集客人数よりローカルの本質を!福岡の “千年夜市”仕掛け人 松岡さんが考えるコロナ後のイベントのカタチ

新型コロナウイルスの影響を受け、イベント自粛が続く福岡市。福岡で新たな風物詩として福岡市民をはじめ、福岡を訪れる観光客を楽しませてきた“千年夜市”を主催する松岡まさたかさんに、これからのイベントはどう変わっていくのか、お話を伺いました。

自粛を受けすべてのイベントが中止になったタイミングと重なった “マルシェひとつぼ”

松岡さんは2月中旬頃から開催予定だったイベントが中止になり、その後軒並み全てのイベントがなくなります。

天神・博多駅から徒歩圏内のキャナルシティ博多そばにある清流公園で毎年開催し、GWに開催を予定していた千年夜市も3月の時点で中止を決めました。
 
イベント仕掛け人として、今年8年目を迎える千年夜市をはじめ様々なイベントを運営、または委託され開催してきた松岡さんのスケジュールは白紙になりますが、ちょうどその時期に松岡さんが中央区六本松にある事務所前のスペースで始めたのが“マルシェひとつぼ”です。


松岡さんの事務所前スペースで始めた“マルシェひとつぼ

松岡さん

事務所がある六本松1丁目は都会の中にポツンとある村なんです。この地域は、建物に工事が入っていたりすると、“ここ何ができるとかいな”と地域に住むおばちゃん達の噂になるんです。新しい店ができるということが、その地域に住む人にとってイベントなんですね。
 
事務所としてリノベーションしていた時、何ができるんだろうと楽しみにしていたおばちゃん達に、店ではないとわかった後も「あんたここで店やりなさい」と言われていたんです。
 
これは何か面白いことをしてあげた方がいいなと思い、イベントをやっている関係で知り合いの農家さんも多かったので、せっかくだから美味しい農産物をここで買うことができればと喜ぶんじゃないかと思って “マルシェひとつぼ”を始めました。


 
ここ数年「人を集めましょう!」がイベントの絶対的正義だったと感じています。
ほぼ毎週末に、天神や博多駅では飲食イベントをはじめ様々なイベントが開催され、どれも来場者が何万人きますと謳い、花火大会も人が集まり過ぎて警備の数を増やせと言われ運営ができなくなったりと、“来場者数”が重要視されていたと思います。
 
イベントが、ある一定の水準を超え、さらに限界まで超えていて、主催者も来場者もどちらも楽しめるはずのものが、楽しさよりもリスクが上がっていました
 
だから、人を集めることが最優先ではない“近所の人を楽しませる小さなイベント”をやってみたくて、昨年から考えていた“マルシェひとつぼ”を2月に始めました。

ちょうど新型コロナウイルス発生直後だったこともあり、出店者への救済だと思われていたようですが、新型コロナウイルス前から考えていたので、実は自粛は全く関係ないんです。

松岡さんが事務所前ではじめた“マルシェひとつぼ”で用意した農作物は毎回完売。
訪れた近所の人達とおしゃべりをしたりお茶を飲んだり、小さなマルシェは“出店者と来場者を楽しませる”という点では、天神や博多駅で開催されていた大規模イベントと同じ達成感を生んでいたと思います。

今できることを考えたテイクアウトイベント「ドライブスルーGO!GO!」

2020年4月に入り松岡さんは千年夜市の出店者達から“テイクアウト夜市みたいなのやってよ。”と言われていたそうです。ですがテイクアウトとはいえ、今人を集めるイベントはできないと断っていました。

そんな中、緊急事態宣言延長を受け福岡市が独自の追加支援策としてテイクアウト支援を始めます。


テイクアウトイベント「ドライブスルーGO!GO!」

松岡さん

人が集まるイベントは自粛するつもりだったのですが、福岡市のテイクアウト支援が始まったことで“テイクアウトを支援するイベント”をやってみようと「ドライブスルーGO!GO!」を企画しました。

市が支援策を出したことでマリンメッセ福岡さんから許可が出て、駐車場を借りることができたんです。
 
会場にバルーンの装飾をし、DJが音楽を流し、注文、支払い、受取場所をアトラクションのように位置づけたりと、ただテイクアウトを買いに行くだけなのに、僕らが子どもの頃にお祭りに連れていってもらったような体験ができて、記憶に残るものにしたかったんです。



注文、支払い、受取場所を移動していく来場者の車

緊急事態宣言から1ヶ月が経ち、飲食店の人達も買いにくる人達もみんな精神的にきつかった時だったので、“どうやったら楽しんでもらえるか?”を一番に考えて企画し、2日間で1,900食を超えるテイクアウト弁当を販売しました。
 
こんなにたくさんの飲食店の弁当が選んで買えるなんて今までなかったと思うんです。買いにきてくれた人達の中には、知らなかった店を知るきっかけになったり、応援だと思って初めて弁当を買った店などもあったようで、この状況だったからこそ生まれるものってあるんだなぁと思いました。

“来場者数”にとらわれないローカルイベントの重要性

ドライブスルーGO!GO!は、“こんなテイクアウト見たことない!アトラクションみたいで楽しかった!”と大好評で、またやって欲しいという要望も多かったようです

緊急事態宣言の一部解除も決まり気温も上がってきたことから、この企画は一旦終了としたそうですが、自粛が一部解除になり人が動きはじめた今、これからのイベントはどう変わって行くのでしょう?


