テラス席の現状と今回の規制緩和とは
雨の少ないフランス・パリでは、多くのオープンテラス席のカフェが立ち並ぶ
テラス席がある気持ちのいい空間、日本にもっと増えたらいいなと常々願っていました。しかし、それはそのエリアの気候にも関係します。
例えば、テラス席がすてきなフランス・パリのカフェの場合は、あまり雨が降らずに通年で楽しめます。また、シンガポールやタイ・バンコクのレストランは、気温が下がる夜に、オープンエアで最高に気持ちよさを味わえます。
タイ・バンコクで若者に人気のナイトマーケット。バンドの生演奏をききながら食事もできる
日本の場合は、雨もよく降るうえに、寒い時期、暑い時期が長く、テラス席がぴったりの季節が短いという難点もあります。
そして、通常歩道を含む道路を使用するには、管轄の警察署に「道路使用許可」、道路管理者に「道路占用許可」をとる必要があり、規制が設けられていたのです。
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける飲食店等を支援するために、国土交通省では緊急措置を6月5日に開始しました。
沿道の飲食店などが「3密(密閉空間、密集場所、密接場面)」を回避し、「新しい生活様式」に対応するために、地域の清掃に協力するなど一定の条件を満たせば、地方公共団体だけではなく、地元関係者の協議会や地方公共団体が支援する民間団体なども道路の占用料が免除されることに。
つまり、テイクアウト販売やテラス席設置のための道路使用・道路占用の許可が受けやすくなったのです。
もともと福岡は、ビルの谷間に並ぶ屋台に代表されるように、オープンエアーの開放的な雰囲気の中で食事を楽しむのが魅力的なまちです。
開放的な雰囲気が魅力、福岡観光資源の屋台
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国交省から各自治体におろされたこの規制緩和。福岡ではどのように取り組まれているのでしょうか。
福岡市は道路、プラス公開空地を対象に
福岡市は、7月22日に今回の規制緩和の内容を福岡市ホームページで示しています。
福岡市ホームページ
この施策にかかわる主幹部署の福岡市経済観光文化局観光コンベンション部の観光マーケティング課、原口智雄課長、三坂教之係長、大島瑛一郎さん、許可を担当する道路下水局管理部路政課の渡辺岳夫係長、住宅都市局建築指導課の山下毅係長と一堂に会していただき、お話をおききしました。
——この規制緩和の概要は
個別店舗ごとの申請ではなく、福岡市またはエリアマネジメント団体など市が参画する協議会や、市が支援する民間団体(商店街振興組合など)による一括申請によります。
施設付近の清掃などにご協力いただける場合は、道路の占有料が無料となります。
今回の通達というのは非常に画期的。
今まではお祭りなどの期間限定で、習慣性があるものに限って認められてきたので、周囲の理解も得られやすかったですね。今年の11月30日までという継続的な施策は今までなかった。それだけコロナ禍に対応した特例的な措置といえます。
▼最新情報▼ ※ 2021年8月4日追記
規制緩和の期間が、2021年9月30日まで延長されました。
福岡の市民の意識では、飲食店に求めることとしては「店舗の換気」の声が多いように感じていますのです。消毒やマスクなどは利用者自身で対策できるからでしょうか。
そういう点でも、今回の施策は利用者のニーズにそっているといえます。
——福岡市ならではの特徴はありますか
公開空地とは、「一般に開放され,自由に通行等ができる民有地」のこと。福岡市では特区制度を活用して、「ストリートパーティー」など全国的にみても、盛んに行ってきました。
天神・きらめき通りの「ストリートパーティー」
福岡市民は当たり前に思っているかもしれませんが、他都市ではなかなかない規模で、公開空地を活用してきたのです。
——現在の状況はいかがですか
市民や観光客には、テラス席をはじめ開放感あふれる郊外で、福岡の観光を楽しんでいただきたいですね。
2020年10月から11月には、福岡の複数の商店街・店舗で道路占用許可等の基準緩和を活用したテラス営業等の取組みが実施されました。
①味のみちくさ通り(南区玉川町)
【実施日時】10月9日(金)~11月30日(月)17時~24時頃
【場所】福岡市南区玉川町10 (味のみちくさ通り) [MAP]
【参加店】飲食店5店舗 (元祖焼鳥丸万・大皿と魚とびこ・元祖よりみち横丁・喜多家・チョコボール食堂)
味のみちくさ通りでは、飲食店5店舗が参加
オープンエアーのテラス席での食事は心地よい
安全安心にも配慮して実施
②人形町通り(博多区中洲)
【実施日時】10月9日(金)~11月28日(土)までの金曜・土曜の19時~23時頃
【場所】福岡市博多区中洲4 (人形町通り) [MAP]
【参加店】飲食店等13店舗 (とり政・KRONE・臣屋・THE PINK SHOP・ANDANTE・カチューシャ・Bar Eadrom・Bar ハイボール・Bar BILLIKEN・PINK STAND・KOPAN・なりびや・割烹川田)
有名割烹店のテラス席!
