【 福岡の独自カルチャー深掘り 】

博多の芸妓「博多券番」を知っていますか?海外VIPも魅了される博多の至宝のおもてなし

博多で長年、受け継がれてきた伝統芸能の〝華〟である博多芸妓、そして博多券番━━━。ヒト、モノ、カネ、ビジネスが国境を超えて駆け巡る昨今、貴重な地域資源として見直されています。そして、新たな集客コンテンツとしての可能性も秘める博多芸妓、博多券番の現在・過去・未来を考えてみましょう。

欧米人を魅了したジャポニズムの華であり、日本の代名詞 

フジヤマ、ゲイシャ、ハラキリ━━━━。

『冨嶽三十六景』で人気を博した葛飾北斎や『寛政三美人』などの美人画で知られる喜多川歌麿らの浮世絵、陶磁器に代表される美術工芸品は、19世紀後半の欧米で『ジャポニズム』と呼ばれる一大日本ブームを巻き起こした。

 

そして、『オッペケペー節』で一世を風靡した、福岡出身の川上音二郎が一座を率いての欧米巡業では、切腹の場面を舞台で演じると大評判となった。

さらに一座の海外巡業において川上音二郎の妻であり、芸者(芸妓)出身で『日本の近代女優第一号』の貞奴が、舞台の上で日本舞踊を披露すると、欧米人の観客らを魅了した。

画像提供:福岡市

『芸者(芸妓)』『券番』とは一体、何なのか!? 

『花街と芸妓・舞妓の世界』(松田有紀子著・田中圭子著・山本真紗子著・片山詩音著 溝縁ひろし写真 株式会社誠文堂新光社刊)

 

【芸妓(げいぎ、げいこ)】

「宴席において舞踊や演奏などの芸能を披露し、客人をもてなす女性のこと。

近世には関東では『芸者』、関西では『芸子』などと呼んでいましたが、明治以降は『芸妓』がその総称として定着しました」(誠文堂新光社刊『花街と芸妓・舞妓の世界』より)
  △   △   ▽   △   ▽  

 

古代の『白拍子』もルーツの一つとみられる芸妓の片りんは、江戸期の元禄年間に現れた。

その後、宝暦年間を通じて専業化していく。

 

明治期に入り、政官財界における接待利用を通じて、芸妓らは社交界の中心的な存在となった。

1873年の『芸妓取締規則』施行後、芸妓の取り次ぎや花代と呼ばれる芸妓の出演料を清算する事務所機能を担う『券番』も発達した。

今日、東京都や京都市、大阪市、名古屋市、札幌市、横浜市、そして博多(福岡市)など日本の主要大都市に券番がある。
さらに盛岡市、山形市、新潟市、金沢市、奈良市、高松市、松山市、高知市、徳島市、長崎市などの地方都市にも券番があり、伝統を受け継いでいる。

「近年は観光地としての人気も高まり、芸妓や舞妓は日本の美意識や文化を伝える存在として注目されています」という有識者の声もある。

 

博多での芸妓登場は江戸中期、全盛期には2000人 

画像提供:博多券番

 

博多の地に芸妓が登場するようになったのは、江戸中期以降といわれている。

かつて大坂の芸妓らが、長崎の茶屋に招かれて客人を接遇していた。

しかし、当時の長崎では、滞在期間100日以下と定められていた。

このため、彼女らは博多をはじめとする他所で一時的に稼いだ後、再び長崎へ戻って行ったという。

こうした中、博多に居を定める者も登場し、博多芸妓のルーツになったそうだ。

 

1889年に博多に初めての相生券番が誕生した。1897年に中洲券番も発足し、1901年に水茶屋券番が設立する。
そして、空前の好景気に沸いた大正期には新中洲券番、柳町券番、南券番を加えた6つの券番が存在していた。

 

「博多の芸妓は、おおらかできっぷが良い」と、明治後期~大正期に評判になり、全盛期には料亭240軒余り、芸妓2,000人を数えた。

昭和初期の金融恐慌で大打撃を受けたものの、1937年に芸妓884人という昭和期のピークを記録している。その後、太平洋戦争の戦時体制下で券番は、完全に消滅した。

戦後、中洲券番と水茶屋券番が復活し、新たに旧券番も派生した。

1985年に券番が一つにまとまり、『博多券番』が発足。

博多券番の芸妓は現在15人を数える。

 

 

芸妓らに会える、伝統芸能を楽しめる、『博多券番の歳時記』 

動画『G20福岡 財務大臣・中央銀行総裁会議 博多券番』の画面より

 

◎ 1月『かち詣り』(十日恵比須大祭:宵えびす)、
◎ 2月『博多芸妓の世界』(九州国立博物館) ※2023年は休止
◎ 5月『博多どんたく港まつり』(福岡市内各演舞台)、
◎ 6月『船乗り込み』(博多座大歌舞伎)、
◎11月『相撲総見』(大相撲九州場所9日目)、
◎12月『博多をどり』(博多座)、

