〝元気都市〟福岡市の隠れた強みは日本の大都市で首位となる第三次産業の集積比率にアリ

国内から〝超成長都市〟として脚光を浴びる福岡市は、日本の大都市において第三次産業の占める割合が最も高い都市でもあります。福岡市のシンクタンクである福岡アジア都市研究所がまとめたレポートを基に、元気な福岡市の〝秘密〟について、産業構造面からアプローチしていきます。

東京特別区を上回る、福岡市の第三次産業の集積比率



※令和3年経済センサス活動調査より対象抽出法が変更され、より幅広く把握されたことから、比較については参考値である 
 
「日本の大都市においても最も第三次産業の比率の高い都市は、福岡市だった」━━。
公益財団法人福岡アジア都市研究所が隔年で発行するデータブック『Fukuoka Growth リアル』の集計データによると、全国の政令指定都市に東京特別区を加えた21大都市における第三次産業の事業所数の比率が最も高かったのは、福岡市の89.7%だった。
福岡市に次ぐ第2位は神戸市88.1%、東京特別区87.7%が第3位で追い掛け、その後に仙台市87.5%、熊本市87.0%が続いた。

一方、従業者数における第3次産業の占める比率でも90.2%の福岡市をトップに東京特別区90.0%、札幌市88.7%、仙台市88.2%、千葉市87.6%が連なる展開となっている。
今回のランキング調査に際し、福岡アジア都市研究所の情報戦略室では、2022年5月末に総務省・経済産業省が発表した『令和3年経済センサス‐活動調査』(2021年6月1日時点)の速報集計を用いている。

経済センサス‐活動調査は統計法に基づく基幹統計調査の一つだ。全産業分野の売上(収入)金額や費用などの経理項目を同一時点で網羅的に把握し、事業所や経済活動について全国規模および地域内単位で状況を明らかにするための調査である。

商都・博多のDNAを受け継ぐ福岡市は進化・成長を続ける





出典)公益財団法人福岡アジア都市研究所『Fukuoka Growth リアル』
※令和3年経済センサス活動調査より対象抽出法が変更され、より幅広く把握されたことから、比較については参考値である 

今回、調査を手掛けた福岡アジア都市研究所の主任研究員である畠山尚久情報戦略室長は、次のように分析する。

今回の経済センサス活動調査結果は2016年(平成28)以来5年ぶりとなり、その間にコロナ禍もあり、5年前との比較はコロナ前、コロナ後との見方もできます。事業所数と従業者数の増減を大都市比較すると、多くの都市で事業所数が減少する中で、福岡市は、数少ない事業所数が増加した都市であると同時に、従業者数は4万人以上の増加で、これは東京23区と大阪市に次ぐ規模です。多くの従業者~働く人~が、福岡市に集中しつつあることがわかります。

2016~2021年の5年間における福岡市の産業別増減に注目すると、事業所数の増加産業は、不動産業・物品賃貸業、学術研究および専門・技術サービス業、医療・福祉だった。
また、従業者数が増えた産業は、医療・福祉、情報通信業、その他サービス業となっている。

一方、事業所数、従業者数ともに大きく減少した産業は、従来上位を占めている卸売業・小売業、宿泊業・飲食サービス業だった。

このような第三次産業内の変化について、畠山室長は、次のような見解を示す。

この5年を経て、福岡市経済の産業構造は、第3次産業比率の高さは変わらないものの、その内容は時代の変化に合わせて、より今のニーズに沿ったものへ、新しい価値を生み出す産業の形へと変化しているようです。

かつて大海原も超えて闊歩した博多商人が拠点を構えて、大いに栄えた中世の自治都市・博多のDNAを受け継ぐ福岡市は今日、大都市の中でも特に第3次産業が盛んな都市でもある。
さらに時代の変化に合わせて産業自体も進化させていきながら、経済成長を続けている点では、異色の成長都市であることは間違いなさそうだ。
 

参照サイト

公益財団法人福岡アジア都市研究所『Fukuoka Growth リアル』

 

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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