これからどうなる? 福岡市のオフィス市況

【 福岡の経済・ビジネス事情 】

これからどうなる福岡市のオフィス市況 ~データで読み解く福岡オフィス市場の「いま」と「未来」~

福岡市都心部である天神エリアや博多駅エリアなどにおいて、新規のオフィスビルの建設・完成が相次いでいます。その一方で懸念や心配する声も一部から聞こえてくる状況です。こうした中、各種データや調査を基に福岡市におけるオフィス市場の「いま」と「未来」を見ていきます。

福岡市を巡る経済状況に関する基礎知識

〝元気の良い成長都市〟としてみられることの多い福岡市の年間総生産額は一体、いくらなのだろうか?
そして、福岡市内には、どれだけの事業所があり、何人もの人々が働いているのだろうか?

福岡市経済観光文化局が2024年3月に発表した『福岡市経済の概況』を基に福岡市の経済における基礎的な数値である、【 市内総生産 】、【 事業所数 】、【 従業者数 】で見ていきたいと思う。

 

 

市内総生産

2020年度における福岡市の市内総生産(名目)は、7兆3,900億円だった。この数字は、日本の政令指定都市の中では、大阪市、横浜市、名古屋市に次いで4番目の規模となっている。
一方、2020年度における福岡市民1人あたりの市内総生産(同)は、458万円だった。政令指定都市で比較した場合でも福岡市は、大阪市、名古屋市、仙台市に次いで4番目だった。

【画像】フクリパ特集

出典:福岡市経済観光文化局『福岡市経済の概況』

 

 

事業所数

 

2021年61日時点における福岡市の事業所数は、7万4,867事業所だった。
福岡市の場合、事業所の産業別構成比において、実に約9割を第三次産業が占めている。
そして、第三次産業の中でも卸売業・小売業(26.6%)、宿泊業・飲食サービス業(13.0%)、医療・福祉(8.7%)、不動産業・物品賃貸業(8.5%)が上位に名を連ねている。

 

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出典:福岡市経済観光文化局『福岡市経済の概況』

 

従業者数

 

2021年61日時点における福岡市の従業者数は、92万3,521人だった。
そして、従業者の産業別構成比においても約9割を第三次産業が占めている。
中でも卸売業・小売業(21.8)、サービス業(他に分類されないもの)(13.2%)、医療・福祉(13.0%)、宿泊業・飲食サービス業(9.3%)が、産業別構成比において上位を占めている。

 

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出典:福岡市経済観光文化局『福岡市経済の概況』

 

 

福岡市のオフィス空室率は日本の6大都市で2番目の低さだった【2024年6月末】

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出典:三幸エステート『Office Market』(2024年7月)福岡市

 

【日本の6大都市オフィス空室率】(大規模ビル)
第1位:札幌市3.1%、第2位:福岡市3.8%、同大阪市3.8%、第4位:名古屋市4.2%、第5位:東京23区4.5%、第6位:仙台市6.6%━━。

 

 

オフィスビル賃貸仲介大手の三幸エステート株式会社は、2024630日を基準日とした日本の主要都市におけるオフィス空室率(大規模ビル)を発表した。
同発表によると、福岡市内における大規模ビルのオフィス空室率は、前月比で0.1%減の3.8%だった。

 

 

福岡市の3.8%というオフィス空室率(大規模ビル)は、日本の6大都市において、札幌市の3.1%に次ぐ第2位だった。
福岡市のオフィス空室率(大規模ビル)は、大阪市と同等であり、名古屋市や東京23区、仙台市よりも少ないという状況にある。
昨今、福岡市の都心再開発事業である天神ビッグバンや博多コネクティッドを追い風にした新規オフィスビルの建設・完成が相次ぎ、オフィス空室率を懸念する向きもある中、意外な底堅さを物語っているといえそうだ。

 

 

2010年6月末に12%強を記録した空室率は2020年3月末に1%割れへ

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出典:三幸エステート『賃貸オフィスマーケット:福岡』(定期市況データ 2024年7月)

 

三幸エステート発行の『賃貸オフィスマーケット:福岡』(定期市況データ 20247)では、2001年以降の四半世紀に近い福岡市内における大規模ビルの募集賃料、同空室率、同新規供給量をまとめている。

 

 

同図表をみると、この四半世紀近くにおいて大規模ビルの空室率が最も高かった時期は、2010年6月末の12.22%だった。
2010年当時は、リーマン・ショックによって引き起こされた世界的な金融危機という状況下にあった。
そうした中、福岡市内では、前々年・2008年と前年・2009年に大型オフィスビルが相次いで完成した。
そして、オフィス市場への大量供給によって需給関係が悪化した結果だったといえる。

 

 

20113月には、東日本大震災が発生した。
震災の翌日には、九州新幹線の博多駅乗り入れによって、鹿児島ルートが全線開業している。
20135月、福岡市の推計人口は150万人を突破
福岡市は20145月、国家戦略特区である『グローバル創業・雇用創出特区』に選ばれた。
そして、2015年から福岡市の都心再開発プロジェクトである天神ビッグバンが始動。さらに2019年からは、博多コネクティッドが実施されている。

