福岡県が空き家活用をサポート!イエカツってなに?
全国におよそ900万戸ある「空き家」。
少子高齢化や人口移動を背景に今後も増加傾向にあるとみられており、大きな社会問題となっています。
「遠方にある実家の管理」や、「いずれ相続するかもしれない不動産」など、空き家問題は決してひとごとではありません。
全国的な空き家率の増加を背景に、福岡県では令和2年10月に「福岡県空き家活用サポートセンター」、通称「イエカツ」を(一財)福岡県建築住宅センター内に設置しました。
イエカツでできること
イエカツは、空き家の利活用や悩み事に関して、さまざまな解決策の提案をおこなってくれる公的機関です。
専門のスタッフが、空き家の問題を抱える方の悩みを伺って、空き家を今後どのように扱うのが最適なのか、ひとりひとりに寄り添った丁寧なアドバイスをしてくれます。
相談内容を踏まえ、問題の整理や情報提供、専門家や事業者との橋渡しまでをワンストップでおこなってもらえる上に、福岡県が設置する窓口なので相談料は無料。
安心して相談できるのが一番の特徴です。
<相談の流れ>
“安心の土台”となっているイエカツ
では、実際に相談者に対してどのようなアプローチを行っているのでしょうか。
イエカツの役割のひとつとして“相談者の方と専門家や事業者をつなぐ”ということを先程説明しましたが、その“専門家や事業者”としての役割を果たしている、『株式会社まちづくり不動産』代表の高橋裕一郎さんにお話を伺いました。
Profile
株式会社まちづくり不動産 代表 高橋 裕一郎さん
20代半ばから、お父さまの経営する建築関連会社で経験を積んだのち、令和2年11月に、価値のある良質な「まちづくり」で次世代がワクワクする未来を作りたいという想いから株式会社まちづくり不動産を設立。土地や戸建ての評価に詳しいことを強みとしている。
——イエカツに参入された経緯を教えてください。
高橋さん:もともと、建築関連の会社で仲介営業や注文住宅の営業などを行っていたことから、これまでの経験が活かせるかなと、自然な流れでイエカツに参入しました。
また、社会問題となっている空き家の課題に対して、自分なりに少しでも貢献できればという思いもありました。
——実際に、イエカツの事業に取り組まれてみて、いかがでしたか?
高橋さん:イエカツ自体が、県が行っている事業ということで最初から信頼した状態で取り組むことができました。きっとイエカツに相談されている方も、同じ思いだったんじゃないかな、と思います。利益を得ることが目的じゃないので、もちろん営業もない、そして、きちんと懸案事項も教えてくださる。相談者と私のような事業者が安心した土台で最初から取り組むことができることが、とても気持ちいいなと感じました。
他人ごとではない!空き家の「相続」問題
——これまで、イエカツ経由のご相談を8件ほど受けられたそうですが、どういう悩みを抱えた方がいらっしゃいましたか?
高橋さん:イエカツにご相談される方は「何をどうしたらいいかわからない」という方ばかりなんです。例えば「実家が空き家になっているけど、もう何十年も放置している。だけどその家の持ち主だったご両親はすでに亡くなっていて、どなたかにお願いして、相続や空き家の処分などすべてお任せしたい」という方など。相続の問題が絡んでくると、本当に複雑になってくるので、なかなかご自身で解決するのは難しいんですよね。
——そういう意味では、イエカツ経由の案件は、解決するのがすごく難しいように感じるのですがいかがでしょう。
高橋さん:どんな物件にも大なり小なり問題って絶対あるんですよ。イエカツ経由でご相談いただくものに関しては、たしかに問題の「数」は多いものばかりですが、ひとつひとつ潰していけばいいだけなので決して難しいとは思っていません。むしろやり甲斐を感じながら取り組ませていただいています。
——「何をどうしたらいいかわからない」という相談者の方にはどういう対応を行うのでしょうか?
高橋さん:何をどのような順番で行い、どのような機関に依頼すればいいのかをすべて伝えます。もちろん、必要であれば司法書士の方など、必要な方をご紹介します。どうやったらゴールにたどり着けるのかを説明すると、すごく安心していただけます。
空き家の状況に合わせて最適なプランを導く
——中でも印象深かった空き家はありますか?
高橋さん:郊外の宅地にある空き家を担当した時の事例で、ちょっと変わった出来事がありました。ご依頼いただいた空き家は、必ず現地に足を運んで細部まで自分の目で確認するようにしているのですが、その中で、近くに住まわれている方とも機会があれば、「この物件(土地)、売りに出されることになったんですよ」など、ちょっとした会話をするようにしているんです。その過程で、空き地の下に用水路が通っており、近隣の田んぼに水が流れ込むような構造になっていることが分かりました。以前からそうした取り決めがあったようですが、現在の所有者はまったくその事実を把握していませんでした。想定外の出来事に驚きましたが、最終的には土地の買主の方と行政書士さんの間で覚書を取り交わしていただき、無事に解決することができました。
——ひとつひとつが違う問題を抱えているんですね。
高橋さん:イエカツに相談される方は、固定資産税の督促状や、近隣からのクレームなどにより役所からくる通知などが手元に届いて、いよいよどうにかしなければ、という状況になっているという方がほとんど。中には、20年ほど空き家を放置されていたというご相談者もいらっしゃいました。
——20年以上放置ですか…その後、どのくらいの期間で解決したのでしょうか。
高橋さん:ご相談いただいてから2ヶ月ほどで、無事に土地の買い手がつきました。
——そんな短期間で解決できることもあるんですね。
高橋さん:状況を見てみないとわからない部分もあるのですが、最短でそのくらいで解決できるものもあります。ですので、とにかく空き家で悩んでいる方は、まずご相談いただくのがいいかと思います。
——イエカツを通じてやってみたい、今後の夢があれば教えてください。
高橋さん:現状イエカツは空き家のみの取り扱いですが、今後、空き店舗が多くなっている商店街などを活性化させるような取り組みができたら面白いかなと思っています。ぼく自身がそういう事業にいつか関わってみたいと思っているんです。
空き家に悩んでいる方は、まずはイエカツにご相談を
——最後に、空き家で悩んでいる方に向けて、メッセージをお願いします。
高橋さん:空き家は一筋縄ではいかないことがほとんどです。そのうえ、日に日に法律も変わってきているので、直接不動産会社に相談するのに抵抗がある方や、何をしたらいいかわからないという方は、ぜひイエカツに相談してみてください。
イエカツは、相談したのちに、数社から空き家の活用方法の提案をもらえる仕組みになっています。選択肢の中から自分自身で選ぶことができるので、理想のゴールに近づきやすいのかなと思います。
あとは先程もお伝えした通り、利益目的で動いておらず、本当にただ「困っていることを解決してくれる」機関なので、その点は安心していただければと思います。
施設概要
株式会社まちづくり不動産
住所:福岡県大野城市中央2-1-14 [map]
電話番号:092-592-8211
営業時間:9:00〜18:00
定休日:水曜日
HP:https://machi-fudousan.com/
福岡県空き家活用サポートセンター
住所:福岡県福岡市中央区天神1-1-1 アクロス福岡東オフィス3階((一財)福岡県建築住宅センター内)[map]
電話番号:092-726-6210
営業時間:9:00〜17:00
定休日:土曜日、日曜日、祝日、年末年始
HP:https://www.fkjc.or.jp/jigyo/iekatsu-2-2