【博多コネクティッドを知る②】

博多駅周辺半径約500mエリアの再開発促進事業。「博多口側」開発とともに、期待される「筑紫口側」開発!

JR博多駅エリアの開発は、これまで駅ビルから博多口側がメインで、筑紫口側は都市機能や賑わいの面で後れを取ってきました。全国的に見ても駅の両側が同じような都市機能を備えるのではなく、異なっています。博多駅の活力と賑わいを周辺につなげていく「博多コネクティッド」で筑紫口側がどのように変貌を遂げていくのか、注目されます。

【「博多コネクティッド」とは?】
規制緩和などを活用して民間ビルの建替えを促進することで、博多駅周辺地区に新たな空間と雇用を創出するとともに、博多駅の活力と賑わいをさらに周辺につなげていくプロジェクトです。これまでの駅および駅前の博多口側中心から、JR博多駅を囲むような「面」での展開が期待されています。

JR博多駅を挟んで「博多バスターミナル」から「バスステーション博多」まで歩行者デッキでつながる

2021年2月、三菱地所株式会社(本社・東京)と深見興産株式会社(同・福岡市)が福岡市博多区博多駅前4丁目で開発を進めていたオフィスビル「博多深見パークビルディング」が竣工した。地上13階・地下1階、延べ床面積約1万2,600㎡。1・2階は商業ゾーンで、3階以上がオフィス。2階の歩行者デッキに市民も利用できる広場を設け、開放的な憩い空間とした。
  
新駅ビル「JR博多シティ」が開業した2011年3月以降、商業施設「KITTE博多」、オフィスビル「JRJP博多ビル」の開業に合わせて、JR博多駅につながる2階レベルの歩行者デッキが延伸されてきた。同ビルも隣接するバスステーション博多と共に歩行者デッキが整備され、駅ビルを挟んで駅北側の博多バスターミナルからつながった。
 

JR博多駅と歩行者デッキでつながった「博多深見パークビルディング」
  
 

西日本シティ銀行の本店ビルに始まる連鎖的な再開発が、面的に広がる誘い水となるか?

 
博多口側では、博多駅正面にある西日本シティ銀行本店本館ビル(以下「旧本店ビル」)の解体工事が進んでいる。同行は2019年12月、福岡地所株式会社と共同で、老朽化した旧本店ビル(築49年)、大博通り沿いの本店別館ビル(築52年、以下「別館ビル」)および事務本部ビル(築41年)を連鎖的に再開発すると発表した(注)。
 
(注)旧本店ビルは敷地面積約5,230㎡で、地上12階建ての高さ49.4m。別館は同約2,950㎡で、地上13階建ての高さ49.5m。事務本部ビルは同約3,300㎡で地上7階建て。旧本店ビルは、建築界のノーベル賞と言われる米プリツカ―賞を受賞した建築家・磯崎新さんの設計。外壁に貼り付けられた赤茶色のインド砂岩が個性的な外観をつくり出していた。本再開発の中で株式会社磯崎新アトリエの助言を得ながら、一部移設・保存することにしている。
 

解体工事中の西日本シティ銀行旧本店ビル
 
再開発のスケジュールは、2022年7月ごろ新本店ビル建設に着手し、2025年2月ごろに竣工、同年5月ごろ、別館ビル・事務本部ビルの解体をはじめ、2028年9月ごろの完成を予定している。
 
西日本シティ銀行では、「『博多コネクティッド』で容積率の緩和を受け、駅前の一等地のポテンシャルを最大限有効に活用したい。この連鎖的再開発が博多コネクティッドの起爆剤となり、再開発が面的に広がっていく誘い水になることを願っています」と話す。
 
そして、「博多の未来のまちづくりの起爆剤となり、福岡・九州の 経済発展・活性化に貢献することを最大の目的としています。その目的を達成するためにも、私どもが単独で開発するのではなく、近隣の地権者と未来の博多のまちのあり方を一緒に検討し、地区計画を策定することができれば、非常にありがたいこと、と考えています」としている。
 

賑わいのイメージ(画像提供:西日本シティ銀行)
 
九州旅客鉄道(JR九州)も2019年3月、「JR九州グループ中期経営計画2019-2021」の中で、JR博多シティに隣接する「博多駅空中都市構想」を発表していた。未活用の線路上空を活用してJR博多シティの横に複合ビルを開発する計画である。 
 

筑紫口側は、つながり、広がりが生まれる広場の創出などで、賑わいの拡大に貢献する

 
筑紫口側の大きな開発計画は、NTT都市開発株式会社と大成建設株式会社が共同事業として開発している旧博多スターレーン跡地の「(仮称)博多駅東1丁目開発」である。広さ約4,900㎡の敷地に、地上10階建て(高さ約50m)、延べ床面積約2万9,200㎡のオフィスビルを建設中で、2022年7月の開業を予定 。筑紫口中央通りの駐輪場を敷地内に再整備し、1階を賑わいと活力のまちづくり用途とすることで、博多コネクティッドボーナスの第1号認定を受けている。
 
