九州新幹線の全線開業と駅ビル「JR博多シティ」の開業を機に、博多駅エリアは急速な発展を遂げた
2011年3月、九州新幹線・鹿児島ルートが全線開業し、新駅ビル「JR博多シティ」も開業した。
地下3階・地上11階建てで、延べ床面積は約20万㎡。核テナントは「阪急百貨店」と専門店街「アミュプラザ」。シネマコンプレックスやレストラン街なども入居する、日本最大規模の駅ビルの誕生であった。
2016年4月には、商業施設「KITTE博多」(地下1階・地上11階建て)が開業した。延べ床面積は約6万4,000㎡、核テナントは「博多マルイ」。その南側には日本郵便とJR九州が共同開発したオフィスビル「JRJP博多ビル」もオープン、地下2階・地上12階建て、延べ床面積は約4万4,000㎡であった。
博多駅周辺の小売業商業売り場面積は、2007年の6万7,000㎡から2016年には18万1,000㎡と急拡大、商業エリアとしても急速な発展を遂げたのである。
ちなみに天神地区は31万㎡に上っていたが、福岡市はそれまでの「天神一極集中」から博多駅地区との2つの核からなる“二眼レフ都市”となった。
実はこの20数年で、博多駅地区はビジネスの集積が進み、民間の事業所数と従業者数は天神地区を逆転し、福岡市のビジネス街としての地位を高めてきた。福岡空港に近く、JR線をはじめとする九州内外への交通アクセスの良さから、調査・情報サービス業やホテルの増加が顕著であった。事業所数は天神地区の1.38倍、従業者数も同じく1.36倍となっている。
(九州経済調査協会調べ)
※博多駅地区=博多駅中央街、博多駅前1~4丁目、博多駅東1・2丁目、博多駅南1丁目
※天神地区=天神1~5丁目
足元人口の増加から、博多駅地区の売り場面積あたりの購買力は相対的に高い。
「福岡市の商業」によると、売り場面積1㎡あたりの小売額は天神地区のそれを上回っているのだ。
博多駅の活力と賑わいをさらに周辺に繋げていく。このプロジェクトが、「博多コネクティッド」である
博多駅は九州最大の駅で、福岡空港とは地下鉄の駅で2駅、わずか5分でつながる交通の要所としての機能から、数多くのオフィスビルからなるビジネス街として、そして商業施設も加わって発展してきた。それは利用者数の推移にも表れている。
1日当たりの乗車人員は、JR九州の在来線、新幹線(九州・西日本)、市営地下鉄を合わせて、2019年は23万1,000人余りであった。2009年の乗車人員は16万5,000人余りだったことから、この10年で、1.4倍増となる計算だ。
乗降客数は約46万3,000人にのぼり、1日の利用者は約50万人ともいわれる。
JR博多駅の1日あたり乗車人員の推移
(九州経済調査協会調べ)
2023年5月(※1)には、市営地下鉄七隈線の延伸工事が完了し、天神南駅から博多駅間が開業する。これに「はかた駅前通り」を再整備するなど交通基盤を拡充し、容積率などの規制緩和によって、耐震性が高く、ウイズコロナ・ポストコロナにも対応した先進的なビルへの建て替えや歩行者ネットワークを拡大するとともに、歴史ある博多旧市街との回遊性を高めることなどで都市機能の向上を図る、というプロジェクトが、「博多コネクティッド」である。博多駅の活力と賑わいをさらに周辺に繋げようというわけだ。
※1 参考URL
≪七隈線延伸事業≫ 七隈線(天神南駅~博多駅)の開業時期及び櫛田神社前駅の駅シンボルマークが決定しました!!(福岡市地下鉄公式HP)
https://subway.city.fukuoka.lg.jp/topics/detail.php?id=1450%27
「博多コネクティッドボーナス」の“容積率緩和”で、更新期を迎えたビルの建て替えを促進する