通常の宴席における、日本舞踊などの伝統芸能を披露してのおもてなしに加えて、博多券番では日本の伝統文化を広く伝えていくために上記の催事にも赴いている。

 

〝芸どころ博多〟の伝統芸能の保存・育成を支援する『博多伝統芸能振興会』(会長 谷川浩道福岡商工会議所会頭)が開催する『はかた伝統芸能四季の舞』『博多をどり』の舞台でも披露する。

 

一方、博多の総鎮守・櫛田神社の道向かいにある博多伝統芸能館では月に2回、定期公演を開催する。

芸妓らによる踊りや唄などが披露され、簡単なお座敷遊びも経験できる。博多の芸妓らによる、おもてなし文化に触れることができる機会として、国内外からの観光客らに人気だ。

さらに福岡市内のホテルでのディナーショー形式の公演に加えて、各種文化事業での舞台やステージイベントにも出演している。

 

2019年6月8日・9日の両日、福岡市においてG20 財務大臣・中央銀行総裁会議が開催された。

1999年以降、同会議は世界経済の安定的かつ持続可能な成長を目的に毎年開催されている。G20福岡会議には、主要20カ国の財務大臣・中央銀行総裁をはじめ、招待国約60カ国や組織の代表が一堂に会した。

 

G20初日、ヒルトン福岡シーホークで開催された歓迎レセプションにおいて、博多券番の芸妓衆も晴れ舞台に立った。

そして、三味線の音色が響き渡る中、芸妓による優雅な舞は、海外VIPらも魅了した。

 

博多券番の芸妓・半玉に聞いた、お座敷遊びやデビューの仕方 

 

左から)博多券番の蓮さんと和可奈さん

 

新型コロナウイルス対策のマスク着用ルールが3月13日に改定され、5月8日からは現在の2類感染症相当を季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられる。

 

ポストコロナに向けて日本社会が舵を切り始めた中、博多を代表する風物詩の一つとして、福岡市民に親しまれている『博多をどり』も4年振りに開催される。

 

博多券番で立ち方を務める和可奈さんは、博多をどりについて次のようにコメントする。

 

「私たちにとって博多踊りは、1年間の集大成となる舞台です。12月2日(土)・3日(日)の両日に博多座において計4回の公演が行われますので、みなさま楽しみにしてお越しください」

和可奈さんに「芸妓らを招いてのお座敷遊びをしたい場合、どのようにすればいいのか?」と尋ねてみると、「お座敷遊びについては、まずは利用される料亭さんにご相談ください」とのアドバイスをしてくれた。

 

「いろいろな機会に博多券番を知っていただき、興味を持ってもらうことを通じて、日本の伝統芸能への関心も広がっていけば、本当に嬉しく思います」と語る、半玉の蓮さんに「芸妓になるためには、どうしたらいいのか」について尋ねてみたら、次のような回答だった。

 

博多券番のホームページに『芸妓さん募集』ページがあり、まずは博多券番にご連絡ください」

福博の魅力を高める地域資源であり、秘めたる集客コンテンツ 

画像提供:博多券番

アメリカの有力紙『ニューヨーク・タイムズ』紙は今年1月、特集「2023年に行くべき52カ所」を発表し、日本から福岡市と盛岡市を選んだ。

福岡市を選んだ理由として、「yatai」と表記した屋台の存在に注目した。

 

全国的に屋台が消滅していく中、福岡市は観光資源としての活用と保護に乗り出す。そして、福岡・博多の屋台は、集客コンテンツとしても国際的にも評価された。

 

博多芸妓、そして博多券番は長年、博多の地で受け継がれてきた伝統芸能の担い手であり、貴重な地域資源だ。屋台が観光資源として評価された点を踏まえると、博多芸妓、博多券番も国際的に通用する集客コンテンツとしての資質を備える。

 

今後、地元経済界をはじめ官界、教育界など地域を挙げた戦略的な取り組みを通じて、福岡・博多の魅力により磨きを掛けていくことが求められると考える。

 

 

参照サイト

博多券番Webサイト【ドメインリニューアルに伴い更新しました】
https://www.hakatakenban.jp/

【全国各地の花街に生きる】芸妓・舞妓、職人の「いま」。歴史や慣習、芸能、行事、美粧など育まれてきた花柳界の文化を紹介。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000916.000012109.html

G20福岡 財務大臣・中央銀行総裁会議 博多券番
https://www.youtube.com/watch?v=HXlwSm0uq4Y&t=10s

 

 

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福岡・博多の『屋台』がニューヨーク・タイムズで高評価!? 
~『2023年に行くべき52カ所』に日本から福岡市と盛岡市が選出!〜
https://fukuoka-leapup.jp/biz/202301.1076

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編集者兼ライター
近藤 益弘
1966年、八女市生まれ。福大卒。地域経済誌『ふくおか経済』を経て、ビジネス情報誌『フォー・ネット』編集・発行のフォーネット社設立に参画。その後、ビジネス誌『東経ビジネス』、パブリック・アクセス誌『フォーラム福岡』の編集・制作に携わる。現在、『ふくおか人物図鑑』サイトを開設・運営する。

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