 

 

折からのアベノミクスも追い風にしながら、2020年3月末には、福岡市内の大規模ビルにおける空室率で0.97%という過去最低となる数値も記録した。
その後、2021年以降は、大規模ビルによるオフィス面積の大量供給が始まり、オフィス空室率も上昇傾向にあるものの、意外にも堅調な動きをみせている状況だ。

 

 

このような福岡市におけるオフィス市場の動向について、三幸エステート株式会社の中村竜治福岡支店長は、次のような見解を示す。

 

中村竜治支店長

天神ビッグバンや博多コネクティッドによって、福岡市全体に新陳代謝が起きており、東京と同等レベルのオフィスビルが、福岡市内に相次いで登場しています。
働き方改革をはじめリクルーティング活動やBCP(事業継続計画)対応などの時代的背景もあって、新しいビルへの入居が求められており、福岡のオフィス市場は好調に推移しています。

たしかにオフィスビルの大規模供給による供給過多も懸念されたものの、再開発物件で競争が生じて、こなれた成約賃料へ向かっています。
結果的にテナントサイドは、新しいオフィスビルを借りやすい状況になっているのも事実です。

九州一円から福岡への集中が進む中、TSMCの波及効果もあり、福岡の賃貸オフィス市況は、引き続き好調に推移していくものとみています。
今後のカギを握るのは、東京からの本社も含めた企業誘致であり、外資系企業の進出ではないでしょうか。

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三幸エステート株式会社の中村竜治・福岡支店長

 

 

福岡のオフィス成約賃料は過去10年間で2倍強となる伸びを示す

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出典:ニッセイ基礎研究所『「福岡オフィス市場」の現況と見通し』(2024年)

 

ニッセイ基礎研究所は2024621日、『「福岡オフィス市場」の現況と見通し』(2024)を発表した。
同レポートでは、大阪市、名古屋市、札幌市、福岡市、仙台市の5市について、過去四半世紀近い三幸エステートのデータを基にオフィス成約賃料の推移をグラフにまとめている。

 

 

同レポートに掲載されている『図表-3主要都市のオフィス成約賃料(オフィスレント・インデックス)』によると、2000年代半ばと東日本大震災の発生後が、オフィス成約賃料のいわば底だったことが分かる。
そして、2013年が最も底だった福岡市は、10年後となる2023年までの間にオフィス成約賃料は、2倍余りも高まっている

 

 

福岡市では今後3年間で7万坪供給、日本の主要7都市での供給率で首位

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出典:三井住友信託銀行調査月報2024年3月号『国内主要7都市オフィス市場の展望2024』

三井住友信託銀行の調査月報20243月号では、『国内主要7都市オフィス市場の展望2024』を掲載している。
同レポートの図表10『各都市の今後の新規供給(20242028年)』によると、福岡市では2024年に2万4,776坪、2025年に1万9,574坪、2026年に2万7,255坪の新規供給を想定している。
2027年と2028年については、同レポートにおいて0となっているため、5年累計は3年累計と同じく71,605坪となる。そして、2023年末ストック比は、10.2%という割合である。

 

10.2%という福岡市の5年累計(20242028)における2023年末ストック比は、日本の主要7都市の中で東京(12.1)、横浜(10.7)に次いで第3位だった。
もっとも、3年累計(2024~2026年)に限ってみると、福岡の10.2%は、横浜(3年累計比8.1)、東京(7.5)、札幌(7.2)、名古屋(6.8)、大阪(6.4)、仙台(2.1)を上回っており、日本の主要7都市で首位となる。

 

 

ニッセイ基礎研究所予測:2023年を100とした場合、福岡市のオフィス成約賃料は2024年「98」、2028年「91」となる

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出典:ニッセイ基礎研究所『「福岡オフィス市場」の現況と見通し』(2024年)

 

ニッセイ基礎研究所『「福岡オフィス市場」の現況と見通し』(2024)では、賃貸オフィスの新規供給見通しをはじめ、経済予測やオフィスワーカーの見通しなどを基に2028年までの福岡市におけるオフィス成約賃料を予測している。

 

同レポートによると、福岡市への人口の流入超過は継続し、福岡県の就業者も増加し続けおり、企業の経営環境もコロナ禍から順調な回復をみせている。
また、雇用環境での人手不足感は強く、営業職や専門・技術職を中心に企業の採用意欲は高まっている

 

 

さらにフリーアドレスの導入をはじめ、リモート会議用ブース・個室の充実など、福岡市内でもテレワークを取り入れたフレキシブルな働き方に対応したオフィスが増えている
加えて、半導体投資の拡大や金融・資産運用特区の指定で企業進出が福岡市内で活発化しており、オフィス需要の高まりが期待されるとする。

 

 