博多駅周辺地区には、博多駅移転(1963年12月)や山陽新幹線開通時(1975年3月)に建てられ、築50年前後が経過しているビルが多い。更新期を迎えたビルを建て替えるとなると、現行法などの容積率基準が適用される。その場合、現状よりも床面積が小さくなる場合があり、耐震性やセキュリティに課題を抱えながらビルの建て替えが進まなかったのは、天神地区と同じであった。
2019年5月、福岡市は更新期を迎えたビルの建て替えを促すインセンティブ制度「博多コネクティッドボーナス」を創設し、10年間で20棟の建て替え誘導を目標とした。ボーナスを適用するための竣工期限は2028年末である。ボーナスのポイントは、容積率緩和制度(都心部機能更新誘導方策)の拡大であった。
1)つながり・広がりが生まれる広場の創出など賑わいの拡大に寄与するビルに対し、容積率を最大50%緩和。
2) 賑わいや回遊をさらに生み出す観点から、通常は容積率の評価が低くなってしまう屋根のある広場等でも、公開空地評価を屋根がない場合と同等の最大2.5倍とする。
◎賑わいの拡大に寄与するビルに対する容積率緩和
◎屋根のある広場等の公開空地評価
「コネクティッドボーナス」は、ほかに認定ビルへのテナント紹介、行政による認定ビルのPR、専用融資商品がある。
インセンティブはこのほか、税制優遇や交付金として、特定都市再生緊急整備地域に伴う国の支援制度の活用や市民緑地認定制度での税制優遇、福岡市へ本社機能を移転・拡充した場合の税制優遇、立地交付金などがある。天神ビッグバン同様、国家戦略道路占用事業(はかた駅前通り、住吉通り、大博通り、承天寺通り、筑紫口中央通り)もある。
天神地区に比べ福岡空港に近い博多駅周辺地区は、航空法の高さ制限が概ね地上高50mだが、JR博多シティの建設において国との協議による個別計画ごとの特例承認で、既存ビルに設けられた避雷針までと同等の約60mが認められている。博多駅周辺地区については、エリア単位での特例承認は難しいが、個別計画ごとの特例承認に向けて福岡市がバックアップしていく。
(提供:福岡市)
筑紫口側が博多駅東エリア開発の起点となれば、博多駅周辺地区発展は新たな段階に
「博多コネクティッド」の対象エリアは、博多駅から半径約500m以内の約80ha。
これまで、急速に発展してきたのは博多駅ビルと博多口側に集中している。これからも、JR博多シティを増床する計画、七隈線の博多駅は博多口側となり、JR博多駅から博多キャナルシティに続く目抜き通り「はかた駅前通り」も再整備中である。
◎「博多コネクティッド」の対象エリア
西日本シティ銀行の本店ビル等の建て替え計画なども始まり、どうしても駅ビルから博多口側に偏りやすい。これまで、筑紫口側は都市機能や賑わいの面で、博多口側に後れを取ってきた。当の博多駅が筑紫口側を分断してしまう結果となっていたと言えなくもない。現在、筑紫口駅前広場の再整備も始まっており、博多コネクティッドを進めるうえで博多駅東エリア開発の起点となるかが、今後の試金石となる。
2019年9月、「都ホテル博多」が建て替え開業し、いま「博多コネクティッド」によって、博多スターレーン跡地の「(仮称)博多駅東一丁目開発計画」が始まり、福岡東総合庁舎の再開発も発表されている。ビルごとの「点」から駅東エリアを「面」としての開発にできれば、博多駅を囲むような新たな展開につながりそうだ。
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5つの切り口で解説する「博多コネクティッド構想」まとめ
現在、博多駅周辺では福岡市営地下鉄七隈線の延伸工事やビルの建て替え工事が進められています。市が進める博多駅周辺再開発促進事業、その名も「博多コネクティッド構想」については、フクリパでも何度かご紹介してきました。 この記事では博多コネクティッドの保存版記事として、5つの切り口でまとめます。
記事はこちら▶https://fukuoka-leapup.jp/biz/202202.462