今年8年目を迎える千年夜市を始めた松岡さん

松岡さん

僕はイベントで大事なのは、どれだけ人が集まるかという“来場者数”ではないと感じています。昨年、博多駅からすぐの出来町公園で博多のキャリーというイベントをやった時、近所の人達にチラシ配りに行ったんです。
 
すると、歩いて10分の博多駅では頻繁にイベントをやっているのに、“自分達のところではイベントがないから楽しみ”と言ってくれるんです。その人達にとっては、博多駅の大規模イベントは、自分達の地域のイベントではないんですね。
 
昨年、千年夜市を通してナイトマーケットというものをもっと広めたいと、いろいろな場所で開催しました。福岡市美術館もそのひとつですが、娘に浴衣を着せて家族で遊びにきてくれたお母さんがいたんです。近所の神社やお寺であるお祭りみたいに“自分の住んでいるところのイベント”と感じてくれたのかなと嬉しかったです。


外国のナイトマーケットをイメージした「千年夜市」

その時に、僕らは“街”に目を向けすぎていたなと思いました。
天神や博多駅でイベントをやれば人は集まりますが、皆“地元のイベント”という意識はないんです。

これから必要なのは、地元のイベントを楽しみにする人達との架け橋になるイベントなんじゃないかと思っています。
 
やはりイベントは、楽しみに待っている人を感じられることが醍醐味だと思います。だからイベントの価値が“来場者数”である必要はないんじゃないか?と感じ、始めたのが “マルシェひとつぼ”です。
 
あのイベントをやってみたことで、僕の潜在意識としてあったものの答えが出た気がします。“マルシェひとつぼ”がいろんな住宅地や使われてない団地の集会所で行われたら、近隣のコミュニティができていくし、自分が住んでいるところの価値が上がるって嬉しいと思うんです。
 
天神や博多駅でどんなにいいイベントがあっても、どこか自分とは遠いイベントでお客さんでしかない。
もちろん大規模イベントの楽しさはあると思いますが、地域のイベントは、ものを買う行為がつながりや地域の価値を見出すことになると感じているし、これからもっとコミュニティやローカルが重要になるだろうと思っています。

松岡さんが始めた千年夜市は春(GW)、夏、秋、冬(年末年始)に各地をナイトマーケットに変え“旅とローカルの交差点”をコンセプトに地元の人たちと旅行者をつなぐ、福岡の新たな風物詩として人気のイベントです。
 
このイベントは、福岡を訪れた旅行者と地元福岡の人が初対面で盛り上がり一緒に飲んで仲良くなるといった光景も珍しくありません。

結果的に多くの人を集めるイベントとして人気になった千年夜市ですが、旅行者はもちろん福岡の人たちが感じていた居心地のよさは、人を集めることにとらわれず“ローカル”の本質を大事にしているからなのだろうと思いました。
 
旅とローカルの交差点をコンセプトにしている以上、旅行者がまた福岡を訪れ、大規模イベントの感染拡大へのリスクが下がるまで千年夜市の再開は未定とのことですが、“どうやったら皆が楽しめるか?”を一番に考える松岡さんから、新たなイベントが生まれるかもしれないと楽しみにしています。


■松岡まさたか
1982年福岡生まれ福岡育ち。クラブの店長経験を経て、誰もが楽しめる「新しい夜の遊び場」を創るためアジアのナイトマーケットをモチーフにした「千年夜市」を始める。「旅とローカルの交差点」を一大テーマに、8年目となる2020年はさらなる野望に向かって足がかりを掴みたいと考え中。また、「博多ファーマーズマーケット」事務局の運営や、旅する軽トラ市「キャリー実行委員会」などを手がける。「自分が楽しいこと・人が楽しんでくれること」を最優先事項に置き、「頼まれてもいないこと」を勝手にがんばりながら、自由に活動を展開する。
千年夜市Instagram

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ライター
山内 亜紀子
福岡女子短期大学音楽科卒。卒業後ラジオ局の番組制作に関わる。その後転職し、福岡の数々の情報誌とWEBメディアの編集・ライターを勤める。編集では映画紹介やコラム、インタビューを経験。2015 年よりフリーの広報、ライターとして主に映画、グルメ、旅行コラムを執筆中。

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