【基準地価2022】地価上昇率で2年連続、日本一の福岡県をけん引する福岡市の地価動向

天神ビッグバンや博多コネクティッドに代表される都心開発が、福岡市の地価を押し上げています。そして、福岡市から福岡都市圏へ、さらに全県的な広がりを見せた結果、福岡県は基準地価の全用途、商業地の上昇率で2年連続の日本一になりました。今回、「福岡」の地価を巡る最新動向をレポートします。

〝一物四価〟とも呼ばれる不動産価値とは何か

同一の土地であっても、その目的や評価方法によって、不動産の価値は異なってくる。
不動産の価値でベースになっているのは、〝時価〟である。つまり、実社会において、いくらで取引されているかが、一つの判断基準になるのだ。
時価に基づいて、『公示地価』『基準地価』『相続税評価額』『固定資産税評価額』が決められており、一物四価といわれることもある。

4つの不動産価格を整理すると、次のようになる。
【公示地価】毎年1月1日時点での土地の標準価格を国土交通省が毎年3月に公表する。公示地価は土地の基本的な価格であり、土地取引の目安とされる。
【基準地価】毎年7月1日時点での地価を各都道府県が9月下旬に公表する。基準地価の発表は公示地価の半年後であり、地価変動を補完する役割も担う。

上記に加えて課税のための評価基準が、相続税路線価と固定資産税路線価だ。
【相続税路線価】国税庁が実施して公示地価の8割程度。
【固定資産税路線価】固定資産税を徴収する市町村(東京23区は東京都)が実施し、公示地価の7割をめどとする。

なお、相続税路線価、固定資産税路線価は公示地価を基準にしており、地価の最上位基準は公示地価である。
 

全国の基準地価が3年ぶりに上昇、住宅地は31年ぶりのプラス

国土交通省が9月20日に発表した、2022年7月1日時点での『基準地価(都道府県地価調査)』によると、住宅地、商業地、工業地などを含む全用途の全国平均が、前年比0.3%のプラスとなり、3年ぶりに上昇へ転じた。
基準地価のうち商業地の全国平均は、前年から0.5%上昇して、3年ぶりのプラスとなった。一方、住宅地の全国平均は、0.1%上昇してバブル期の1991年以来、実に31年ぶりのプラスを記録している。
三大都市圏についてみると、全用途において東京圏は10年連続でプラスとなり、観光需要が回復傾向にある大阪圏も上昇に転じた。一方、自動車産業などが好調な名古屋圏は東京圏、大阪圏を上回る伸びを見せる。
地方圏のうち、いわゆる札仙広福と呼ばれる札幌市、仙台市、広島市、福岡市の地方拠点4大都市は、活発な都市再開発によって大幅に上昇した。その半面、4都市以外では下落傾向が続く。
全国の変動率トップ10を見てみると、商業地のトップ10は6位の千葉県木更津市を除いて、すべて北海道の地点が名を連ねた。一方、住宅地のトップ10では、すべての地点で北海道が独占した。

福岡県が基準地価の上昇率において都道府県での連覇達成


福岡県は、土地取引の目安となる基準地価で2年連続全国1位━━━。
国土交通省がまとめた2022年7月1日時点における基準地価の集計によると、都道府県別の全用途における地価上昇率の全国1位は、3.1%増の福岡県だった。

福岡県内の全用途と商業地は7年連続で上昇し、住宅地と工業地は6年連続での上昇だった。
今回、福岡県が調査した県内922の地点のうち、6割超の調査地点で地価上昇を記録している。
各都道府県における基準地価の上昇率を用途別にみてみると、商業地では第1位だった4.0%増の福岡県に2.7%増の宮城県が続き、2.3%増の愛知県、2.0%増の千葉県と東京都が連なる展開だった。
また、住宅地では、2.7%増の沖縄県に2.5%増の福岡県が追い掛け、その後を1.8%増の北海道、1.5%増の東京都と愛知県が続く。
一方、工業地に関しても12.2%増の沖縄県を6.3%増の福岡県が続き、その後に5.1%増の千葉県、4.5%増の京都府、4.3%増の熊本県が追う流れとなった。

