計データを紹介するサイト『Fukuoka Facts~データでわかるイイトコ福岡~』によると、福岡市は2015年10月の国勢調査において、対2010年比での増加数と増加率で政令指定都市のトップを走る。
出典:Fukuoka Facts
「福岡市の特徴として、都市機能の集積と住みやすさがバランスよく両立している点が挙げられる。
①プロフェッショナルで魅力的な仕事がある。
②質の高い芸能や文化・スポーツなどに触れることができる。
③高度な教育や医療の環境も良い。
④豊かな食や自然にもアクセスしやすいことが魅力となっている。
都心の商業集積や都市機能は、広域中心都市である札幌・仙台・広島と比べても群を抜いており、三大都市圏である名古屋に迫る状況にある」と、公益財団法人九州経済調査協会の岡野秀之・事業開発部長兼BIZCOLI館長は解説する。
九州最大の繁華街・天神には百貨店やファッションビルが建ち並ぶ
〝九州・山口1500万人経済圏〟の商業・ビジネス・文化の拠点都市
2015年10月の国勢調査時点で153万人強だった福岡市の人口は、2019年12月時点の推計人口で横浜市、大阪市、名古屋市、札幌市に次いで政令指定都市で第5位の159万人強となっている。
福岡市には国の出先機関である各省庁の地方支分部局が集中し、大企業の支社・支店も集まり、さらに金融・サービス業・情報通信業が集積している。
産業構造上は、卸売・小売業やサービス業など第3次産業が約9割を占める。福岡市は、〝九州・山口1500万人経済圏〟の商業・ビジネス・文化の拠点でもある。
国内外に目を転じれば、東京と上海の中間地点に位置する福岡市の1000km圏内には両都市に加えて、大阪や横浜、名古屋などの国内主要都市とともに台北や大連、ソウル、釜山などの東アジアの主要都市が含まれている。
『超成長都市「福岡」の秘密』『福岡はすごい』『福岡市が地方最強の都市になった理由』『福岡の正解』『どこにもない福岡本』『福岡市を経営する』……。近年、人口増が続く福岡市を特集、分析した書籍や雑誌が相次いで登場して、いわゆる〝福岡本〟ブームになった観がある。
コンパクトで便利な都市機能、豊かな食の美味しさ、比較的安価な物価水準、開放的で新しい物好きな気質、恵まれた自然……。これらの書籍・雑誌でも福岡市の魅力は数多く取り上げられている。
福岡市が実施した『令和元年度市政に関する意識調査』によると、市民の96.6%が「好き」と答え、同じく95.4%の市民が「住みやすい」と回答している。
実際に暮らす福岡市民の満足度は総じて高いといえる。
なぜ、福岡市へ九州一円から人は集まるのか
人口の増減には、人が生まれたり亡くなったりすることによる『自然増減』、地域外への住民の引っ越しや地域外から移り住みによる『社会増減』の2つがある。
社会増減のうち、出て行く人が多い場合は転出超過、入って来る人が多い場合は転入超過という。
福岡市の人口増加の要因として、自然増とともに社会増による影響が大きい。
『まち・ひと・しごと創生(参考)福岡市人口ビジョン その後の推移』によると、福岡市は毎年、4000人程度の自然増が続く一方、社会増は2011年以降、1万人を超える転入超過となっている。
福岡都市圏外の福岡県内や九州他県からの転入超過は近年、拡大傾向にある。5歳階級別データの中でも15~19歳と20~24歳において、大規模な転入超過となっている。
この点について、「福岡市は、人口の流動性も高く、進学などによる15~19歳、就職などをメインとした20~24歳に加えて、30歳代~40歳代の働き盛りの流入が多い」と、岡野館長は分析する。
出典:『まち・ひと・しごと創生(参考)福岡市人口ビジョン その後の推移』平成31年3月 福岡市
事実、福岡市には20を超える大学・短大がキャンパスを構えており、学生の人口に占める割合も7.1%と、京都市に次ぐ高い数値である。
一方、就職の〝受け皿〟となる福岡市の産業構造をみると、卸売・小売業、建設業、医療・福祉の就業人口が多く、中でも情報通信業や不動産・物品賃貸業、宿泊・飲食サービス業のウェートが全国的にも高い。
福岡市の2019年9月の有効求人倍率1.72倍は、全国平均の1.57倍を約1割程度上回っている。福岡市の特徴的な産業構造も人口の社会増において、〝追い風〟となっているといえる。
また、福岡市に住む外国人の数も近年、毎年1000人のペースで増加している。出身国・地域別でみると、中国籍、韓国または朝鮮籍が全体の約6割を占める。近年では、ネパール籍やベトナム籍などの増加が目立つ。
その半面、これまで増加し続けてきた福岡市内大学の留学生数は最近、3200人台での横ばい状態が続く。
福岡市の人口は堅著な自然増に加えて、福岡県内・九州他県からの転入超過によって社会増をもたらしている。
さらに外国人の増加もあって、人口の増加数とともに増加率も大きく伸びているのである。
2035年167万人でピークと予測される福岡市の人口。その将来像は?
福岡市の人口は毎年、1万人強ずつ増加する。福岡市の将来推計人口に関して、国立社会保障・人口問題研究所の2018年推計によると、2035年の167万7404人で最も多くなり、その後人口は減少へ転じると予測されている。
資料提供:福岡市経済観光文化局創業・立地推進部企業誘致課
自然増のカギを握る合計特殊出生率について、福岡市は2015年の国勢調査によると1.33で全国平均の1.45を下回り、20政令市中15番目だった。
福岡市の出生数は現在1万4000人前後で推移しているものの、今後25年間は緩やかに減少する見通し。
その半面、死亡数は一貫して増え続けて2021年ごろに死亡数が出生数を上回り、自然減に転じると予測される。
合計特殊出生率の低さ自体は問題であるものの、課題を解決できれば、自然増につながる〝伸びしろ〟にもなり得るとの見方もできる。
2015年5月時点での福岡市の高齢化率19.97%は過去25年で10ポイント増加し、今後25年でさらに10ポイント増の31%まで上昇していく。
福岡市の高齢者人口も一貫して増加を続けて2040年には、2010年のほぼ倍増の約50万人となり、日本全体から約10年遅れて高齢化が進行していくことになる。
一方、社会増で転入超過となっている15~19歳は緩やかな減少を示しており、今後25年間で福岡市へ流入する九州の若者層は25%程度減少するとみられる。
これに対して、20~24歳は緩やかな増加傾向にあり、今後の都市再開発などの動向も社会増のカギを握っているといえる。
岡野部長
このようなチャンスを生かすために福岡市はオフィス需要も旺盛であり、天神ビックバンや博多コネクティッドなどの都市開発プロジェクトも目白押し。
都市機能の成長制約を克服していくためにも、次世代をにらんだまちづくりを推進していくことが重要である。
東京オリンピック開催の今年、2020年は5年に1度の国勢調査実施年でもある。
九州一円の人々を魅了し、さらにアジア各地からも人を呼び込む福岡市がどのような進展をみせるのか。今後の動向が注目される。
<参照サイト>
『Fukuoka Facts~データでわかるイイトコ福岡~』
『まち・ひと・しごと創生(参考)福岡市人口ビジョンその後の推移』(2019年3月版)
『福岡市の財政と市債』
『数字でわかる福岡市のいま』
『福岡市経済の概要』
『子どもに関するデータ集』(福岡市資料)
国立社会保障・人口問題研究所『男女・年齢(5歳)階級別データ-日本の地域別将来推計人口(2018年推計)』
『DATASALAD』