19時からは車両通行止めになります
こちらも安全対策実施中
③上川端商店街・川端中央商店街(博多区上川端町)
【実施日時】10月16日(金)~11月27日(金)までの金曜の17:00~21:00
※11/20は除く
【場所】福岡市博多区上川端町10 (上川端商店街・川端中央商店街) [MAP]
【参加店】飲食店13店舗
見慣れた商店街のあちらこちらにテラス席が
即席のテーブル席がいい感じです
来店時は、手指の消毒にご協力を
④みなと銀座商店街振興組合(中央区港)
【実施日時】10月9日(金)~11月30日(月)
※開催日・時間は店舗によって異なります。
【場所】福岡市中央区港2(みなと銀座商店街振興組合加盟店) [MAP]
【参加店】飲食店3店舗 (プルポ 18:00~23:00日曜休・トクトク 17:00~23:00不定休・アーバン 8:00~23:00営業不定期)
福岡の水辺テラス席の先駆者 ウォーターサイト オットー
このテラス席のあるカフェができたのは、2007年。私はオープン当初から「福岡らしい、幸せな気分になる水辺のカフェ」のとりこになりました。その頃福岡には、こんなステキなテラスがなかったと思います。
福岡市内に「カフェオットー」を展開する後藤圭右さんは、那珂川沿いに心地よい風が吹き抜けるこの場所に強くひかれたといいます。
カフェオットー 後藤さん
日本は『治水』ととらえていて、災害から住民を守るのが最優先、川はまちの裏手にあることが多い。大分県日田市の三隈川沿いで育った僕にとって、水辺は非常に慣れ親しんだ空間だったんです。
当時、福岡の商業施設で3店舗のカフェを経営していました。何もなかったこの場所に、世界的なカフェチェーンが入る可能性があるときいて、東京や全国のどこにでもあるような風景になるのも嫌だなと思って出店をしました。
当初、川沿いの散策路にテラス席を作ることは天神中央公園の敷地の一部ということで、許可がおりなかったのです。粘り強く交渉を重ね、やっと実現しました。
まさに、開放感いっぱいのテラス席は、最近さらに人気が高まり、店内より先に埋まっていくそう。
バラエティ豊かなスイーツやドリンクのメニューはもちろん、お肉系の定食やカレー、ナポリタンなどのパスタとボリュームたっぷりの料理メニューの充実ぶりがすごい!
「サラダたっぷり、肉も一日かけて漬け込むなど、料理にも手間をかけています。家、仕事場、その次の第三の場所として、非日常の中で、くつろいでほしい。」そんな後藤さんの想いは、スタッフの笑顔とサービスから伝わってきます。
焼き立てアツアツ、サクサクのパイにシナモンかおるアップル、バニラアイスといっしょに。アップルパイ (760円 税抜)、昔なつかしいかためで濃厚なカスタードプリン (530円 税抜)、ブレンドコーヒー (450円 税抜)
【ウォーターサイト オットー】
■TEL:092-714-3308
■住:福岡市中央区天神1-16-1 西鉄イン福岡1F [MAP]
■営:11:00~20:00 (L.O. 19:00)
■休:なし
https://www.otto-web.net/
今こそ楽しんでほしい おすすめテラス席
ここでは、まさに福岡らしい、まち中なのに心がゆるゆるとほどけていく、シティリゾート気分を味わえるテラス席を紹介しちゃいます。
◯水上公園「シップス ガーデン」
ウォーターサイト オットーの向かい側は、水上公園とよばれ、屋上は誰でも入ることができる広場。1、2階に世界に誇るレストランが入っています。
屋上の広場は、眺めもよく、のんびりと思い思いにくつろげます
【水上公園】
■住:福岡市中央区西中洲13-1 [MAP]
http://suijo-park.jp/
◯アゴーラ福岡山の上ホテル&スパ「ビアテラス」
中心部・天神から車で約15分、福岡市街を一望できるラグジュアリーなビアテラス。毎年、福岡市民はもちろん県外客も虜にする、福岡の夏~秋の風物詩。2020年は、10月31日(土)まで開催しています。
福岡市内を一望できる景色は、圧巻。ここでのデートは女性をイチコロにさせる(⁈)という噂も
【アゴーラ福岡山の上ホテル&スパ ビアテラス】
■TEL:092-771-2131
■住:福岡市中央区輝国1-1-33 [MAP]
■営:18:00~21:00 (最終入店19:00)
■休:10月31日(土)まで営業
https://agorafukuoka-hilltop.com/experience/coolluxury-beerterrace/
改めて気がつく福岡のまちの贅沢空間
私が福岡の大好きなポイントのひとつが、都心の真ん中にいながらリゾート感を満喫できること。
シンガポールの川辺もこんな風だなと思いつつ、仕事の合間にこの開放感、リラックスできる感覚はなかなかないです。
コロナ対策の規制緩和は、福岡市民には当たり前になっている贅沢な空間のありがたさに改めて気づかせてくれます。