1階にカフェ、スモールオフィスを予定、2階以上はオフィスフロアとなる。オフィスフロアの基準階の無柱空間は博多駅周辺地区最大級の約2,240㎡(約677坪)。エントランス正面には約940㎡の南側広場を設け、1階ピロティと歩道をつなぐ空間で、ゆとりを感じさせるセミパブリックスペースとして整備する。広場に面したカフェやキッチンカー、ベンチの配置、無料Wi-Fiの提供などビル内で働く人だけでなく、来街者が憩い楽しめる空間とする計画だ。
 
この広場は博多駅から見通せるため、通りの突き当りなど人の視線がぶつかる部分に効果的に配置されたアイストップとなるシンボルツリーを植樹し、四季の変化を楽しめる植栽を採り入れる。また、駐輪場を整備し、筑紫口中央通りに設置されている駐輪場を撤去することで、来街者が安全に歩きやすい歩道とする。
 

全体パース図(画像提供:NTT都市開発)
 
同ビルと博多駅の間に位置する福岡県の「福岡東総合庁舎」も解体工事中である。JR九州を代表企業とし、福岡地所、株式会社麻生を構成員とする企業グループが優先交渉権者となり開発にあたっている。2022年3月に新施設建設工事に着手し、2024年春の竣工を目指している。敷地面積約2,640㎡に、博多県税事務所も入居するデザイン性に優れた先進的なオフィスビルを建設、博多コネクティッドボーナスの認定に向けて公開空地も十分確保する計画だ。
 

小規模地権者が多く大型開発が難しい筑紫口側。その将来図をどう描くのだろうか?
 

博多コネクティッド関連の再開発でも、駅ビルから博多口側に偏り、筑紫口側は都ホテルの開業以降、前述した2カ所の次の開発が出て来ていない。民間の事業所数と従業者数を見ても、博多口側の3,180事業所、従業者5万5,500人に対し、筑紫口側のそれは2,066事業所、3万1,549人(いずれも2016年)と開きがある。ちなみに、博多駅中央街は1,119事業所、1万8,013人。
  
市営地下鉄七隈線の延伸工事に合わせ、天神地区とを結ぶ「はかた駅前通り」の再整備も進む。車道部幅員16mと両側の歩道部5.5mから車道部を削減し、両側の路側部に自転車専用レーン(幅員各1.5m)を設け、歩道部を各7.25mに拡幅する。2017年3月の歩行者通行量調査によると、博多駅前とキャナルシティ博多を結ぶ通りは2005年に比べ平日で40%台、休日で60%台の増加となっている。再整備で今後の増加が見込まれる。
 
一方、筑紫口駅前広場の再整備も始まっているが、福岡市市有地の広場とJR九州の所有地が狭いため、博多口駅前広場のような整備は難しい。歩道部の拡幅、タクシーや一般車用の乗降場を拡充するなど、歩行・乗り継ぎ面で機能性の強化を図る。
 

再整備が始まっている筑紫口駅前広場

博多駅周辺エリアの地権者が都市機能の向上を図る目的で設立した「博多駅エリア発展協議会」事務局長の小池洋輝さんは、「レコードのA面、B面があるように、博多口と筑紫口では都市機能が違っても良い。ただ、回遊性の向上には人がその先まで歩きたくなる仕組みが必要」と言う。
 
博多口側にはキャナルシティ博多や、神社仏閣の多い博多旧市街が控えているが、筑紫口側に何があるのか? 博多駅周辺の一体的な発展に向け、地元経済界も福岡市などに、国の合同庁舎を九州大学箱崎キャンパス跡地(福岡市東区)に移転する提言をしている。とはいえ、庁舎跡地をどのように活用するのか? 緑豊かな公園や広場が多く、オフィスワーカーが望む環境づくりをどう進めるのか? この機会に、その目指す将来図をぜひ描いてもらいたいものだ。

合わせて読みたい記事⇒「博多コネクティッド」を解説!博多駅の活力と賑わいが周辺へと広がる

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経済ジャーナリスト
神崎 公一郎
1952年、長崎県生まれ。早大卒。地方紙記者、月刊経済情報誌「エコノス」の編集長を経て、㈱プロジェクト福岡を設立、代表を務める。 現在、日本マーケティング協会九州支部の機関紙、西日本シティ銀行の広報誌の執筆・編集や地元企業の社史執筆に従事する。まちづくり、コンベンションに関心が深い。

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