日本初!福岡発!ゲストが作る「新しい村」グランピング施設 唐泊VILLAGE

コロナ禍により三密を避けることもあって、「アウトドア」への注目がさらに高まっています。「キャンプ」や「グランピング」もそのひとつ。しかし、福岡市最後の秘境といわれる西区唐泊にプレオープンした「唐泊VILLAGE」は単なるグランピング施設ではありません。宿泊するゲストが「村民」となって村を作っていくという日本初のシステムは、私が考えるにリアル版「あつまれ!どうぶつの森」。ユニークかつ地元と連携した取組の全貌はいかに。

グランピングとは?

グランピングとは、「優雅な」「魅力的な」といった意味の”glamorous”と”camping”を合わせた造語。
食事の準備やテントの設営、火おこしといった手間や面倒がなく、ベッドや冷暖房完備の快適な施設に宿泊する快適なアウトドアレジャーが楽しめます。福岡でもグランピングができる場所が年々増えています。

無価値のものが価値あるものに。浜辺の耕作放棄地がグランピング施設に

運営会社は福岡×静岡の企業

福岡市西区、全国的に人気の糸島市に隣接する2ha(ヘクタール)の耕作放棄地に、10月17日にプレオープンした「唐泊VILLAGE(からどまりヴィレッジ)」。静岡県の西伊豆でプライベートキャンプ場などを運営するVILLAGE INC.と、福岡・九州を圏域とする西日本新聞社との合同会社「西日本VILLAGE」によるグランピング施設です。

もともとVILLAGE INCは、「#何もないけど何でもある」をモットーに、山間の遊休地や無人駅、廃旅館などの廃屋など無価値の場所を人々が集う場所に変貌させていく企業。関東の方には、一日一組限定、船でしか入ることができない西伊豆の「AQUA VILLAGE」に馴染みがあるかもしれません。
VILLAGE INC: https://villageinc.jp/

九州では、佐賀県の波戸岬キャンプ場を見事に活性化させた実績があります。異業種の企業との連携も複数行っており、群馬県みなかみには、JR東日本と提携し、無人駅だった土合駅(どあいえき)を復活、地下要塞(ようさい)のようなグランピング施設とカフェを造り、注目を浴びています。

災害時の仮設にもぴったりの移動式住宅やサウナテントの販売など、アウトドアフィールドでさまざまなビジネスを展開しています。


「唐泊VILLAGE」が生まれたきっかけ

もう一方の組手である西日本新聞社では、2018年ころより新規事業部門が立ち上がり、糸島エリアにおいても地元の事業者と連携して、「いとしまSUNSET BEER BUS(※)」などの事業を模索していました。

そんな中、西日本新聞社の担当者が「何か事業をすすめられるエリアはないものか」とグーグルマップを眺めていたところ、「地図上に何も記されていない空地がある」ことを発見。それが唐泊VILLAGEとなる浜辺の耕作地でした。

このスタッフが、VILLAGE.INCの橋村社長を知っていたので、唐泊エリアを含めて糸島の数箇所を視察してもらい、最初はここをスタートに九州展開を協業しようという連携がなされました。

そこから2年足らずで猪突猛進、スピード感あふれるプロジェクトがスタートしたのです。

※福岡市天神を18時ころに出発し、糸島エリアのレストランで夕陽を眺めながらビールや食事を楽しむ約4時間の弾丸ツアー。2020年は夏季に糸島に拠点をおく旅行社「オフィスパル」が季節限定で「いとしまde Beer Bus」として実施。
http://officepal-travel.com/beerbus/




サウナテントでじっくり汗を流すこともできます

地元と連携&利益を還元する「ネクスト自治会」

歴史を遡ると、九州北部は唐など中国へ派遣される対外航路の拠点になっていました。この唐泊も奈良時代から現存する日本最古の漁港のひとつとして存在し、後には「遣唐使が宿泊する場所」として、この名がついたと言われています。山手の眼下に漁港が広がる風光明媚なこの地は、福岡市最後の秘境ともいわれています


集落の裏手にひろがる美しいビーチ「うしろ浜」

美しいビーチ「うしろ浜」は、地元住民の手によって、はるか昔から保全されてきました。一方、隣接する農地はすでに50年もの間耕作放棄地となり、この一帯がグーグルマップ上の空白地帯になっていたのです。

この地を見出し、2019年4月から地権者や自治会、漁協など地元の住民に粘り強く説明を繰り返し、許可を得た2020年5月から整備をスタート。高く生い茂った草を刈ることから始まったそうです(この模様は唐泊VILLAGEの動画で、垣間見ることができます)

