1バス停単位で福岡を切り取る「バス停から愛」

1→2→3の謎。片道乗車では足りない「若久団地(わかひさだんち)」バス停

一見なんてことないバス停とそのまわりも、視点を変えれば観光資源。そんな思いで福岡市のバス停を取り上げ、ご紹介する本企画。連載33回目は、福岡市南区にある「若久団地(わかひさだんち)」バス停をご紹介します。

若久団地、という始発点がありました。

奥の団地が建て替えになり、周縁道路が整備されてバスが通れるようになったせいか、さらに先までバスが進むようになり、

これまでは天神方面にしかなかったバス停は、新しく若久団地第三方面にも立ちました。

「若久団地」を出たバスは、終点まで、
「若久団地第一」「若久団地第二」→「若久団地第三」
と順番に停まります。とても簡明です。

本数はそれほど多くないのですが、街に出たり病院に行ったりした帰りに使う場合、昼に戻るのか夕方まで長居するのか、選択肢はあります。

さて、「若久団地」バス停に、「若久団地第三」ゆきのバスが到着し、何人かの客を降ろしました。ちゃんと使っている人がいるのは嬉しいことです。

「若久団地」バス停から、次の「若久団地第一」バス停は見えているので、歩いてみました。

こちらは郊外向き(若久団地第三いき)のバス停です。道路の反対側を見渡しても都心向きのバス停は立っていません。いわゆる「片側バス停」でしょうか。

時刻表を見ると、都心向き(那の津四丁目)と郊外向き(若久団地第三)が並び書かれていますので、ここまで連載を何度か読んでくださっている方は気付くはずです。なるほど、都心向きのバスは、道路の反対側に停車するのだな、と。

>>片側バス停についての記事はこちら:片側バス停での待ち方作法とは。「池田」バス停

しかし、気を利かせてバス停の反対側でバスを待ってもバスは来ません。

天神や大通りに背を向ける側のバス停に、都心向けの「那の津四丁目ゆき」がやってきます

なぜ?

ヒントは、この路線図です。

天神方面から来たバスは、先ほど書いたように、
「若久団地」→「第一」→「第二」→「第三」
と停車して終点ですから、
反対方向を走るバスなら、
「第三」→「第二」→「第一」→「若久団地」
となるはず。

なのに、天神方面のバスも
「第一」→「第二」→「第三」→若久団地

となっています。

慣れなければ、読み解くのは非常に難解です。

「若久団地第三」に移動してみましょう。なぜ第二ではないかというと、

第三バス停を俯瞰すると、

自転車置き場の先に、「若久団地第一」バス停が見えています。そのくらい近いからです。

こちらのバス停は、時刻表が那の津四丁目ゆきのみ掲載されていて、

路線図を見ても、第三の次は若久団地で、第一や第二に行けません。

謎解き番組であれば、この辺でCMが入ります。
 
☆    ☆ ☆
 
それでは、答え合わせです。
 

都心からやってくる第三ゆきの経路です。郊外向けの若久団地バス停に停車したあと、第一→第二→第三と回って終点となります。

そのあとバスはそこで方向転換するのではなく、そのまま周縁道路を反時計回りに回送で周回し、若久団地第一にて待機、時間が来たら、都心方面(那の津四丁目ゆき)として出発していきます。

そして、始発「第一」→「第二」→「第三」→「若久団地」→都心方面 となります。
このデメリットは、第一から第二や第三に行けるのに、第二や第三から第一には戻れないことでしょうか。しかし団地内移動は距離も短いので、そう大きな問題にはなりません。

メリットとしては、転回場を設ける必要がないことが挙げられます。バスが折り返すための空間は、そこそこの広さの空き地を準備せねばならず、維持費がかかります。しかし若久団地の方式だと、バス停でひとしきり待機するだけで済みます。

乗客としては、第一・第二・第三それぞれ自分の最寄りバス停と都心方面各地は相互に繋がっていますし、円周内部の団地に住んでいれば、バスに乗るために道路を渡る必要もありません。常に敷地の側から乗って出発し、同じ場所に戻ってくることができます。とても便利です。

マニアとしては、全ての経路をたどる=完乗(かんじょう)をしたいのは大前提です(笑)。仮にここが折返し運用であるならば、天神方面から乗ってきたとして、団地→第一→第二→第三を片道乗れば足ります。
ただし現在の形式の場合、完乗を目指すには都心向けにも乗る必要があります。「若久団地第三」→「若久団地」に向かうこの部分は、都心向けに乗らなければ通れないルートなのです。


都心向けで「若久団地第三」→「若久団地」に向かうこの部分


もう一度郊外向け(若久団地第三終点)のルートを見てみましょう。①と○終の間に乗ったことにならないのです

完乗を志向すると、時間も費用もかかりますから、なるべく簡素な方法で達成できるに越したことはないのです。しかしあまりに簡単にできることは、価値がないという感情も湧きます。ある程度は苦労苦心をしてこそ、達成感が得られるという側面もあります。

私個人としては、こういう珍しい運用は大好物です。非日常を感じるために旅をしているので、よいアクセントになります。とはいえ、マニアの思考回路に共感していただける文章が書ける日は、まだ遠そうです。

よいお年をお迎えください。来年もよろしくお願い致します。

おまけ

若久団地第一を出発したバスにタッチの差で乗り遅れた(見送った)あと、団地内をショートカットすると、

若久団地第三にてバスに先行できます。走る必要すらないくらいの余裕を持って。
バスと競争してみる遊びもぜひ。

【基本情報】
バス停名:若久団地(わかひさだんち)
・住所:〒815-0048 福岡県福岡市南区若久団地[map]
・天神からの行き方一例:
「天神大丸前(4) (4Cのりば)」から普通61番 野間経由 若久団地第三ゆき に乗車。約25分、260円

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バス路線探検家
沖浜貴彦
1972年生まれ・福岡在住。路線図に描かれた終点を想い、途中の狭い区間を苦心して走るバスに愛を注ぐ変態。ブログ「ほぼ西鉄バスの旅」を2008年に開設、日々愛を持ってバスを追いかけ続ける。毎月第二金曜・第四土曜日はバス趣味の現況を共有するサロン「バス路線探検家の会」を運営。

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