リノベ&まちづくりユニット半田兄弟が手掛ける「イエカツ」空き家活用事例

実家など、思い入れのある家が空き家になってしまった場合、「できることなら家はそのまま残しつつ、何らかの形で活用したい」と思う方も少なくないのではないでしょうか。空き家はそのまま放置しておくと、老朽化による倒壊や事故、景観の悪化、治安の悪化などさまざまな問題を引き起こす可能性があります。そのため、取り壊さないのであれば、活用法を見出すことが重要です。福岡県では、空き家問題を解決するべく令和2年に専門の相談窓口「イエカツ」を開設。宅地建物取引士の資格を保有しているイエカツ相談スタッフが、さまざまな専門家と協力しながら、無料で相談に乗っています。今回は久留米市の、ある築46年の空き家をリノベーションし、シェアハウスとして活用した事例をご紹介します。手掛けたのは、久留米で賃貸物件・店舗のリノベーションやまちづくりの活動を行う「半田兄弟」こと、半田啓祐さん(兄)と満さん(弟)です。お二人に詳しく伺いました。

空き家問題の現状とイエカツが行うサポート内容について、詳しくはこちらの記事をご覧ください

 

空き家はひとごとじゃない!福岡の”イエカツ”事情

 

 

 

お話を伺った方

 

合同会社H&A brothers

代表社員の半田満さん(写真右)・業務執行社員の半田啓祐さん(写真左)

 

久留米生まれ。それぞれ進学で久留米を離れ、東京で就職。家業の不動産賃貸業の手伝いをきっかけに久留米にUターン。現在は兄弟で、まちとつながる家庭菜園付賃貸アパート「H&A Apartment」の運営を中心に、賃貸物件・店舗のリノベーション、DIYワークショップの企画・運営、まちづくりなどに取り組む。

 

 

 

家主の要望に応えた、空き家と450平方メートルの庭の活用法

 

「当時は、ほとんど森みたいな状態でしたね。木が生い茂って、雑草も胸の高さくらいまで伸び放題。とても一般の人が家を借りて、手入れできるような状態ではありませんでした」。

 

家が3軒は建ちそうなほど広々とした庭を眺めながらそう語るのは、合同会社H&A brothersの代表・半田満さんです。「半田兄弟」こと、半田啓祐さんと満さんがこの物件と出会ったのは、「イエカツ」でこの物件を見つけた知人からの紹介でした。「久留米にある物件だったこともあって、『査定書を出してみては?』と声をかけてもらったんです」と当時を振り返ります。その物件は、立派な家屋と広々とした庭があり、立地も悪くない。しかし、家主からの要望がかなり限定的でした。

 

『思い入れのある家だから、家屋は保護したままで、庭をうまく生かして地域のために活用してほしい』という要望で。なかなか難しい条件でしたね」。

 

 

しかし、久留米でのまちづくりに長く関わってきた半田さんたちは、「久留米大学から徒歩5分」という立地に大きな可能性を見出します。


「以前から、久留米移住をテーマに、久留米大学の学生たちと街をリポートしながらオンライン中継を行ったり、イベントを共催したりしてつながりを深めていました。それに、当時はコロナ禍で大学生たちが友達を作る機会を失っていて……。だから、“住みながら交流する”という新しい学生生活のあり方を提案ができるのではないかと考えました」と語るのは啓祐さんです。しかも、空き家活用は二人が特に注力している分野。庭に関しても、以前から家庭菜園付きアパートの運営をしていた経験から、「地域の人々とシェアする形で何かできるのではないか」と考えたと言います。

 

 

こうした背景から、築46年の空き家と450平方メートルの庭をリノベーションし、シェアハウス『ウメニワ』として活用する企画を提案。家主が同意したことで、このプロジェクトは動き出したのです。

 

 

「ウメニワ」の名前の由来は、庭に植えられた大きな3本の梅の木なのだそうです。

 

 

 

初期費用なしで、家屋の修繕ができる方法を検討

活用法の提案は受け入れられましたが、課題は資金面でした。建物の修繕や庭の整備には多額の費用が必要でしたが、それを家主が出すことが難しかったのです。そこで、半田さんたちは「家賃を一定期間免除してもらう代わりに、自分たちが修繕費を負担する」方法を提案しました。

 

「ウメニワの家主に限らず、最初の修繕費を初期投資ではなく単なる“出費”と捉える方が多く、負担が難しいケースがよくあります。しかし、そのまま放置すれば活用が難しくなるため、僕たちが手を加えて活用するほうが有益だと考えました」。

 

修繕は、屋根の補修や雨樋の清掃、洗面所と浴室の床の張り替えなどを行いました。また、シェアハウスとして使えるように、部屋を個室にするための間仕切りや各居室に鍵付きの扉を設置。さらに、大学生やDIY好きな人を対象に、玄関やリビングのフローリングの張り替えをワークショップとして行いました。