10月15日のオープニングセレモニーの前には、西日本新聞社、北崎校区自治協議会、唐泊町内会、VILLAGE INCの4社による事業立地連携協定締結式が行われました。


左から、西日本新聞社・柴田建哉社長、北崎校区自治協議会・高橋吉文会長、唐泊町内会・板谷善嗣会長、VILLAGE INC・橋村和徳社長

地元からは、高齢化がすすむ北崎地区に交流を呼び込む起爆剤としての期待が寄せられました。

対して、VILLAGE INCの橋村社長は、「今すぐは難しいけど、この施設であがった収益をこの地域に還元していきたい。この施設の利用者を新しい村民(町内会)として、村民(町内会)同士の新しいつながり、関係人口を創出したい。今この時代に必要な新しい自治の在り方=『ネクスト自治会』として運営していきたい」と抱負を語りました。

つまり、この地にある「唐泊町内会」や「北崎自治協議会」に加え、この唐泊VILLAGEの宿泊者や関係する人を「村民」(このエリアの自治・活性化にかかわる人)としてとらえ、相互につながって、次世代に北崎・唐泊の豊かな自然・文化を継承していくための活動や、今後の活性化を行っていこうという考え方です。

これまでみられた地域の企業の貢献活動の枠を超えて、一緒に自治・運営をしていく自治会を創りだそうという新たな試みです。


新しい自治会の形、むらづくりを提唱するVILLAGE INC 橋村和徳社長

ゲストは村民で、村をつくっていく?「唐泊VILLAGE」の魅力とは!

さらに注目したいのは、「顧客協同型ローカルビジネス」と称し、利用者を「村民」として、「新しい村」を作る作業を行っていく日本初のシステム。つまり、ゲスト=村民は利用料を払ってただ宿泊するだけでなく、開拓や整備などできる作業や仕事を行い、この村づくりにかかわっていくのです。


施設は今からいろいろなものを作って整備していく

2021年1月のグランドオープンまでは、下記の3つのカテゴリーで村作りにかかわっていくことになるそうです。

❶ ネイバーフッド
…まずは「お試し」ということで、日帰りもしくは宿泊で、体験する 1泊2万円〜

❸ クラフトマン
…まさに名前の通り、滞在中は村民としてこの村作りに関わっていく。毎月1000円の会費を払い、唐泊VILLAGE自治会(オンラインサロン)からの定期レポートを受け取るほか、1泊1万5000円〜と「ネイバーフッド」より安くステイすることができる

❸ ローカルギルド
…唐泊VILLAGE内での経済活動(飲食・エンタメ・エネルギー・植栽・工作物・アートなど)を主体的に行い、収益は唐泊VILLAGEとレベニューシェア(※)。一定割合を唐泊VILLAGEの設備投資や、唐泊地区へ還元する。村内に企業・団体の活動拠点としてインスタントハウスもしくはテントを導入し、スタッフ向けの保養所や、オフサイトミーティング会場として利用でき、利用しないときはレンタル設備として開放し、資産運用できる現在はすでに3つの企業・団体の参画が決定しているそうです。

(※)支払い枠が固定されている委託契約ではなく、パートナーとして提携し、リスクを共有しながら、相互の協力で生み出した利益をあらかじめ決めておいた配分率で分け合うこと


ローカルギルドとして、フードサービスを担う「キッチンまんまる」のみなさん

私が思うにここはリアルな「あつまれ!どうぶつの森」。

なにかおもてなしをしてもらうグランピング施設ではなく、「自分も楽しむし、村づくりのために何をするか」という村なのです。

今後もこのシステムの施設を福岡県のうきは市など各地で展開していくそうで、目が離せません。



10月15日のオープニングセレモニー。施設内は自由自在に趣やレイアウトを変えて違った表情をみせる

10月15日のオープニングセレモニーでは、福岡市の髙島市長も期待のメッセージを寄せていました。

髙島市長のメッセージ

集まった地元の人、ゲストの人の笑顔をみると、心の底から解放される非日常空間であることは間違いなく「私も村民としてかかわっちゃおうかな」という気持ちにほとんどの人がなっていたのでは。まずは、お試しから始めてみませんか?(#202110)

【唐泊VILLAGE(からどまりヴィレッジ)】
■住所: 福岡市西区大字宮浦
■Mail: info@karadomari.jp
■HP: https://karadomari.jp/

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編集者
帆足 千恵
福岡のタウン情報誌の編集者として1990年代から海外30カ国、60エリアを取材し、世界の旅行情報を発信。2001年より外国人旅行者向けの編集制作や企画、調査、マーケティング、プロモーションを行い、九州インバウンドのパイオニア的な存在。2020年4月 海外旅行情報サイトを公開予定。

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