その一方、天神ビックバンや博多コネクティッドをテコに福岡市では、数多くの開発案件が進行中だ。
そして、賃貸オフィス面積の総ストック量に対する今後3カ年(2024年~2026)における新規供給オフィス面積の割合は、主要な地方都市の中では最も高水準にある。
この結果、福岡市のオフィス空室率は当面、上昇基調で推移すると予測する。
ニッセイ基礎研究所『「福岡オフィス市場」の現況と見通し』(2024)では、次のような見通しを立てている。

「福岡のオフィス成約賃料は、空室率の上昇に伴い、下落基調で推移する見通しである。2023年の賃料を100とした場合、2024年は『98』、2028年は『91』への下落を予測する。ただし、ピーク(2021年)対比で▲9%下落するものの、2018年の賃料水準と同程度であり、大幅な賃料下落には至らない見通しである」

 

 

独自試算:2024年2026年のオフィス市場価値は2023年比で上回る

ニッセイ基礎研究所『「福岡オフィス市場」の現況と見通し』(2024)によると、2023年末時点で74.0万坪だった賃貸可能なオフィス面積は、翌2024年に2.7万坪増え、76.7万坪となる。
そして、3年後の2026年末についても同様に3年間で7.4万坪増えて、81.4万坪になる見通しだ。

たしかに賃貸オフィスが供給過多の場合、空室率の上昇もあり、結果的にオフィス成約賃料は、下落する傾向にある。
その一方、【賃貸可能なオフィス面積】×【オフィス成約賃料】の積を【オフィス市場価値】として考えることもできるのではないだろうか。
76.7万坪を見込む2024年の賃貸可能なオフィス面積に2024年の予測オフィス成約賃料『98』を掛けた数値は、2023年の賃貸可能なオフィス面積74.0万坪と同年のオフィス成約賃料『100』の積を上回る計算になる。
同様に81.2万坪となる2026年の賃貸可能なオフィス面積と同年の予測オフィス成約賃料を掛け合わせたオフィス市場価値は、2023年のオフィス市場価値を上回るという結果だった。
つまり、賃貸可能なオフィス面積とオフィス成約賃料との積であるオフィス市場価値で考えた場合、2024年と2026年のオフィス市場価値は、共に2023年を規模的に上回る試算となる。

 

 

全国賃貸管理ビジネス協会の会長を務める三好修・株式会社三好不動産社長は、今後の福岡市におけるオフィス市場について、次のような見解を述べる。

 

三好修社長

いま、福岡市は天神ビッグバン、博多コネクティッドで大きく生まれ変わろうとしています。

全国的に注目を集める福岡市には、地の利があり、人口が増えており、オフィスも増加傾向です。
東京や大阪の企業は災害対応も含めたBCP対策で福岡市内に拠点を開設するケースが増える一方、地元企業も人材採用で本社機能を福岡市都心部へ移転させる事例が目立ちます。

たしかにオフィスフロアの大規模供給で今後、空室率の上昇は予想される半面、テナントは選びやすくなった上に借りやすくなります
また、不動産仲介会社もビジネスチャンスとして、新たな需要の創造に貢献できます。三好不動産でも、その可能性を踏まえて、オフィス仲介事業を本格的に始動させます。

今後、いかに魅力的な都市になるかがポイントであり、福岡市都心部へ国内外からの人々を集客・回遊させていくことが、今まで以上に大切です。
新たな大型オフィスビルの低層階へ商業店舗の集積が進む中、〝日曜日も人々が集まって来るオフィス街〟にしていくことが重要だと考えます。

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全国賃貸管理ビジネス協会の会長を務める三好修・株式会社三好不動産社長

 

 

不動産ビジネスやオフィス市場は100年の計で臨むべし

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本来、オフィス向け賃貸ビジネスをはじめとする不動産ビジネスにおいては、概して投資額が大きく、そして投資回収期間も長期間に及ぶことが多い。
国税庁『主な減価償却資産の耐用年数表』によると、建物の耐用年数表については、「鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの」のうち、「事務所用のもの」は50年となっている。
また、「れんが造・石造・ブロック造のもの」のうち、「事務所用のもの」は41年だ。
さらに「金属造のもの」のうち、「事務所用のもの」は2238年としている。

オフィス向け賃貸物件においては、耐用年数を超えての維持・活用していくケースが多い。
これらの点を踏まえると、福岡市のオフィス市場についても長期的な視点で考え、場合によっては100年の計で臨むべきではないだろうか。

 

 

参照サイト

福岡市経済観光文化局『福岡市経済の概況』】(令和63)
https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/46140/1/keizainogaikyo.pdf?20240328161751

三幸エステート『Office Market(20247)福岡市
https://www.sanko-e.co.jp/pdf/data/202407_fukuoka_om.pdf

ニッセイ基礎研究所『 「福岡オフィス市場」の現況と見通し(2024)
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=78829?site=nli

三井住友信託銀行調査月報20243月号『国内主要7都市 オフィス市場の展望2024
https://www.smtb.jp/-/media/tb/personal/useful/report-economy/pdf/143_2.pdf

国税庁『主な減価償却資産の耐用年数表』
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf

 

 

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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