福岡県の商業地価上昇を牽引する福岡市の都心開発

上昇率4.0%増で全国トップだった福岡県の商業地の地価を押し上げた要因として、福岡市における旺盛なオフィス需要やマンション需要が挙げられる。
福岡県内の商業地において上昇率で第1位となったのは、福岡市博多区博多駅東3丁目31番にある川清ビルの17.5%増だった。第2位は福岡市中央区高砂2丁目6号21番、第3位は福岡市博多区竹下4丁目328番で、いずれも都心部の周縁部となっている。
これらに続く第4位以下も含め、福岡県の商業地における基準地価上昇率のトップ10は、すべて福岡市内という結果だった。
昨年、新型コロナウイルス感染症の影響によるテナント撤退が相次いだ結果、福岡市内の商業地で唯一下落した繁華街・中洲は今年、飲食ビル用地の地価が上昇に転じたこともあって上昇しており、回復基調がうかがえる。
 

福岡県の住宅地価上昇トップ10のうち福岡市が7地点

福岡県の住宅地における基準地価の上昇率で第1位は、福岡市中央区輝国2丁目24―16―1の12.9%増だった。
最寄り駅の地下鉄六本松駅からは来年・2023年3月、福岡市地下鉄七隈線の天神南駅からの1.4キロ延伸で博多駅と結ばれる。
今後、利便性のさらなる向上が期待できる地域であり、地下鉄七隈線沿線でのマンション建設が進む中、比較的割安感もあって大幅な上昇率を記録した。

福岡県の住宅地における基準地価の上昇率では、第2位に筑紫野市針摺北441番94の12.5%増、第3位に福岡市博多区西春町3丁目53番2の12.3%増が続いた。
福岡県の地価上昇率トップ10のうち、実に7地点が福岡市内という結果だった。

一連の基準地価の動向について、福岡県の地価調査で代表幹事を務める、不動産鑑定士の高田卓巳日本不動産研究所九州支社次長は、次のような見解を示す。

福岡県における基準地価の平均変動率が、全国的にみても好調であり続ける要因として、福岡都市圏や北九州都市圏だけでなく、他エリアでも戸建住宅需要が上向いていることが挙げられます。
また、福岡市中心部の地価上昇を大きくけん引しているのは、マンション用地と割安なオフィス用地です。
マンション用地については、分譲マンションをはじめ賃貸マンションや投資用分譲マンションに加えて、最近注目を集める実需を対象にしたコンパクト分譲マンション開発の動きも活発です。

 今後の福岡市における地価の動向はどうなるのか

福岡市では現状、2026年末を竣工期限とする天神ビッグバン、2028年末が竣工期限となっている博多コネクティッドの促進効果もあって、新たなオフィスビルが相次いで誕生している。
その一方で「今後、建築費や資材の高騰による影響が懸念される中、はたして上昇基調を維持できるのか」「オフィス空室率が供給過剰の目安とされる5%を6年ぶりに突破しており、都心部での上昇余地はなくなっているのではないか」という指摘もある。

これらの点を踏まえ、高田次長は今後の見通しとして、次のように語る。

引き続き、金融緩和の継続によって世の中にお金があふれています。
さらに、世界的なインフレに加えて円安もあって、海外資金が日本の不動産市場へ流入し易い環境にもなっています。
今後も建築費の更なる上昇や、日銀が金融引き締めに舵を切るまでは、一部の不動産物件を除いて、地価上昇は当面続いていくものとみています。
その一方、投資採算性で説明ができないような割高な取引も出てきています。
開発物件が事業者の想定通りの価格で売れたり、想定家賃で貸し出せたりするなどの価格転嫁ができれば、問題は無いでしょう。
しかし、もしも価格転嫁ができなくなった場合、不動産市場に与える影響は小さくないので、今後の動向を注視していく必要があると考えます。

地価の上昇は地域経済の〝元気〟の表れである一方、過剰や過熱した場合、地域経済に与える影響の深刻さも懸念される。
今後の地価動向に注意を払うべきとする献策は正鵠を得ていると考える。

 

参照サイト

国土交通省『令和4年地価調査結果の概要』
国土交通省土地政策審議官『令和4年都道府県地価調査の概要』
福岡県『令和4年度福岡県地価調査』
 

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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