全国の史跡・名勝・天然記念物は3,383件、うち福岡県は129件
文化庁『史跡名勝天然記念物』(2025年9月1日時点)によると、日本国内における国指定の史跡・名勝・天然記念物は、史跡1,911件(うち特別史跡64件)、名勝432件(うち特別名勝36件)、天然記念物1,040件(うち特別天然記念物75件)の(特別指定を含む集計で)合計3,383件だ。
このうち、福岡県では、史跡97件(うち特別史跡4件)、名勝8件(うち特別名勝0件)、天然記念物24件(うち特別天然記念物2件)の合計129件が指定されている。
福岡県の合計129件という数は、47都道府県の中で、奈良県の合計149件、京都府の142件に次いで、全国で第3位となっている。
史跡とは、文化財保護法によると、「貝塚、古墳、都城跡、城跡、旧宅、その他の遺跡で、我が国にとって歴史上または学術上価値の高いもの」のうち、重要なものを指す。
名勝については、同じく「庭園、橋梁(きょうりょう)、峡谷、海浜、山岳その他名勝地で我が国にとって芸術上又は観賞価値の高いもの」のうち、重要なものと規定されている。
天然記念物に関しても同じく「動物、植物及び地質鉱物で我が国にとって学術上価値の高いもの」のうち、重要なものと定められている。
これら史跡、名勝、天然記念物の中でも「学術上の価値が特に高く、我が国文化の象徴たるもの」については、それぞれ特別史跡、特別名勝、特別天然記念物に指定されている。
出所:文化庁『史跡名勝天然記念物』(2025年9月1日)
福岡県にある4つの特別史跡、2つの特別天然記念物
福岡県にある史跡97件、名勝8件、天然記念物24件のうち、4件は特別史跡であり、2件は特別天然記念物である。
福岡県にある特別史跡と特別天然記念物は、下記の通りだ。
【特別史跡】
◎水城跡(太宰府市・大野城市・春日市)
◎大野城跡(太宰府市・宇美町・大野城市)
◎大宰府政庁跡(太宰府市)
◎王塚古墳(桂川町)
【特別天然記念物】
◎古処山ツゲ原始林(嘉麻市・朝倉市)
◎立花山クスノキ原始林(新宮町・久山町)
水城跡(太宰府市・大野城市・春日市)
水城跡は、7世紀後半の白村江の戦いでの敗北後に構築された防衛施設の遺跡である。
唐・新羅の連合軍による侵攻に備えて、大和朝廷が築いたものだ。
全長約1.2キロ、幅約80メートルの堤に水を引き入れる構造となっており、古代日本の対外防衛体制を示す貴重な遺構として評価されている。
大野城跡(太宰府市・宇美町・大野城市)
大野城跡は、水城と同時期に構築された古代山城跡である。
唐・新羅の連合軍の侵攻に備えて築かれた防衛施設の一つだ。
城は、四王寺山の尾根を利用して築かれ、石垣や土塁、門跡などが残っている。
水城とともに大宰府政庁を守る古代防衛システムとして、貴重な遺構である。
大宰府政庁跡(太宰府市)
大宰府政庁跡は、古代の地方行政機関である『大宰府』の中心施設跡である。
7世紀後半から奈良期・平安期にかけて、九州地方を統括する政庁が置かれた。
朝廷の出先機関として外交・軍事・行政を担当し、『遠の朝廷』とも呼ばれていた。
現在、礎石が整備されており、古代日本の政治と国際交流を伝える遺跡である。
王塚古墳(桂川町)
王塚古墳は、6世紀前半に築造された、全長約60メートルの前方後円墳である。
日本を代表する装飾古墳でもあり、石室内部の壁面や天井に赤・緑・黄などの鮮やかな彩色で幾何学文様や武具、馬、人物像などが描かれている。
被葬者は、地方豪族とみられており、筑紫地方の政治的・文化的水準がうかがえる重要な遺跡だ。
古処山ツゲ原始林(嘉麻市・朝倉市)
古処山ツゲ原始林には、アサマツゲ、マルバツゲ、オオヒメツゲのツゲ3種類が自生しており、その大半を占める。
原始林全体に占めるツゲの割合は、8~10割と極めて高く、全国的にみても類を見ないツゲ林といわれている。
特別天然記念物に指定されているエリアは、約12ヘクタールに及ぶ。
立花山クスノキ原始林(新宮町・久山町)
立花山クスノキ原始林は、立花山の中腹に位置している。
標高367メートルの山頂には、立花城跡がある。
立花山クスノキ原始林は、クスノキ群生地(樹齢300年以上)の北限ともいわれる。
四季を通じて、家族連れや遠足などで市民が訪れる手軽なハイキングコースとして親しまれている。
参照サイト
文化庁『史跡名勝天然記念物』(2025年9月1日)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/pdf/94263501_04.pdf
文化庁『国指定文化財等データベース』
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/index
福岡県『国・県指定文化財:記念物』(2025年3月28日現在)
https://www.fukuoka-bunkazai.jp/pdf/mokuroku03.pdf?2025