暗いニュースばかりのこの時期だからこそ、明るいニュースを届けたい

コロナ禍における「非常識ビストロ マルコ」の取り組みが話題に!

4月7日の緊急事態宣言発出を機に休業やテイクアウトやデリバリーに取り組む飲食店は一気に増えました。そんな苦境であるにもかかわらず、GWの頃から福岡市内を中心に複数の飲食店が「コロナに負けるな!キャンペーン」を開催。採算度外視なその取り組みの背景や想いをご紹介します。

どんな状況でも、美味しい料理でお客様を元気に、笑顔にするという気持ちは同じ

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い3月下旬以降、街は静けさに包まれるようになった。人々は巣篭もり生活を送り、飲食店を訪れる人は激減し、4月7日の緊急事態宣言発出を機に休業やテイクアウトやデリバリーに取り組む飲食店は一気に増えた。そんな苦境であるにもかかわらず、GWの頃から福岡市内を中心に複数の飲食店が「コロナに負けるな!キャンペーン」を開催。今回は、そのキャンペーンのメンバーの一人である「非常識ビストロマルコ」(白金)の岡有洋さんに、キャンペーンを行なった理由や想いを聞いた。

4月26日、岡さんはFacebookにこんな投稿をした。

  

【緊急事態区域にお住まいの方必見】 〜コロナに負けるな!キャンペーンやります〜 (以下抜粋)
テレビをつければ暗いニュースばかり。 自粛、自粛と言ってはいますが 一体いつになったら 元の日常が戻ってくるのでしょうか? GWに入りましたが 今年は旅行も行かないのではないでしょうか? しかし、下を向いていても仕方ありません。 こんなときだからこそ 飲食店の私たちがあなたを元気に、笑顔にします!

  

その日のことを、岡さんはこう振り返る。

岡さん

自粛と言われていましたし、休業することは簡単だったかもしれません。お店を営業し続けることをいいと思われない方もいらっしゃいます。けれど、私たち料理人はこれまで、美味しい料理でお客様を元気に、笑顔にすることに喜びを感じてきました。今までやってきたことは何だったのかと考えたとき、人々のためにやれることをしようと考え、このキャンペーンを行なうことを決めたのです。

↑完成までに丸1日かかるという絶品ローストビーフ

「マルコ」では、先着100名に通常2500円の「黒毛和牛のローストビーフピラフ 高栄養卵の温玉のせ」を567(コロナ)円で提供することに決めた。

岡さん

国の保障が二転三転していたときで、自分で自分を守るしかない状況にやるせない気持ちがありました。新型コロナウイルスが収束するのが先か、お店が立ち行かなくなってしまうのが先か。そんな想いが原動力になっていたかもしれません。いずれにしても、前を向いてやるしかない。飲食店が頑張っているということを多くの人に知ってもらいたかったですし、人を喜ばせることができるのなら、自分たちからやっていこうと思いましたね。

岡さんは高校時代、ボクシングに打ち込んでいたそうだ。その経験が逆境への強さを培った。

岡さん

こんなときだからこそ、止まることなく、考えて動かなければと思いました。暗いニュースばかりでしたし、そんな状況に少しでも明るいニュースを届けたいとこのキャンペーンを始めたところ、高校時代の恩師が差し入れを持ってきてくれたり、先輩がマスクを持ってきてくれたりと、サポートしてくれたんです。

この岡さんの投稿に、多くの飲食店店主が賛同し、後に続いた。

それぞれは小さな店であっても、合同で取り組むことでインパクトは大きくなる

岡さん

飲食店のオーナーで50名くらいのグループをつくっています。不定期で集まって生産者を訪ねたり、研修をしたり、情報交換をしたりといった活動をしているのですが、そのメンバーが私の投稿をシェアしてくれたり、自分のお店でできることを考えキャンペーンに取り組んだりしてくれました。

飲食店のオーナーって、実はすごく孤独なんです。組織に属しているときは失敗しても誰かがサポートしてくれるけど、独立すると一人で解決しなければなりません。そんなときに情報交換ができたり、間違っていることを指摘してくれたりする仲間がいることはとても心強いものです。一人だったら、こんなことはできなかったでしょうね。今回もこのメンバーを中心に私の投稿を100名がシェアしてくださって、ここまで広がったんです。

↑家庭支援のときに提供されたのは、長崎名物・トルコライスをベースに長崎・上五島出身の岡さんが考案した「マルコライス」

そして、GWが終わる頃、今度は5店舗が合同で「家庭支援」を行なうことが発表された。

岡さん

この取り組みは城南区別府にある『おさかなとおやさい 一灯』の福田さんの声がけで始まりました。外出ができない子どもたちやお父さん、お母さんのお昼ごはんを無料で提供するという活動で5/12・13・14の3日間、それぞれのお店が毎日20食を無償で提供することにしたのです。

1店舗だけで行なうよりも複数の店舗が合同で取り組むことで、「コロナに負けるな!キャンペーン」や「家庭支援」の活動は注目を集め、メディアの取材も多かったという。

岡さん

テイクアウトを行なう飲食店が一気に増えたので、GWの頃はテイクアウトはどのお店も苦戦していましたが、当店はメール会員さんが1800名いるので、その会員さん向けに情報を発信したところ、多くのお客様に来ていただくことができました。その中の一部のお客様が『お釣りは要らないから』と言ってくださって。そのお釣りが今回の活動の資金の一部になっています

緊急事態宣言は解除され、飲食店は通常営業に戻りつつある。「マルコ」は現在、15時から22時までの短縮営業と並行して、「コロナに負けるな!キャンペーン」を続けている。限定100食でスタートしたキャンペーンだが、既に150食を提供。5/31が最終日となるが、100食を超えても続けているその心意気に頭が下がる。

岡さん

早く収束して欲しいとは思いますが、以前のように戻るにはしばらく時間がかかると感じています。けれど、今回の活動を通して、初めて当店を利用してくださったり、『営業が再開したらお店で食事がしたい』と言ってくださったりするお客様がたくさんいらっしゃいました。今回の活動がきっかけで、新しいお客様と出会えたことはよかったと思います

逆境をバネに! 岡さんの前向きな取り組みは、確実に未来へと繋がっている。

■非常識ビストロ マルコ
福岡市中央区白金1-18-17 1F
092-526-2178
15:00〜22:00(短縮営業中)
日曜休

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編集・ライター
寺脇 あゆ子
松山生まれ、福岡育ち。福岡・大阪の出版社を経て独立。福岡を拠点に全国誌、地元情報誌、webメディアなどで取材・執筆を行なう。美味しいものがある、面白い料理人がいると聞けば、日本全国どこへでもフットワークの軽さが自慢。無類のラグビー好きでW杯は2007年のフランス大会以降、4大会を現地で観戦している。

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