 

久留米大学の学生さんとともにリノベーションをおこないました

 

襖だった場所はドアを設置、床材も張り替えて明るい雰囲気に

 

庭の整備には造園業者に入ってもらい、家主と相談しながら木を選別。60本以上の木を伐採しました。その後、小型重機で土地を耕し、地域住民や久留米大生と協力して家庭菜園や共有スペースを整備したそうです。

 

「庭は今後、『庭活ラボ』という会員制の活動をスタートさせる予定です。そのために、庭に面した1室を専用スペースとして独立させ、庭側の掃き出し窓から出入りできるようにしました。庭は家庭菜園やバーベキュー、テントサウナなどに使ってもらい、それらを通じて交流が生まれる場になればと思っています。久留米大学の学生だけでなく、社会人や近隣住民にも参加してほしいですね」と満さんは話してくれました。

 

奥は家庭菜園に、手前のシートで覆っている場所はテーブルや椅子などを設置して交流スペースになる予定です

 

庭に面したお部屋は、「庭活ラボ」として改装中でした

 

空き家活用で、地域が抱える不安も解消

 

様々な人が出入りするシェアハウス兼コミュニティースペースを目指していた半田さんたちは、「ウメニワ」を周辺地域の方々とも交流を持てる場にしていきたいと考えていました。そのため、工事の途中にあいさつ回りをしたり、「ウメニワ」が出来上がった際には見学会のお知らせを配ったりもしたそうです。

 

「近所の方から『きれいになって良かった』と言っていただくことが増えました。長らく空き家で庭が荒れていたため、火事や犯罪リスクを懸念していたのでしょう。リノベーションにより整備されたことで、地域の方々も安心されたようです」と啓祐さんは語ります。

 

 

一方、現在の課題は入居者集めです。当初は久留米大学の学生向けに募集をかけていましたが「なかなか苦戦している」と満さんは言います。


「久留米大学の学生寮は1年で退去しなければならないのですが、退寮後は一人暮らしを選ぶ学生が多い。また、今回が初めての入居募集のため、生活のイメージが湧かず、借り手がつきにくいのも一因です」。

 

今後は社会人向けの利用も視野に入れながら、広報にもっと力を入れる必要があると考えています。

 

シェアハウスのチラシも作成して募集をかけています

 

 

 

空き家の活用は、早め早めの相談がポイントに

 

イエカツでの活動に限らず、普段から空き家活用に精力的な半田兄弟。その際に大事にしていることは、「所有者とその場所を使う利用者、地域の人、そして半田さんたち事業者にとって『四方良し』になること」と話します。そうして空き家活用を考える際にやりがいになるのは「街の将来図が変わること」なのだそうです。

 

「空き家を見た時にはいつも、『こうなるといいな』と将来のビジョンを思い浮かべています。それは、空き家がお店になったり、リノベーションされて建物がきれいになったりしている様子ですね。ひどい状態だった空き家をきれいにすることで、街並みも美しくなる。その結果、周辺に住む方々が安心して暮らせるようになるといいですよね。実際に僕らが関わることで、そうしたビジョンを実現できるとやりがいを感じます」と啓祐さんは話してくれました

 

 

今回の「ウメニワ」の事例のように、空き家活用をしようと思った場合、どのようなことに気をつける必要があるのでしょうか。

 

「まずは、ご自身がその物件に対して判断を下せる権利を持っているかどうかを確認してください。権利を持っていたとしても、ご家族の反対があると話が頓挫することもあります。ですから、誰が権利を持っているか、家族はどう考えているか、お盆やお正月など家族が集まるタイミングで家族会議をしておくことが重要です。

 

また、建物の状態によっては『あと5年早く言ってくれれば費用をそんなに掛けなくてもよかったのに』といったケースも多々あります。ですから、早め早めに相談することが本当に大事です。『こんなに散らかった状態では活用なんて難しいでしょ?』とおっしゃる方も多いですが、意外と『家財の処分はこちらでするので使いたい』といったパターンもあるんですよ」と二人は笑顔で教えてくださいました。

 

「空き家になってしまった物件を持て余している」「どうにか活用したい」と思われる方は、イエカツに相談してみてはいかがでしょうか?新たな活用方法が見つかるかもしれません。

 

合同会社H&A brothers

住所:福岡県久留米市東櫛原町2035 [map]

FB:https://www.facebook.com/handabros/

Instagram:@handabros

 

 

 

福岡県空き家活用サポートセンター

住所:福岡県福岡市中央区天神1-1-1 アクロス福岡東オフィス3階((一財)福岡県建築住宅センター内)[map]

電話番号:092-726-6210

営業時間:9:00〜17:00

定休日:土曜日、日曜日、祝日、年末年始

HPはこちら

 

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